柏からイタリアニュース

イタリアの今をイタリアメディアの記事からお届けします。

戦後のガザの統治について考える3つの案

2024-03-25 11:25:44 | 政治
Corriere della sera 21 marzo 2024 (modifica il 21 marzo 2024 | 13:31)

Chi governerà Gaza dopo la guerra? Le tre ipotesi in campo, dal «mandato arabo» ai ricchi clan locali
戦争のあと、誰がガザの統治を行うのか?アラブ諸国による委任統治からガザの有力派閥による統治など、3つの案について考えて見る。

イスラエル史において最も長いこの戦争のあと、誰がガザを統治するのか?もっとも自然な案(パレスティナ自治政府による案)から、最も最新の案(ガザを地中海のドバイにする案)まで。

それではまず優先的課題について考えてみたい。まず初めにハマスを解体することなのか、それともパレスティナの人々への食料支援なのか?イスラエル支援すること、すなわちネタニャフ政府を継続させることなのか?いずれにしても遅かれ早かれ戦争後の未来を考えることが必要だろう。戦後に何が起こるか?ガザを誰が統治するのか?それ以外のパレスティナ地域は?イスラエルは世俗国家になるのかそれとも宗教国家になるのか?オスロで合意した2国家共存は可能か?
いくつかの確実な点がある。イスラエルが描くまず1点は、ガザが決してイスラエル人たちを殺そうとしない人たちによって統治されることだ。2点目はハマスの立場、すなわちパレスチナ人が土地と自治の権利をもつことだ。この2点の妥協線が平和のカギだろう。以下、現時点で考えられる3つの案を見てみよう。

1. Potere all’Autorità Palestinese
パレスチナ自治政府による解決案

第一案は、2国家共存策だ。これは米国が提案し、イタリアを含む欧州も指示しています。この場合、ハマスが無力化されたあとすぐに、国際的に認められたパレスティナ自治政府の行政管理下に戻り、80歳のアッバス(通称アブ・マゼン)首相パレスティナ自治政府議長の下に置かれる。

米国はこの案を長い間支持しており、現在も放棄はしていない。イスラエルの防衛大臣は本案を拒否はしていないが、しかしそれは確信してと言うよりは外交的な理由からだろう。ネタニャフは以前は明確にしていたが、今はそれについて語らない。彼の懸念は新しいパレスティナ国家は御しやすいヨルダン川西岸地区とは異なり、騒ぎの絶えないガザになるということだ。すなわちパレスティナ国家がハマス国家になることは、ヘブライの国の崩壊を望む勢力の巣窟になることだ。

アッバス議長は先週パレスティナの新首相にモハマド・ムスタファ(注:2月26日に政権全体の閣僚と共に辞任を発表したモハマド・シュタイエの後任。https://note.com/tatsuhiroiwamoto/n/n8ed705fa65ea)を指名したが、彼も従来からの2国家共存の解決策を支持している。外交筋によれば、これは米国からの圧力によるものだ。ムスタファは米国ではよく知られた人物だ。パレスティナ投資基金の総裁でアッバスをもっとも支持しているひとりだ。彼の存在は、米国や欧州が昨年10月以来期待している再建・再生されたパレスチナ国家を保障する。ムスタファは米国の支援を受けながらパレスチナとイスラエル間の協力を継続していくだろう。新首相を認めないハマスを入れることにはまったく反対の立場だ。

この案の主な問題は、パレスティナ自治政府がもはやパレスティナ人からの信頼がヨルダン川西岸地区でもガザでももはやないということだ。イスラエルによる支配のために機能するがパレスティナの独立には機能しない、効果的でなく腐敗したものだと考えられる。

2. Potere ai ricchi gazawi
ガザの富裕派閥による解決案

ガザの土地では、イスラエル国建設以前から長い間経済格差が激しい貧しい地域だった。ご多分に漏れず、武器を与えられた不安定な地域で有力な派閥と弱小な派閥で構成されていた。ほとんどの派閥はイスラエルとハマスの間を特にどちらに着くと言うこともなく、うまく乗りこなしてきた。そんな派閥のうちのひとつで最も重要な派閥が、シンワル派だ。ハマスのトップも出している。ほかの派閥としては、ダグムシュ、ラドワン、アル・マスリ、ヒルズなどがあるが、現状を傍観している。

