黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

アトピー性皮膚炎の話

2015-03-03 12:04:41 | 健康・病気
   ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 の こ ど も を な お す 、こ こ ろ    

 アトピー性皮膚炎の皮膚症状の病理と治療は、皮膚科専門医に任せ、私は小児科医として、アトピー性皮膚炎がどのように起きるか、どのように悪化していくか、を考えてきました。その結果、「アトピー性皮膚炎」を治すのではなく、「アトピー性皮膚炎をもつこども」を治すためには、こころの面からのアプローチ、つまり精神的心理的因子が重要と考え実践し、好成績を得ています。
1.人はなぜ病気になるか。(病因論)
 私の病因論は、ルネ・デュボス(アメリカの環境医学者)のいう生体論的な環境的な医学を目指し、人が環境に適応できない時に病気になると考えます。
 ①複数の原因が重なって病気が起きる。--複数病因論
 ②人が環境に適応できない時に病気になる。--環境説または適応説
 ③こころと身体は、常に相互に関連している。--心身一体論
 ④こころは社会的に作られ、影響をうける。--病気は社会によって生ずる。

◇人はなぜ病気になるか。
 人間は環境と相互に影響しあって発達してきたので、人間の住む自然環境や社会環境と密接に関連しているのですが、その環境に適応できないと病気になります。人間は環境から刺激を受け、それに対して応答して生きています。その相互関係がうまくいかないと病気になります。
 分かりやすく説明する為に、人間を川に例えます。川の流れの両側に堤防があり、その堤防に何ヵ所かの弱点があっても、水量が少なければ、決して水はあふれません。ところが、大雨が続いたり、台風が来たときに、水量が増えてその限度を超えると、その川の堤防の弱い所から水があふれます。人間では、水があふれた時が病気で、人間が環境に適応できない時に水量がふえると説明します。

 どこから水があふれるのか、即ちどの病気になるのかというと、その人の身体の弱点に病気が現われます。それは、数十はあると考えられ、
①両親のどちらかから受け継いだ家族的傾向(染色体、遺伝子、HLA抗原など)と、
②母親の胎内から現在までの、生れた順番、育ち方や友人、幼稚園や学校の先生、生活習慣(酒、タバコ、食事を含む)、かかった病気などに左右される後天的なものの両方から構成されています。
 HLA抗原も遺伝子も、染色体も、体内に住む多くの微生物たちも、放射線の蓄積も、すべて弱点の一部を形成しています。でも、弱点があってもそれだけでは病気になる訳ではなく、ある人がすべての病気になる可能性もなく、うまく環境に適応できないときに、その人の弱点の所に病気が出てくると考えます。
 家族的傾向からくる弱点は、その人の属する人種、民族、家系、国家、社会、文化によって代々作られ、受け継がれてきたものです。
 ノーベル賞受賞した利根川進博士は、環境によって遺伝子も変化するという考えでした。環境にうまく適応した人が生き残り、遺伝子が変化して次の代へと受け継がれてきたのです。
  また、最近の遺伝子学では、病気の遺伝子を持っていても、遺伝子にスイッチが入ると、遺伝子が働き、スイッチが切れると、遺伝子の働きが止まることがわかりました。スイッチを入れるのも、切るのも、環境因子と考えられています。ですから、同じ遺伝子を持っていても、スイッチが入らなければ病気にならないこともあるのです。

