渡辺武著 わかりやすい漢方薬
第三章 漢方薬は何に効くか
4 味覚による食事療法
p198 女性は甘党、男性は辛党
肝腎を強くする食べ物となると、少しにが味のある食物ということになります。
野菜では春の七草やフキノトウをはじめチシャや春菊、魚ではなまこの内臓である〝このわた〟とか、動物のきもなどです。
昔から「良薬は口に苦し」といいますが、人間の活力を出しているのは、この肝腎です。
生きているかどうかの判定は、心臓で決まりますが、心臓を守っているのは、肝と腎なのです。
肝臓は解毒作用、腎臓は利尿作用を管理していますが、たとえば、甘味を食べ過ぎると小便が出なくなります。
出ないということは、下痢をするか頭や皮膚から水分を出すということですから、神経症にかかり、腺病質とかアレルギー症に発展していくのです。
食べ物の甘い、塩辛いということは、健康に密接につながっているわけです。
女性は男性に比べると、人一倍甘いものを食べたがります。
オフィス街の甘党屋さんなど、昼休みはОLでいっぱいになります。
それもそのはず、女性は一ヵ月に一度は何百㏄という出血をして、大変なエネルギーを消費しているのです。
もし、男性があれだけの出血をしてごらんなさい。
貧血を起して、二、三日はぐったり寝込んでしまいます。
だから、女性はエネルギーを出せる貯蔵栄養を持っていなければなりません。
甘党屋で食べたデンプンやあんみつが、グリコーゲンとなって、脂肪にして蓄えられているのです。
若い女子高校生に人気があるのは、おさつ―焼いもです。
さつま芋もデンプン質であり、女性に生命力を与えている源だということができます。
女性が甘党なら、男性は辛党というのが常識です。
男性は頭を使い、皮膚から気を出して生きている動物です。
気がつまると意気消沈なんてことになります。
そこで気を払うため、頭や皮膚から順調に水分を気体にして発散する必要があります。
男性が、うれしいといっては酒を飲み、悲しいといっては酒を飲むのは、発散しているわけなのです。
どちらかというと、ビールは西欧のような塩気のいらない国で飲む酒です。
日本のように皮膚から水分を出せない所では、やたらに小用に出かける回数が多くなり、腎臓に負担がかかるのです。
飲み過ぎると水滞の原因にもなります。
日本酒は日本の風土で生まれた酒、ビールに比べると腎臓の負担は楽になっています。
水滞を起さないために、酒の肴というものが重要になってきます。よく、酒屋の店先で、酒の肴に岩塩をカチンカチンとかじりながら飲んでいる人がいます。
中にはみそ樽のミソをなめながらやっている人もいます。
これはちゃんと理屈に合っているのです。
塩辛いものを食べれば水滞を防ぎ、どんどん排泄させてくれるのです。
ビールの国のドイツ人が、ビールに利尿作用のあるホップのほろ苦さを入れたのと同じで、にが味はドキドキする心臓の炎症をちゃんと抑える効果を持っているわけです。
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