門前の小僧

能狂言・茶道・俳句・武士道・日本庭園・禅・仏教などのブログ

してみて良きにつくべし。【言の葉庵】メルマガ72号発刊

2015-03-24 11:36:03 | 音楽
言の葉庵メールマガジン今号のCONTENTS

【1】名言名句第五十回           してみて良きにつくべし。
【2】貞観政要を読む            第二回 古代より蘇る賢者
【3】カルチャー情報           4月期【言の葉庵】新講座一覧


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【1】名言名句第五十回           してみて良きにつくべし。
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してみて良きにつくべし。せずば善悪定め難し
~世阿弥『申楽談議』よろづの物まねは心根


『申楽談議』にある、世阿弥晩年の至言です。

「舞台で実際に演じてみて、結果の良かった方法を採用せよ。演じてもみぬ内
からいずれがよしともいえまい」。

長男元雅の新作能、〈隅田川〉。舞台のクライマックスに、子方を出すか、出
さぬか、の演出をめぐり、父子の間で意見が戦わされます。その中で、世阿弥
が断じた結論の語です。
まずは、当段落を現代語訳でご紹介しましょう。


■よろづの物まねは心根

 すべての演技の根本には心根がある。まず詞章の心根をよくよくわきまえれ
ば、所作・かかり※1を表すことができるのだ。

 人は、息をつめ食い入るように能を見ることがある。または、ただ漫然と能
の雰囲気を楽しむ時もあろう。
 息をつめ、「ああ。とめるぞ、とめるぞ」とすべての観客が集中して見る時
は、ふととめるべし。かたや観客の大方がのんびり楽しんでいる時は、きっと
気を引き締め、突如とめるべし。眼前の観客の期待とまったく違うとめ方をす
れば、さだめて面白いはず。人の心を化かすのだ。このことを固く秘して、観
客には決して知られてはならない。

 近頃「化かす」ということについて、「ようよう化けの皮がはがれてきた」
などという。これはそのようにいう人の目が利かぬ証拠である。少年の可憐な
芸を上手だと思い込み、真実の上手との見分けがつかない。「化かす」は、上
手だけのもの。年の功により悪い芸であることは充分承知の上で行うものだ。
世阿弥は出家の後、座敷芸で観客をそっと化かしたことがある。これが本物の
「化かす」である。「下手な役者の化けの皮をはがす」などは、ただの目利か
ずの戯言といえよう。

 〈浮船の能〉の「この浮船ぞ寄辺知られぬ」というところが肝要である。こ
こだけを一日、二日がかりでやりおおせるほどの気持ちで、根を詰めて演じ納
めよ。

〈経盛の能〉 では、ツレの女を思い入れ深く演じるべきである。しかしみな
浅く扱っている。シテの謡の間、俯いて聞き入っているが、その途中より思い
があふれるように謡い出すべし。そうじて女の能姿では、始終面を伏せ、時折
ふっと顔を見上げるものだ。

〈隅田川の能〉で、
「塚の中の子供はいないほうがより面白く演じられよう。この能では生きている
子供は見つからず、亡霊である。とくにその本意を手がかりにせよ」
と父世阿弥はいったが、元雅※2は
「とても私にはできません」
 と答えたのである。これに世阿弥は、
「かようなことは、してみて良きにつくべし。せずば善悪定め難し」
 と諭したものだ。


注※1 かかり
芸の風情、情趣。
※2 元雅
世阿弥の長子とされる。能〈隅田川〉の作者。

(『申楽談議』現代語訳水野聡 2015年)


現代の能〈隅田川〉では、ほとんどの場合、シテの母が探す子は最後に“亡霊
”となって舞台に姿を現します。子方のあわれな姿に、思わず涙を誘われる、
定型の演出です。しかし元雅による初演時、実際に子を出すか、出さぬかは、
いまだ決せられていなかった。



◆メルマガ72号の続きはこちら↓
http://archive.mag2.com/0000281486/index.html

3/19読売カルチャー「茶道文化史入門」山上宗二記の世界

2015-03-16 18:45:26 | カルチャー講座
3/19(木)10:30より、よみうりカルチャー恵比寿にて、
「茶の湯文化史入門」10月期最終回の講座があります。

