門前の小僧

能狂言・茶道・俳句・武士道・日本庭園・禅・仏教などのブログ

寺子屋2月より新クラス(昼間コース)開講!

2010-01-13 17:54:21 | 日記
 言の葉庵オフライン講座、【寺子屋素読ノ会】。2月度より、「風姿花伝」「南方録」の昼間クラスと「奥の細道」(夜間)第二期コース、それぞれ新規開講です。この機会にぜひ、名作古典を声に出して素読してみませんか。


NEW!●Bクラス「風姿花伝」2/17(水) 13:00-14:30
昼間クラス、今回が初回です。六百年前に書かれたものとはとうてい思えない、能の達人の今日的ともいえるシャープな感性。生活や芸術、学問などあらゆる分野で応用が可能なアイデアの数々。それが、永遠不朽の秘伝書『風姿花伝』です。能だけではなく、すべての表現活動にたずさわる人に一度手に取っていただきたいと思います。「秘すれば花なり」「初心忘るべからず」など珠玉の名言と含蓄に富む名文を素読しましょう!

NEW!●Dクラス「南方録」2/17(水) 15:00-16:30
昼間クラス、今回が初回です。日本茶道を大成した安土桃山時代の茶人、千利休。『南方録』は、利休の高弟である禅僧南坊宗啓が、利休流茶道の奥伝を詳細に書きとどめたとされる、門外不出の秘伝書です。とくに茶道最奥の秘伝といわれる「カネワリ」は、今日『南方録』にのみ姿をとどめる幻の茶の湯実践技法。
禅茶の深遠な境地と、味わい深い名文でつづられた茶道書の最高峰とされる古典名著です。

NEW!●Cクラス「奥の細道」2/22(月) 17:30-19:00
今回より、第二期として新たに冒頭より読み進めます。寺子屋唯一の文芸書を読むクラス。俳聖松尾芭蕉の代表作であり、近世文学の金字塔と目される『奥の細道』。深川芭蕉庵より、第一歩を踏み出し、松島~奥州~象潟~越後~金沢、そして最終地大垣にいたるまでの、芭蕉の半年におよぶ風狂の足取りをたどり、名句の数々をともに音読しましょう。



「寺子屋素読ノ会」実施要綱と詳細はこちら。
現在開講中の各継続クラスも、もちろん途中受講大歓迎です!まずはお気軽に教室をのぞいてみてください。

『禅茶録』現代語訳公開します。

2010-01-01 19:35:00 | 日記
 茶の湯が禅宗によるということは、紫野の一休禅師よりはじまった。南都称名寺の珠光は一休禅師の法弟である。日々茶の湯に精進していたが、一休これを見て
「茶は仏道の妙所に叶うものである」
 と、点茶に禅の心を移し、自己の本性を観じるための茶道が成ったのである。



 それゆえ茶事の行い、用法すべて禅の修業と変わるところはない。「無賓主の茶」「体と用」「露地」「数奇」「侘び」などをはじめとして、その他すべて茶の湯の用語は禅語から出ているのだ。詳細は後段を参照されたし。たとえば、ある詩句に「茶味と禅味をあわせ知る」とあるが、まこと格言とはいえよう。すなわち奇貨珍宝を愛し、酒食の美を尽くし、あるいは結構に茶室を造作し、庭の樹石を玩んで遊宴のしつらえとすることなどは、茶道の本意に背くもの。ただひとえに禅茶に没し、修行してこそ、この道の本懐たりえるのだ。

『禅茶録 現代語訳』寂庵宗澤著、水野聡訳 能文社 2010.12


 〔茶禅一味〕思想の代表書とされる、『禅茶録』。上は、2009年言の葉庵最新翻訳版の一部を抜粋しました。
 茶禅一味、剣禅一如、俳禅一致…。中世に創始、または大成された日本文化・芸道の多くが、その芸道精神の根本を禅によっていることは、日本文化史上周知のことです。とりわけ桃山時代、千利休によって大成された茶道、侘び茶は、禅抜きでは成立しえないほど、深く禅道に多くを恃んでいる。いや、それはむしろほとんど禅そのものといっても過言ではないほど、茶の湯発生の創成期より、禅とは深く密接な関係にあります。これを言い表した言葉が、〔茶禅一味〕。