2.なぜアトピー性皮膚炎になるのか。
 アトピー性皮膚炎は、気管支喘息、じんましん、アレルギー性鼻炎と関連のある病気で、家族内発生が多いのですが、遺伝は証明されていません。それは、上述の考えで理解できます。(最近のヒトゲノムの研究では、喘息関連遺伝子は15個、IgE関連遺伝子は2個見つかっていると言われていますが)
双胎の研究では、一卵性双生児の双方に同じアレルギー疾患がでる率は25%、別の研究では9%とも、80%とも言いますが、100%ではありません。このことは、遺伝や体質だけでは説明できません。アレルギーの遺伝子を持っていても、それだけでは発病せず、環境に適応できない時に発病すると考えます。
 乳児がアトピー性皮膚炎になるのは、赤ちゃんが環境にうまく適応できなかったからです。環境には、生活環境として、自然環境、住宅、衣服や食生活もありますが、現代では社会環境つまり家庭や保育所での生活や対人関係が、大きくかかわっているようです。家庭や保育所での生活に適応できず、ストレスになっていると、アレルギー性疾患の家族的傾向があって、皮膚に弱点のある赤ちゃんはアトピー性皮膚炎になってしまいます。

◇なぜ増えたか(1) 社会環境
 アレルギー性疾患は、高度経済成長期以後増え始め、特に1980年以降に、スギ花粉症に代表されるように、過労死と共に、急激にふえています。これらの病気は、世界的に見ると、アメリカを先頭に西ヨーロッパ諸国、日本、ニーズ諸国(韓国、台湾など)、メキシコなど中進国、の順に増えており、もっとも少ないのが発展途上国です。(旧社会主義圏は不明)なぜか、先進国では例外がスカンジナビア諸国で、気管支喘息を始め、アレルギー性疾患が少ないのです。多分、人にやさしい社会だからではないでしょうか。
 アレルギー性疾患は都市に始まり、農村に波及し、そのうちにどの地域でも同じ位の罹患率になって平衡状態になります。喘息が典型的です。花粉症では、日本は中年を中心としたスギ花粉症ですが、アメリカでは、若者のブタクサ花粉症で、ヨーロッパではイネ科の牧草による花粉症です。

◇なぜ増えたか(2) 赤ちゃんのストレスは何か。
 アトピー性皮膚炎は皮膚の病気ですから、じゅうたんなどの住環境や、衣服、離乳食にも問題があることも考えられます。しかし、一卵性双胎の例のように、弱点があってもそれだけでは病気にはならず、発病の引金になるのは、やはりストレスと考えます。兄弟でもなる子とならない子がいるのもそうです。
 私は、因果関係がはっきりしない限り、食事療法をしません。

 赤ちゃんのストレスは何か。
 10年以上前に、あるアトピー性皮膚炎のひどい生後一ヵ月の赤ちゃんを見ていて、ふと気がつきました。それは、6才と8才になるその赤ちゃんのお兄さんとお姉さんが、赤ちゃんが可愛くて、始終なめたりさわったりしているのです。赤ちゃんは泣きませんが、「いやだなあ」と迷惑そうな顔つきをしています。それをやめさせるようにするだけで、随分皮膚症状はよくなりました。でもまだ完全ではありません。よく聞くと、母親は「あまり強くいうと、上の二人がかんしゃくを起こすから」といいます。
 それから注意深く観察していると、初めてのこどもより、二番目や三番目のこどもが病気にかかることが多いのですが、その理由はどうも上の子にあるようです。
 乳児のアトピー性皮膚炎が増えたのは、赤ちゃんのストレスが増えたからです。大きくなると(早ければ2~3歳ころから)治るのは、次第に精神的にも成長し、自立して「いや」と言えるようになるし、それと平行して母親や兄弟の干渉が減るからです。「いやだなあ」と思って我慢していると、ストレスですが、そういうものだと受入れてしまうと、ストレスでなくなります。ですから、さわられても平気な赤ちゃんもいます。
こどものこころの持ち方を、うまく変えることができると、よくなることがありますが、なかなか難しいです。自立ができないと、治らずに大人に持ち越します。
◇赤ちゃんにさわらないで。
 ところで第一子がアトピー性皮膚炎の場合は、母親や祖母が、始終抱いたり、さわったりしていることが多いようです。さわればよいスキンシップが得られると思う母親が多いのでしょうか。スキンシップは本来、こころを通わせる手段であって、たださわってもこころは通いません。こころが通じることが大切です。
 赤ちゃんは、「気持ちがいい」と感じさせることが、「愛されている」と感じるので、赤ちゃんが要求していないのに、赤ちゃんをさわると、いい気持ちには感じません。赤ちゃんは、お腹が空いたらおっぱいや離乳食を与え、おむつが汚れたら取り替えてやり、あとはそっと好きにしておくとよいのです。もちろん、抱いてほしがる赤ちゃんを抱いても、ストレスにはなりません。実際に、さわらないようにしてもらい、皮膚症状をステロイド外用薬で治すと、乳児では1か月くらいでよくなります。でもそれが難しいのです。

