黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

人はなぜ病気になるのか

2015-03-03 11:54:55 | 健康・病気
           人はなぜ病気になるか         
1.人は環境に適応できない時に病気になる
◇病気になるのは、人が生活する環境に適応できない時に病気になるのです(病原環境論または適応説)。環境には、自然環境(細菌やウィルス、寄生虫や動植物、花粉などを含む)、社会環境(家族から地球規模までの人間社会)、心理または情緒的環境(社会がもたらすストレス)があります。特に現代では、社会的環境が大きく、家庭、親族、保育所、幼稚園、学校、職場、地域、クラブなどの人をとりまく環境が、心理・情緒的ストレスを産み、それによって抵抗力(免疫)が低下し病気になるのです。
◇判りやすく説明するために、人間を川に例えます。川にはそれぞれ堤や堤防があり、川の水が少なく静かに流れている時は、水はあふれません。この状態が、人間では健康なのです。所が大雨や台風で、川の水が増えてその堤防の弱い所を越えて氾濫し、水があふれ出ます。人間では、水があふれた時に病気になるのです。その堤防の弱点は、その時々によって異なります。その人の弱点は親から受け継いだ遺伝と生まれ育った環境や今までにかかった病気、現在の生活習慣やおかれた生活環境(自然や社会的)によっても作られます。その人の持つ弱点は年齢、性別、性格、考え方によっても異なるので、かかる病気が異なるのです。
◇ヒトゲノム計画により、人の遺伝子がほとんど解明されました。しかし、そこで判ったことは、同じ遺伝子を持っていても、同じ病気になるとは限らないのです。多くの遺伝子は、遺伝子のスイッチが入ると働き出し、スイッチが切れるとその働きを止めるのです。スイッチを入れるのが環境因子であることも判ってきました。遺伝子と環境の相互作用。
 例えば、哺乳類のほとんどは、乳児期には母乳が飲めるが、幼児期になると飲めなくなるのです。それは、幼児期になると母乳を分解する酵素を作り出す遺伝子のスイッチが切れてしまい、母乳が飲めなくなるのです。しかし、人間はなぜ大人になっても牛乳が飲めるのかが謎です。でもすべての人がそうではなく、牛乳が飲めない人がいて、その率は農耕民族に高く、牧畜民族に低いのです。環境に適応して遺伝子が変化してきたと考えられています。牛乳嫌いや牛乳を飲むと下痢をするのは別に特別ではないのです。
例えば、遺伝的に同じはずの一卵性双胎児の一人が喘息になり、もう一人が喘息になる確率は16~25%であり、他のアレルギー疾患では同じと見られていますが、統合失調症はもっとずっと低いのです。アメリカの調査で、アイルランド出身の双子の、一人はアイルランドに残り農業を継ぎ、もう一人はアメリカへ渡って都市労働者になった1000組を比較したら、摂取カロリーはそれ程違わないが、成人病になる確率はアメリカに渡った方が圧倒的に高かったのです。
 遺伝子にスイッチを入れる環境は、自然環境と社会環境です。社会環境の中に、社会によってもたらされる精神心理的、情緒的環境も含まれます。社会は最低3人から構成されますから、家庭も社会的環境です。だから家庭環境によっても変るし、食生活によっても変わります。また、環境によっても遺伝子は変化します。遺伝子と環境とは相互に影響しあって、発現したり、しなかったりし、その結果病気になったり、ならなかったりするのです。遺伝子は1世代で100の変化を蓄積すると言います。遺伝子は環境条件に左右され、ある種の環境でなら、ある形で発現するのです。遺伝子は、環境や発達に左右されない特定性と、環境の変化に適切に対応する能力(可塑性)を持ちます。

2.病気と戦う仕組み
◇人には病気にならないようにする防御システムが様々に働いています。
①外から人の身体に入ってくる場所すべてに細菌やウイルスなどの微生物が住み込み人と共棲していて、外来の微生物と戦ってくれます。例えば大人の皮膚1平方cmに10万の微生物が住んでいます。だから大人は「とびひ」にならないのです。目、鼻、口、のど、耳、陰部、腸などすべての外界と接する部分には微生物が住んでいます。それが病気にならない理由の一つです。胃には強い酸性の胃液があり、多くの細菌はそこを突破できません。突破しても小腸には1gの腸内容物に三千億から五千億の細菌や微生物が住んでいて外来の微生物を排除してくれます。皮膚や腸に住んでいる種類は家族ごとに微妙に異なりますし、老化によっても変わります。
②体内にはまずリンパ球をはじめ、リンパ組織(扁桃やリンパ節や虫垂)が働いて防御線を張っています。外来の異物を見つけ、戦うのも、抗体を作るのもリンパ球です。インターフェロンやサイトカインというものを作るのもリンパ球です。リンパ球はいろいろな働きをして微生物や異物、がん細胞などと戦ってくれます。その他に多くの身体の働きで、自分の病気を治す力(自然治癒力)があります。がんになっても、少なくとも3万人に一人は自然治癒します。世界でその人たちの3500人の報告も出ています。

3.ストレスと病気
◇環境にうまく適応できない時に、防御システムの働きが低下します。だからストレスがあると免疫の働きが低下し、病気になり易くなります。その時に細菌やウイルスが入ってくると病気になるのです。過労も心労もストレス状態の一つです。
 ストレスを起こすのがストレッサーと言い、それによって引き起こされる状態をストレスと言い、ストレスになると身体の色々な働きが乱れて病気になるのです。ストレスはたまるものではなく、状態です。なったらすぐ身体は反応しています。その時病気になるかならないかは、その時の、その人の状態や環境によります。
◇ストレスがあると、身体が反応します。ストレスはたまるものではありません。一度でもストレスです。ストレス対策は、気持ちの持ち方を変えることです。
 嫌なことは「嫌だ」と言いましょう。でもどうしてもそれができない時は、「仕方がない、そういうものだ」とか「まあいいか、しょうがないや」と、いつまでも「いやだ」をひきづらないことです。でも、いじめ、セクハラ、嫌がらせなどは、そうしてはいけません。
◇子どものストレスは、第一に「いやなこと」を我慢することです。だから神経質な子は病気をしやすく、くよくよしない子は病気をしません。自己主張の強い子は病気が少なく、心やさしい子やいやなことを我慢する子が病気をしやすいのです。大人も同じですが。
 子どもは、赤ちゃん時代は親が防御して下さい。赤ちゃんが「いい気持ち」にならないことがストレッサーです。いつもいい気持ちにしてあげて下さい。お腹いっぱいにすること、早めの離乳食、オムツをとりかえること、赤ちゃんが要求しないのに抱いたり触ったりしないこと。赤ちゃんをお人形さんにしないで下さい。おもちゃではありません。
 叱らないで、他のことに関心をそらして、いけないことを止めさせましょう。関心を他のことにすり替えることで、叱らずにすみます。そしてすぐ「いい子ね」とほめましょう。
いつもいい子にしてあげて下さい。親のして欲しい事をしてくれたら、すぐほめましょう。
 人見知りは自我の芽生えで、自我ができるのは3歳ごろ。この頃になると自己主張が強い子は病気が少なくなります。そして小学校入学から思春期まで、病気が少ない時期です。でもおとなしい子、こころが優しい子、いやだと言えない子は病気になります。
 
◇食事を強制したり、制限したりせず、少なくとも3歳までは欲しい時に欲しいだけ食べさせて下さい。少食、偏食は食事の強制から生じますし、甘いもの好きは甘いものを制限することから始まります。子どもに与えたくないものは、一度も与えてはいけません。「少しならいいだろう」は間違いです。もっと欲しくなるものです。嗜好飲料、スポーツ飲料は子どもの飲み物ではありません。また甘い食品、糖分(グリコーゲン)は大脳の発達に必要ですから、子どもの食事の必需品です。子どもは、食事もストレッサーになることがあります。嫌いなものを強制しないで下さい。また牛乳は、前述のように、飲めない子がいますから強制しないで下さい。また牛乳の飲みすぎもいけません。

4.病気は身体の変調、不調
◇病気は、外から入り込んだものではなく、自分自身の身体の変調です。変調というのはピアノやギターの調律がはずれた状態で、同じピアノでも良い音が出ない状態です。良い音が出ている時が健康なのです。
 例えば、かぜでも、外から入ってきたウイルスや細菌と戦って、身体の変調を起こして熱が出たり、咳やのどや身体の痛みやのどが腫れたりしているのです。だから、治ると自然に熱が下がったり、咳や痛みや腫れがとれていくのです。
◇だから病気は、自分自身がなっている変調した「状態」なのです。病気を嫌わないで下さい。病気を嫌うことは、自分の心が、自分自身の病気になっている身体の状態、つまり自分の身体を嫌うことになり、心の奥底(潜在意識の中)で、抗争(葛藤)を起こして、病気が良くなりません。病気を認めて、病気と上手に付き合って下さい。良くなるように自分の身体をなだめて、「良くなる、良くなる、だんだん良くなる」と自己暗示をかけて下さい。きっとあなたの身体の病気はよくなっていくでしょう。子どもは親が暗示をかけて下さい。よく病院に来ると、子どもが元気になるのは、ここに来ると良くなるとの暗示効果です。

5.不安は病気のもと
◇また不安になると、病気になったり、病気が悪くなったりします。不安になると「もっと悪くなるのではないか」とか「もっと苦しくなるのではないか」と思ってしまいます。それが自己暗示になって、あなたの身体はだんだん悪くなります。不安だと良くならないのですから、不安を打ち消しましょう。その為に、薬を飲んだり、医師にかかったりするのです。子どもは、お薬を飲ませて、「さあこれで良くなるよ」と言って下さい。それでよくなるのです。薬の効果と暗示の相乗効果です。それで良くならない場合は、それが効かない何かストレスになっていることが、子どもにあるのです。それを探して、なくすようにしましょう。
◇病気に神経質な人ほど、病気になりやすいのです。日本人は昔から病気に神経質です。挨拶の言葉には病気に関連する言葉が多いです。最近のゲノムの研究では、日本人の93%、白人の67%が神経質になる遺伝子配列を持っていると言います。しかし、それが発現されるのは環境によります。だから、くよくよしない人が長生きするのです。長寿の人に「その秘訣は何ですか」と聞くと、大抵「くよくよしないことです」と言います。
不安をかかえてはいけないから、不安なら医者にかかり、不安をなくしましょう。良い医師は、安心をさせてくれます。医者は安心を売る職業ですから、不安を増やすような医師は避けましょう。また、親は子どもを不安にさせるような言葉を話さないようにしましょう。「かぜをひくから」、「注射をされるよ」、「病気が悪くなるよ」などなど。
 子どもを脅かして、言うことをきかせようとしてはいけません。ほめて言うことをきかせましょう。子どもはほめられたいから、親の言うことをきくようになります。大人も同じです。大人同士でも、感謝の気持ちを表す「ありがとう」を言い合いましょう。

6.病気と上手に付き合いましょう
◇一病息災になりましょう。
先の川の話に戻って、堤防の一ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると、他の場所から水があふれません。それと同様に、一つの病気を持っていることによって、他の病気になる可能性が減ります。これを一病息災と言います。病気とうまく付き合い、なだめすかして、病気と仲良くして下さい。何とかして病気を治すと、また別の病気になる事がありますから。これは慢性の病気の話で、急性の病気は別です。
◇人生を楽しみましょう。たった一度の人生ですから、楽しくなくてはつまりません。楽しい人生を送ることによって、病気は逃げていきます。楽しい事を考え、思い描き、いつも、どこでも、楽しいことを考えながら、勉強したり、仕事をしたりしましょう。楽しくしていれば、病気は良くなります。

7.病原環境論
◇病原環境説は、ヒポクラテスに始まると言われています。ヒポクラテスは、病気をその「人」の状態として捉え、病気の原因を、気候の変化と不適正な食事、その他外界の激変にあるとしました。その後、ドイツの病理学者、衛生学者で政治家(進歩党)のウィルヒョウによって再興され、さらにロックフェラー大学環境医学教授デュボスによってヒポクラテスの復権が提唱されました。1970年代の国連環境委員会のアドバイザー委員長をしたデュボスでも、この説を臨床医のあいだに広められなかったのです。パブロフの条件反射を進めて、人はどんな環境に置かれたらどう反応するかの研究に進むべきだったのですが、神経経路の研究へと進み、体の細分化へ研究が進んでしまったのです。デュボスの説を支持しているのは、基礎医学者と精神科医に多いのです。アメリカの精神科医を中心に、精神神経免疫学や、さらに精神神経免疫内分泌学なども提唱され、動物実験もされ実証されていますが、これらはすべて病原環境説に含まれます。

花粉症(アレルギー性鼻炎)の話

2015-03-03 11:46:09 | 健康・病気
花粉症の時期になりました。花粉症に悩まないために、ぜひお読みください。「アレルギーの話」と「人はなぜ病気になるか」をいっしょにお読みください。

    花 粉 症(鼻アレルギー)の 話   
 花粉症は鼻のアレルギーの病気で、こどもでは10%、大人は30%位の人がなります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)、アトピー性皮膚炎、じんましんにかかったことがあるか、家族にいる人がなりやすいのです。

☆なぜなるのか、
遺伝的素質(遺伝子)プラス環境因子(自然環境=花粉、社会環境=家庭、社会などの心理的、精神的、感情的ストレス)によって発病します。遺伝的に同じはずの一卵性の双子の研究で、1人が喘息になった時に、もう1人が喘息になる確率は25%くらいで、花粉症も同じと考えられています。日本では、スギの花粉が風により広い地域に散らばり、交配するのに十分な程の、わずかな量でひきおこされます。日本では、中年世代を中心に増えています。杉のない北海道は白樺です。アメリカでは若者のブタクサ、ヨーロッパでは稲科の牧草が多いです。複数の原因が、あることもあります。
☆アレルギー性鼻炎のうち、季節的な物を花粉症と言い、一年中続くものを通年性アレルギー性鼻炎と言いますが、本質的には同じで、しばしば複数の原因をもつことがあります。通年性のものには、室内吸入抗原が多く、ハウスダスト、ヒョウヒダニ、コナダニ、ペットのふけ、かび、化学製品、植物製品などがあります。原因がはっきりしないことも少なくありません。
・血管運動性鼻炎
 アレルギー性鼻炎のある人が、季節を問わず、温度、湿度の変化、ほこり、煙草の煙などの刺激物を吸入すると一時的になるもので、一時間位でおさまります。

☆症状は、
くしゃみ(ひんぱんに、発作的に)、鼻水(水様、多量に)、鼻づまり。鼻、のど、耳および目のかゆみ、目の発赤および涙。口呼吸。通常30歳代にあらわれ、中年を過ぎると、年齢と共に軽くなっていきます。

☆治療の第一は、スギ花粉を避けること。
窓をあけず、室内は空気清浄機を使う。外出時にはフィルター付きのマスクをするのがよいです。洗濯物はマスクをして、花粉をはたいてから取り込むか、室内で干すことです。外出から帰った時は、上着などをはたいてから家に入りましょう。シーズン中はできるだけ外出をさけること。防御が第一です。

☆ 薬物療法の基本は、
第一は、抗ヒスタミン剤の飲み薬(かぜの時の鼻水の薬)で、なった時に飲みます。
ねむけ(神経抑制)の少ない第二世代の抗ヒスタミン剤(下記)を勧めます。
第二は、予防の薬で、インタール系(インタール、ミタヤク)の吸入薬(点鼻薬)、と目薬で、毎日2~3回し、早くて3日くらいから効果が出始めますが、普通は1~2週間続けていないと明らかな効果が出ないし、効果が出てもシーズン中続けていないと効果が続きません。しかし、75%の人に効果があります。効果が出れば症状は出ないし、副作用も少ないし、でも毎日続けることが必要で、大変ですがお勧めです。
第三は、ステロイドの鼻へのスプレー(結核の人はだめ)。
眼のかゆみには、最近は、一部の第二世代の抗ヒスタミン剤(特にザジテン、スプデルなど)の点眼液は効果があると言います。即効性があるのは、ステロイドの目薬(コンタクトレンズの人と緑内障の人はだめ)で、かゆくなった時に使い、おさまったらやめます。また、ひどい人は、他の薬と一時的に併用します。長期に連用することは、勧めません。軽い人には、使いやすいです。
◎抗アレルギー剤と言われるのは、基本的には、第二世代の抗ヒスタミン剤で、俗にアレルギーをおさえるとか、体質改善の薬と言いますが、体質は変わりません。他では、花粉症が始まる前から飲むように言われたり、毎日飲むことを薦められたりしますが、欧米では、ひどければ毎日飲んでいてよいし、かぜ薬のように、症状が出た時に飲んで、よくなったらやめてという飲み方をしてもよいと言う使われ方をしています。

☆自分にあった薬を探すこと。病気とつきあって、シーズンを乗り切ること。

☆ はな水をかまないこと。かまない方が止まります。ティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻水をかんだりすすったりしないようにします。そうすると、泉の水がかれる様にしだいに出なくなります。一度でもかんだり、すすったりすると、それまで出たのと同じだけ鼻水が出続けます。

☆病気になる最大の原因は、ストレスで、いやなことをがまんすることです。いやなことは避け、どうしても仕方がないことは、「しょうがないな」とか、「まあいいか」と、くよくよ考えないようにすること。仕事上のことは、生活のためだから仕方がないと考え、楽しい事を考えて、のびのびと暮らすこと。楽しいことがあると、アレルギーは軽くなるし、去っていくこともあります。

☆一病息災で、一つの病気になっていると、がんや心臓病や脳梗塞などの他の病気になる確率が低くなるといいます。花粉症で死ぬことはありませんから、うっとうしいがラッキーです。もっともストレスの多い人は、いくつも病気をかかえますから、その場合は仕方がありません。病気は自分のからだの変調(ピアノの調律がはずれている状態)ですから、嫌わずうまく付き合うのが一番いいのです。

★飲み薬
抗ヒスタミン剤―第一世代―ぺリアクチン、フルミノール、キタゼミン、ポララミン、レスタミンなど。世界的には、最近は、小さい子には、神経抑制作用(鎮静作用)があるからと制限する傾向にあります。ですから子どもには、少なめにして、短期間に留めます。
薬を飲まなくても、かんでいればよいのですが、飲んでいないと、鼻をかむのが間にあいません。この薬は、子どもも大人でも眠気が出やすいのです。
 第二世代の抗ヒスタミン剤―ねむけ(鎮静作用)を減らすために開発されました。ザジテン(まだ鎮静作用が残る)、リザベン、セルテクト、アゼプチン、アレギサール、ジルテック、アレロック、アレグラ(眠気が少ない)、アレジオン(1日1回夜飲む。眠気が少ない)など多数あります。俗に抗アレルギー剤というのがこれです。
 鼻のかゆみ、くしゃみ、鼻水によく効き、鼻づまりは少しよくなります。副作用は眠気で、できるだけ眠気が出にくい薬を選びます。続けて飲んでいると症状が出ないことが多いですが、かぜ薬のように、出た時に飲んで、おさまったら止めてもよいです。
効かなければ他の薬に変えると、効くことがあります。自分に合った薬を探し、メモしておくことです。
*ロイコトリエン拮抗剤(特にオノン、キプレスなど)という薬を、抗アレルギー剤として飲むことがありますが、アレルギー性鼻炎には効きません。気管支喘息にはキプレス、シングレアが有効ですが、オノンは気管支喘息、アレルギー性鼻炎のいずれにも、海外では評価されていません。

★外用薬
鼻のスプレー
第一は、インタール系の吸入スプレー(インタールのほか、ジェネリックあり)を毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。75%の人に効果があると言います。これは、予防薬で、使いだして3~7日かかって効果がでます。
第二は、第二世代の抗ヒスタミン剤の吸入スプレー(ザジテン、スプデルなど)で、これも毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。

◎どうしても、以上の薬でも、鼻水がひどくて止まらない時には、ステロイドのスプレー(フルチカゾンなど)を併用します。
 これを単独で使用する時は、初期には各鼻孔に1回ずつのスプレー噴霧を1日2回し、3~4日後に症状が改善したら減量して、1日1回の維持療法とします。
副作用は、結核菌をもっている(ツベルクリン反応強陽性)人の結核の発病と、1日中頻繁に使うと、副腎抑制を起こします。
鼻づまり対策の点鼻薬
 鼻づまりは悩みの種です。特効薬はありませんが、血管収縮剤(トーク、プリビナなど)を、単独または抗ヒスタミン剤の飲み薬と併用すると少しは楽になります。しかし、この薬は、長期間続けると鼻の粘膜が委縮して、慢性萎縮性鼻炎になるので、毎日使うなら5日で中休みを二日とりまた使うようにします。時々使っているなら、問題はありません。
点眼薬(目のかゆみに)
〇予防の目薬
第一は、インタール系の点眼薬(インタールのほか、ジェネリックあり)を毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。
第二は、第二世代の抗ヒスタミン剤の点眼薬(ザジテン、スプデルなど)で、これも毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。これは、予防の効果と、治療の効果があります。
〇目のかゆみには、―ステロイドの点眼薬(フルメトロン0.02%、0.1%)を使います。即効性がありますが、副作用は緑内障を悪化させることと、コンタクトレンズのかびをふやすことで、使えません。一時的に使うには、問題ありません。長期に使うには、予防の目薬を勧めます。
〇薬がない時は、水で目を洗うことです。冷たくしてもかゆみが楽になります。

