カモメの威嚇の声に、寂しく立ち去るアオサギでした。
その3 (生活指導・危機管理・メンタルヘルス)
【留意すべき傾向】
3.食文化の違い
1)食費を切りつめ、研修手当を自国へ送金する。そのため、粗食をし、日々やせ細り、いずれ栄養失調状態になる研修生が多い。
2)自国の料理に執着する傾向が強い。冷蔵庫の保管や部屋への持ち込みによって腐敗が発生し、食中毒を起こすおそれがある。
3)イスラム圏では左手は不浄のため、右手だけの使用で直接食べる。ベジタリアンが多いことも留意する。箸の強要はしない。
4)イスラム圏ではアルコール類は厳禁、また、宗教上豚肉を食さない。日本の豚は清浄といっても通用しない。特に焼き鳥は豚の臓物や豚肉が使われるため注意を要する。鶏肉や牛肉であっても宗教上の処理をしていないため、信者によっては食さない。特に寮生活で食事を出す場合には食器や調理具を別にする配慮が必要である。
5)香辛料の違いを認識する。一般的に冷凍設備の普及が悪く、食物流通に時間を要するため、新鮮な魚介類は口にできない。保存用に香辛料を多量に用いる傾向が強い。日本人にとって、研修生の香辛料の多量摂取による体臭は不快感となって現れる。
4.その他
1)印鑑による押印、我が国のビジネスマナーである名刺交換の強要、強制的に顔写真を撮影すること、撮影前にイスラムのスカーフを取り去るよう指示することは人道的に許されない。
2)健康保険制度がない国が多く、病気した場合に市販の売薬ですませ、医者に行くことを拒む傾向がある。言葉が通じないことから医者に症状を伝えにくい。医者に連れて行く場合は現地語もしくは英語を理解する医師に引き合わせ、通訳との同行が望ましい。
3)民間療法が行われる。煎じ薬や効能がわからない処方を行い、かえって症状を悪化させることがある。風邪でベビーオイルを全身に塗るなど理解の範囲を超える。
4)入国後は緊張のせいばかりでなく水や食物にあたることがあり、生ものは特に注意する。腸内細菌が入れ替わるとも言われている。
5)出入国に関する手続き、移動手段・交通ルール、携帯電話やパソコンの使い方、キャッシュカード、身分証明書、運転免許の取り方、風呂の使い方、畳での生活、スリッパの使い方、水洗式トイレや、日本式トイレの使い方等基本的な生活ルールのほとんどが異なっているので十分指導する。
6)健康管理面ではメンタルヘルスケアについての理解を深め、ホームシックになりがちな研修生にとって、精神的な病に陥らないよう関係者との接触の機会を増やし、ホームステイをするなど日頃の対応が望まれる。
7)機密情報の流出の防止や災害等の危機管理については緊急連絡網の整備、避難場所の指示、非常時の対応等日頃から模擬訓練を行うなど、管理体制を設け、パニックに陥るのを避ける。
8)直ちに国際問題に発展しやすい、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントを与えないもしくは与えたと感じさせない対応が必要である。