3.ではどうしたらアトピー性皮膚炎を治せるのか。
  赤ちゃんやこどものストレス(「いやだなあ」と思うこと)がどこにあって、どうしたらなくせるかにかかるのです。多くは家庭内にストレスがあるので、母親の対処の仕方で決ります。一般的に赤ちゃんは、上の子から離して、さわらせないようにすると、病気が少なくなります。原因が家庭外、例えば保育所の中でのこともありますが、その場合は対策が難しいです。
 治すには、まず母親に、「①病気の起き方、②ストレスと病気との関係、③社会に問題があり、決して母親のせいではないが、残念ながら母親が大きくかかわっていること」を理解してもらい、母親の病気への不安を除き、母親のこどもや家族への対応やこころの持ち方を変えてもらうようにします。ここが大切で、一回位の診療ではなかなかここまで行けません。ただあちこちの有名な病院をまわってもよくならなかった子の母親は、すぐ理解してくれます。年長児の場合は、必ず母親と一緒に話を聞いてもらいます。こどものこころを解きほぐして、こころの持ち方を変えてもらうことも大切なことです。
 次に、「④治療の仕方、⑤特にスキン・ケア、⑥かゆみの対策」を教え、それを毎日実行してもらい、病気と上手につきあって、肌をなだめすかして、ひどくならないようにして大きくなるのを待つことがよいようです。時間が解決してくれる側面が強いのです。
 第三に、母親が病気を嫌わないことが大切です。母親が病気を嫌うと、こどもも嫌います。病気を嫌うと、病気がなかなかよくなりません。それは、何も外から病気が入りこんできた訳ではなく、病気は自分の身体そのものがなっている、自分の身体の変調なのです。判りやすく云えば、ピアノの調律が狂っている状態です。だから、「ああ嫌だな。どうしてこんな病気になったんだろう」と、病気を嫌うことは、自分の病気になっている身体を嫌うことで、自分のこころが自分の身体を嫌うことですから、潜在意識の中で葛藤を起こして、病気がよくなりません。病気をなだめすかして、病気と上手につきあうことです。
 それから「もっと悪くなったらどうしょう」とか、「このままひどくなって、治らないのではないか」と暗示をかけてはいけません。母親による暗示や、自分の自己暗示によって悪くなります。「だいじょうぶ、よくなる、よくなる」と良くなるように、暗示をかけて下さい。
 一般的にアレルギー性疾患になるこどもは、一見、自己主張が強く、いやなことは嫌だといっているように見えますが、こころがやさしくて、自分ではいやだと思っても、がまんして、親や相手のされるままになっていることが多いのです。こどもの目を見て下さい。輝いているか、いやそうな顔をしているか、それで判ります。そこで私のお勧めすることができる唯一の子ども(赤ちゃんも)対策は、ほめてあげることです。泣いても、どこか良い所を見つけてほめるのです。その子のしたことをほめて自信をもたせるのです。その子が自分の行動に自信を持ち、自己主張を強くすると、軽快していきます。また、子どもが要求しても、どうしてもできないことは、がまんさせるのではなく、「これこれだから仕方がないでしょ、まあいいでしょ、しょうがないよね」と話して、「しょうがないや、まあいいか」と思わせることです。子どもが「いやだな」と思っていると、症状がでてきます。
 きかん坊、腕白、分からず屋、まけず嫌い、強情っぱりなどは、よくないこどもの代名詞ですが、私にとっては、たくましい健康なこどもの代名詞です。
 という風に私は考えていますが、心身医療に感心をお持ちの皆様は如何でしょうか。
[附]感情的なストレス
 精神身体的因子は、アトピー性皮膚炎ではいつも重要で、ストレスはこどもの環境の中のいろいろなバラエティのある精神のダイナミックスの1つから、結果として生じてきます。両親の葛藤、兄弟による嘲笑、学校でのクラスメートたちからの批判、行動上の問題をくすぶらせる”Silent Treatment(表面化せずに問題処理すること)”、放課後のしばしばおきる失望反応、などがかゆみを増加させます。対策は、問題のオープンな処理、ゲームや他の活動によって、手の使用を要求するような遊び、こころを転ずることを注意深く計画することなどをすることです。

結論
こどもをほめて育て、しからないこと。いい子にしてあげること。赤ちゃんは、要求しないのに、だいたり、さわったりしないこと。ステロイドは、上手に使うこつを覚えること。(薬は、包丁と同じで、料理(治療)に必要ですが、殺人(薬害)の道具にもなります。使い方が大切です。)ステロイドで治して、再発することを、こころの対策で防ぐことです。
 これは、子どもの話で、大人は、社会(家庭を含む)にしばられて、ぬけだすことが大変で、なかなか治すことができません。こころの持ち方を変えることも必要ですが、こころのトレーニングは、スポーツと同じで、長い間の反復練習が必要なので、できる人が少ないです。環境を変える方が早いのですが、できる人とできない人とがあります。環境が変わって、悪くなることもあります。ですから、大人の治療は大変難しいです。
                                      総合小児科医 黒部信一 

人はなぜ病気になるのか

2015-03-03 11:54:55 | 健康・病気
           人はなぜ病気になるか         
1.人は環境に適応できない時に病気になる
◇病気になるのは、人が生活する環境に適応できない時に病気になるのです(病原環境論または適応説)。環境には、自然環境(細菌やウィルス、寄生虫や動植物、花粉などを含む)、社会環境(家族から地球規模までの人間社会)、心理または情緒的環境(社会がもたらすストレス)があります。特に現代では、社会的環境が大きく、家庭、親族、保育所、幼稚園、学校、職場、地域、クラブなどの人をとりまく環境が、心理・情緒的ストレスを産み、それによって抵抗力(免疫)が低下し病気になるのです。
◇判りやすく説明するために、人間を川に例えます。川にはそれぞれ堤や堤防があり、川の水が少なく静かに流れている時は、水はあふれません。この状態が、人間では健康なのです。所が大雨や台風で、川の水が増えてその堤防の弱い所を越えて氾濫し、水があふれ出ます。人間では、水があふれた時に病気になるのです。その堤防の弱点は、その時々によって異なります。その人の弱点は親から受け継いだ遺伝と生まれ育った環境や今までにかかった病気、現在の生活習慣やおかれた生活環境(自然や社会的)によっても作られます。その人の持つ弱点は年齢、性別、性格、考え方によっても異なるので、かかる病気が異なるのです。
◇ヒトゲノム計画により、人の遺伝子がほとんど解明されました。しかし、そこで判ったことは、同じ遺伝子を持っていても、同じ病気になるとは限らないのです。多くの遺伝子は、遺伝子のスイッチが入ると働き出し、スイッチが切れるとその働きを止めるのです。スイッチを入れるのが環境因子であることも判ってきました。遺伝子と環境の相互作用。
 例えば、哺乳類のほとんどは、乳児期には母乳が飲めるが、幼児期になると飲めなくなるのです。それは、幼児期になると母乳を分解する酵素を作り出す遺伝子のスイッチが切れてしまい、母乳が飲めなくなるのです。しかし、人間はなぜ大人になっても牛乳が飲めるのかが謎です。でもすべての人がそうではなく、牛乳が飲めない人がいて、その率は農耕民族に高く、牧畜民族に低いのです。環境に適応して遺伝子が変化してきたと考えられています。牛乳嫌いや牛乳を飲むと下痢をするのは別に特別ではないのです。
例えば、遺伝的に同じはずの一卵性双胎児の一人が喘息になり、もう一人が喘息になる確率は16~25%であり、他のアレルギー疾患では同じと見られていますが、統合失調症はもっとずっと低いのです。アメリカの調査で、アイルランド出身の双子の、一人はアイルランドに残り農業を継ぎ、もう一人はアメリカへ渡って都市労働者になった1000組を比較したら、摂取カロリーはそれ程違わないが、成人病になる確率はアメリカに渡った方が圧倒的に高かったのです。
 遺伝子にスイッチを入れる環境は、自然環境と社会環境です。社会環境の中に、社会によってもたらされる精神心理的、情緒的環境も含まれます。社会は最低3人から構成されますから、家庭も社会的環境です。だから家庭環境によっても変るし、食生活によっても変わります。また、環境によっても遺伝子は変化します。遺伝子と環境とは相互に影響しあって、発現したり、しなかったりし、その結果病気になったり、ならなかったりするのです。遺伝子は1世代で100の変化を蓄積すると言います。遺伝子は環境条件に左右され、ある種の環境でなら、ある形で発現するのです。遺伝子は、環境や発達に左右されない特定性と、環境の変化に適切に対応する能力(可塑性)を持ちます。

2.病気と戦う仕組み
◇人には病気にならないようにする防御システムが様々に働いています。
①外から人の身体に入ってくる場所すべてに細菌やウイルスなどの微生物が住み込み人と共棲していて、外来の微生物と戦ってくれます。例えば大人の皮膚1平方cmに10万の微生物が住んでいます。だから大人は「とびひ」にならないのです。目、鼻、口、のど、耳、陰部、腸などすべての外界と接する部分には微生物が住んでいます。それが病気にならない理由の一つです。胃には強い酸性の胃液があり、多くの細菌はそこを突破できません。突破しても小腸には1gの腸内容物に三千億から五千億の細菌や微生物が住んでいて外来の微生物を排除してくれます。皮膚や腸に住んでいる種類は家族ごとに微妙に異なりますし、老化によっても変わります。
②体内にはまずリンパ球をはじめ、リンパ組織(扁桃やリンパ節や虫垂)が働いて防御線を張っています。外来の異物を見つけ、戦うのも、抗体を作るのもリンパ球です。インターフェロンやサイトカインというものを作るのもリンパ球です。リンパ球はいろいろな働きをして微生物や異物、がん細胞などと戦ってくれます。その他に多くの身体の働きで、自分の病気を治す力(自然治癒力)があります。がんになっても、少なくとも3万人に一人は自然治癒します。世界でその人たちの3500人の報告も出ています。

