油屋種吉の独り言

日記や随筆をのせます。

マイナカード物語

2023-08-09 09:34:29 | 小説
 種吉が朝から元気がない。

 お気に入りのぬれ縁に腰かけ、わきからひょ
いと種吉のひざにのってきた飼い猫のからだ
を、あちらこちら、なでてやってはいるのだ
が、いまひとつ気持ちが入らない。

 「みやあっ」
 種吉の顔をみて、ひと声鳴いた。

 「ああ、おめえも心配してくれのかい?わ
るいわるい。言葉のつうじぬおめえに話して
もせんないことだけんど、おらのカードのぐ
あいがわるいんだってよ」

 「みやあああっ」
 もうひと声鳴くと、彼は種吉の左手を、丹
念になめはじめた。

「まあ、お上がやられるこった。最後までお
手なみ拝見といこうか。それにしてもいやし
いよな、おらの根性、たかだか二万の金が欲
しくってよ。命とおんなじくらいに大事なふ
たつの証文、世の中にさらけだしてしまいや
がった」

「おまえさん、ごはん出来てるよ」
家から、種吉のかみさんが出てきた。

「ああ、いつもお世話さんで」

「ばかだねあんた。ひょっとしてどうかした?」

「はい、とっくに」

「食べないと、かたづけっちゃうから」

「はい、いいでげすよ」

「ばかも、ほどほどにしな」
 種吉は、ますます今はやりのマイナス思考と
やらにはまりこんでいく。

 不意に、隣の家の雌猫が納屋のわきから現れ
た。彼女の気配を察知したのか、種吉の雄猫は、
あわてふためき、彼女のもとへといそぐ。

 「おい、これ、どこさ、行くんだ。気をつけ
ろ。おんなはこわいぞ」

 「おんなって、今、あんた言ったね」
 
 「いんや、そういうことは言っていません。
おたく様の聞き違いです」

 「へえ、そうかい」
 種吉のもとに近寄ると両手を腰にあて、ぐいっ
と顔を
種吉の目の前に突きだし、にらみつける。

 「あれかな、もうちょっと、ここで頭を冷
やしてますです」

 「ふうん。まあ、いいけど」
  
 その後も、種吉の独り言がつづいた。

 (おかみがやりなさることだよ。そのうち
なんとかしてくださるって、そんなにしんぺ
えすんなって。それにしても、うちのかみさ
んより、こええなんてもんはいねえ……)

 種吉のかみさんは、あきれたとばかりにた
め息をひとつつき、すたすたと歩いて玄関へ。
 戸をぴしゃりと閉めて、家のなかに入って
しまった。





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お盆の季節。

2023-08-07 09:23:41 | 日記
こんにちは、ブロ友のみなさま。
ほんとに暑い日がつづきますが、いかが
お過ごしでしょうか。

わたしども昭和生まれの年配者にとっ
て、この上なく暮らしにくいお天気。

セピア色に変わった、幼いころの写真
を見ましても、どこだって砂利道。
氷ののぼりがひらひらする四つ角の片
隅で、平気で半裸で遊んでいる。

昭和30年代初頭、暑いとはいっても
さほどじゃなかったのでしょう。

ゆうべ、雨がたくさん降ったからでしょ
うか。久しぶりにぐっすり眠れました。

朝方、夢を見ました。
子どもらかいっぱい夢の舞台に出てき
ましたし、きっと、何か良いことが起
こる前ぶれかもしれませんね。

お盆が近いですね。
今住んでいる家が、墓地の近くなせい
でしょう。
墓そうじにむかう人が、朝な夕なに坂
道を行ったり来たりしています。

昔むかしの知り合いの顔が、思い出さ
れます。それも若くして亡くなった方
ばかり。

独り言だっていい。
できるだけ口に出し、彼らのことをい
ろいろとおしゃべりするようにしてい
ます。

彼らの魂が喜び、かがやいてくれるで
しょうから。

田んぼの上を、とんぼがたくさん群れ
飛ぶようになりましたよ。

季節はかくじつに秋に向かって進んで
います。

体調に気を付けてお過ごしくださいね。
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