★してはいけないもの
 ステロイドの注射(筋肉注射)、ステロイドの飲み薬(代表的なものはセレスタミン)の長期使用と子どもへの使用。子どもの成長を抑制するし、感染を起こしやすいです。
 ステロイドは外用で使うのが安全で副作用が少ないので、お勧めします。
 鼻の粘膜を焼くことは、長期にわたっての副作用や安全性が確立されていません。

☆その他
減感作療法は、ブタクサや草花では部分的には改善しますが、スギでは確認されていません。

〇花粉のシーズン(代表的なもの)
2~4月(ゴールデンウィーク前までに終わります)はスギ、4~5月は、ひのき、松類、5~7月はイネ科植物、カモガヤ、ハルガヤ、小麦、8~11月は、ブタクサなど。

アレルギーとは何か

2015-03-03 11:38:11 | 健康・病気
アレルギーとは何か―アレルギーの話―

              アレルギーの話 Ⅰ       
はじめに
 人間は、昔よりは、より多くのことを知っていますが、まだ僅かなことしか知っていません。知らないことの方が多いのです。今後もっと多くのことが判って来るでしょう。また、それ故にいろいろな意見があります。私の意見は、私が医学、科学の歴史から学び、現代医学とつき合わせて考えたことであり、今後書き直されることになるでしょうが、今、私が考える最善のものです。残念ながら、この考え方は、現代医学では、特に日本では少数派であり、賛同する医師は余りいませんが、私の考えを評価するのはあなたです。試みにして見て、うまくいくなら取り入れて下さい。でも、それには社会という障壁があり、それを乗り越えなければ、うまく行かないし、自分のこころを変えないとうまくいかないでしょう。それが難しいのです。そこから先は、心療内科(こころから来る身体の病気を、こころを変えることで治す科で、精神科ではないのですがよく混同されるし、実際に心療内科を標榜している医師は精神科医が多いので、体の病気を治してくれません。)になります。
(ここからは、わかる所だけ読んで、わからない所はとばして読んで下さい。医師が読んでもよいように書いてありますから。)

§1.アレルギーの話
◎現在は、アレルギーとは「本来なら無害のはずの抗原に対する免疫応答によって起こる疾患」と定義されています。自分の身体の組織傷害を起こし、重篤な疾患にいたる可能性のある有害な免疫応答の一つが過敏反応です。その一つがアレルギーです。
 過敏反応は四つに分類されます。
Ⅰ型、  IgEを介した過敏反応、通常のアレルギー。アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレギー性結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、全身性アナフィラキシーなど。
Ⅱ型、  IgGを介したもので、細胞表面や間質の抗原に直接反応することで組織傷害が起きる。薬物アレルギー(ペニシリンなど)。
Ⅲ型、  IgGを介したもので、可溶性の抗原に反応して免疫複合体が形成され、これが引き金となった反応により組織傷害が起きる。血清病、アルツス反応など。
Ⅳ型、  T細胞を介した反応で、三つのタイプがあります。
  一、Th1細胞によるマクロファージの活性化で起こる組織傷害で、その結果として炎症反応が起こる。接触性皮膚炎、ツベルクリン反応
  二、好酸球優位の炎症反応と関連するTh2細胞活性化による組織傷害。慢性気管支喘息、慢性アレルギー性鼻炎
  三、細胞傷害性T細胞による直接の組織傷害です。接触性皮膚炎(うるしなどのかぶれ)など。
 アトピーとは、普通の環境に存在する多種の抗原に対してIgEが応答する傾向を言います。先進国に多く、発展途上国に少ないのです。

◎アレルゲン(アレルギーを起こす原因)の特徴
IgEの産生をうながすのは
1)蛋白だけ。それがT細胞の反応を誘導する。もし蛋白質でなければ、中に入っている微量の蛋白か、ストレスによるものか、精神心理的なものか。
2)比較的小分子で粒子として粘膜に拡散する。小分子量です。
3)可溶性で花粉やダニの糞のような乾燥粒子によって運ばれ溶出します。
4)典型的にはきわめて少量が免疫系に提示されます。それによってT細胞が活性化します。IL-4産生CD4。普通、年間1μgを超えません。きわめて少量で起きるのです。
5)安定性。乾燥した粒子の中でも活性があります。
6)酵素としての機能をもつ。しばしばプロテアーゼといわれます。
7)すべての人が同じ反応をするのではない。その人のT細胞応答を必要とします。

◎アレルギーは遺伝的要因プラス環境因子で生じる。
 遺伝子は、第11番染色体と、第5番染色体にある可能性が高いのです。
 
◇アレルギーは体質ではありません。体質とは何か。現代では、医学的には使われなくなった用語ですが、社会的には氾濫しています。体質の定義ができていません。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましんは、関連のある病気で家族内発生率は高いのですが、遺伝や体質は証明されていません。身内に一人もいなくても出ることがあるし、親が喘息でもこどもが喘息にならないこともあります。なぜでしょうか。
◇遺伝的に同じであるはずの、一卵性双胎の一人が喘息で、残りの一人が喘息である確率が、25%といいます。これについては、8から80%といろいろなデータもあり、意見が分かれています。
 最近の遺伝子と免疫の研究では、遺伝子と、それにスイッチを入れて遺伝子を働かせるものがあり、それが環境因子(狭義の意味では、自然環境だけであるが、広義の意味では、社会環境、そこから来る情緒的環境、精神的、心理的環境を含み、俗にいうストレスが含まれます)です。つまり遺伝子と環境の相互作用であるというのが、今の遺伝子学や免疫学の考え方です。
 遺伝子学からいうと、遺伝子を持っていても、その遺伝子の働きが発現されなければ、病気になりません。遺伝子のスイッチをオンにするのが環境因子です。だから環境が変れば、病気も変ります。
◇アレルギーマーチという小児科医が多いですが、私は、それは、子どもは成長するに従って、精神的にも肉体的にも成長し、また、環境も小、中、高、大学と進学しても変るし、親の転勤によっても変り、それによって、なる病気も変っていくと考えます。
 何もアレルギーは、必然ではありません。うまく抜け出せればよいのです。でも、それが、現代の日本社会では難しいのです。一方的な考えの法律や、抜け道だらけの法律や、憲法違反の法律や、それに乗じたいろいろな医師、製薬会社があり、その反動で根拠のない漢方、民間療法、代替医療がはびこっています。代替医療の研究では、すべて有効とは考えられず、一部は有効ですが、無効のことも多いことも事実です。
 世界には、多くの異なった医療があります。現代の西洋医学、それに影響を及ぼしたイスラム医学(ヒポクラテス医学はイスラムを通して西洋医学に取り入れられました)、各地の伝統医学(中国医学、漢方医学、チベット医学((チベット仏教の密教))各地の先住民族医学)、ホメオパシー、カイロプラクティス、宗教医学など。
 しかし、どの医学でも、100%効果があるものはありません。効果がある場合も、ない場合もあります。なぜでしょうか。それはまだ、すべての病気の治療をできる医学がないということでもあります。

 私は、先に述べた、遺伝子と環境の相互作用で病気が起きると考え、その要因の一つをなくせば、病気は治ると考えます。もちろん、環境因子には、細菌、ウイルスその他の微生物、寄生虫、動植物、食物などもあります。それに加えて、社会環境、特に戦争、それに抑圧された社会(保育所、幼稚園、学校、職場)、家庭、地域などが含まれます。
 母原病という医師もいますが、それは一部しか見ていない医師の考えと思います。母親も、自分の親や生まれ育った環境によって変り、しかも現在の置かれている環境(特に家庭内)によっても左右されているからです。自分の育った環境がよくなかったから、そういう思いを子どもにさせたくないと思うこころが、子どもを変えてしまいます。自分と同じにしたかったら、同じ環境にして育てることです。少しでも違ったら、子どもは違う道を歩んでしまいます。
 自分が子ども時代にいやだったことを、子どもにさせないと自分と違ってしまいます。

◇アレルギーにはいろいろ種類があります。(前にも書きましたが)
  Ⅰ型 アレルギー性(IgE仲介性)-即時型アレルギー-アトピー、アナフィラキシー
  Ⅱ型 抗体による細胞毒性反応-(IgMまたはIgG仲介性)-輸血反応(溶血)
  Ⅲ型 免疫複合物の形成-(IgG、IgM、IgA)-血清病
  Ⅳ型 古典的遅延型アレルギー反応-ツベルクリン反応、過敏性肺臓炎、ベリリウム中毒
◇食事アレルギーとじんましんは別の病気です。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、じんましんは関連のある病気であすが、薬物アレルギーとは別の病気です。

§2.人はなぜ病気になるのか(別項―人はなぜ病気になるのか―参照)
◇人は環境に適応できない時に、病気になるのです。
現代では、社会環境に適応できない時、すなわちストレスがあると病気になるのです。
 最大の原因はストレス。ストレスから病気になるのです。その時、その人の弱点に病気が出てくるのです。
◇アレルギーは親からもらった身体の弱点。弱点つまり遺伝的素因(遺伝子はまだ確定していない)は受け継ぐが、病気は受け継がないのです。弱点を受け継ぎ、それが環境によって、発病したのです。

§3.病気とは
 病気は身体やこころの変調です。こころと体は、メタルのうらおもてですから、連動しています。こころが変化すると、体も変化します。逆もあります。
病気を嫌わないで、受け入れて、なぜなら病気はあなた自身ですから。自分で自分の病気になっている身体やこころをなだめてください。不安になると病気は悪くなります。

§4.一病息災
 1ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると他からあふれないように、1つの病気にかかると他の病気にかかる率が低くなります。水痘にかかっている間は、喘息の発作は起きません。
 1つの病気を、手術や薬で治してしまうと、ストレスがなくならなければ、また別の病気にかかってしまいます。また、同時にいくつもの病気にかかってしまう人もいます。100歳で自立している人は、ほとんど病気をしないで長生きしているのです。アレルギー性の病気にかかると、他の病気にかかる率は低くなるのですが、ストレスが多ければ、他の病気にもなります。

§5.なぜアレルギーが増えたのか。
 最大の原因は、環境の悪化です。戦後日本の経済は大きく発展しました。特に高度経済成長時代と云われる昭和30年代後半から昭和40年代に、産業公害が大きく広がり、人間の住みにくい環境になっていきました。それは自然環境と社会環境の両面があります。
 喘息は、高度経済成長時代に増加し、その後1980年代に成人のスギ花粉症とこどものアトピー性皮膚炎が増加していきました。
 自然環境が悪化すると共に、人がのびのびと生きていけなくなった社会環境になりました。
 保育所、幼稚園、学校、職場、住んでいる地域と、どこでも管理が進み、個人の自由が無くなってきています。いつも他人の顔色を気にして生きている暮らしにくい社会になってきました。

