goo

圧倒的荒々しさの「桜島」


思い立ったが吉日。ということで、先日桜島を訪ねた。いつもは横目に見ながら通り過ぎることばかりなので、じっくり眺めることにした。まず鹿児島市街から桜島フェリーを利用することにした。フェリー窓からの眺めは、逆光のなかでも堂々としていて美しい。裾野には多数の人家。フェリー料金は、桜島に着いてからの支払だ。普通車なので1,600円。料金所を通過して最初に目指したのは、桜島ビジターセンター。大きな施設ではないが、火山のことや桜島の歴史など学ぶことができる。 写真もOKだ。大正3年(1914)の大噴火写真も壁いっぱいに引き伸ばされている。あれからもう100年過ぎた。その時の大噴火で、噴出した溶岩が垂水市側との海峡を埋め尽くし、桜島は島ではなく半島になった。


桜島フェリーで桜島へ


大正大噴火


安永の大噴火

ビジターセンターを後にして、島の南側を走る国道224号線(溶岩道路)を半島の付け根、桜島口へと向った。左手に桜島の噴煙を眺めながらの東進だ。天気は晴れ、時折見える桜島はやはり大迫力だ。桜島を描いた人は、著名な画家から無名な画家まで数多い。やはり引きつけるものがあるのだろう。フロント越しに見える桜島は、近景になるほど大迫力だ。圧倒的荒々しさが迫ってくる。山頂に近いほど、荒々しい山肌を見せている。岩肌はどこまでも刺々しく刻まれている。この景観を前にすると、人間の何とちっぽけなことかと思う。自然というものの大きさを実感させられる。ヒトはあくまで自然の一部、自然を支配する事なかれだ。
途中、国道から逸れ、湯之平展望所へ車を走らせた。整備された上り坂を約7km。出会った車は少なかったのに、展望台駐車場はほぼ満車。大型バスも来ていたので、展望台には多くの観光客がいた。誰しも「すごいねー!」という言葉を発している。皆、桜島のパワーに圧倒されるているのだ。私も、その姿を忘れまいと、何枚も写真におさめた。ここでは古い火山ほど、刻みが深く荒々しくなることを学ぶ。若い火山は、たとえ深い谷が出来ても、次から次に火山灰などの噴出物が被っていき谷を隠していくのだ。古い火山ほど刻みが深くなるのは、人のシワと同じだ。


湯之平展望所へ


湯之平展望所より北岳山頂を望む


下の幹線道路にもどり、野尻川にかかる橋の上から桜島を眺めた。すぐ脇には桜島国際火山砂防センターが建っている。この川に限らず、どの川も桜島の河川は山頂付近を源流としている。そのため、普段はほとんど水無し川なのに、ひとたび大雨ともなれば、どこも土石流を心配しなければならない。野尻川は、その代表的な川のようだ。くり返し土石流が起きた。橋が流されたこともある。現在の橋は、以前より高く造られているようだ。橋の上から眺める川は、左下に普段の小さな流れ、その一段上に氾濫に備えたコンクリート張りの広い川床が整備されている。何事もない日の桜島は、悠然とそこにあり堂々と美しい。しかし、時に大きな牙をむき、残酷でもある。


野尻川にかかる橋より桜島を望む


また東進。林芙美子文学碑辺りは車窓からも松林が美しいが、素通りして有村溶岩展望所へ。この展望所からは、年代の違う溶岩にそれぞれの松林をみることができ、植生の変化がとてもわかりやすい。山頂や火口の近くは、山肌がむき出しだ。火山ガスや火山灰が多いためだが、展望所が近くになるにつれ、古い溶岩、昭和溶岩(1946年)、大正溶岩(1914年)それぞれの上に育つ異なる植生が観察できるのだ。桜島を一周すれば、数百年分の植生の変化を見ることもできるそうだが、今回は無理。


手前より大正、昭和、古い溶岩に生える松


様々な動物などに見える溶岩

そこを後にして、桜島が陸続きになった所へ。桜島口がその場所だが、少し通り過ぎて牛根大橋のたもとへ。ここから南側を振返ると、桜島(半島)の付け根がよく見える。東側には姶良カルデラの絶壁、西側には大正溶岩の大地。それらに挟まれた細長い湾はとても穏やかで、小さな漁船の繋留地。カルデラ壁をゆっくり観察したい気持ちもあったが、またの機会とし帰途についた。ここをあとにすると、すぐに「道の駅たるみず」だ。ここからの桜島の眺めもいい。現在活動中の南岳噴火口からは絶えず噴煙が上がっているのがよく見える。沖には養殖イカダ。ここは温泉併設の施設だから、いつもにぎやかだ。お土産コーナーも魚介類などたくさんありうれしくなる。しかし、出費が重なり財布はやせたまま。そのため、目に入った桜島名産ならぬ鬼界島産の生姜糖のみ買い求め、 国道10号線を目指した。左手の海底には若尊カルデラがひそんでいるはずだ。波の静かな日は、海上に「たぎり」と呼ぶ泡がみえるそうだ。姶良カルデラを構成するカルデラのひとつだ。姶良カルデラの超巨大噴火が約2万9000年前。その南壁で桜島が生まれたのがその約3000年後の2万6000年前。それ以降、桜島はたびたび大噴火しながら現在も活動中だ。こんなにいい教材はない。

桜島、生きているうちに大噴火を見たいような、見たくないような・・・。


牛根大橋より桜島口を望む

「道の駅たるみず」より

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )