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「ハムレット」 舞台内容 二幕一場

2009-09-10 23:10:22 | 「ハムレット」

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 ハムレットが亡霊と出会ってから数週間が経った。
ハムレットが気が触れたのではないのかと、いう噂は城内に広がっている。


 そんなある日、ボローニアス家の一室では、ボローニアスが、家臣のレナルドに、ある命令を授けていた。
 その命令とは、息子のレアーティーズの行動を秘密裏に探ることだった。
 ボローニアスは、自分の経験からして息子を全く信じていない。
自分の品性が低いからといって息子も同じと考えるのは、如何のものかと思う。
 妻の浮気調査じゃ~ないんだから、そこまでするか? 普通、である。




 会話が終わると、そこへオフィーリアが駆け込んで来た。
彼女は、動揺しながら、ハムレットとの間に起こった出来事を父に語る。
 ここでハムレットが、三度ショックを受けてしまうのだ。
すでに彼は叔父が殺人者であり、母が不実の人であり、また、殺人者であり、簒奪者(母を奪った)である叔父が、国民の喝采を受けて、父のものだった王冠をしている。
 誰も自分を理解してくれる者がいない中、唯一残った人物。
昔からの恋人であるオフィーリアから酷い仕打ちをされたのだ。




 オフィーリアは、ハムレットの哀れな姿を目の前にしながら、父の言付け通りに、冷血にも、ハムレットが与えたラブレターを全て突き返し、自分に近づくことを拒絶したのだった。
 マジですかっ!! オフィーリアさん。それはあんまりですよ! 酷すぎる。惨すぎる仕打ち。
ああ、哀れなるかな!! ハムレットくん。と、感じるのは、ヴィクターだけですか?

 彼女が、ハムレットのことが嫌いであるならば、まだしも、好きでいるのに、愛しているのに、どうして、どうして、あんたって人は、何を考えているんですか!? って、何も考えていない彼女でした。




 ハムレットは沈痛な表情で無言でその場を立ち去る。それをオフィーリアは次のように描写する。
 'He took me by the wrist, and held me hard.
   Then goes he to the length of all his arm,
   And with the other hand thus o'er his brow,
   He falls to such perusal of my face
   As a' would graw it.'
 (私の手首をお取りになり、痛いほどお強く握りしめて、
  腕を一杯にお下がりになられ、
  片方のお手をこめかみに当てられて、
    まるで絵を描くかのように、私の顔をじっと
    見詰められ始めました)


 ハムレットは、目の前のオフィーリアは、本当のオフィーリアなのかと、訝ったのだ。


 さらに彼女は、続ける。
        'Long stays he so,
   At last, a little shaking of mine arm,
   And thrice his head thus waving up and down,
   He raised a sigh so shatter all his bulk,
   And end his being; yhat done, he lets me go,
   And with his head over his shoulder turned
   He seemed to find his way without his eyes,
   For out adoors he went without their helps,
   And to the last bended their light on me,'
 (ずいぶん長い間、そうしておいでになって、
  お終いに私の手をそっと揺す振られ、
  頭をこうして三度、うなずくようなご様子を。
  それから、体が壊れて死んでしまいそうな、
  哀れな溜息をおつきになり、やっと私の手を放されて、
  肩越しにこちらを見詰められたまま、
  前を見ずとも分かるといったご様子で、戸口のほうへ。
    そのまま前を見ることをなさらずに、外へ出て行かれて
  いつまでも私を見ておられました)


 ハムレットは愛するオフィーリアから、このような仕打ちを受けて、彼女に対する恋のみならず、女性に対して全ての信頼を棄て去ったのだ。




 この話を聞いたボローニアスは、最近のハムレットの狂気の仕草が、オフィーリアに対する失恋の痛手によるものだと、見事なる勘違いをした。


 そしてこのことを、王と王妃に報告に行く。 



「ハムレット」 舞台内容 一幕五場

2009-09-10 14:50:18 | 「ハムレット」

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 亡霊とハムレットは、城壁の下の空き地へとやって来る。
ホレイシオとマーセラスはおらず、亡霊の言葉は、ハムレットのみが聞くことになる。


