gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「ハムレット」 舞台内容 三幕四場

2009-09-15 20:56:10 | 「ハムレット」

イメージ 1


 ハムレットは、母のガードルードの私室へ赴く。
ガードルードの部屋では、宮内大臣ボローニアスが、カーテンの陰に隠れ、二人のやり取りをこっそりと伺っていた。


 ハムレットが部屋に入ってくるが、彼の様子がおかしい。
 狂人のフリをしているのだから、おかしいのが当然なのだけれど、ここは、直前にクローディアスを殺せなかったことに苛立っていたのだ。

 ハムレットは、最もらしい理由をつけて、復讐の機会を回避してしまったのが、心のどこかで、そのことを後悔していたのだと思う。
あの時、決断し、実行できなかった自分に腹を立てていたのではないだろうか。




 ハムレットは、カーテンの物陰に誰かが潜んでいるのに気がつくと、思わず剣を抜き突き刺してしまう。
 遣り切れない思いを、ぶつけてしまったのだ。




 そしてカーテンを引くと、ボローニアスの死体が横たわっていた。
確かにボローニアスは、軽蔑されるべき愚かな老人であったかもしれない。
オフィーリアのことでも愛情の取り扱いについて非難されても仕方がなかった。
でも、彼は、何ら罪を犯してはいない、殺されるべきではなかったのだ。




 このことにより、ハムレットは、亡霊との誓いの一つ、「魂を汚すことなく」を破ってしまった。


 次にハムレットは、もう一つの誓い、「母親には手出ししてはならない」も破ってしまう。
母の不実な罪について、得意の毒舌で、激しく攻め立てのであった。


 ガードルードは、戦慄きながら泣き崩れる。
その時、例の亡霊が姿を現わしたのであった。
 'Do not forget ! this visitation
   Is but to whet thy almost blunted purpose――
   But look, amazement on thy mother sits,
   O step between her and her fighting soul,
   Conceit in weakest bodies strongest works,
   Speak to her, Hamlet,'
 (忘れるな! こうして来たのは
  その鈍ってしまった心を研ぎ澄ますために他ならない――
  それ、見るがよい、母を。あのように恐れ戦いている。
  あの心の悶えに、何故、手を貸してやらぬのだ。
  弱き心には、同じ言葉を強く響く、
  母に話しかけてやるのだ、ハムレット)


 亡霊は、誓いを破ってしまったハムレットの誤りを叱りながら、生前の元妻を憐れむために出現したのだ。
死んでも、奥さんのことが忘れられないんですね。




 ただ、ガードルードには、亡霊の姿が見えないでいるので、ハムレットが空中に向かって独り話している。
その姿を見た彼女は、ハムレットの狂気が本物であると思い込んだのだった。


 ハムレットは冷静さを取り戻し、ガードルードにイギリス行きについて確認し、彼女もそれを認めた。
ただ、国王クローディアスが、ハムレット殺害を目論んでいたことまでは、知らないでいる。
もちろん、死んでしまったボローニアスも知らなかった。
 クローディアスは、ガードルードに対しても、ボローニアスに対しても、ハムレットの狂気を本物であると信じるフリをしながら、陰謀を進めていくのだ。
 まるで狼のように、狡賢いオッサンだ。




 ハムレットは、ボローニアスの死体を引きずりながら、部屋を後にした。
ここで三幕が終わる。



「ハムレット」 舞台内容 三幕三場 (2)

