イタリアの一般的な若者の悩みとはどんなものかと思って読んでみると、随分古典的とも思える悩み(シチリアか南イタリアのどこかの街の話かと思っていたら全然違っていました)でしたが、イタリアの今を知るために翻訳してみました。
La Stampa 2017/01/30より
La risposta del cuore マリア・コルビの悩み相談室
Credi nel tuo sogno e stai alla larga dagli uomini egoisti
大人の独りよがりの意見は横に置いといて、自分の夢を信じて!
(相談内容)
マリアさん。私は19歳の女性です。自分の将来について相談があります。理科系高校に通っています。将来は外科医になるのが夢。数ヶ月前まではそれは可能だと思っていたけど、今は父と母から反対されダメかもと思うようになりました。父母からは医者なんて女性の仕事ではないといわれています。母はいつも私たちの子供のそばにいて私たちを育ててくれました。仕事をするにしても育児の邪魔にならない程度に。私が将来子供を持ったときに、子供の傍にお母さんがいないなんて良くないことだと。それに男のひとというのは、妻が忙しくて時間に縛られていては、夫婦の生活は続けられないものだといいます。もう二人の顔を見て、両親のことがわからなくなってしまいました。これまで両親は勉強しろといつも言っていたのに、今度は突然しなくていいなんて。住んでいるのは、北イタリア、ベネチア近くのtrevizo(トレビーゾ)県のPreganziol(プレガンツィオール)という小さな田舎町だけど(人口1万7千人程度)、私の家族は開放的で現代的な家族です。少なくともそう思っていました。いま本当にどうしていいかわかりません。自分が外科医になりたいのは今でも変わらないけど、恋人や家族や友達も大事。自問の毎日です。たくさんの女性が難しい選択をしてそれらをうまく両立させていることを知っています。でも自分にそれは可能だろうか?と。確かに、外科医になるためには何年も掛かるす。6年間の大学、その後専門課程、その他のインターン期間。お金も掛かる。私が絶対に外科医になるというならお金も出そうと両親は言うが、結局認めてはくれない。しかし、もしも弟が勉強もほどほどに、でも少しばかり希望するだけで私と同じ選択をしても、両親は反対せずにむしろ満足するでしょう。目標を達成するための必要なものとして両親は弟を支援するだろう。だけど両親にとって私の目標はあまりに野心的と映っているのです。「あなたのためなんだよ。私たちは仕事のために自分の家庭生活で幸せになれなかった女性をたくさん見てきたの。」わたしは教義のように何度この言葉をきいてきたことか。理学療法士(fisioterapista)になればとか、心理学士ではとか、言語障害セラピスタ(logopedista)ではとか。でも私は外科医になりたいの。そして、結婚もしたいし、子供も持ちたいの。全部。出来ないことでしょうか?
(マリア・コルビの回答)
こんにちは、エリザベッタ。このコラムをあなたの手紙ではじめることにしました。というのも、いろんな感情が複雑に絡み合って、それらがみんなこころに係っていることで、私たちの生活のたくさんの事柄に関係しているからなんです。あなたには落ち着いてといいたいところだけれど、正直のところ出来そうにないわ。言葉を弄しても無駄。この国は女性のための国ではないのよ。この国では女性の半分は働いていない(シチリアでは女性のうち働いているのは27%)。イタリアは働きたい女性にとっては最低の国のひとつよ。それを知るのにOCSE*の調査データなんて不要。仕事と恋愛と家族の世話を両立させているたくさんの女性たちに尋ねるだけで充分よ。
* OSCE: Organizzazione per la cooperazione e lo sviluppo Economico 経済協力開発機構(日本語では英語略でOECDと呼ぶもの)
文化の問題もあるでしょうけど、政治の問題もあるわね。つまるところ、ご両親はあなたに「自転車が欲しいといって、今はその自転車のペダルを踏んで乗っているってこと」を言いたいのよ。まだ男女平等を阻害しているガラスの天井を突き破るには男性以上にその自転車のペダルを踏まなくてはならないってこと。頑張ってペダルを踏んでいるときに急な坂道にぶち当たるかも知れない。たとえば恋愛とかね。なぜなら多くの男性が輝いている女性に対して応援することに慣れていないからなの。突然競争心が芽生え、二人の関係を弱め、そしてエゴや教育が男性に、二人が助け合って行こうとすることを妨げるのよ。実際、あなたが自転車を一生懸命こいでいても、彼はバイクを手放そうとはしないでしょう。まったく、OSCEの調査のとおり、イタリア女性は週に36時間の家事をしているていうのに、男性のそれはたったの14時間にも満たない。これは先進国の中でもっとも大きな開きなのよ。
だから、あなたに言うわ。簡単な道のりではないかも知れないけど、あなたなら出来ると。そしてしなければならないと。なぜなら、これはあなた一人の戦いではなく、あなたの頑張りが、女性みんなのための小さな一歩だからなの。そして恋愛は慎重にね。ぜひあなたを尊重し、理解し、あなたを支援してくれ、家庭を持ったときに確実に直面する問題や課題を一緒に考えてくれる、そんな人を相手に選んで欲しい。仕事の中には、たとえば外科医もそうだろうけど、生活時間が一定でないしごともあるでしょう。夕飯を家族と一緒に食べられないとか、約束の時間にいけないとか。でもそんなときに自分自身を信じ、勇気を持って欲しい。自分を責めないで欲しい。あなたの両親は「息子たちを無視は出来ない」と正論をいうでしょう。でもそれはあなたも一緒。子供たちの世話も分かち合われるべきでしょう。政治が「保育所や学校の時間帯を現代生活にあわせて、お母さんたちをサポートしなければならない」というなら、女性たちのこの苦労の坂道もまた少し緩くできるはず。とにかくやってみる価値はあるわ。エリザベッタ、あなたにはぜひあなたの夢に向かって闘っていって欲しい。
(原文)
http://www.lastampa.it/2017/01/29/cultura/opinioni/larispostadelcuore/credi-nel-tuo-sogno-e-stai-alla-larga-dagli-uomini-egoisti-YDQcJWvxbNkpCyJL7oD6rO/pagina.html