§6.アレルギー性の病気の起きやすい自然環境
 工場の煙、自動車の排気ガス、光化学スモッグ、杉花粉、 気温や湿度の変化、天候の変化、梅雨、台風、春風(大陸からの) 住環境の悪化、過密住宅、サッシによる家の気密化。畳からじゅうたんへ。木造からコンクリートへ。 食品添加物や、黄砂PM2.5なども。
 
§7.アレルギー性の病気の起きやすい社会環境
 先進国に多く、発展途上国に少ないです。しかし途上国でもどんどん増えています。
 ところが先進国の中では、スカンジナビア諸国が少ないのです。これは人間が暮らしやすい社会だからではないでしょうか。
 都市に多く、農村部に少ない。
社会的要因は、個人では解決できないです。--現代人病、文明病。
日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えています。
 喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では一時8%以上でしたが、今は工場が減り、減少しています。
 スカンジナヴィア地方では特に低いことも特徴的です。人にやさしい社会だからでしょうか。

 例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民(インディアン)は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるといいます。ところが居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。
 またアラスカのイヌイットも、昔は、喘息はほとんどなかったのに、次第に増えています。

例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちでしたが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったといいます。これを横浜喘息と呼んだそうです。

例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、結核では免除されず、喘息はだめで徴兵されませんでした。

例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。
 現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。若い人の労働条件が悪く、正規雇用も減り、欧米化しているためではないでしょうか。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因と考えられています。

§8.ストレスの話
 ストレスになるものは、環境です。
 ストレスを回避するにはどうするか。
 いやなことはしない。いやだなと思って我慢せず、仕方ないさ、まあいいや、そういうものだと思う。子どものストレスは、大人次第と、環境が、神学や就職、結婚などで変化していきますから、解決できることが多いですが、大人のストレスは、なかなか環境を変えられず、解決が難しいです。他の人(相手)を変えたければ、自分が変わることですが、それが難しいし、相手を変えることがそもそも難しい場合もあります。
 日本の社会を、北欧なみの、人にやさしい社会に替えない限り、難しいです。必ず、選挙権を行使し、あきらめず、少しでもましな社会を作ってくれそうで、選挙に勝ちそうな候補者に投票しましょう。選挙に勝たなければ、何も実現しません。あなたが立候補してもいいのです。政治を変えるには、政治家になるか、政治家を動かすしかないのです。
 国政は難しいなら、市区町村レベルで、動かしましょう。小異を捨てて、大同につきましょう。よりましな、しかも勝つ可能性のある候補者に投票しましょう。自分の支持する政治家を動かしましょう。現代社会は、政治に左右されています。政治を動かさない限り、今の現状は変わりません。現状を変えるには、政治を変えるしかありません。病気を治すには、政治を変えることです。アレルギー性の病気の少ない、北欧社会を目指しましょう。
 
§9.こどものストレス
 まわりの人との人間関係からくることが多いようです。
 赤ちゃんは、まず母親、兄や姉、祖父母、父親など。そして保育所。
  赤ちゃんのストレスは、別のプリント参照してください。赤ちゃんを可愛がり過ぎないでください。さわったり、だいたり、赤ちゃんが要求していない時は、しないでください。
 幼児では、それに幼稚園。そこでの鼓笛隊、剣道、はだし、裸、プール。
 学童では、学校、先生、同級生、いやがらせ、いじめ、塾、習いごと。公文式、そろばん、習字、ピアノ、スイミング、剣道、サッカー、野球。頑張らせることと、強制することがよくありません。最近わかったことは、スポーツを明治時代に日本語に翻訳する時に、遊戯という言葉も使われたそうです。つまり、楽しむもので、体を鍛えるものではないのです。しかし、中学、高校の部活や大学の運動部に問題があります。それで、それがいやで、大学の山岳部などは、なくなってきているようですし、相撲は中卒で相撲部屋に入門するより、高校や大学の相撲部の方が、練習が厳しく、それで大学出で関取になる人が増えているのです。
 今の部活には問題が多いのです。それで、サッカーのJリーグのように、若手世代を下部組織で育てるシステムのほうがよいのです。若い時に、無理をさせず、トップチームに入ってから、活躍するようにしどうすることが大切だと思います。
 いやなことをやらせないこと、やりたがったことでも、いやになったら、やめさせましょう。
 子どもにやらせたかったら、3~4歳ころから、いやがらないように、やらせることです。そして、いやな思いをさせないで、続けさせることです。続けることに、希望を持たせることです。

§10.ストレスに強くするには
 叱らずに、ほめて育てること。ほめてこどもを操縦すること。
 自己主張を強くするように育てる。
 母親の言いなりになる子は、病気になりやすい。
 喘息になる子は、普段は自己主張が強く、人をかきわけても前へ行こうとするのに、強く云われると言い返せずに黙ってしまい、いやだなと思いながら我慢するタイプが多いようです。

§11.アレルギーは変化します
 アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。
 例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。

 例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。

 例3;国立病院時代でも、前の診療所でも、特定の抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。薬のアレルギーも治ることがあるのです。

 例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生の、うるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かったのです。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。

 例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。
 この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。


おたふく風の話

2015-01-11 18:46:38 | 健康・病気
おたふく風の話
☆おたふく風は、流行性耳下腺炎とも言い、全身の腺組織と神経組織を好んで侵すムンプスウイルスによる急性の全身の感染症です。
☆普通は、唾液腺(特に耳下腺)が腫れて大きくなり、痛いのが特徴です。
☆ムンプスウイルスは16~18日の潜伏期を経て60~70%が発病します。不顕性感染(かかったのに症状が出ないままに治ってしまうこと)は30~40%ですが、ある追跡調査によれば不顕性感染は4歳までで、4歳過ぎると必ず発病したと言います。
☆多くの場合、両側(たまに片側)の耳下腺炎になります。それに加えて比較的多いのは、同じ唾液腺の顎下腺と舌下腺、それに睾丸炎、髄膜炎です。膵臓炎、卵巣炎、甲状腺炎、涙腺炎などは比較的まれです。これらの様々な症状は、耳下腺炎に先立ったり、後から来たり、中には耳下腺炎を伴わないこともあります。
☆耳下腺炎では、典型的には発熱、頭痛、食欲不振とだるさがあります。24時間以内に「耳が痛い」と耳たぶのそばと下に、U字型に耳下腺のある所を痛がり、食べる時にあごを動かすと痛みが強くなります。それから耳下腺がはれて1~3日で急速に大きくなります。熱は普通1~6日で下がり、熱がひいてから耳下腺のはれがひきます。
☆耳下腺は普通では触れませんが、U字(馬蹄)型で、はれが急速に大きくなり、その間ひどく痛いです。痛みは、はれがその頂点に達するとひいてゆき、はれも3~7日でひきますが、はれだしてから6~10日続くこともよくあります。普通は一方がはれてから2~3日以内にもう一方もはれてきます。時々両側同時にはれます。しかし、ほぼ25%は片側だけで終わります。
☆顎下腺のはれは、下顎の角の下がはれます。耳下腺がはれない場合は、リンパ腺のはれとの見分けが難しいです。
☆舌下腺のはれは、普通顎の下の中央の部分か、口の中の舌の下がはれます。唾液腺三つのうち一番まれです。
☆睾丸炎は、おとなの男性のもっとも多い合併症です。成人男性の20~30%に片側におき、両側に来るのは2%です。流行時にはもっと高率になります。普通は、おたふく風にかかって始めの1週以内(遅くとも2週以内)におきます。睾丸の痛みが特徴で、それで大人では痛くて入院する人もいます。子どもでは、精通(精子ができる時期)以後になることが多いですが、まれには幼児でもなります。
 睾丸炎は、突然発熱、寒む気、頭痛、吐き気、下腹部痛と共に始まります。熱は、正常から、41度までいろいろで、3~5日間がほとんどで、まれに1週間を超えることがあります。熱と共に睾丸がはれてきて痛くなります。子どもでは、下腹痛があったら、睾丸を触って見て下さい。小さい子は睾丸が痛いとは言いません。
 不妊症はまれで、多分片側が多いせいでしょうか、ほとんどありません。しかし、男性も女性(卵巣炎)も、否定はできません。
☆髄膜炎、髄膜脳炎
 検査すると非常に多く、約5~10%に起きると言われています。しかし、ほとんどは軽く、頭が痛いくらいで、特に治療をしなくても治りますが、ひどい場合は入院が必要で、約1%以下と言い、髄液穿刺をして髄液圧を下げると、頭痛は治ります。
 髄膜炎は、普通耳下腺炎に続く3~10日後に発病します。2週間過ぎたら起きません。症状は、発熱、吐き気、痛み止めの効かない頭痛が特徴です。まれにけいれんがあります。
☆膵臓炎
 まれですが、しばしばひどくなります。
ひどい上腹部痛で始まり、発熱、寒む気、吐き気と繰り返し吐きます。この症状はしだいに3~7日かけておさまります。胃腸炎と違って、まだら吐きが特徴で、飲んだり食べたりしても、吐く時と吐かない時があり、連続して吐く時は、絶飲食にして点滴が必要ですが、滅多にありません。この時は、脂肪が含まれるようなもの、牛乳、肉、魚などを食べると、腹痛と吐き気がひどくなりますから、食べないようにして下さい。
☆その他、涙腺炎、卵巣炎、甲状腺炎、乳様突起炎など
☆合併症
 聴力障害。極くまれと言われていましたが、最近は1万人に一人と言います。聴神経炎でめまいや吐き気、耳鳴りなどを伴いますが、無症状のこともあります。片側が多いです。
 神経系合併症。極くまれ。頑迷神経炎、脊髄炎、脳炎、―後遺症や死ぬことも。
 水頭症
 心筋炎(成人に心電図上では15%位ある)、心外膜炎。
 関節炎、糖尿病、肝炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血。
☆治療
 おたふく風そのものには特にありません。合併症などにはあります。
☆予防
 3~4歳過ぎたら予防接種をしたほうが良いと思います。小さいうちは、軽く済むことが多いので急がず、大きくなったら、特に精通以後の男子にはお勧めです。女性も大人になってからかかると、大変なようです。
☆生活
 軽い場合は、家の中にいるだけで、後は普通でよいです。入浴可。熱が高い時でも元気があれば、ぬるま湯を浴びるのは可。具合が悪い時はやめましょう。寝ていなくても楽にしていればよいです。下痢や吐き気がなければ食事も普通でよいです。
 痛みが強い時には耳下腺部を冷やし、それでだめなら鎮痛剤を使います。かむと痛いので、食べる時に痛がらない物や流動食を食べていればよいです。膵臓炎がおきたら、牛乳など脂肪が含まれる物を避けること。
☆しばしば繰り返して、おたふく風にかかったと言われることがありますが、本当のおたふく風は一度で、他は反復性耳下腺炎といわれる細菌や他のウイルスによる耳下腺炎です。これはほとんどは片側で終わり、まれに両側になることがあります。抗体検査をすれば、かかったかどうかが判ります。
☆私の理論では、おたふく風と人間との適応関係ができつつあり、病気の症状も軽くなっている筈です。合併症の確率も過去のもので、現在はもっと少ない筈です。無症状の人も増えていると思います。無症状の保菌者(キャリヤー)もいる筈です。しかし、それは確かめる方法はありません。統計が取られていないし、一般に関心が持たれていないし、病原環境論など考えていないからです。今後の動向を歴史的に見ていくしかありません。


