奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

理想郷

2012-11-12 | 詩詠~うたうたい
自分を取り巻く
すべてから逃避し
誰にも知られず
ひっそりと生きる

ここは
そんなものたちの聖地

誰も傷つけず
なにものにも脅かされず
ただ 自分の人生だけを
黙々と生きる

ここは
そんなものたちだけの聖地


もしも なにかの間違いで
足を踏み入れてしまったものは
この世界の存在を
誰にも口外してはならない
この世界の万物に
決して手を触れてはならない

その掟を破るものは
記憶のすべてを消され
見知らぬ土地に捨てられる

ここは
そうして守られてきた場所
ここは
そうしなければ守れない場所


この世界の住人になれるのは
外の世界に居場所をなくしたものたち
外の世界に絶望したものたち
外の世界では 生きられなかったものたち

心に癒せぬ傷を負い
自力では歩けないものたちだけが
住むことを許される場所

ここには
優しさだけがある
ここには
いたわりだけがある
ここには
希望だけがある


やがて傷を癒し
もとの世界へ戻るもの
この聖地に守られ
生涯を終えてゆくもの

選ぶのはそれぞれの意思
決めるのは自分自身

戻ってくるものはいない
去ったもののその後を
語るものもいない

ここは
ここに生きるものたちだけの世界
ここは
ここに生きるものたちだけを守る聖地


どこにあるのか
誰も知らない
本当に存在しているのかも
誰にもわからない

そこは
幻の理想郷-ユートピア-