■茶の湯文化史入門
第六回 山上宗二記の世界~目利きと見立て
http://www.ync.ne.jp/ebisu/kouza/201410-01510201.htm

今回は数多い茶道書の中でもっとも茶道史を忠実に伝える、
とされる『山上宗二記』を本講座総括として読み進めます。

同書はまた、伝書の類を一切残さなかった千利休直伝の唯一の
秘伝としても高い価値を誇る貴重なもの。

当講座では、著者山上宗二の略歴とプロフィール、
そして『山上宗二記』の“本体”ともいえる、
東山名物~桃山期侘び道具の名品総目録〔珠光一紙目録〕を
中心に解説していきます。

■山上宗二記 概要
1.序 侘び茶発生の歴史 ~能阿弥・珠光の邂逅
2.珠光一紙目録 ~東山名物と利休道具の総鑑定書
3.茶の湯者覚悟十体、追加十体
~茶人としての必須資格・心得十か条と追加の十か条(武野紹鴎による)
4.茶の湯者の伝 ~村田宗珠・鳥居引拙・粟田口善法ら、名茶人リスト
5.師に問い置いた秘伝と拙子の注 ~「茶室の事」「材木」
「玉礀八軸の讃」「道守君の補注」
6.別本宗二記 奥書 ~近年発見された千利休最奥の秘伝十項目を含む

今期講座、今回が最終回となりますが、茶道史講座ではほとんど
取り上げられない、歴史的に貴重な茶書に親しむまたとない機会です。
初参加の方、茶道を稽古されていない方も歓迎いたします!

寺子屋3月より『風姿花伝』新クラススタート!

2015-03-15 19:30:29 | カルチャー講座
3/23(月)の寺子屋素読の会では、『風姿花伝』が今回新規に再スタートします。
冒頭の「序」より新たに読み始めますので、ご興味がありましたらこの機会にぜひご参加ください。

■寺子屋素読の会
http://nobunsha.jp/img/terakoya%20annai.pdf

3/23(月)
■Aクラス『風姿花伝』17:30-19:00
世阿弥の代表作『風姿花伝』を全編読み進めるクラス。
今回「序」の、観阿弥より子世阿弥におくられた遺訓、能の発生と由来について、の段落を受講生の方とご一緒に音読し、解説していきます。
世阿弥ヒストリーのミニ講座も実施する予定です。
岩波文庫版、『風姿花伝』をご持参ください。

■Bクラス『南方録』19:30-21:00
今回は同書「墨引」の段落後半を購読予定。六代将軍足利教義の寵臣、赤松前司貞村(赤松満祐の肉親。嘉吉の乱の原因となった人物)の水際だった書院台子の点前を詳録したくだり。東山名物、鎌倉茄子茶入・青磁雲龍水差・花山天目を用いた三種極真の飾り、幻の“モウケカザリ”を誌上で再現します。
上の点前において“カネワリ”の技法を解き明かす、詳細な図版も解説します。

新講座「能の名人芸」4月期

2015-03-07 08:38:32 | カルチャー講座
自由が丘産経学園にて、4月から能の初心者向け新講座がはじまります。

■お能鑑賞はじめの一歩 ~能の名人芸と名舞台
https://www.sankeigakuen.co.jp/pamphlet/16/PF_16_20150220104942.pdf

4/22 室町時代の名人、観阿弥・世阿弥
5/27 江戸時代の名人 喜多七太夫
6/24 明治時代の名人 宝生九郎


今期は能が大成された室町期から、現代活躍中の役者まで、能役者の歴史をたどる講座です。名人の至芸は、いつの時代にも魂がふるえるほどの感動を与えてくれます。当講座では能の名役者が演じた伝説の舞台を、映像・芸談・能評などを通してくわしく解説します。DVD鑑賞あり。


※3/25(水)同学園にて能の鑑賞方法を学ぶ、一日体験のトライアルクラスもあります。
13:00から、受講料1000円。どなたでもご参加になれます。