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「ハムレット」 舞台設定 世界観

2009-09-03 15:16:11 | 「ハムレット」

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「ハムレット」は、サクソ・グラマティクス編纂した「デンマーク人の事績」の中の「アムレート」がモデルになっている。


『オーウェンディルとフェンギという2人の兄弟がデンマーク王ロェリック・スリュンゲボンドからユトランドを譲り受ける。
オーウェンディルはロェリックの娘ゲルータと結婚し、二人の間にアムレートが生まれる。また一人子でもあった。
フェンギは彼らの結婚に憤慨し、そしてユトランドの支配権を一人で握るために、オーウェンディルを殺害。
短い喪ののち、フェンギはゲルータを娶り、ユトランドの単独支配を宣言するが、アムレートがフェンギに復讐を果たし、ユトランドの新しい、そして正統な王となる』という内容になっている。


このように話の展開はよく似ているが、シェークスピアは、ただ単に模倣したのではなく、「ハムレット」に書き直すことで、当時のイギリス情勢を風刺したと、十分に考慮できるのだ。


では当時のイギリスはどうであったのか、考察してみたい。


シェークスピアが活躍した時代のイギリスは、ルネッサンスの風に多き影響されており、海外の作品(いわゆる文芸作品)が翻訳(もちろん英訳)されて、国内に広がった。
よって国内でも文芸活動が盛んになっていった。
サクソ・グラマティクス編纂した「デンマーク人の事績」もその一つ。


イギリスのルネッサンスが活発になったのは、エリザベス朝下にあって対外的にはスペインの無敵艦隊を破るなど国威を示し、内政的にはプロテスタントとカトリックの対立を終息させ、国力を充実させたことが大きい。
また、女王登場によりスコットランドとイングランドの同君連合が事実上、成立するのだ。


ただ、光ばかりではなく、影の部分も存在する。
先ず、エリザベス女王の父、ヘンリー8世の我儘から生じた(熱心なカトリックであったが、カトリックでは離婚が認められていない。そこで彼は新しくイギリス国協会をを造り、キャサリン王妃との離婚およびアン・ブーリンとの再婚を巡る問題を引き起こす)宗教問題が尾を引いていた。(当然、プロテスタントとカトリックとの対立も根強く存在する)
さらに、50年という月日が流れているとはいえ、ばら戦争の影響も残っていた。


この時代の人々は、亡霊や妖精、魔女といった存在を信じていたし、国王の奇跡といったモノを信じていた。(いってみれば、現在より迷信深かったし、信心深い人たちだった)
だが、一方でルネッサンスによる啓蒙思想の浸透で自我の開放という潮流にも乗っていたのである。


当時のイギリスは、相反する事柄が、より鮮明で世の中に投影されていた。
つまり、大きな矛盾を個人も社会も抱えていたのだ。
そして、その矛盾を投射された人物がハムレットだったのである。