福島原発事故による甲状腺がんが発生か

2015-01-11 16:00:08 | 健康・病気
 福島県県民健康調査の結果が発表されています。
ひどいことに、国は福島県民のしかも当時の子どもだけを対象に、甲状腺がんの発見だけにしぼって、検診をしています。ほかの周辺の県(宮城、茨木、栃木、群馬、それに飛び地のホットスポットの埼玉、千葉、東京)は対象にならず、また、当時の大人も対象外。しかも、甲状腺がんだけしか検診しないというものです。
 東京新聞の記事では、12月25日に福島県県民健康調査検討委員会の会合がありました。その報告は、公表されている筈ですが、まだ入手できていません。記事の内容は、関係者からの取材とのことでした。
 その内容は、甲状腺検診は、2014年4月から二順目に入り、一巡目で異常なしと判定された子どもから、4人のがん疑いの子が見つかったのです。
 これは、明らかに原発事故による甲状腺がんであることは明らかです。
 一巡目の検診では、甲状腺がんとその疑いの子どもが109人見つかり、その内85人が手術を受け、一人は良性でしたが84人はがんで、二人に転移が見つかりました。これには、元々がんをもっていたものが、検診で見つかったと福島県の検討員会は言っていますが、それに対し、放射線誘発のがんが全部ではないにしても、含まれていると主張する私たちもいます。
 確かに、チェルノブイリ原発事故では、4年目から子供を中心に甲状腺がんが急増しました。もちろん、甲状腺がんだけでなく、白血病やほかのがんも増えて行きました。さらに、大人でも、がんで死亡する人も多くなったし、他にいろいろな病気も増えて行きました。しかし、国際的な原子力推進機関は、子どもの甲状腺がんだけしか、原発事故の被害としか認定していません。しかも、現在でも事故後に生まれたこどもからも、甲状腺がんが出ていますし、白血病も少なくなく、さらに今は脳腫瘍の子どもも増えています。先天性の病気の子どももふえています。特徴的なのは、骨の異常です。私の所属する「チェルノブイリ子ども基金」も、もう20年以上、現地の子どもの支援をしてきましたが、まだまだ支援が必要ですが、ベラルーシやウクライナは、当初認めませんでしたが、その後原発事故の影響を認めて、いろいろな法律を作り、被曝者の支援を行うようになったのですが、途中で国の財政が行き詰まって、予算が削られてきています。
 私たちは「未来の福島こども基金」という団体を作り、福島の子どもたちの支援も行っています。
 私は、小児科医としてかかわってきたことに、昔、子どもの白血病の治療をしていました。その頃、妊娠中の母親の骨盤計測にレントゲン写真を撮っていましたが、統計的にそれが子どもの白血病の発病率を高めていると言われていました。チェルノブイリの経験からも、3年したら白血病が出て来ていいはずですが、報道されていません。福島県は、医療機関はほとんどが、福島県立医大の出身者が多く、また医師会も福島県立医大の影響下にあり、それで公表していないのかも知れません。というのは、甲状腺検診も、他の医療機関ですることを牽制していました。しかし、今はそれも崩れて来ています。福島県の保険医協会や民医連も県立医大に逆らっていません。
 私は、年間1ミリシーベルトの被ばく地に、子どもやこれから妊娠する可能性のある女性の居住を、心配しています。ベラルーシとウクライナでは、できるだけ避難すべき地域になっています。年間5ミリシーベルト以上は、避難地域です。しかし、それを適用すると、福島県は崩壊しますから、政府はそれをしていません。福島県の三大都市のうちの福島市、郡山市が含まれてしまうからです。もう一つのいわき市の一部も含まれてしまいます。だから、年間20ミリシーベルトで大丈夫だと言っているのです。このままで行けば、今後甲状腺がんだけでなく、白血病やいろいろながん、いろいろな病気特に循環器疾患も増えてくるでしょう。しかし、日本のがん統計は、まだ不十分で、信頼できるものではありませんから、どこまで表面化するか判りません。
 これからが心配です。
 

A群溶連菌感染症の話

2014-12-16 09:54:50 | 健康・病気
                溶連菌感染症の話   
         ―溶連菌なんか恐くない。でもちょっと気を付けようという話―
☆昔、猩紅熱(しょうこうねつ)と呼ばれた病気が、ありふれた細菌である、溶連菌によって起きることが判った為、当時の伝染病予防法からはずす為に作られた病名でした。その後できた感染症新法からは、はずされていますから猩紅熱という診断は問題はなくなりました。
 所が、溶連菌が簡単に検査できるようになり、またいろいろな続発症を起こすことが判ったために、溶連菌によって起きるすべての病気を溶連菌感染症と呼ぶようになったのです。
☆溶連菌感染症とはどんな病気でしょうか。
 溶連菌は、どこにでもいる菌で、黄色ブドウ球菌と共にありふれた細菌で、人間に病気をひきおこすことのできる代表的な細菌の一つです。もしかして、あなたののどに住んでいるかもしれません。中でもA群溶連菌が、いろいろな病気を起こします。溶連菌の慢性咽頭保菌者から、他の人に感染することはまれです。
 A群溶連菌について、アメリカの「ハリソン内科書」の旧版では、「学童小児の間では、咽頭(のど)に菌を持っている率は、15~20%報告されている。成人はかなり低い。」と書かれていました。日本でも一般的には、急性気道感染症の約8~15%から検出されると言います。また、以前、河村元順天堂大学耳鼻科教授の調査では、扁桃炎の74%から検出したと報告されています。
 また、やはりかなり前になりますが、戸田市の耳鼻科医の調査では、戸田市の健康な小中学校学童の咽頭からのA群溶連菌の陽性率は、7~20%でした。(1974年夏17.6%、1975年冬19.7%、1975年夏7.4%)同時に調べた血清抗体ASOの上昇している児童の率は、15~37%と高く(1974年夏15.4%、1975年冬36.6%、1975年夏26.4%)、ごくありふれた、知らずにかかっていたりする菌なのです。
☆溶連菌とは、溶血性連鎖状球菌と言い、培養液の中で血液を溶かす作用をもつ(溶血性)、鎖のようにつながった(連鎖状)、球型の細菌(球菌)です。溶血には3種類あり、β溶血が完全溶血を起こし、20以上の群がありA~Tまであります。その中のA群の溶連菌が、いろいな病気を起こしています。新生児では、B群溶連菌が病気を起こしますが、他の年齢では起こしません。C、G群などが病気を起こすことがあります。
A群溶連菌には、細胞表面のM蛋白により、100以上のM型があります。特定のM型と特定の溶連菌疾患との関連性が判ってきています。主に咽頭炎を起こす菌株と主に皮膚感染症を起こす菌株があるようです。
☆ヒトはA群溶連菌の自然宿主です。そしてあらゆる疾患を起こし得るのです。新生児では、おそらくは母体より獲得した移行抗体があるために、この菌による病気を発症することはまれです。
咽頭感染症の発症率は、3歳を超える幼児と年少の学童にもっとも多い。時季は、冬と早春にもっとも多いようです。感染しやすい条件は、密集と接近で、学校と家庭では感染の危険が高いようです。診治療の場合、空中を漂う唾液と鼻腔分泌物によって拡散するためです。
治療を開始後24時間経過すれば感染性はなくなります。咽頭炎の潜伏期間は、通常2~5日です。
 皮膚感染症は、夏、皮膚が露出され、擦過傷や昆虫刺傷が生じやすい時期に多い。通常A群溶連菌が皮膚に先行して定着していて、そこに開口損傷(外傷、火傷、刺傷)が生じると感染症を起こす。健康な皮膚を貫通することはできないからです。感染は接触感染です。指爪や肛門周囲部に常在しやすいです。
 一般に咽頭炎も膿痂疹も、人数の多い家庭や、衛生状態の悪い環境で生活する小児に発症しやすいようです。
☆劇症型は年少者と高齢者にもっとも高いです。リスクファクターは、小児では水痘で、高齢者では、糖尿病、免疫不全症、慢性肺疾患、慢性心疾患などです。侵入門戸の50%は不明ですが、多くは皮膚や粘膜だと考えられています。咽頭炎からの続発はまれです。
☆A群溶連菌の病気は急性咽頭炎と皮膚感染症です。
(1)急性咽頭炎
 急にのどが痛くなり、特に飲み込む時に痛いのが特徴です。同時に、頭痛、だるさ、発熱(37.5℃以上)、食欲がないなどが主な症状です。
① 咽頭扁桃の強い発赤、②扁桃に白いものが付く、③上の顎からのどにかけての出血斑、④頸部リンパ節炎、が特徴で、①②③、①③、①④の組み合わせが溶連菌を疑うポイントです。しばしば口蓋垂(のどちんこ)も赤くはれます。
 〇猩紅熱――咽頭炎の原因が、A群溶連菌の中の発赤毒素(発熱毒素)を産生する種類で、まだかかったことのない人の時に、咽頭炎に続いて猩紅熱が出て来ます。猩紅熱は、全身の細かい赤い発疹が一面にくまなくでき、「金太郎の火事場見舞い」という程、見たところ真っ赤に見えます。その他、口の周りが白いことと、いちご舌があります。不全型は見分けが難しくなります。発赤毒素は3種類あるので、まれに二度なることがあります。
 〇合併症
 頸部リンパ節炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、中耳炎、乳突洞炎、副鼻腔炎、まれに肺炎。
 溶連菌感染後、時間をおいて発病するのに、リウマチ熱と急性腎炎があります。またヘノッホ・シェンライン紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)も起こすことが疑われています。
 リウマチ熱になるのは、咽頭菌株の数種であり、すべてではありません。リウマチ熱の発生率は、近年先進国では大幅に減少し、10万人に0.5人と言います。減少したのは、先進国では抗菌剤療法の開始以前からであり、生活状態の改善が根底にあるのではないかと考えられています。
 急性(糸球体)腎炎は、腎炎を起こす型の溶連菌にかかった時だけで、発病する(顕性)人1人に対し、発病しない(不顕性)人3~4人の割で、必ずしも発病するとは限らないのです。しかも、咽頭菌株は少数で、皮膚菌株の方が多いのです。

