一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

方向音痴のタクシードライバー

2008-01-06 22:42:54 | 日記・エッセイ・コラム
 方向音痴のタクシードライバーとは、先日、我家の正月休みに途中から乱入してきた悪友が乗ってきたタクシーのことだ。
悪友の話では、いつも利用しているのだが、「本当に方向音痴で困る」と言う。
碁盤の目になっている札幌の中央区でさえ、道に迷う。
これが手稲や西野など、札幌の郊外を頼もうなら、もう最初から最悪だそうだ。
その時は話半分で聞き流していたのだが、夜も更け、母と娘と彼氏がそろそろ帰ると言うので、タクシーを呼ぼうとしたら、悪友が「俺が使っているタクシーを呼ぶからいいぞ」という。
お言葉に甘えて待っていると、いつまでたっても迎えにこない。
しびれを切らした悪友が、「今どこにいる?」と電話すると、「すぐそばまで来ている」と言う。
しばらく待つが、いつまでたっても来ない。
もう一度悪友が電話で住所を確認する。
「今どこだ?」
「すぐそばだ」
 それからさらに時間が経つ。
もう一度電話する。
「どこまで来た?」
「ここだと思うが家が分からん」
「お前、さっき俺を乗せてきた家だぞ!」
「もう憶えていない」
 こんな調子だ。
それでも悪友は話続ける。
「近くに目立つ建物はあるか?」
「学校がある」
「学校?」
「お前、それ反対だ! 家はもう一本手前だ!」
 そしてやっとタクシーは家に着いた。
悪友は何事もなかったかのように、母と娘と彼氏の三人を送っていったら、また戻って来てくれと言った。次は俺が帰るからと。
 母達三人は皆中央区なので、往復30分の距離だ。
それがいつまでたっても戻ってこない。
一時間半以上たって、悪友がまた電話した。
「今どこにいる?」
「大通り!」
「じゃあ、あと10分でくるな?」
「たぶん・・・」
 さらに30分たっても来ない。
また電話する。
「今どこだ?」
「近くだと思うがよく分からん」
「目立つ建物あるか?」
「セブンイレブンがある」
「セブンイレブン? お前、行きすぎだ、3丁戻れ!」
 そして、やっと悪友ご用達のタクシーは戻って来た。
考えてみると、このタクシーが我家に来たのは、今日一日だけで三回めだ。
その三回とも住所を言っているのに、まともにたどり着けなかった。
しかも一番分かり易い碁盤の目の中央区なのに・・・
 翌日、娘に、「昨日のタクシーどうだった?」と訊いてみた。
するとやはり、母のマンションに行くのに、かなり迷っていたらしい。
母が、「どうしてこんな道通るのでしょう・・・」と言い。
結局、母が道順を教えていたようだ。
でも、娘の最後の話がこのタクシードライバーを物語っていた。
「あの運転手さんね、本当に親切な運転手さんだったよ。
おばあちゃんをマンションの中まで送っていって、かなり時間かかったのに、やな顔一つせず、ずーっとニコニコと待っててくれた・・・」
 どうも、悪友がこの方向音痴のタクシーを使い続けるのは、この辺にあるらしい。
私もこのタクシードライバーのにこやかな顔を見た時には、なぜか本当に和んでしまった。
こんなタクシーが、せわしい世の中に一台位いても良いんじゃないかな・・・?
ふとそう思ってしまった。


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