 そして亡霊が、語りだしたこととは
 'If thou didst ever thy dear father lover,――
   Revenge his foul and most unnaturl murder.'
 (もし、お前が亡き父を愛していたならば――
  忌まわしい、最も人倫に反する殺人の復讐をせよ)


 亡霊の言葉を聞いたハムレットは、驚愕する。確かに父の死には不当なことがあったかもしれないと薄々感じてはいたが、よもや殺人であったとは思いにもしなかったのだ。

 母の不実な結婚を考えただけで自殺まで考えるハムレットにとって、これはさらなる大いなる衝撃を受けた。
 しかも、父を殺したのが叔父であり、その叔父は母と結婚し、民衆の支持を得て王位に就いているのである。
 まさに驚天動地。繊細なハムレットにとって、彼のアイデンティティが、ゲシュタルト崩壊してしまったかもしれないくらいに。
 この後の展開で、ハムレットは狂気を装うことになるが、実は、この時、本当に一部、壊れてしまったかも……




 この後、亡霊は、殺害された時の委細を語る。
庭で眠っている間に、耳の孔に毒液を流し込まれ、命を奪われる。殺害の証拠は何一つ現れず、死因は毒蛇に咬まれたことになった。そして、そのことを誰も疑わなかったというものだった。


 さらに亡霊は続けて語る。
 'If thou hast nature in thee. bear in not,
   Let not the royal bed of Denmark be
   A couch for luxury and damned incest.
   Taint not thy mind nor let thy soul contrive
   And to those thorns that in her bosom lodge
   To prick and sting her. Fare thee well at once:
   The glow-worm shows the matin to be near
   And gins to pale his uneffectual fine.
   Adieu, adieu, adieu. Remember me.
 (お前に父を思う気持ちがあるのなら、黙っていてはならぬ。
  デンマーク王家の寝室を、
  情欲と忌まわしい近親相姦の温床にしてはならぬ。
  しかし、どのように事を運ぶにしても、
  己の心を穢してはならぬ。そしてまた、
  母のことは放っておけ。天に任せるのだ。
  自らの胸のうちに刺さった棘に苦しませるがよい。
  もう行かなければならぬ時間だ。
  蛍が、その弱い光をさらに弱くし始めた。
  朝がそこまで来ている。
  さらば、さらば、さらばだ。父を忘れるなよ)


 なんと、まあ! 無理難題を押し付けていったことか!!
ハムレットが行なう復讐は、ただの復讐ではダメなのだ。「心を穢してはいけない」といっている。
彼自身が、断固たる決意を持って遂行し、且つ、誰が見ても正当な行為であると思われなければならない。
 そして、復讐をするに当たり、「母親には手出しせずに、国王の受けるであろう罰に巻き込まれるようなことがあってはならない」といっている。

 しかし、復讐するということは、相手を殺すことなので、少なからず「心を穢す」ことになってしまう。
ハムレットは高潔な人物なので、例え、如何なる理由があろうとも、殺人をしておいて心を穢さすにおけるであろうか? 
 これこそが「ハムレット」が、現代人に突きつけている最大のテーマではないだろうか?




 亡霊が消え去った後、ハムレットの後を追ってきたホレイシオとマーセラスが登場する。
ここでハムレットは、取り敢えず、復讐のための行動に移るのだった。


 先ず、亡霊が語ったことが真実であるのかを確かめることであり、そのために狂気を装って時を稼ごうと考えたのである。
 そして、そのことを、ここいる二人には秘密にしておくことを誓わせる。


 一同が誓うと、ハムレットはさらに念を押し、有名な台詞を述べる。
 'The time is out of joint, O cursed spite
   That ever I was born to set it right !'
 (この世のたが<関節>が外れている、ああ、何という呪われた苦悩の種だろう
  それを正す<治す>ためにこの世に生を受けたとは!)


 ハムレットは、世の中を正すという名分と、神が禁じている殺人とを、どのように両立させるのか、それが深刻なジレンマであり、彼が、どの道を選ぶのか、それが問題なのである。




 ここで一幕は終わる。