(2)皮膚感染症(膿皮症)
 丹毒、膿皮症、膿痂疹(とびひ)、蜂窩織炎、リンパ管炎、肛門周囲皮膚炎、膣炎、
 皮膚につく型の溶連菌によって起きます。皮膚局所の消毒は、ほとんど効果がありません。
リウマチ熱は起こさないが、急性腎炎を起こすことがあります。
 〇合併症
 菌血症から、全身に広がり、(A群熔連菌性)トキシックショック症候群、壊死性筋膜炎、髄膜炎、肺炎、腹膜炎、産褥敗血症、化膿性関節炎、筋炎、外科創部感染症、を起こすことがあります。
☆治療
 ペニシリンが有効で、ペニシリン耐性はほとんどありません。PC-V(ペニシリンV)と言う一番安い薬はも海外では生産され、アメリカでは、それを10日間飲むことを勧めています。しかし、日本では薬価が安く利益がないので生産されていず、もっと薬価の高いペニシリン系薬やセファロスポリン系薬が使われています。そうすると5日間投与で有効と言う報告や、アモキシシリン(ペニシリン系薬)の一日一回療法が有効と言う報告もあります。
 10日間使うのは、リウマチ熱を抑止し、臨床経過を短縮し、他人への感染を防ぎ、化膿性合併症を阻止するためと言います。だから、前述のように、アメリカのPCVではなく、高い薬(主にアモキシシリン)ですから、本当に10日間飲む必要があるかどうかは判りません。しかもペニシリン治療後の患児の約20%が保菌を続けていると言う報告もあります。
 でも慢性保菌者は他の人に感染しないと言います。それで治療後、除菌を確認することは推奨されていません。
 ペニシリンアレルギーの人は、セファロスポリン系薬剤を使用しますが、それにもアレルギーがある人には、エリスロマイシンを使用します。
☆昔私が勤めていた、国立病院機構埼玉病院では、溶連菌感染症が多く、耳鼻科でも小児科でも、溶連菌がありふれた咽頭炎、扁桃炎、中耳炎などでしばしば見つかり、また猩紅熱、急性腎炎、アナフィラクトイド紫斑病が多く、リウマチ熱は少なかったです。紫斑病になると紫斑病性腎炎も少なくなく、これは急性腎炎と違って慢性化するので困りました。急性腎炎は、当時の都立清瀬小児病院(現在は府中の都立小児医療センターに統合された)との共同追跡で、10年間以上は再燃はありませんでした。余りにも溶連菌感染症が多いので、当時の都立小児病院の若手小児科医が、新座市のある小学校の、登校した児童の咽頭培養を行なったら、僅かでも出たのが1~2割あり、特に溶連菌が沢山出たのが数十人出たのですが、治療することもできず、そのままで家族に知らせただけでしたが、特に何かの病気が流行することもありませんでした。
 A群溶連菌と自己免疫神経精神疾患との関係が疑われています。特に、強迫性障害、チック症などです。またシデナム舞踏病は急性リウマチ熱の一部と考えられています。
☆最後に
 いろいろな病気を起こす細菌ですが、ありふれた菌で、黄色ブドウ球菌と共に、人と共存している菌でもあり、現在は私の理論である、適応関係が出来つつあり、余程抵抗力が落ちている人でないと、リウマチ熱も、急性腎炎も起きない病気になって来たようです。
 それ程騒ぐことはないですが、ちょっと気を付けていましょう。



RSウイルスの話

2014-11-30 14:26:44 | 健康・病気
RSウイルスの話
 RSウイルスは、ありふれたかぜの原因で、重症化すると1歳未満児の細気管支炎と肺炎、そして乳幼児の気管支炎の主な原因です。年齢が上がるにつれ軽症化します。
 多くは普通の鼻かぜか、発熱を伴うかぜで終わり、まれに気管支炎、喘息様気管支炎になり、極くまれに重症化し、細気管支炎や肺炎になります。
普通の家庭での最大の重症化要因は、赤ちゃんのストレスです。だから、第一児の家庭内保育に少なく、第二児以降と早期の集団保育に多いようです。それで、できるだけ上手に育てましょう。そうすれば、発病しないか、しても普通のかぜで済みます。(乳幼児の育て方は既に書いてあります。)

☆RSウイルスは、毎年冬に発生し、4~5か月間続きます。母親の抗体が胎盤を移行して感染を防御するのは、生後4~6週間とみられています。それで、この間の重症感染は少ないようです。しかし、血液中の抗体では感染を完全には防御できず、環境条件に左右されます。都市部では一回の流行で、約半数が初感染すると推定され、2歳までにはほぼ全員が初感染すると言います。一度感染しても抗体で防御できないので、繰り返し再感染します。小児期には、一回の流行で、10~20%の割合で再感染するようです。生涯にわたって感染を繰り返し、大人ではもっと少ないようですが再感染しているようです。その多くは軽い症状です。
 発病率は、保育所など感染しやすい場所では、初感染でほぼ100%、再感染では60~80%です。症状は鼻かぜと咽頭炎で発病し、発熱は普通で、中には中耳炎を伴うこともあります。発病すると10~40%は、様々な程度の気管支炎、細気管支炎、肺炎を起こします。入院率は1~3%と推定されています。
生後2~7か月が気管支炎、細気管支炎、肺炎の発生率が高く、1歳過ぎると、気管支炎や喘息様気管支炎が多いです。
 再感染は、通常は軽症であり、まれに重症化します。
 社会経済的弱者と密集した生活環境では、気管支炎、細気管支炎、肺炎の発生頻度が高いし、発生時期も早いです。
☆潜伏期間は約4日間です。
☆ウイルスの排泄期間は様々で、気管支炎、細気管支炎、肺炎で入院する場合は5~12日間と言い、3週間続くこともあるといいます。入院する程でない場合は明らかではありません。
☆感染経路は、飛沫感染と手に付着して運ばれて生じます。患児の手によっても、看護者の手によっても広がります。マスクしても、手洗いしても防げません。
 流行時には、再感染した学童から家庭に持ち込まれ、通常は、2~3日で兄弟や親がかぜをひきますが、乳児の場合は重症化しやすく、発熱、中耳炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎を起こしやすいです。ウイルス単独がほとんどで、細菌感染はほとんどないと言います。
☆発症機序は難しく、詳細は判っていません。他のウイルスと異なり、抗体ができても防御できないのが、特徴です。なぜか解明が出来ていません。
☆臨床症状
 乳児の初発症状は、鼻汁と咽頭炎です。咳はすぐ出ることもありますが、多くは1~3日後に出現し、くしゃみや微熱を伴うこともあります。咳が出ると喘鳴が出るようになります。
 軽症ではここまででおさまります。透明な大量の鼻汁が続き、断続的に発熱を伴います。初感染の乳幼児の約7割以上はここまでで、数日のうちに軽快します。約3割で進行し、進行すると、咳と喘鳴が悪化して呼吸困難を生じます。
☆診断
 軽症では、他のウイルスによるかぜと見分けがつきません。
 特徴的な症状は細気管支炎で、そこまで進行すると臨床像・季節・流行状況によってある程度RSウイルスと判断できます。もう一つの特徴は、年長の同居者にかぜの症状が現れることです。検査では、余り情報は得られません。白血球数は正常か上昇(20%程度の人で)します。確定診断は鼻咽頭ぬぐい液からのウイルスの検出ですが、簡単にはできません。迅速診断法も検査キットがありますが、感度は70~90%と言われ、保険適用は限定されて、普通にはできません。
☆治療
治療は対症療法しかありません。合併症には、それなりにあります。多くの乳児は軽度から中等度の脱水症状がありますから、できるだけ水分補給をします。喘鳴には、エピネフリン(ボスミン)の吸入が有効なことがあります。
☆予後
 重症感染を起こすのは、環境因子が大きいです。環境因子には、社会経済的弱者と、密集した保育環境と、家庭内のストレスです。入院率は1~3%以下で、入院した乳児の死亡率はその約2%で、ほとんどがハイリスクの病気(未熟児、神経筋疾患、先天性肺疾患、先天性心臓病、免疫不全症、ダウン症候群)を持った乳児です。
☆予防
 RSウイルスのワクチンはありません。
ハイリスクの乳児には、パリビズマブ(抗RSウイルス抗体、商品名シナジス)を、月一回筋注しますが、個々の症例によって使い方が異なり、日本小児科学会では使用のガイドラインを作成しています。



インフルエンザの話

2014-11-28 14:41:58 | 健康・病気
インフルエンザの流行が東京でも始まったようです。まず、予防は人混みを避けることで、高齢者は外出を控えましょう。