3.ストレスと病気
◇環境にうまく適応できない時に、防御システムの働きが低下します。だからストレスがあると免疫の働きが低下し、病気になり易くなります。その時に細菌やウイルスが入ってくると病気になるのです。過労も心労もストレス状態の一つです。
 ストレスを起こすのがストレッサーと言い、それによって引き起こされる状態をストレスと言い、ストレスになると身体の色々な働きが乱れて病気になるのです。ストレスはたまるものではなく、状態です。なったらすぐ身体は反応しています。その時病気になるかならないかは、その時の、その人の状態や環境によります。
◇ストレスがあると、身体が反応します。ストレスはたまるものではありません。一度でもストレスです。ストレス対策は、気持ちの持ち方を変えることです。
 嫌なことは「嫌だ」と言いましょう。でもどうしてもそれができない時は、「仕方がない、そういうものだ」とか「まあいいか、しょうがないや」と、いつまでも「いやだ」をひきづらないことです。でも、いじめ、セクハラ、嫌がらせなどは、そうしてはいけません。
◇子どものストレスは、第一に「いやなこと」を我慢することです。だから神経質な子は病気をしやすく、くよくよしない子は病気をしません。自己主張の強い子は病気が少なく、心やさしい子やいやなことを我慢する子が病気をしやすいのです。大人も同じですが。
 子どもは、赤ちゃん時代は親が防御して下さい。赤ちゃんが「いい気持ち」にならないことがストレッサーです。いつもいい気持ちにしてあげて下さい。お腹いっぱいにすること、早めの離乳食、オムツをとりかえること、赤ちゃんが要求しないのに抱いたり触ったりしないこと。赤ちゃんをお人形さんにしないで下さい。おもちゃではありません。
 叱らないで、他のことに関心をそらして、いけないことを止めさせましょう。関心を他のことにすり替えることで、叱らずにすみます。そしてすぐ「いい子ね」とほめましょう。
いつもいい子にしてあげて下さい。親のして欲しい事をしてくれたら、すぐほめましょう。
 人見知りは自我の芽生えで、自我ができるのは3歳ごろ。この頃になると自己主張が強い子は病気が少なくなります。そして小学校入学から思春期まで、病気が少ない時期です。でもおとなしい子、こころが優しい子、いやだと言えない子は病気になります。
 
◇食事を強制したり、制限したりせず、少なくとも3歳までは欲しい時に欲しいだけ食べさせて下さい。少食、偏食は食事の強制から生じますし、甘いもの好きは甘いものを制限することから始まります。子どもに与えたくないものは、一度も与えてはいけません。「少しならいいだろう」は間違いです。もっと欲しくなるものです。嗜好飲料、スポーツ飲料は子どもの飲み物ではありません。また甘い食品、糖分(グリコーゲン)は大脳の発達に必要ですから、子どもの食事の必需品です。子どもは、食事もストレッサーになることがあります。嫌いなものを強制しないで下さい。また牛乳は、前述のように、飲めない子がいますから強制しないで下さい。また牛乳の飲みすぎもいけません。

4.病気は身体の変調、不調
◇病気は、外から入り込んだものではなく、自分自身の身体の変調です。変調というのはピアノやギターの調律がはずれた状態で、同じピアノでも良い音が出ない状態です。良い音が出ている時が健康なのです。
 例えば、かぜでも、外から入ってきたウイルスや細菌と戦って、身体の変調を起こして熱が出たり、咳やのどや身体の痛みやのどが腫れたりしているのです。だから、治ると自然に熱が下がったり、咳や痛みや腫れがとれていくのです。
◇だから病気は、自分自身がなっている変調した「状態」なのです。病気を嫌わないで下さい。病気を嫌うことは、自分の心が、自分自身の病気になっている身体の状態、つまり自分の身体を嫌うことになり、心の奥底(潜在意識の中)で、抗争(葛藤)を起こして、病気が良くなりません。病気を認めて、病気と上手に付き合って下さい。良くなるように自分の身体をなだめて、「良くなる、良くなる、だんだん良くなる」と自己暗示をかけて下さい。きっとあなたの身体の病気はよくなっていくでしょう。子どもは親が暗示をかけて下さい。よく病院に来ると、子どもが元気になるのは、ここに来ると良くなるとの暗示効果です。

