to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

「うつせみ」

2007-03-20 01:46:33 | the cinema (ア行)
テソク(ジェヒ)は留守宅に侵入し、住人が戻るまでの間そこで暮らすという奇妙な犯罪の常習犯。ある日いつものように豪邸に忍び込んだが、その一部始終をその家の主婦ソナ(イ・スンヨン)が物陰から見つめていて……。 (シネマトゥデイ)

製作・・・・・2004年 韓国
脚本:監督・・キム・ギドク
出演・・・・・イ・スンヨン/ジェヒ

ドロドロ、不気味、血みどろ、これ見よがしな泣きのシーンが苦手で
韓国映画を観に行かなくなってしまったが、これはタイトルからずっと惹かれていた。
うつせみ....ぬけがら
笑っちゃうぐらいタイトル付けにセンスが感じられない韓国映画の中で、原題「空き家」を「うつせみ」にしたのが素晴しい

劇中、ひと言もセリフが無いテソク(ジェヒ)。
不法侵入を繰り返す犯罪者ではあるが、いわゆる悪人ではない。
無断で食材で調理し食事をするが、後片付けもするし洗濯もする。壊れた時計やヘルスメーターは直して去る。
そんな彼の日常に運命のように出会うソナ(イ・スンヨン)も終盤まで全くセリフが無い。
浴室で一人声を上げて泣き、電話口で吠えるように叫ぶシーンだけ。
終始言葉を投げつけてくる夫との間に無言で入り込んできたテソクと自由の旅に出る傷つき疲れ切った女を、全身で表現している。

二人はまるで密林の中を羽音もなく、もつれあってただよう蝶のように静かに町を漂う
そして引き裂かれて、待ち焦がれた再会のあと彼女は言うのだ
「愛してる」「食べて」.....

お互いに名前さえしらず惹かれあい、やっと手に入れた幸せ・・・
本当はいろいろと突っ込みどころもあったけど、これはそのまま不思議ワールドの殉愛をみつめたい。
最後に流れるテロップ「・・・私たちは現実と幻想の際(きわ)で生きている」も自然と受け入れてしまう1時間半だった。
コメント (11)
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