     インフルエンザの話2015
今年のインフルエンザは、従来型がほとんどと予測されています。2009年に流行した新型インフルエンザは、以前のソ連型、香港型と同じく、そのまま居ついていて、昨年と変わりはありません。例年は、突然A型が流行し、2~3週間でピークに達し、2~3ヶ月で急速におさまり、その後B型が流行することが普通です。地域的流行があり、通常1~3年ごとに地域的に流行します。
インフルエンザの流行は、子どもの発熱を伴う呼吸器疾患の増加で始まり、続いて成人のインフルエンザ様疾患が増加し、肺炎、うっ血性心不全や慢性肺疾患の悪化などの入院患者の増加が続きます。インフルエンザの罹患率は流行ごとに10~20%です。何か非常に伝染性が強いように思われていますが、新型インフルエンザが流行した時に、2009年の最初の集団感染があった大阪の私立の中高一貫校の生徒550人、教職員95人、生徒の家族2人の計647人から採血。その結果、102人(15.8%)が感染していました。この内98人を分析すると、インフルエンザ特有の症状(発熱38度以上、咳、のど痛)があったのは、44人(44.9%)、インフルエンザの症状に至らない軽症が36人(36.7%)、無症状が18人(18.4%)でした。もちろん全員新型インフルエンザのワクチンを受けていません。それでもこの程度でした。インフルエンザとして発病したのは、全体の6.8%しかいなかったのです。それなのに大騒ぎしました。私の理論から言うと、インフルエンザは人間と適応関係が形成されて、軽い病気になり、特別な免疫力の低下した人しか重症化しない病気になったのです。
一般のA型インフルエンザウイルスは、本来は毒性が低く、重篤な症状を引き起こさないことが示唆されています。B型は広がりにくく、重症度も低いです。大流行はA型により数年に一度発生します。
インフルエンザの典型的症状
1.頭痛、発熱、寒気、筋肉痛、だるさなどの全身症状で始まり、次いで症状はさまざまで、軽いかぜ様症状から、呼吸器症状が少ないが重篤な衰弱を示す状態まで幅広いのです。発病後24時間以内に急激に上昇した38~41℃の発熱は、一般にその後2~3日で徐々に解熱しますが、時に1週間発熱が続くこともあります。頭痛は頭全体のことも前頭部のこともあります。筋肉痛は全身に起きり得ますが、下肢と腰で最も多く、関節痛も出ます。
2.呼吸器症状は、熱が引く頃からひどくなることがあります。のど痛と1週間以上続く咳があり、胸に不快感を伴うことも多いし、眼症状も出ることがあります。
3.合併症のない場合は、激しいのどの痛みにもかかわらず、のどには所見はなく他にはほとんど異常は見られません。明らかな呼吸器症状が見られる場合は、肺合併症を疑われます。
4.合併症のないインフルエンザでは、急性症状は2~5日で改善し、1週間で回復しますが、咳は1~2週間続くこともあります。下痢をしませんが、5歳以下では下痢をすることがあります。大人や8歳以上で下痢をしている人をインフルエンザだという医者もいますが、別のウイルスによる胃腸炎でしょう。8歳以上は胃液の酸によって死滅し、胃を通過できないのです。ですから、インフルエンザウイルスの基礎研究者は、インフルエンザウイルスは、呼吸器内でしか繁殖せず、胃腸や血液内に入らないと言います。これではワクチンを接種して血液中に抗体を作っても、効果が無いのです。今生ワクチンののどへのスプレーの研究がされていますが、もし成功すれば、流行している型(株)が当たれば有効性は期待できますが、これでもはずれれば、全く効果は期待できないのです。
5.特に薬を飲まなくとも、時間さえかければ、自然に治ります。
ヨーロッパでは、薬を処方しません。そして、stay at home と言うのです。ウイルスをばらまかないように、家に居て下さいと言うことです。日本は、薬を出すと医者は儲かるから出すのです。ヨーロッパは、医療は無料の国が多いのです。だから無駄な薬は処方してくれません。しかも、日本では売られていないような、昔の安い薬を今でも使っています。それでも効果があるのです。
私は、今はご希望の方には、抗インフルエンザ薬を出します。説得するのが面倒になりましたから。薬は、期間を短縮しますが、副作用もありますから、気を付けて使って下さい。内服と吸入があります。解熱剤は、病気を長引かせるし、子どもでは脳症を起こす原因になるので使ってはいけません。
合併症
 65歳以上の高齢者(と言いますが最近は75~80歳以上ではないでしょうか。高齢で元気な人が増えて来ましたから。)や、心臓病、肺の病気、糖尿病、腎臓病、免疫抑制剤使用中などの人や妊娠中や乳児に合併症のリスクが高いです。
合併症には、肺炎(8割は細菌性かウイルスとの混合性)、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息の悪化があります。抗生物質は、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの細菌性の合併症の予防に使います。
頭痛、体の痛みには、大人では、我慢のできない時に、解熱鎮痛剤の中で副作用の少ないアセトアミノフェン(カロナール)を使って下さい。18歳未満の小児には、解熱剤を使うとライ症候群(急性脳症で肝臓病を合併して発病し、死亡率50%以上)やインフルエンザ脳症になることがありますから、使ってはいけません。急性期には体を楽にして、水分補給を十分にします。重症であった場合は、回復後徐々に活動性をあげていきます。
治療
 かかっても、5日間くらいじっとがまんしていれば、自然に治ります。でもお薬が欲しい方には、一応あります。
 インフルエンザに対しては、タミフル(オセルタミビル)5日間内服、リレンザ(ザナミビル)5日間吸入、イナビル(ラニナミビル)1回吸入、ラピアクタ(ペラミビル)15分以上かけて点滴静注1回、などがあり、発症後2日以内に治療を開始すれば、病気の期間を1~1.5日短縮します。
抗インフルエンザ薬の副作用には、どの薬もすべてタミフル同様に、まれに神経精神症状を引き起こし、意識が混濁したり、異常行動をとったり、幻覚幻聴がでたりする副作用があります。それでタミフルは、10代には禁止され、他の薬でも未成年では、2日間は目を離さないようにとされています。
 日本では、65歳以上の高齢者とハイリスクの人には、治療を勧められていますが、厚生労働省の見解でも、健康な成人では治療を控えることがあるし、また発病48時間後の場合には、効果が期待できません。65歳以上でも、病気を持っていない健康な人はもちろん必要はありません。ハイリスクの人は、自分で病気と副作用を天秤にかけて、薬を使うかどうか判断して下さい。
 しかし、世界の流れは、前述のように、ワクチンも薬も要りません。ハイリスクの人に効くという、有効性の証明が、ワクチンと同様に薬でもありません。
ワクチン
 まだ生ワクチンはなく、不活化ワクチン(死んでいると推定されているウイルスのワクチン)で、前のシーズンに流行し、今年も流行が予測されるインフルエンザの株(A型2種類、B型1種類)から作られます。不活化ワクチンは、ワクチンウイルスと流行株が同じかまたは非常に似ていれば50~80%の効果が期待されると言いますが、ウイルスは血液中には入らないので、血液中に抗体を作っても効果があるとは思えませんし、実際有効性の証明もありません。感染を予防することはできないが、高齢者の死亡率、入院率を減らす効果があるというのが、アメリカ行政当局の見解です。しかし、昔はこんなことを言わなかったのですから、ワクチンそのものが替わっていない以上、アメリカでも産官学の癒着が始まっていると思います。現実に、利益相反と言って、研究費や旅費などのお金をワクチンメーカーから貰っている研究者や学者は、発言権を無くす方向に進んでいるくらい問題が起きているのです。それでもWHO内の委員が、告発されています。日本はもっとひどい状態です。研究者は、研究費や旅費をもらい、官僚は天下り先にしているのが現状ですから、産官学の癒着が当たり前の現状です。
 現在は、65歳以上の高齢者とハイリスク(心臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息などの肺の病気、糖尿病、腎臓病、免疫抑制剤使用中などの人)に接種が勧められています。しかし、接種後の死亡者も出ていますが、報道されません。原疾患とワクチンの副作用との見分けがつかないというのが、その理由です。子どもは慢性疾患が少なく、原因がワクチンしか考えられないのに、因果関係不明として切り捨てられ、高齢者は病気を持っているから、その悪化として片づけられてしまっているのです。
過去の前橋の5年間のデータで、小中学生への有効性は否定され、インフルエンザワクチンを受ける人がいなくなりました。それに替わって高齢者に有効と言われるようになり、高齢者に接種するようになりました。厚生労働省の公式見解では、子どもへの有効率は20~30%といいます。健康な子どもには接種する必要はありません。もちろん、高齢者もする必要はありません。かかって重症化する率とワクチンで副作用が出る率とどちらが高いか判っていないのです。
 インフルエンザウイルスは、種族維持の本能で、ある程度繁殖すると自己規制して、繁殖を止めてしまい、自然に治ります。かかった人が歩きまわり、ウイルスをばらまいて流行してしまい、しかも毎年少しずつ変異して、ワクチンの効果から逃れるので、毎年流行します。大きく突然変異を起こすと大流行になります。
最後に
まず、インフルエンザの検査をし、10分くらいで結果が出ます。私は、それで病気の診断がついたから、もう心配ありません。家に帰って、楽にしていましょう。仕事は休みましょう。かかったのは、体が疲れていたからで、休息が一番の薬です。薬がないと不安の方は薬を飲んでも良いですが、副作用が出ることも覚悟して下さい。
昔、ワクチンを小中学生がしなくなり、大人もせず、タミフルなどもなかった時代があったのですが、ほとんどの人は治っていました。インフルエンザにかかったら、休養の時間だと思って休んで下さい。あなたが疲れて不健康になっているからかかるのです。休息が一番の薬です。インフルエンザにかからないようにするには、自分の健康管理をしましよう。無理をしないで下さい。過労が一番いけません。
ワクチン信仰から脱却して、何がよいか考えましょう。
ちょうど原発は安全と言う神話を信じていたら、事故が起きてしまったように、ワクチンも安全で有効と言う神話を見直しましょう。


