(1) 教科書作成委員と作成内容
事務局が左官科の教科書を作成する場合、(多の訓練科についても同様である)、計画が上がれば、それに対する目的、内容、執筆委員、作成期間等と作成職種を誰が担当するかの検討がなされ、担当者が決められる。当センターにおいては、今後、特例を除けば、各職種系訓練研究室(左官科は建設・木工系訓練研究室)が担当する。担当者は既刊の教科書や関係職種との調整をし、訓練基準や教編に基づき、作成科を持つ訓練校、関連企業等に対して、意見聴取をする。その結果を考慮して数回の事務局会議を持って事務局としての作成方針を策定する。今回の左官科においては、1.分冊にすること、2.各章ごとに習得する目標を簡単に述べ、訓練生の学習目標を明確にし、動機付けを行うこと、3.各章ごとに技能検定二級程度の問題を精選し、解答については巻末にできるだけ簡潔に説明すること、4.特に重要な点で説明を要することについては、下欄に〈参考〉、〈関連知識〉、〈重要〉等の区分で若干の説明を加える、等を作成方針に含めて策定した。
担当者はこの作成方針によって執筆担当する作成委員を誰にするかを決めるが、これが大変な作業である。教科書がよい物になるか成らないかは、この作成委員によって左右されるとも言える。いわゆるなりわい(生業)的職種については特に苦労する。これらの職種は旧来の知識体系では業務内容が十分に理論化できない面が多い。例えば、経験的な工法や材料の使用方法などがそれである。多くの工法や材料は規格化されていないし、新しい工法や材料が現場では既に使用され、実績も多く、一応の評価がでているが、JIS(日本工業規格)やJASS(日本建築学会標準仕様書)等に規格化されるまでには、それ相応の期間を必要とするため、工法や材料の面で、現場が優先していると言える。教科書は職種におけるこのような成果に謙虚でなければ成らず、また、それを取り入れることにおいて貪欲でなければならない。このことは教編との関係を考えずしては正確に捉えることができないが、作成委員の選定にもこの辺の考えが曖昧であると教科書の内容も曖昧となり、指導員が苦労することになる。そこで教科書に盛られる内容を全国的に共通する事柄を主な柱とし、この考えの基に作成委員を選定する。
いわゆる生業的な訓練職種では、委員間の調整が最大の課題となる。調整には委員会の回数を増やすことばかりでなく、執筆分担する項目の細分化が必要であり、執筆委員を多くすることも改善策の一つである。左官については、学術の面で東京都立大学の教授、現場については日本左官業組合連合会(東京都新宿区払方町25)より推薦を受けた方、職業訓練校からは2名の指導員を作成委員として委嘱し、上述した問題点をできる限り少なくすることを考慮した。当然のことながら、専門領域での考え方の違いや表現方法の違いがあり、その調整作業に多くの時間を費やした。(次回へ続きます)