退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-01-16 07:04:16 | 韓で遊ぶ


盗み授業

子供の頃、私の家の隣には片腕のない子が住んでいました。
年は12歳ぐらいの子供でした。
私が学校へ行く時間になると、その子はいつも屋上に上がって家の庭を見下ろしたり、子供たちがぺちゃくちゃしゃべりながら登校するのを見ていたりしました。その姿が気の毒で、言葉をかけるとその子はうつむいて走り去ったりしました。
ある日、屋上にいるその子を見つけた私は父に言いました。
「あの子、腕がないんだって。だから学校へも行けず家にだけにいるんだって。」
「それは気の毒だ。」
おそらくその日の夕方だったと思います。父が急に倉庫に放っておいた古い机を持ち出し、壊れた足をくっつけて、庭の真ん中に電線を引いて電灯までつけたのでした。
「さあ、今日からここで勉強しよう。これからお父さんがお前の先生だ。」
私は訳もわからないまま、父が作った庭の教室の学生になりました。
「さあ、今日学校で習った内容を大きな声で読んで見なさい。」
その日から私は雪が降るとか雨が降る日以外は、毎日1時間ずつ教科書を読んで童話の本も読みました。
父がその変わった夜間授業をやめたのは、隣の子供が引っ越して行った日でした。仕事からの帰り、引っ越しの荷物のトラックを見た父が聞きました。
「隣の子引っ越しするのか。」
「ええ、でもどうして。」
「そうか、、他のところへ行っても勉強を続けられるといいけど、、、。」
私は、父がどうしてそのようなことを言うのか、隣の子の引っ越しになぜそのように深い感心を見せるのか気になりましたが、黙っていました。
私が父の深い気持ちを理解したのは月日が流れ20年ぐらいたってからでした。
ある日、家にひとつの小包が配達されました。
知らない名前、知らない住所、父は首をかしげ小包を開きました。その中には童話の本が一冊と手紙が入っていました。
「20余年前、隣に住んでいた片腕の少女を覚えていますか。その時、娘さんに読んで上げていた童話がどんなに面白かったか、毎日屋上で盗み授業をしていました。」
その盗み授業で希望をもらい、引っ越した後、検定試験を受けて大学まで終えた後、少し前に童話作家となったという片腕の少女の手紙でした。
父はその晩、配達された一冊の童話の本を何度も読んで夜を明かしたのでした。

http://blog.daum.net/livecafe/15640332
コメント
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