退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-01-29 07:32:30 | 韓で遊ぶ


100番目の客

昼、一時混んでいた客がとだえた午後の時間でした。
主人が一息ついて新聞をめくっている時、店の戸が開いて一人のおばあさんと垢にまみれた子供が入って来ました。
「あの、、牛の頭のクッパ、一杯いくらですか。」
おばあさんは中腰になったまま腰のあたりから小銭入れを出してお金を数えた後、クッパを一杯注文しました。湯気がゆらゆらでている一杯のクッパ。
おばあさんは土鍋を孫の座っているほうに押してやりました。
少年はつばをゴックンと飲み込んでおばあさんを見つめました。
「おばあさん、本当にお昼ご飯、食べたの。」
「そうだ、早く食べなさい。」
おばあさんはカクテキを一切れ口に入れ、もぐもぐかじっている間に少年は一杯のクッパをあっという間に食べてしまいました。
その姿を見ていた店の主人が二人の前に近づいて行きました。
「おばあさん、今日は本当に運がいいですよ。おばあさんが家の店の100人目のお客さんです。家の店では100人目のお客さんにお金をいただかないのですよ。」
主人はお金を受け取らずにおばあさんにクッパを一杯差し出しました。
いく日か後、おばあさんと少年がまたクッパ店に立ち寄りました。おばあさんは今度もクッパを一杯だけ注文し、あの二人だとわかった主人は今度もまた100人目の客の幸運ということにしました。
それから一ヶ月ほど経ったある日のことでした。何気なく窓の外を見た主人はびっくり驚きました。おばあさんと一緒にクッパを食べに来たあの時の少年が、クッパ店の前の道を挟んで向かい側にしゃがみこんで何かを数えていました。
クッパ店に客が入って行く度に、小石を一つずつ円の中に入れていたのでした。ですが、お昼時間が過ぎても小石は50個をこえることができませんでした。あせった主人はなじみの客に電話をかけはじめました。
「ちょっと、今、忙しくなかったらクッパを一杯食べに来てくれ。今日はタダだ。タダ。」
そうやってあちこち電話をかけると、クッパ店には客が押し寄せはじめました。
「81,82,83、、、」
少年の計算が早くなりました。そしてとうとう99個の小石が円の中に入った時、少年は急いでおばあさんの手を引っ張ってクッパ店に入って来ました。
「おばあさん、今度は僕がおごってあげる。」
本当に100番目の客になったおばあさんは、暖かい牛の頭のクッパを一杯いただき、少年はおばあさんがそうしたようにカクテギだけもぐもぐと食べていました。
「ねえ、あの子にも一杯やろうか。」
クッパ店の主人のおばさんが、おじさんにささやきました。
「シィ。あの子は今食べなくてもお腹が一杯だということを学んでいるのじゃないか。」
ずるずるとおいしそうに食べていたおばあさんが少年に言いました。
「少しやろうか。」
ですが少年は、お腹を前につきだして言いました。
「いや、僕はお腹がいっぱいさ、、これ見ておばあさん。」
その日以後、不思議なことが起こりました。クッパ店に客が押し寄せ本当に毎日100番目の客、200番目の客が出るようになりました。
コメント
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