『禅茶録』は 1828年(文政11年)に寂庵宗澤(略歴不詳。大徳寺系の僧と推測される)が、『茶禅同一味』という書を補足編集して著したものといわれます。
 『茶禅同一味』は 千利休の孫であり、また侘び茶人として名高い千宗旦の遺書といわれるもの。〔茶禅一味〕つまり「茶道と禅道の真髄は同じ」という茶の湯の精神を説いています。『禅茶録』は、民藝運動の父・柳宗悦をして「すべての茶人の座右に置くべき名著」と言わしめたという茶書です。


 『禅茶録』は次の十章からなります。

1.茶事は禅道を宗とする事
2.茶事修行の事
3.茶の意の事
4.禅茶器の事
5.佗の事
6.茶事変化の事
7.数奇の事
8.露地の事
9.体用の事
10.無賓主の茶の事

宗旦『茶禅同一味』と、上の1.2.3.4.8.の各章がほぼ同内容です。

■茶禅一味とは

 茶道と禅宗では、その修行の形態や目的は異なるが、その根本は別物ではなく、人間形成の道という面から見れば、両者は不二一如である、とする説。

■茶禅一味の根拠

1.茶道は、禅院茶礼に源を発する。
2.茶道成立以前の喫茶習慣に、禅院茶礼の反映が見られる。
3.茶人は禅宗徒である。
4.主な茶書は「茶禅一味」を主張する。
5.茶道において、禅師の墨蹟が悟入の具として重用される。

「禅と日本文化 その一味性の根拠」金子和弘 昭和63年

■茶人と禅宗(大徳寺)

 茶道は鎌倉時代、栄西による茶種の輸入にはじまり、室町時代に村田珠光が、一休宗純に参禅して体得した禅の精神を持って、それまでの喫茶と禅院茶礼の諸方式を統合したものです。
 珠光以降、武野紹鴎、北向道陳、今井宗久、津田宗及、千利休等、各時代の代表的な茶匠は、臨済宗大徳寺歴代住持に帰依し、参禅しています。

■茶書に見る茶禅一味

 室町より各時代の代表的茶書には、主要部分に必ず「茶禅一味」の思想が見られます。そもそも「茶禅一味」の言葉は、大林宗套の武野紹鴎画賛にまずられ、以降、『山上宗二記』『南方録』『茶話指月集』等、各時代の茶書に茶人の言葉として頻出。徐々にその内容、精神が深められていきます。そして江戸後期、『禅茶録』により、「茶禅一味」思想はその究極の形へと純粋化され・完成されるのです。以下、時代に沿って茶書から「茶禅一味」の文言を集めてみました。

【室町時代】
・武野紹鴎
「料知す。茶味と禅味同じなること。松風を吸い尽くして、こころいまだ汚れず」
(紹鴎画への大林宗套の賛)


【安土桃山時代】
・千利休
「すべて茶湯風体は禅也」
「茶湯は禅宗より出でたるによって、僧の行を専らにする也。珠光紹鴎みな禅宗也」
「道陳、宗易は禅法を眼とす」
(山上宗二記)

「小座敷の茶の湯は第一仏法を以って修行得道する事也」
(南方録)

【江戸時代】
・千宗旦
「茶道は本来禅によるがゆえに禅と同じく言語道断であり、さらに示すべき道もない」
(茶話指月集)

「茶意は即ち禅意也。故に禅意をおきて外に茶意なく、禅味を知らざれば茶味も知られず」
(禅茶録)

茶禅一味思想の確立


・以下に『禅茶録 現代語訳』2009能文社版を公開します。1.茶事は禅道を宗とする事 2.茶事修行の事 3.茶の意の事 4.禅茶器の事 5.佗の事の前半五章の本文、全文をお読みいただけます。なおPDF公開は、言の葉庵読者のみ、2010年1月7日までの期間限定となります。書籍版の発行予定は後日改めてお知らせいたします。

『禅茶録 現代語訳』能文社版2009.12 (底本 茶道古典全集第十巻 淡交社)
http://nobunsha.jp/img/zencharoku%20gendaigo.pdf

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