昨年と同様、大分県南部のニッポウアザミの自生地を訪れてみると、ニッポウアザミは刈り取られ無残な姿となっていた
草刈りする人にとっては、ただの雑草にしか見えないだろうが、環境省が指定する絶滅危惧種の中でも最高に希少なカテゴリーに属する植物なのだ
残念な事に一株も残っていない
多年草だから、地上部が刈り取られても問題ないなどと悠長な事は言っていられない
私は、地上部が刈り取られ、それ以降復活できなかった植物を数多く見ている
キキョウにスズサイコ、キエビネも・・・
ただただ残念でならない
しかたがないので、植栽地に行ってみる事にした
かつて、数百株が自生していた地であったが、公共工事に伴い、移植されたものだ
たしかにニッポウアザミらしき株があったのだが、それにしては、草丈が低く1mに満たない
しかも、わずか3株が残るのみだ
ひょっとして、他のアザミと交雑してしまったのか?
総苞片は確かに反り返り、粘っているのでニッポウアザミの特徴を有している
しかし、その小ささには違和感がある
なんだかノハラアザミのようにも見えるが、九州には分布しないし、ノハラアザミの総苞は粘らない
やはり、ニッポウアザミかその交雑なのだろうが、なにせ素人なのでアザミの正確な同定は難しい
公共工事に伴い、環境アセスが行われ、希少植物に関しては、適切に移植されたのだろうが、その後継続して移植地の状況を見守る事はできないのだろう
移植地は荒れ放題となり、ニッポウアザミは消滅してしまいそうだ
ニッポウアザミの植栽地に近い日豊海岸
ニッポウアザミは大分県と宮崎県の県境付近の海岸に近いところに分布する固有種
2003年に宮崎県鏡山に自生するものを調査した結果、リシリアザミに近似で、草丈は2mに達する程大型、頭花が上向きに咲き、総苞片に腺体があって粘る等の特徴を有する新種と判明
【南九州の新分類群の植物とその保全】より抜粋
学名:Cirsium nippoense Kadota
和名:ニッポウアザミ(日豊薊)
キク科 アザミ属
環境省絶滅危惧ⅠA類
撮影 2022年11月 大分県
初版 2021年11月11日
記事アップロード 2022年11月23日
画像アップロード 2022年11月17日
以下 アーカイブ
記事アップロード 2021年11月11日
画像アップロード 2021年11月11日
11月に見つけた野草の花(大分県)
ニッポウアザミ(日豊薊)
Cirsium nippoense Kadota
キク科 アザミ属
花期 : 10~11月
生育地 : 林縁
分布 : 大分県、宮崎県
RDB指定 : 環境省カテゴリ:絶滅危惧ⅠA類 大分県:絶滅危惧ⅠB類
大分県の南部にニッポウアザミというものが自生しているのは知っていたが、先日たまたま閲覧していた環境省レッドリスト2020年度版の絶滅危惧ⅠA類に分類されているのを見て驚いた
大分県に移住してからというもの、最高ランクの絶滅危惧種は一度も見ていないので、早速自生地へ出かけたのだが、初めて見るニッポウアザミは、ヒメアザミにしか見えないものだった
総苞片に特徴があるようなので、よく観察してみる事にした
総苞片は10~11列で、斜上または反曲し、くも毛があり、外片は卵形で内片とほぼ同長、総苞は粘る
ヒメアザミの総苞片は8列で反曲せず、その点でニッポウアザミと違っているようだ
観察個体の総苞片は11列で反曲している
草丈は1~2mの多年草で、茎は直立し多数分枝、根生葉は花期には枯れる
茎葉は広卵形~狭卵形、羽状に中裂し、3~8対、鋭い刺がある
鋭い棘
頭花は直立~斜上し、紅紫色の筒状花が多数集まる
2004年に発見された新種で、自生分布は、大分県と宮崎県の県境付近の狭い範囲である
人里近い場所に自生しながら、なかなか発見されなかったのは、ヒメアザミに酷似しているからではないだろうか?