熱性けいれんの話

2014-11-07 08:49:48 | 健康・病気
          熱性けいれんの話         

★熱性けいれんとは
   熱性けいれんとは、発熱に伴って生じたけいれん発作のことです。
           一般には単純性または良性の熱性けいれんを指します。
☆熱性けいれんの特徴
◇ 熱性けいれんは通常生後6ヵ月から2才まで(遅くとも4才までの)に始まり、6才過ぎたら起きなくなります。
◇ こどもの内8~12%の子が熱性けいれんを起こします。
◇ 一般には両親のどちらかにこどもの頃熱性けいれんを起こしたことがあることが多く、また兄弟にあることが多い。両親共にあると、そのこどもの80%に起きます。親にあって1人の子にあると、次の子には80~90%起きます。一人の子に、1~2回熱性けいれんがあると兄弟には18%、3回あると兄弟には29%の確率で熱性けいれんが起きます。
◇ 熱性けいれんを起こすこどもの3分の2は1回で終り、3回までで終わるのが90%で、その後は熱が出てもけいれんを起こさなくなります。多くても大人になるまでに6回以内で終ります。もちろんそれ以上のことも、極くまれにあります。
◇ 通常熱が急上昇する時に、ひきつけることが多いです。だから、ひきつける前は熱がなく、ひきつけた時には、熱が高かったということが多いようです。熱が高い程起こし易く、大脳に何らかの侵襲が起きるからなると考えられています。
◇ けいれん発作の型は左右対称性で、両腕をクックックッと屈曲させ、その直後に手足をのばして固くつっぱり、その後ピクピクふるえますが、固くつっぱっただけで終ることもあります。ひきつけの特徴は、意識がなくなることですから、すぐに目を見れば分ります。けいれんの後は麻痺は起きません。(麻痺が起きるのは別の病気です)
◇ 持続時間は通常5~15分以内で終ります。1回の発熱する病気(1~3日間)でけいれんは1回が普通ですが、まれに2回くり返すこともあります。解熱剤を使って、一旦熱が下がり、しばらくしてまた熱が上がってくる時に、ひきつけやすいです。
◇ こどもに精神や運動発達の異常のないことが良性熱性けいれんの条件です。
◇ 繰り返し起こしていると、稀に(1%以下)てんかんに移行することがあります。
☆ひきつけた時の処置
 ①けがをしないように周囲の危険物を取り除くことです。
 ②安静にし、刺激をさけ、抱きしめたりしない。刺激で、ひきつけが長引きます。
 ③顔を横に向け、口内の唾液をガーゼかティッシュペーパー でふきとります。
  吐き気がある時は、吐いたものを気管に吸い込まないように、顔を下に向けて吐かせます。
 ④衣服をゆるめ、呼吸を楽にしてあげます。
 ⑤高熱があれば、氷枕やタオルで冷やします。下熱剤は使わないこと。
 ⑥口に何も(割り箸、タオル、指、スプーンなど)入れてはいけません。舌が後ろに落ちて呼吸が止まることはありませんから。
 ⑦10~15分以上続いている時は抗けいれん剤を注射してひきつけを止める為に、小児科医のいる病院へ救急車でつれて行きましょう。けいれん止めの坐  薬を入れて様子を見てもよいです。大抵はそれでおさまります。ひきつけが止まれば、あわてて行く必要はありません。
☆熱性けいれんの予防
 通常は3回以上熱性けいれんを繰返した場合に、予防を始めます。普通4~5才まで、年長ではじまった場合は6才まで続けます。
〇予防として下熱剤を薦める医者も多いですが、実際にはひきつけてから熱に気付くことが多く、間に合わないことが多いです。下熱剤に副作用があることや、熱が出るのは人間の身体が病気と闘っている為で、下熱剤は闘う力を薬で抑えてしまうため、使わない方がよいです。
〇予防の方法は、
 最近はジアゼパム(ホリゾン、ダイアップ)という抗けいれん剤(精神安定剤)の予防投薬で、発熱時に間欠的に坐薬または飲み薬で、使用する方法がアメリカのNIHから1980年に熱性けいれんの管理に関する見解として出され、日本でも普及しています。(0.3~0.5㎎/㎏/日)しかし、この量だと多すぎて、翌日にも残り、ふらふらすることが多く、私は、もう少し少なめに使っています。坐薬を希望の方は申し出て下さい。
 そのやり方は、熱が37.5゜C前後になったり、寒気や頭痛がして熱が出そうだったりした時に、すぐ薬(1回目)を飲ませるか、坐薬を入れます。その後5~10分後には効き始めます。
 その後38゜C以上の熱が出たら、1回目から8時間後に2回目の坐薬を入れるか、薬を飲ませます。もし熱が出なかったならば、2回目は使わずに終ります。
 熱が続いても、2回で終りにし、2回薬を使えば2回目から36時間以上効いていますので、その間ひきつけません。熱性けいれんは、熱の出始めに多いので、ある程度時間がたてば、ひきつけないことが多いです。
 普通の病気で、48時間以上熱が続くことは稀ですし、熱が長引く時は熱の原因を確かめる必要があります。
★熱性けいれんを繰返した時に、脳波検査が必要な場合は
 ①熱性けいれんを3~4回以上起こした時
 ②1回の発熱する病気で2回以上起こした時
 ③無熱か、38.5゜C未満でひきつけた時
 ④症状が、対称的でない時や持続時間が20分以上と長い時、
 ⑤ひきつけ後入眠したり、麻痺が残ったりした時

ノロウイルスによる胃腸炎について

2014-11-06 09:38:11 | 健康・病気
ノロウイルスって何?
ノロウイルスによる胃腸炎とは、どんな病気だろうか。
1.昔からある病気で、新聞報道以外でも、学校や幼稚園、保育所などで今流行しているウイルス性胃腸炎の一種です。ロタウイルスと共にウイルス性胃腸炎を起こす代表的なウイルスです。検査法の進歩により、短時間で検査できるようになったため、すぐ判り、感染力が強いため、騒がれているのですが、重症化することは少ないです。
2.特徴は、インフルエンザと同じく、自己規制的なウイルスで、ある程度体内で繁殖すると、繁殖を止めてしまうため、滅多に重症化せず、治ってしまうのですが、その為、かかった人がウイルスをまき散らすため、感染が広がるのです。吐き続け、脱水にならない限りと、余程免疫力が低下していない限り、死んだり、重症化することはありません。 その理由は、生存本能から、かかった人が死ぬと自らも死んでしまい、子孫を残せないから、適度に繁殖を止めて次の人へ移って、効率的に種族を増やしていくのです。最近は、変異しているとも言われています。
3.ロタウイルスとは違い、ノロウイルスは、幼児期には軽度から中等度の下痢を起こし、乳児には重症の病気を起こさないと言います。主として年長児と成人に集団発生の胃腸炎を起こす最も一般的な原因です。集団の約三分の一がかかることが多いようです。免疫が2年以上は持続しないので、効果がなくなり、再感染します。それはインフルエンザと同じく、変異と関係あるようです。
4.症状は
 ノロウイルスは潜伏期間が短く(12時間)(別説では18~72時間)、嘔吐(吐くこと)と嘔気(はきけ)と腹痛が主症状であることが多い。下痢は起きる時も起きない(約半分くらい)ない時もある。嘔吐は成人より小児に多く、半数は37.5℃以上の微熱が出る。頭痛、筋痛も一般的。病気の期間も短く、普通は1~3日間(24~48時間)で一過性です。その為、症状や発生の仕方が食中毒によく似ているため間違えられることも多い。食中毒ではなく、ウイルス性胃腸炎です。症状と流行状況によって、ウイルス性胃腸炎は診断できます。効く薬はなく、治療には関係ないので検査は希望でします。
5.治療
 第一は脱水症の予防と治療が目的です。栄養状態の悪い人は、第二が栄養状態の維持です。普通の健康な子どもや成人は、嘔吐下痢の治療で、重症の脱水を防ぐことで十分です。
 ノロウイルスに効く抗ウイルス剤はないし、抗生物質も効果がありません。吐き気止めの薬や下痢止めの薬は、有効と証明されていないし、副作用の危険もあります。乳酸菌製剤類(ビオフェルミン、ミヤBMなど)は、重症度を軽くし、病気の期間を短くすることが認められています。
6.食事療法
 嘔吐や下痢が始まったら、何も飲ませずに、すぐに胃をからっぽにし、最低3~4時間から、吐き気がおさまらなければ5~6時間、胃を休ませること。
それによってほとんどの人(99%)は、吐き気がおさまり、口から水分を飲むことができるようになります。吐き気がおさまらなければ、おさまるまで待ちましょう。のどが渇いても飲ませてはいけません。ナトリウムなどの塩分が多くグルコースを含む経口補液剤OS-1(病院と薬局で市販されている)により、腸からの水分吸収が促進されると言いますが、軽い場合は水(子どもは湯冷ましがよい)やお茶類で充分です。ポイントは、吐き気がおさまるまで飲ませないことです。早期に飲食を止めても、軽い脱水で済み、吐き気が収まってから飲ませると、回復します。吐き続けて脱水がひどくなってからでは、点滴するしかありません。多くの医師は、吐いても飲ませなさいと指導するので脱水が進行します。
コーラ、ソーダ類、清涼飲料、果汁、スポーツドリンク、イオン飲料などの塩分が少なく高濃度の糖分などは、嘔吐下痢がひどい子どもには飲ませてはいけません。
吐き気がおさまったら、水分補給は、6~8時間かけてゆっくり行ないます。少量を、回数を多く飲ませると吐かずにすみます。私はしませんが、初期に点滴をするのは、飲まないでいる時間をとれ、飲むことができるようになるからです。しかし、水分だけやうすめたミルク(私はうすめることを勧めません)だけを12時間以上続けると、ある程度の塩分や糖分が必要になるからよくありません。母乳は、吐かなければ飲ませてよいです。回復すると、まずのどが渇きますが、回復していなくても、脱水があるとのどが渇きますから、それで脱水がある程度あれば、点滴をします。嘔吐がなく、下痢がある程度おさまってきたら、お腹がすきます。始めは、甘い飲み物やあめをなめさせて我慢させるのですが、もっと回復すると我慢できなくなりますから、食事へ進めます。固形食は、果物特にリンゴやバナナから始め、ヨーグルト、野菜などへ進め、さらに炭水化物(おかゆやおじや、パン、うどん、じゃがいも、)や赤身の肉などへ進めます。脂肪を含む食品や単糖の多い食品(市販のジュースや炭酸飲料)は避けた方がよいです。
7.予防
 適切な手洗い(水か石鹸で十分)と隔離により、集団発生を防ぐことができます。胃腸炎ウイルスは効率よく感染するために変化していて、衛生的な社会でも感染します。
 家では、隔離することはありません。抵抗力の落ちた人だけが感染します。赤ちゃんは、別室に隔離して下さい。
便や吐いた物を扱う時は、病院や保育所、幼稚園、学校、飲食業などの場合は、手袋で処理した方が安全です。家では、処理後よく手洗いをすること。幼小児や高齢者では、適切な手洗いをしないことも多いし、その手で直接食べ物をつかんで食べたり、手や指をしゃぶったりすることで、感染しやすい。
 消毒は効果なく、吐いた物や下痢便がついたものは、よく洗い流すこと。消毒液の効果はないので、洗って日に干すことがよい。日光消毒が、一番効果があります。
8.感染経路
 便に汚染された食物や水の摂取を介して、人から人への感染です。汚染された手からもうつります。水を介した感染性胃腸炎の一般的な原因であり、養護ホーム、観光船、学校やサマーキャンプなどの施設での流行の原因である。
原因は、汚染された水、氷、氷菓子、貝(特にカキ)や甲殻類、サラダ(緑黄野菜)類、粉砂糖をかけたケーキやチョコレート菓子などが多いようです。
便へのウイルスの排泄は、発病後2~3日間で終わります。下痢が治るまでは、保育所、幼稚園、学校に行ってはいけません。空気感染は、文献上はありません。しかし、便からのウイルスの排泄も、下痢がおさまってからも1~3週間続くと言う報告もあります。
9.胃腸炎と呼ばれていますが、胃の粘膜の変化はなく、胃の働きが落ちて胃の中に食べ物が残り、小腸へ出て行くことが遅れることは判っています。そのために吐きます。結腸(大腸)の粘膜の変化も観察されていません。
 小腸では、主として小腸上部がおかされ、小腸の絨毛の粘膜細胞が消化と吸収の働きをしているのですが、この細胞が選択的に破壊されて、腸管の水分と電解質を分泌する細胞が残り、その結果、水分の吸収と分泌のバランスがくずれて下痢となります。二次的には乳糖の吸収不良や炭水化物の吸収障害も生じます。だから嘔吐さえ止まれば、水分を飲むことによって脱水を防ぐことができます。(ネルソン小児科学、ハリソン内科書より)