ぼくは白い石ばかり見つめ、山道をのぼっ
た。崖の地層がむき出しになっているところ
があると勇んでそこにかけよった。
悠久の時をかけて、積みかなさった土や砂、
小石が層になり、幾重にもどっかと腰を下ろ
している姿が好きだ。
初めましてこんにちは、と挨拶したい気持
ちになってしまう。
「さっきから落ち着きなく、そわそわして
るのっていったい、どういうこと?」
K子が不服そうに言う。
「あっ、うん、ごめんごめん」
ぼくは、頭をかきながら、K子のもとに引
き返した。
K子は、そんなぼくを無視し、持参したリュ
ックを道端に置くなり、じぶんもそのわきに
すわった。
リュックから飲み物やら、食べ物やらを取
り出している。
さっそく、リンゴをむき始めた。
「あなたね。せっかくの日曜なのよ。ほか
にも用がいっぱいあるのにね……、今日は何
のためにわたしがここでこうしているのでしょ
うね?」
「きみと、そのあの……」
ぼくは顔を真っ赤にして言いよどむ。
「デートするんで来たんでしょ。好きなん
でしょ、わたしのこと」
「うん、忙しいのにわるかったね」
ふたりとも高校一年生。
ぼくはK子と通う高校がちがった。
彼女のほうが、ぼくより成績がいい。
中学時代、ぼくがいくらがんばっても、彼
女にはかなわなかった。
三年生になったある日のこと、廊下の壁に
貼りだされた成績。
彼女六百七十人中、かるく百番以内、ぼく
は百五十番だった。
少しでも彼女に近づこうと勉強したものだ。
しかしなかなか、ぼくはじぶんの想いを口
から出せなかった。
彼女はぼくと顔を合せるたびに、悪口を連
発、やれ直立猿人だ、ピテカントロプスだの
とののしる。
それはぼくが二年生のときのことで、三年
生になりクラスが別々になってしまった。
ある日の午後運動場の片隅で、おさげ髪の
彼女を見つけ、ぼくは、思わず、
「ちょっと、ちょっと」
と声をかけてしまった。
よくぞよくぞ声をかけられたものだと、今
になっても思う。
以後、それをきっかけに、不思議なことに
彼女と付き合うようになった。
た。崖の地層がむき出しになっているところ
があると勇んでそこにかけよった。
悠久の時をかけて、積みかなさった土や砂、
小石が層になり、幾重にもどっかと腰を下ろ
している姿が好きだ。
初めましてこんにちは、と挨拶したい気持
ちになってしまう。
「さっきから落ち着きなく、そわそわして
るのっていったい、どういうこと?」
K子が不服そうに言う。
「あっ、うん、ごめんごめん」
ぼくは、頭をかきながら、K子のもとに引
き返した。
K子は、そんなぼくを無視し、持参したリュ
ックを道端に置くなり、じぶんもそのわきに
すわった。
リュックから飲み物やら、食べ物やらを取
り出している。
さっそく、リンゴをむき始めた。
「あなたね。せっかくの日曜なのよ。ほか
にも用がいっぱいあるのにね……、今日は何
のためにわたしがここでこうしているのでしょ
うね?」
「きみと、そのあの……」
ぼくは顔を真っ赤にして言いよどむ。
「デートするんで来たんでしょ。好きなん
でしょ、わたしのこと」
「うん、忙しいのにわるかったね」
ふたりとも高校一年生。
ぼくはK子と通う高校がちがった。
彼女のほうが、ぼくより成績がいい。
中学時代、ぼくがいくらがんばっても、彼
女にはかなわなかった。
三年生になったある日のこと、廊下の壁に
貼りだされた成績。
彼女六百七十人中、かるく百番以内、ぼく
は百五十番だった。
少しでも彼女に近づこうと勉強したものだ。
しかしなかなか、ぼくはじぶんの想いを口
から出せなかった。
彼女はぼくと顔を合せるたびに、悪口を連
発、やれ直立猿人だ、ピテカントロプスだの
とののしる。
それはぼくが二年生のときのことで、三年
生になりクラスが別々になってしまった。
ある日の午後運動場の片隅で、おさげ髪の
彼女を見つけ、ぼくは、思わず、
「ちょっと、ちょっと」
と声をかけてしまった。
よくぞよくぞ声をかけられたものだと、今
になっても思う。
以後、それをきっかけに、不思議なことに
彼女と付き合うようになった。