それらの派閥とイスラエルとの間ではイスラエルの攻撃が続く中でも対話が続けている。わずかな救援物資がトラックでガザに運び込まれるのもそうした対話のひとつだ。そしてそれ以外の民間がやってる運び込みもある。それはまさにそうした派閥がやっていることなのだ。

戦争中でさえ、そうしたビジネスにいそしむ派閥とその他のガザの人々との距離が縮まることはない。昨年の12月頃イスラエル政府は米国の戦後のパレスティナ自治政府の提案に対し、御しやすいガザの派閥による統治を提案した。この案では、治安はイスラエル兵士によって行われ、行政は派閥首長たちに委譲されると言うものだった。但し、この案はイスラエルにとっても占領軍事支出が継続するという問題も意味している。

3. Il «mandato arabo»
アラブ諸国による委任統治という解決案

一般に平和のためのひとつのカギは、当事者全てが戦争を止めることに利益を見出せなければならないことだ。この意味でガザにおける戦後のアラブ委任統治案は機能するはずだ。このアイディアには不愉快な植民地主義臭さがある。委任統治と言うことは、過去に国際連盟がオスマン帝国以外の東方諸国の権力を正当化するために提案した法的な枠組みだった。たとえそれを実現しなければならない当事国にとってはベストでないにしても、提案する国々の間では妥協が得られるだろうと、昨日ニュウヨークタイムズの記者、ブレット・ステファンが提案した。

植民地主義的アイディアは支援のための国際的協力とガザの再建の両輪で現代的にアレンジ出来るはずだ。再建にカネを出す者はまたその実行をコントロールする権利も得られるから間接的にガザを統治出来るだろう。財政支援する国々はサウジ、カタール、アラブ首長国連邦と言ったアラブ諸国でなければならない。アラブ諸国からの軍事派遣団も必要だろう。しかし多くの場合実際の活動をするのはガザの派閥部隊であろう。

イスラエルもまた義務と権利がある。経済的な意味での義務と再建されたガザから10月7日のような攻撃は受けないという保障の権利だ。ニューヨークタイムズは結論的に地中海におけるドバイのようなガザの未来に至ったのだ。不確かな利益よりガザの人々にとっての夢は、イスラエルのためにも、悪名高いハマスの下でのガザとヨルダン川西岸の統合を阻止することなのだ。

ここまでポジティブな提案を見てきたが、同時にいくつかの危惧もある。まずひとつは、アラブ諸国はイエスと言ったことはないことだ。アラブ諸国による委任統治はすでに生まれる段階にあり、どうにかこうにか取り組んでいる。人道支援のためのアラブ諸国の同盟設立の試みが行われている。問題はカネだ。そして中心になる顔だ。現在検討しているのはエジプト、ヨルダン、アラブ首長国連邦だ。結果は有効的というより間接的で、現実的長期取り組みと言うより大衆内部の意見の沈静化させるための機会といえる。ただし、再建のためのトラストを作るための財政的な余裕があるのは3国の間でアラブ首長億連邦だけだ。第2点目としては、ガザの人々はイスラエルによる統治からアラブ諸国による統治への移行を喜んで受入れることはないだろう。戦場で効果を発揮したアラブの軍事同盟も歴史的な例はないのだ。イエメンにおけるフーシ派の反乱でもそのことを見ることが出来る。イランを巻き込む事な本当に中東に平和をもたらすことなどできるだろうか?第3点目として、ヨルダン川西岸地区は石油から得られる富から切り離されたままだろうか?

(本文)
https://www.corriere.it/esteri/24_marzo_21/chi-governera-gaza-mandato-arabo-ipotesi-bfeff782-e776-11ee-a95a-09971739e78f.shtml