門前の小僧

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「守破離」は世阿弥の言葉ではない

2013-10-20 20:01:01 | 日本文化バンザイ
「断捨離」が2010年流行語大賞に選ばれ、ちまたのカフェでのネタにも気軽に使われている。ヨガの行法から生れた現代の言葉らしい。

これとよく似た語形で古来、日本の芸道とりわけ武道で修行法の極意として示される、
「守破離」
という言葉がある。

なぜだかわからないが、この言葉の作者は世阿弥、出典は『風姿花伝』とされることが多い。「守破離」のネット検索上位ページではほとんどその説がとられている。
宮本武蔵、沢庵、千利休など、歴史上の著名人がその考案者に推定されることもある。

が、『風姿花伝』に「序破急」はあっても「守破離」はない。沢庵、利休の著作や記録にもない(利休百首は後世他者の創作)。
戦国期武田家の書『甲陽軍鑑』にはあるらしいが確認されていない。

おそらくこの語の考案者は江戸中期茶人の川上不白、出典は不白の『不白筆記』(寛延2年)、あるいは『茶和抄』(横井淡所著に不白が補注)であると思われる。以下出典の参照URL。

http://p.tl/U-dT
http://p.tl/TvSE

ではなぜ、世阿弥の言葉であるとの誤解が生れたか?
「序破急」と「守破離」の語形が似ているだけ、という理由しか思い当たらないし、それが事実なんであろう。
ネット検索上位ページの「出典は風姿花伝」とする管理者たちは、『風姿花伝』を読まずに発言していることは明白だ。

「守破離」も「序破急」も、日本文化の深奥を探る重要なキーワード。
せめてWikkipediaくらいには、出典と論証されたしかるべき記述があってもいいのでは、と思う。