5月に見つけた野草の花(大分県)
サイハイラン(采配蘭)
Cremastra appendiculata (D.Don) Makino var. variabilis (Blume) I.D.Lund
ラン科 サイハイラン属
花 期 : 5~6月
生育地 : 林床、林縁
分 布 : 北海道~九州
RL指定 : なし
最近購入した科学雑誌にサイハイランに関する興味深い記事が掲載されていたので、図鑑を更新する事にした
菌従属栄養植物は、通常の植物が共生関係を築いている菌を利用し、炭素供給を受けているわけだが、中には腐生菌と呼ばれる、落ち葉や落ち枝を分解する菌を利用している植物も存在している
撮影 2021年5月 大分県
腐生菌を利用する菌従属栄養植物は、欧州や北米ではひとつも発見されておらず、日本のように腐生菌の生育に適した湿潤な環境が必要だと考えられる
サイハイランは、大きな普通葉を有する為、一見光合成による独立栄養植物のように思われるが、実は根茎を持ち、ナヨタケ科の腐生菌を利用し、炭素を得る事ができる
撮影 2018年5月 長崎県
しかし、根茎を持たないサイハイランに関しては、一般にラン科植物が利用するラン菌と共生しており、独立栄養で生育する
光合成による独立栄養植物でありながら、ほぼ完全な菌従属栄養で生育する事もできるサイハイランは、独立栄養植物から菌従属栄養植物への進化の過程にある興味深い植物と言えるのではないだろうか
ちなみに、前述したサイハイランが利用するナヨカケ科の腐生菌は、近縁の菌従属栄養植物モイワランも同様に利用しているものである
四国等では、基部に葉芽があるトクシマサイハイランなるものが発見されており、サイハイランからモイワランに至る過程の植物ではないかと勝手に推測している
参照:雑誌「科学」2023年4月号 朽ち木を食べる植物「腐生植物」の進化の道のり 末次健司著
撮影 2022年3月 大分県
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