馬鹿も一心!

表題を変えました。
人生要領良く生きられず、騙されても騙されも
懸命に働いています。

今日はあいつの命日 ,木下街道(きおろし)を行く(6)兄と妹。

2021-07-02 06:59:25 | 日記
今日はあいつの命日 ,木下街道(きおろし)を行く(5)やっと墓地に着く。

続きです。
話は2009年9月初めに戻ります。
同期は9月に入り柏の癌センターに入院手術します。
10時間以上に及ぶ喉の切除です。
その時 彼の妹から電話が入ります。
会ったことはなく、兄が手術前に連絡して欲しいと言われました。
「何かあったら相談しなさいの託です」
私は見舞いには行かなかった。
「身内でもないものが、痛々しい姿を見るのは良くないと思う」。
以前 肉親でもない者が 病状悪化で緊急病室に見舞いと称して
入室して肉親が苦慮しているいるのを知っていた。
退院してからお会いしましょうと伝えた。
私も大腸ポリープで入院中でもあった。
10月初め、自宅前ショッピングセンターイタリアンレストランで
ランチをする。
彼と妹、私と妻の4人
生ビールジョッキをゆっくりそろりと
口に運ぶ。
旨そうな表情で私にジョッキを上げ満足。
喋れない兄の代わりに経過報告を妹はする。
これからは週一で埼玉から来て掃除洗濯をする。
役所への障害手続きもします。
そのような会話をした。
毎夕食は、知り合いの小料理屋でする手配をした。
私も なるべく付き合いをした。
それから、毎週 声を出せる訓練をするために
東京まで出かけた。
秋深まり漁港に面した彼の住まい角部屋マンション
冷たい海風が吹き付ける。
外出もままならない体力の衰え。
頑健な体は、以前 チンピラといざこざがあり
仲間を逃がして一人で立ち向かった。
二人で居酒屋で飲んでいる時
「なあ!合気道はどんなことするのだ」尋ねた。
「先ずは逃げることだ」
逃げきれない状況になった場合に
護身術として使う。
「右腕を出せ」という。
右腕を出した。
彼は、ひょいと右手で私の腕を掴んだ。
対面で座った状態であったが
瞬間 激痛とともに 横倒しになりそうだった。


しかし、順調に回復するかと思われたが
翌年1月になると歩行がふらつくようになった。
彼の妹と二人で話し合いをした。
妹は唐突に「実は私2年前離婚しました」
今は中学3年生の娘と二人暮らしです」
「図書館で嘱託として働きギリギリの生活をしています」
「元夫も借金に追われ援助はありません」。
最初に生んだ長女は小学校4年の時
風邪でなくなりました」
絶望の中で 新しく娘を授かりました。
返す言葉はなかった。
更に以外な兄の一面を語った。
「兄には、婚約者がいましたが破局したのです」
相手はピアノ教師です。
妹は更に驚きの事を語る。
「破局した婚約者の兄と密かに交際していて結婚したのです」
兄の婚約者であったピアノ教師は嫉妬で
激しい憎悪をぶっつけてきました。
兄は両親が亡くなると鎌ヶ谷戸建てを売って
3LDKのマンションに引っ越したのです。
父は軍人で少尉でした。
戦後 自衛隊の幹部なり北海道駐屯地に勤務。
厳格な父で近所への外出でもネクタイをする
端正な父でした。
なのに6歳違いの兄は怖い存在でした。


勤め先が夜遅い商売なので
管理が一人暮らしでは難しいと判断したからです。
それから、疎遠になったのです」
私は黙り込んだ。
やっと 理解した。
妹がいるのに病状を何故か連絡しないのが不審だった。
病院の保証人、対外的窓口になれても
役所、相続等には関与できないのだ。
妹は言った。
「兄が一人で病と闘っているのを片時もも忘れません」。
こうして 2010年3月余命が梅雨の終わり
初夏に命が消えるを日々を過ごすのです。
頼るべき親族もいない兄妹の人生行路に
言葉は出ない。
人生の並木路 ディックミネ 古賀政男全集 Cover 華之将

今 墓石の前に腰掛け

煙草をふかして蜂、ハエを追い払い
日本酒を飲みとの彼の妹との会話を回想する。
日中の墓地での酒飲みは
なだらかな斜面に立つ墓が回っているが如く目が回る。
縁石をから立ち上がり、ゴミ置き場に缶類を置く。
緩い坂道を駅へとヨタヨタ向かう。

木下街道(きさがり)を行く6墓参4
続く。


人生の並木路/美空ひばり