2009-09-15 01:02:31 | 「ハムレット」

イメージ 1


 ハムレットが復讐を遂げる最大の瞬間が訪れるのだが、彼は叔父を殺すことが出来なかったのだった。
 'Now might I do it pat, now a' is a-praying――
   And now I'll do't, {be draws bis sword} and so a' goes to heaven,
   And so am I revenged. That would be scanned:
   A villain kills my father, and for that
   I his sole son do this same villain send
   To heaven....
   Why, this is bait and salary, not revenge.
   A' took my father grossly, full of bread,
   With all his crimes broad blown, as flush as May,
   And how his audit stands who knows save heaven ?
   'Tis heavy with him: and am I then revenged
   To take him in the purging of his soul,
   When he is fit and seasoned for his passage ?
 (奴は今、祈りの最中、やるなら今だ――
  よし、やろう。{剣を抜く}今なら、奴は昇天、みごと復讐を遂げられる。
  だが、待て、これは考えものだぞ。
  悪党が父を殺し、ひとり息子の私が、
  その悪党を天国に送り込む・・・・
  それは、雇われ仕事で、復讐ではない。
  奴は私の父を、現世の欲に塗れたまま
  その罪の花が、五月のように大きく咲いている時に、
  罪の穢れを清めることのないままに殺したのだ。
  あの世で父が受ける罰がどんなに重いか、神の裁きは知る由のないが、
    どう考えても、軽くすむはずがない。それなのに奴が魂を
  清めている最中に、奴が天国へ行く備えが出来ている今、
  奴を殺して、それで復讐をしたことになるのか?)


 ハムレットは、クローディアスが跪いている姿を見て、彼が神に祈っていると考えた。
ならば、今、彼を殺してしまうことは、そのまま天国に送ることになってしまう。


 ハムレットの父は、何の準備をすることがないまま、突然、殺された。
きっと神の前で、生前の罪を罰せられて、苦しんでいることだろう。
だとすれば、今、クローディアスを殺してしまっては、復讐を遂げたことにならないと考えたのだった。
 これはもっともらしい理由をつけているが、ハムレットは決断できなかった、いざ実行する時が来て、躊躇してしまった。
ヘタレなハムレット! 勇気を出せ!! と言ってやりたい。




 ハムレットは、クローディアスも父と同様に、何の準備をしていない時、喜びの絶頂にある時に復讐を遂げようと考える。
 'Up, sword, and know thou more horrid hent,
   When he is drunk asleep, or in his rage,
   Or in th' incestuous pleasure of his bed,
   At game, a swearing, or about some act
   That has no relish of salvation in't,
   Then trip him that his heels may kick at heaven,
   And that his soul may be as damned and black
   As hell whereto it goes.'
 (収まれ、剣よ、今よりもっと恐ろしい手で握られることもあろうから、
  奴が酔いしれて眠っている時、我を忘れて怒り狂う時、
  不倫の寝床で快楽を貪っている時、賭博に夢中になっている時、
  罵り喚いている時、救いのない悪行に耽っている時に、
  奴の足をすくってやるのだ。すれば奴の踵が天を蹴り、
  まっしぐらに地獄落ち。いや、落ちる前から、
  その魂は、どす黒く地獄の色に染まっていよう)


 ハムレットは、絶好のチャンスをみすみす逃してしまったのだ。
彼が、クローディアスを殺すことを断念したまさにその時、最も有効に、ベストの状態で復讐を遂げることが出来た。




 この時、クローディアスは、跪いていたけど、それは格好のみで祈ってなどいなかったのだった。
 'My words fiy up, my thoughts remain below.
   Words without thought never to heaven go.'
 (言葉は空に迷い、思いは地に沈む。
  心の伴わぬ言葉が、どうして天上に届くというのか)


 祈っていない。いや、祈れないのだ。だから、ハムレットは復讐を遂げても、何ら問題なかったのだ。
「魂を汚すことなく」復讐できた。

 劇中劇でクローディアスが動揺し、退場したことは皆が見ている。
さらに亡霊のこともホレイシオが証人になってくれるだろう。
罪を悔い改めることも出来ないままクローディアスが殺されることは、復讐を完璧に遂行できた。

 しかし、祈ってばかりいると思って、ハムレットが見逃してしまったことが、まさに悲劇的なアイロニー(皮肉)だった。

 この唯一無二のチャンスを逃してしまったことが、この後の悲劇を生んでいくのだ。




 国王クローディアスは、自身の罪深きことを知り、「毒は喰らわば、皿まで」と、心を決める。
そして、彼は立ち上がり、この場を去るのだった。