油屋種吉の独り言

日記や随筆をのせます。

いつの間にか。

2021-07-27 01:58:19 | 日記
雨にも負けず 
風にも負けぬ
丈夫な体を持ち
欲はなく、決して怒らず
いつも静かに笑っている。

天才、賢治のようにはいかないが、わた
しも多少、農業をいとなむ。

今日も今日とて、腰に蚊やりをたずさえ、
野良へといそぐ。

このところの熱帯地方のごとき、スコー
ルのせいで、あぜがほとんどつぶされて
いる。

所々コンクリで補強されてはいるが、そ
の下の土が、堀の中にまで流されてしまっ
ていた。

膝のくるぶしまでのびた夏草。
それらにいつ、除草剤がかけられたのだ
ろう。

ほんの二三日で萎れ、根っこまで枯れ果
ててしまった。

わたしの思想の原点は、野良にしかない。

器械による草刈り、それに耕運機やテー
ラーの運転ができるのも、すべて義父か
らおそわった。

こちらで生まれ育ったかみさんの力量に
はとても及ぶべくもない。

野菜の種まきや育て方、くわの扱い方な
どなど。
知らないことが多すぎる。

水をはった田んぼに、おたまじゃくし。
それに……、じっと水中を見つめている
と、水すましらしき黒い虫を発見。思わ
ず立ちどまった。

間違いない。
何十年ぶりかのお目見えに感激。

殺虫剤も除草剤も、しだいに効き目のよ
わいものへと変貌をとげたようで、安心。

あとはメダカやドジョウが、再び泳ぎま
わってくれると、文句のつけようがない
のだが、堀がすべてU字溝では、望むべ
くもない。

じぶんより上の方々が、ひとりふたりと
逝去されていく。

いつの間にか良き相談あいてがなくなっ
てしまい、さびしいかぎりである。

にんげんは生身、いつまでも生きている
わけにはいかぬのだから、仕方がないけ
れども。

彼らひとりひとりが、われらの財産だっ
た、と、今にいたって、思わずにはいら
れない。

じぶんも、そのうち、若い人から頼られ
るような者になってやるぞと、決意した
次第。
 
足もとに用心しながら、歩きづらい土手
をすすむ。

人より、鹿が歩いた形跡のほうがうんと
多い。

今は四十年前とは大ちがい。
田植えも取り入れもすべて、ほとんど器
械がやってしまう。

何町歩もの田んぼを、大規模農家の方が
ほんの数人で、てきぱきとこなすから驚
きである。

「あんただって、もう中堅なんだぜ」
 農区のリーダーにいわれ、わたしは一
瞬、誰のことかわからず、あたりを見ま
わしてしまった。

姿見の前にたたずみ、顔を見つめる。

鏡は残酷である。まぎれもないお年寄り
が、こちらを見ているのを発見。

ああそうそう、多少なりとも子どもを集
め、ともに勉学にはげんでいるのを、つ
いつい忘れてしまうところだった。

最近は、からだが古くなり、若いときの
ようにむりができないけれども、気持ち
を新たに、残りの人生を、一所懸命に過
ごそうと思う。



  

 
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花鳥風月を楽しむ。

2021-07-13 22:45:16 | 日記
ここ二、三日、小池真理子さんの小説世界
にとっぷりひたった。

神よ 憐れみ たまえ

十年の歳月をかけて紡がれた書き下ろし
長編小説という。

渾身の一作。
およそ600ページ、とてもとてもひと息
に読み通せない。

わたしの書くものなぞ、足もとにも及ば
ないと思う。
しかし、勉強になる。

はずせぬ用もある。
かみさんに用を言いつけられたり、畑で
育てているズッキーニやカボチャの世話
もあったり。

たびかさなる大雨で痛めつけられてはい
まいか、と夏草の生いしげるあぜ道を長
靴をはき、ゆっくり進む。

そうしている間も、わたしの心はずっと
彼女の描いた小説世界にとどまり続ける。

足もとがおぼつかない。
あやうく足を踏みはずし、堀っこに落っ
こちそうになった。

ネットが鹿の立ち入りを防いでいてくれ
ていたが、からすの侵入は阻止すること
はかなわない。
吹き出たばかりのズッキーニの赤ちゃん
がえじきになった。

後片付けに追われているうちに、いきな
りのスコール。

濡れねずみのようになって、家までたど
りつく。

夕刻、この日の授業が近づく。

窓を開け、黒板消しについたハクボクの
粉を落とそうと、それを板でたたきだし
た。

チチチ、チチチと、ふいに小鳥が最寄り
の屋根でけたたましく鳴いた。

どうやらなじみの鳥らしい。

えさの催促だ。

ちょっと待ってろや。
そうつぶやきながら、わたしは急いで階
段を下りた。

もう少しで終章にたどりつく。

彼女はどのように物語を終わらせるのか。
わくわくする。





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もっと考えたい。

2021-07-04 09:42:53 | 日記
2Bの鉛筆で紙にかく。
端末やパソコンは使わない。

芥川賞作家の田中慎弥さんの
言葉である。

彼の職人気質に敬服する。

意志薄弱なわたしである。

田中さんのまねはなかなかで
きそうもないし、それだけの
力がない。

だが、田中さんの心意気を学
びたい。


熱海で大災害が起きた。

みなさんは、すでにご存知でし
ょう。

テレビ画像を観ると、裏山が崩
れたようだ。このところの大雨
で、地盤がもちこたえられなかっ
たらしい。

あっと言う間もなかったろう。

おなくなりになられた方に、心
からの弔意をささげたい。

被害にあわれた方にお見舞い申
しあげる。

現場は以前から、危険区域に指
定されていたと聞く。

千葉の交通事故だって、ガ ード
レールがあれば、と悔しくてた
まらない。

わたしは時間があれば、児童生
徒の下校にあわせて、最寄りの
子どもたちに寄りそう。

どちらもこんな悲しい結末にな
る前に、もっとできることがな
かったか。

悔やまれてならぬ。


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