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壱岐・対馬行/その4(黒崎砲台跡・猿岩)

黒崎砲台跡の巨大な穴


猿の横顔に見える猿岩


要塞残土でできた小高い山

2日目に入ると、バスには地元ガイドが付いた。元気はつらつの中年女性だ。最初の目的地は、黒崎砲台跡と猿岩。曲がりくねった狭い道をバスは行く。両側に草木が茂った狭い道にさしかかると、「市長であったら・・・」などと述べる。島の人口は約2万6千、予算は厳しく、当分道路拡張はなさそうだ。「壱岐は南北17km、東西15km。それより走れば海にドボン」が口癖であった。島の歴史=元寇で攻められ無人になったことなど話されるうち、黒崎砲台跡に。猿岩が眼前の駐車場から少し登ると巨大な穴が現れた。建設中だった戦艦「土佐」の主砲が据えられていた跡だ。戦艦は第一次世界大戦後の軍縮会議で廃棄することになったが、主砲だけは残したいと軍部が秘密裏に保管し、設置したようだ。昭和8年完成。対馬海峡を通過する艦船に向けてつくられたものだが、一度だけの試射で実戦では一度も使われなかったという。この要塞を造った時の残土は、駐車場脇に小高い山となってあった。巨大な穴と小高い山を見るにつけ、国家たるものとてつもないことをするものだと思った。
そして猿岩。壱岐の火山活動の痕跡だ。高さは約45mと言うが、第四紀更新世(約258万年前〜約1万年前)の玄武岩で、波の激しい浸食で猿の横顔に見える奇岩をつくった。貫入岩のように天に伸びようとする溶岩の痕跡はすざまじい。写真を見ると、猿岩と向かい合う所にある岩も天を仰ぐ猿の顔に見えるのだが、どうだろうか。そう見えるなら新しい発見だ。


リキュールも美味しかった


ウミウの糞で白い左京鼻の岩礁


観光地をラッピングした地元バス


はらほげ地蔵


その猿岩をあとにすると、飲んべえにはうれしい焼酎工場見学。飲まない私には必要ない所だが、試飲したリキュールが美味しく、親戚へのお土産の焼酎とともに数本購入した。そして、展示してあった樽焼酎の絵柄がきれいだったので、一枚写真に収めて次の目的地=左京鼻へ。
風もなく美しい風景が広がっていた。なだらかな遊歩道の下には黒い岩場があり、先端が白くなった黒い岩礁が青い海に突き出ていた。実は、白い部分はウミウの糞なのだ。ガイドは必要以上にそのことを言いたがったように、何度もくり返していた。私はそれよりも黒い岩場や岩礁の方に興味があった。火山活動での玄武岩の柱状節理なのだ。壱岐は、元々古い火山島だ。原の辻遺跡のを囲むように広がる台地も溶岩台地だ。どこに行っても火山活動と無縁ではないだろう。ところで、左京鼻の名の由来はつぎのようだ。江戸期に壱岐が大干ばつに襲われた時、陰陽師の後藤左京らが、ここで雨乞いをしたことに由来するとある。昨今は温暖化や気候変動がよく言われるが、地球の歴史を遡れば、海面の高さもくり返し高くなったり低くなったりしている。陰陽師左京の雨乞いで雨が降り始めたかは知らないが、周りの黒い岩場は、海女の素潜り場と聞いた。男どもの素潜り場は、また別の場所という。
駐車場に戻ると、壱岐の観光地をラッピングした地元観光バスが一台。ラッピングはきれいで、車窓から見ただけの小島神社の写真などが載っていた。小島神社は引き潮の時に、歩いていける道ができるのだ。言わば、壱岐のモン・サン・ミッシェルだ。私たちは車窓から眺めただけ。また引き潮時でもなかった。
左京鼻のあとは、すぐ近くの「はらほげ地蔵」へ。海女の里として知られる八幡浦にある。満潮になると海まで浸かるという地蔵様だ。6体あり、亡くなった海女や鯨のための供養地蔵だそうだ。先の台風で波にさらわれた地蔵様があったそうだが、近くの海底で見つかり再設置されたそうだ。地蔵菩薩は人々を救済する仏様だが、実は閻魔大王の化身であるという事を「NHKチコちゃんに叱られる!」で知ったばかりだ。なので、ひとつだけお願いしたが、それは秘密。尚、すぐ側にある漁協の壁には「玄海原発再稼動絶対反対!」の文字が車窓から見えた。私も絶対反対だ。
そこから対馬行きフェリーが出る芦辺港はすぐ目と鼻の先。すぐに港に着いた。ターミナルの前には馬に乗った若武者像があった。少貳資時(しょうにすけとき)像という。調べると、資時は弘安の役(1281年)で壱岐を占領した蒙古東路軍と戦い、討ち死にした武将のようだ。壱岐守護代として19歳で花と散っている。前足を天高く上げた馬上の資時は、逆光の中、若くりりしく勇壮この上ないように見えた。壱岐や対馬は文化の経由地としてもあったが、攻められたり攻めたりという歴史をくり返した地でもあったのだ。
さて、今度乗るのは、ジェットフォイルだ。昼食はその中でとる事になっていた。しばらくすると、港口の向こうに船体が姿を現した。早い。普通のフェリーに比べて、とにかく早かった。


蒙古群と戦った少貳祐時像


対馬から到着したジェットフォイル


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