12月上旬の事である、近場を散歩していると不思議な野菊が花を咲かせていた
葉や総苞を見るとノジギクのようなのだが、舌状花が黄色なのだ
帰宅後調べてみると、キバナノジギクというものがあるらしいがよくわからない
このような訳の分からない菊は、イエギクの逸出だろうとかたずけていたが、後日再度出向いて良く観察してみた
山地の道路脇の法面に下図のごとく、黄花と白花が自生している
白花の株の中には、舌状花に黄色が混じるものがある
花茎や茎には毛が生えている
野生種だと仮定して、候補に挙がるものの是非を示してみた
①キクタニギク 総苞片が幅広な事および葉の切れ込みが浅いので除外
②シマカンギク 葉表が有毛、総苞片が毛深く、葉の切れ込みが浅いので除外
③イヨアブラギク 葉の切れ込みが浅いので除外
④キバナノジギク 一般的なノジギクと比較して頭花は小さく、舌状花が少ないものの可能性はあり
総苞片の比較
葉の比較
上図のキクタニギクは外来ではなく、在来のものです
イヨアブラギクに関しては未見の為、比較図を示す事ができなかった
今回見つけた野菊の黄花と白花の比較
上図の比較から、黄花と白花は同一種であると判断した
白花はノジギクだと思われ、それと同一種だと判断した黄花は、キバナノジギクという事になる
白花の中に、舌状花に黄色が混じったものが見られるが、キバナノジギクの舌状花は完全に開花すると、白っぽくなるという情報があり、また姫路市ののじぎく公園に植栽されているキバナノジギクは、白花と黄花が混生している
もしかしたら、この自生地の白花は、黄色が出現しにくいキバナノジギクなのかもしれない
キバナノジギクは、1930年に牧野博士が兵庫県姫路市大塩町を訪れた際、黄色い花をつけたノジギクを発見し、命名したもので、学術的には種として認められたものではない
ノジギクの色素系異常品なので、大分県でも発生する可能性はある
尚、この自生地は海岸に比較的近く、ノジギクが自生していてもおかしくない場所である
今回の野菊は、頭花の径2cm強、舌状花は14~15枚
一般的なノジギクと比較して、頭花は小さく、舌状花は少ないのだが、下図のごとく佐賀関で撮影したノジギクと比較すると、大きさも舌状花数も同等であった
結論としては、ノジギクにしては頭花が小さく舌状花が少ないが、希望的観測を込めてキバナノジギクとしておきましょう
話は脱線するが、イエギクの起源については、シマカンギクとチョウセンノギクの雑種が起源とされていたが、最近の報告によると、遺伝子調査の結果、中国のシマカンギクとリュウノウギク群の雑種化により原始的栽培ギクが作成され、その後日本のシマカンギク及び日本型リュウノウギク群(特にノジギク)が交配されることにより現代の栽培ギクが成立したとの説が提唱されている
イエギクの中にも、ノジギクの形態が強く出現する個体があっても不思議ではない
今回見つけた野菊に関しても、ノジギクの形態が顕著なイエギクである可能性があると思われる
学名:Chrysanthemum japonense (Makino) Nakai(ノジギクの学名)
和名:キバナノジギク(黄花野路菊)
キク科 キク属
撮影 2022年12月 大分県
初版 2022年12月29日
記事アップロード 2022年12月29日
画像アップロード 2022年12月02日