基準の見直しには、変化する技術との整合性、陳腐化した工程、技能・技術習得には欠かせない基礎的なもの、応用範囲の限界、時代とともに統合し複雑化する業種範囲、将来性を見据えて、単に業種の専門性だけでは判断がつかない部分にも拡張する必要があった。
筆者として一番気がかりであったのは、我が国が辿ってきた塗装業界の歴史や対象が果たして研修生の母国の産業と一致するかということであり、研修期間が先に決まり、国によってまたは個人によって修得度が異なるのが一般的な能力開発であるが、どうも主客転倒しているように思える。技術移転の効果がはなはだ疑わしいところがある。研修における効率性は実施側の評価と研修受け手の評価との相互分析が重要となる。実施側の効率性は研修に費用をかけず、画一的で生産量を上げる技法に偏る傾向があり、時として受け手の非効率性を生む。研修生排出国に赴き、研修後のフォローアップが試みられていると聞いたが、正直なところそのフィードバックはどの部分で誰が担うのであろうか?
弛まぬ基準の改正は一見すると合理的で、理想に聞こえるが、あまり短期間に見直しが続くと本来の技術移転対象職種の基準がぐらつく畏れがある。
技術革新が激しい時代では、どの業種においてもいえることであるが、技術移転の効率化は研修内容の設定時に受け手側の現状が十分に掌握でき、能力を事前に把握することで、到達目標とのギャップが研修内容になるわけであるから、基準の有効範囲を正しく捉え、受け手側の不足した技術力を付与することに力点を置くことが、研修効率を高めるためにも重要であると思われる。その意味では基準も複線的な基準(ガイドライン)があってしかるべきである。(このシリーズ最終回です)