本の紹介
「平和を創る道の探求」孫崎亨(かもがわ出版)
「平和を創る道の探求」孫崎亨(かもがわ出版) を読んで
私が求めていた本が出ました。私の考えていたことと同じで、それを裏付けた根拠を示してくれました。ここに書かれていた人のうち、キッシンジャー、ミアシャイマー、プーチン講演などは読んでいましたから、分かりやすかったです。憲法問題から、ウクライナ侵攻までの解説で、平和的解決が可能であるとの立場です。
- すべての戦争に反対する。
トルストイが指摘する「知識人の罪」。トルストイは日露戦争に対して、「誰にも無用で無益な困難が再来し」、「知識人が先頭に立って人々を誘導している」という。今日では、知識人ではなく、政治家、コメンテーター、安全保障専門家と言っていいでしょう。
アイゼンハワーは「我々は軍産複合体による不当な影響力の獲得から守らなければなりません」と言う。軍人から大統領になった人です。(この構造は、新型コロナ肺炎のパンデミック対策にも現れていました)。
- 外交とは何か。妥協が必要。51%の達成を目指す。
アルカイダのビン・ラディンが要求したこと、宮沢賢治のことなど。この本は、妥協を軸に外交や国際政治のあり様を問う本であるという。
- ロシアのウクライナ侵攻について
キッシンジャーは「ウクライナが生き残り繫栄するとすれば、(西側、東側の)いずれかに対峙し、いずれかのサイドにつく前哨になるべきではない。それは両者のブリッジとして機能すべきである」、「ウクライナはNATOに加盟すべではない」という。同じことをミアシャイマーも言っています。
ドイツ統一の時に、アメリカも西ドイツもNATOを東方に拡大しないと約束したのですが、それを破りポーランドまで拡大し、さらにロシアののど元のウクライナをもNATOに加盟させようとしたのです。(キューバ危機の時に、キューバにソ連基地を作ることと同じです)。だからプーチンの言う、アメリカ、ドイツは約束を破ったということは正しいのです。ウクライナ自体が、独立して23年しかたっていず、それまではどこかの国に支配されたり、分断されたりしていたのです。(ゼレンスキーの取った政策は、ウクライナ国民を見捨てたのです。日本の太平洋戦争の時と同じでした。)
追い込まれたロシアとプーチン政権
キッシンジャーやケナンは、ロシアと対立するのではなく、パートナーとすべきだと言っています。
4.世界は、冷戦時代の米ソの二極支配が崩壊し、その後のアメリカによる世界の一極支配に対して、プーチンのロシアは、この「一極支配」からの離脱の試みであるという。
中国の台頭で世界は新らしい秩序に進んでいる。G7ブロックと非G7ブロック。中国、ブラジル、インド、南アフリカなど。アメリカと一線を画している。
5.台湾問題は、台湾側の独立運動が焦点で、中国は現状維持を望む。通常の戦闘ではアメリカは、軍事力で中国に勝てない。しかし、中国には台湾を武力で取るメリットはない。むしろ内政を危うくする危険がある。
6.軍事的手段では、日本は自国の安全を確保できない。
秒速2kmから8kmのミサイルを打ち落とせない。敵基地攻撃と言っても、相手国のすべての基地を攻撃できないし、残された基地から核を打たれたらそれで終わりである。
NATO条約と安保条約は違う。NATO条約は、加盟国が攻撃を受けたら、直ちに行動をとるのです。しかし、安保条約では、日本が武力攻撃を受けても、米国議会が戦争宣言をしないと米軍は動きません。また、核の傘などはない。日本が攻撃されても、アメリカは自国の本土を核で攻撃されるデメリットを選ばない。
もう一度、1955年のラッセル・アインシュタイン宣言に耳を傾けよう。
7.平和憲法の成立。戦争放棄は、日本側の発案で、幣原喜重郎首相がその人。
幣原の発案した戦争放棄から、先制攻撃の国となるのか。日本が先制攻撃をすることを認めれば、相手国の先制攻撃を是認することになります。それが敵基地攻撃論です。
戦後のアメリカの方針は、「日本は米国に従属する」のが基本方針です。また、「アメリカが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保する」ことを目指したのが、日米安保条約なのです。日米地位協定も、アメリカが同意しない限り、変えられません。
8.朝鮮戦争に日本も、掃海艇で参戦した。一隻が機雷で沈み、一人死亡。
日本の「戦争しない国」から、「戦争に参加する国」への転換は、湾岸戦争を通じて形成されました。自衛隊を、アメリカの戦略のために、海外展開することが決められています。
9.平和は、交渉で創るもの。交渉は取引であり、双方の満足するものでなければ成立しない。
ロシア、中国、北朝鮮は、核兵器をもち、日本を迎撃できるミサイルを1500発以上配備しているとみられています。日本を攻撃する時に、政治・経済・社会の中心地を攻撃されたら、着弾地が予測できなければ迎撃できません。
和平には、譲歩が必要。譲歩で譲ったものと、譲歩しない時に失うものと比較したら、失うものの方が大きい。それが現在のウクライナであり、東条英機の指導した日本だったのです
10.尖閣諸島は、日本、中国、台湾のいずれにも属していない状態です。だからアメリカは尖閣諸島の主権は係争中であり、アメリカは中立であるとしています。田中―周恩来会談で暗黙の棚上げ合意がありました。石油が出るから問題になるので、当面棚上げにすることになっています。それで日中漁業協定が結ばれて、紛糾しない仕組みができています。
11.平和への道
ドイツとフランスの和平のために、EUが作られた。
東南アジア諸国連合の知恵。
南極の平和的利用、など平和的道はとれるはず。
以上
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