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MESSAGE2017「南九州の現代作家たち」


都城市立美術館でMESSAGE2017「南九州の現代作家たち」が12月3日まで開催中だ。宮崎県内では、現代美術に関してはここが拠点のひとつだ。MESSAGE2017では、宮崎市で活動中の島嵜清史さんなど9人の作品が展示されている。


島嵜清史さんの作品

まず、前庭に展示されている「不軽菩薩」に合掌後、受付へ。菩薩像は今回の展示ではなく常設展示。受付で撮影やネット上への掲載は大丈夫か尋ねると、動画は無理だが、他は歓迎の様子。どの展示会でもこうあればいいのだが、著作権の問題等あって不可が大部分だ。今回の企画では、サテライト会場もあり、受付で案内ももらえる。

9人全員なかなかおもしろいが、男性作家と女性作家で大きな違いがあるように感じた。総体的に女性作家の仕事はどこか母性的で柔らかく、男性作家の仕事ぶりはどこか理屈っぽい感じを受けた。作品ひとつひとつの感想を書くのは大変なので、響いた作家のことだけでも書きとめておきたい。
会場でまず迎えてくれた平川渚さんの「終わらない物語」と「物語のつづき」という作品。かぎ針で太い糸を編んでつくられた作品がつり下げられているのだが、細胞のようでもあり、大きな目玉のようでもあり、また深海の魚のようでもあり、作品が作り出す影とともに想像をかき立てていた。




平川渚:「終わらない物語」 「物語のつづき」

今和泉隆行さんの空想都市「中村市」もおもしろかった。展示された大きな地図は、いつもみているGoogleマップのようだが、現実にはない都市だ。ナビでは行けない都市だ。つくりあげるには大変地道な作業がいるはずだ。それも淡々と仕事をこなさなければならない根気のいる仕事だ。仕上げるには大変かもしれないが、見る人はおもしろがる。多分、今和泉さんは中村市にナビで行けるようにするだろうと思う。企業マークや駅表示板も視覚的には完成されていた。






今和泉隆行:空想都市「中村市詳細道路地図」 「企業ロゴ」 「空想看板」

小山田徹さんのコラボ弁当もおもしろかった。その中からひとつ。説明には次のようにある。

2017.1/74
幼稚園息子弁当。娘の指示は「ぜんまい」/先日、山散歩で見つけたゼンマイだそうです。くるくると巻いた形と産毛の生えた感じがお気に入りだったそうです。一緒に歩いた幼稚園息子も大喜びでした。幼稚園の先生に弁当見せながら一生懸命説明したらしいです。


弁当全体は、私にはどれも人の顔にも見えた。両脇の蓋止めが耳のようにも見えるためだろう。「ぜんまい」弁当の顔は卵焼だが、弁当部分だけ見れば空、土はチクワの輪切り。そこに野菜でつくったゼンマイが背伸びしている。日付は現実にはない日にちなので、遊び感覚か。それにしても何とも楽しい弁当だ。大人もこれくらいの遊び心が必要だ。




小山田徹:コラボ弁当「ゼンマイ」 「おつきみ」

今回最も心に残ったのは戸髙千世子さんの作品。とはいえ、美術館自体には案内的にしか展示されていないので、別会場に足を運んで初めて本体に出会うことになる。
案内地図を頼りに展示場に出向いた。作品名は「「後久さんの田んぼ」だ。実際、そこは田んぼだった。稲刈り後の田んぼに水が張られ、その中に二枚が一対となった樹脂製の白い羽が6本ほど立てられ、水面には一本の木道がつくられていた。白い羽は遠目には白鷺のようでもあり、風が吹けばその風にそよぎ気持ち良さそうにゆっくりと動いていた。田んぼの片方は整備された広い農道。片方は小河川。その小さな川にはちょうど小さな堰があり、小さな滝をつくっていた。水面につくられた木道上のベンチから遠くを見れば、正面には霧島連山。背中側には日南方面へ続く山並み。近景として田んぼと農村集落。秋の日差しを受けた田んぼの作品は、それらと一体となって、全体を慈しんでいるようであった。ここに足を運べば、作家のみならず制作に関わった方々の感性の豊かさが感じられ、観る側もその豊かさをきっと享受できるはずだ。
何人かの方の作品への感想をとばしたが、それぞれ独自の視点で活動されていると感じ有意義だったのは言うまでもない。ぜひ、足を運んでもらいたい催しだ。






戸髙千世子:「後久さんの田んぼ」
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