世阿弥『風姿花伝』を親子で読める、やさしいコンテンツに編集、再構成しました。『こどもふうしかでん』。まずは電子ブックにて、言の葉庵HP限定でお届けします。
〔言の葉庵HP限定電子コンテンツ〕
『こども ふうしかでん』
子供の才能を伸ばす、六百年の秘伝書
水野聡著 2018年8月13日 初版 能文社
◆第一回配信
(まえがき)
はじめに お父さん、お母さんへ
近頃、子育てに悩む若い親御さんが増えているとよく耳にします。
学校の勉強など、与えられるもの、すべての子どもがやるべきものと、子ども自身が好きになり、選ぶものとのギャップに、親としてどのように対処し、どういう方向付けをしてあげたらいいのか。そんな悩みが多いのではないでしょうか。
今必要なのは、子どもの才能を発見し、伸ばし、将来の目標を立て、実現していくための方法です。公教育ではなかなか難しい、本物の知恵が必要ではないでしょうか。
『風姿花伝』は、ただ能の専門書というだけではなく、一人の親がわが子の未来のために、そうした方法と知恵を伝えるために書かれた本なのです。
作者は、世阿弥。今日の能の基礎をつくった約六百年前の能役者です。『風姿花伝』には、「花」ということばがとても多く使われています。世阿弥の「花」とは、まず役者と芸の花であり、ひいては面白さ、魅力、感動など、人の心に咲く素晴らしいものをたとえたキーワードです。
『風姿花伝』には、「花」すなわち、面白いもの、美しいものを見抜く、とっておきの秘訣と、人として大きく正しく成長していく道すじが究めつくされています。本書では、世阿弥の教えを、お子さまにもわかる、やさしいことばでおきかえてみました。
お父さん、お母さんも子どもといっしょに読み、ぜひいっしょに考えてほしいと思います。すべての子どもの才能をすくすくと育てるヒント、アイデアがきっとみつかることでしょう。
平成二十八年 水野 聡
(本文)
・第一章
こどものうちにやっておくこと。
おとなになったらやること。
おじいさんになったらやること。
七さい
ちっちゃなこどものとき、その子が好きにやりだしたことに、ぴかっとひかることがあるんだ。
かけっこしたり、ぴょーんととんだり、おえかきしたり、うたをうたったり。どんなことでも、ぴかっとひかることが、いちばんたいせつです。
お父さん、お母さんは、ぴかっとひかることをこどもの好きにやらせるといいよ。
もっとこうしなさい、いやいやそうしちゃだめ、なんてうるさくいってはだめ。
こどもはめんどくさくなって、それをやるのがつまんなくなって、ぴかっとひかるものが、もうひからなくなっちゃうんだ。
十二、三さい
中がっこうのおにいさんになると、ぴかっとひかるものは、だんだん、ただの好きなことから、じぶんのとくいなことになっていくんだ。
こくご、りか、サッカー、ピアノ、まんが、かべしんぶん、ゲームとか、いろいろ。
とくいなことは、いっしょうけんめいやるし、せんせいやお母さんもほめてくれるから、もっもっとやりたいとおもう。
じぶんでは「とくいわざ」だとおもっているけど、ほかのクラスやおにいさんたちには、もっともっとじょうずなこがいるかもしれない。
「こどもだから、ほめられるんだ」とおもって、きょうかしょをしっかりよんで、せんせいにももういちどちゃんとおしえてもらおう。
十七、八さい
こうこうせいになると、せは高くなるけど、まだおとなじゃない。けれど、もうこどもじゃない。そのちゅうかんぐらいなんだ。なんとなくちゅうぶらりんで、べんきょうのことやしょうらいのことで、いろいろかんがえて、「とくいなこと」もじしんがなくなってきちゃう。
いままでどおりやってみても、あまりほめられないし、じぶんでもなんかへんなかんじだ。
もう、やーめた、とおもって、ここでやめてしまうと「とくいなこと」はえいえんになくなってしまうんだよ。
「とくいなこと」は、じぶんのいっしょうのたからもの。人にわらわれてもきにせず、ぜったいやめるもんか、とがんばってみよう。
うまくいかないのは今だけで、それはだれでもおんなじなんだ。
二十四、五さい
おとなになった。とくいなことをいかせるかいしゃに入った。うれしくて、おもしろくて、いっしょうけんめい、しごとをがんばる。
新人で、げんきがあるから、ベテランの人よりめだって、いいせいせきをだしたんだ。
「こんど、いい人が入ったね」とまわりの人もほめてくれて、とくいになっちゃう。
でも、これはまぐれなんだ。まぐれは、2回、3回とつづかないんです。長い長いあいだ、ずーっとヒットをうてるのがプロなんだって。
だからまぐれあたりなんかでとくいにならず、ほんもののプロをめざしてじつりょくをつけていこう
(第二回に続く)
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