5.不安は病気のもと
◇また不安になると、病気になったり、病気が悪くなったりします。不安になると「もっと悪くなるのではないか」とか「もっと苦しくなるのではないか」と思ってしまいます。それが自己暗示になって、あなたの身体はだんだん悪くなります。不安だと良くならないのですから、不安を打ち消しましょう。その為に、薬を飲んだり、医師にかかったりするのです。子どもは、お薬を飲ませて、「さあこれで良くなるよ」と言って下さい。それでよくなるのです。薬の効果と暗示の相乗効果です。それで良くならない場合は、それが効かない何かストレスになっていることが、子どもにあるのです。それを探して、なくすようにしましょう。
◇病気に神経質な人ほど、病気になりやすいのです。日本人は昔から病気に神経質です。挨拶の言葉には病気に関連する言葉が多いです。最近のゲノムの研究では、日本人の93%、白人の67%が神経質になる遺伝子配列を持っていると言います。しかし、それが発現されるのは環境によります。だから、くよくよしない人が長生きするのです。長寿の人に「その秘訣は何ですか」と聞くと、大抵「くよくよしないことです」と言います。
不安をかかえてはいけないから、不安なら医者にかかり、不安をなくしましょう。良い医師は、安心をさせてくれます。医者は安心を売る職業ですから、不安を増やすような医師は避けましょう。また、親は子どもを不安にさせるような言葉を話さないようにしましょう。「かぜをひくから」、「注射をされるよ」、「病気が悪くなるよ」などなど。
 子どもを脅かして、言うことをきかせようとしてはいけません。ほめて言うことをきかせましょう。子どもはほめられたいから、親の言うことをきくようになります。大人も同じです。大人同士でも、感謝の気持ちを表す「ありがとう」を言い合いましょう。

6.病気と上手に付き合いましょう
◇一病息災になりましょう。
先の川の話に戻って、堤防の一ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると、他の場所から水があふれません。それと同様に、一つの病気を持っていることによって、他の病気になる可能性が減ります。これを一病息災と言います。病気とうまく付き合い、なだめすかして、病気と仲良くして下さい。何とかして病気を治すと、また別の病気になる事がありますから。これは慢性の病気の話で、急性の病気は別です。
◇人生を楽しみましょう。たった一度の人生ですから、楽しくなくてはつまりません。楽しい人生を送ることによって、病気は逃げていきます。楽しい事を考え、思い描き、いつも、どこでも、楽しいことを考えながら、勉強したり、仕事をしたりしましょう。楽しくしていれば、病気は良くなります。

7.病原環境論
◇病原環境説は、ヒポクラテスに始まると言われています。ヒポクラテスは、病気をその「人」の状態として捉え、病気の原因を、気候の変化と不適正な食事、その他外界の激変にあるとしました。その後、ドイツの病理学者、衛生学者で政治家(進歩党)のウィルヒョウによって再興され、さらにロックフェラー大学環境医学教授デュボスによってヒポクラテスの復権が提唱されました。1970年代の国連環境委員会のアドバイザー委員長をしたデュボスでも、この説を臨床医のあいだに広められなかったのです。パブロフの条件反射を進めて、人はどんな環境に置かれたらどう反応するかの研究に進むべきだったのですが、神経経路の研究へと進み、体の細分化へ研究が進んでしまったのです。デュボスの説を支持しているのは、基礎医学者と精神科医に多いのです。アメリカの精神科医を中心に、精神神経免疫学や、さらに精神神経免疫内分泌学なども提唱され、動物実験もされ実証されていますが、これらはすべて病原環境説に含まれます。

花粉症(アレルギー性鼻炎)の話

2015-03-03 11:46:09 | 健康・病気
花粉症の時期になりました。花粉症に悩まないために、ぜひお読みください。「アレルギーの話」と「人はなぜ病気になるか」をいっしょにお読みください。

    花 粉 症(鼻アレルギー)の 話   
 花粉症は鼻のアレルギーの病気で、こどもでは10%、大人は30%位の人がなります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)、アトピー性皮膚炎、じんましんにかかったことがあるか、家族にいる人がなりやすいのです。

☆なぜなるのか、
遺伝的素質(遺伝子)プラス環境因子(自然環境=花粉、社会環境=家庭、社会などの心理的、精神的、感情的ストレス)によって発病します。遺伝的に同じはずの一卵性の双子の研究で、1人が喘息になった時に、もう1人が喘息になる確率は25%くらいで、花粉症も同じと考えられています。日本では、スギの花粉が風により広い地域に散らばり、交配するのに十分な程の、わずかな量でひきおこされます。日本では、中年世代を中心に増えています。杉のない北海道は白樺です。アメリカでは若者のブタクサ、ヨーロッパでは稲科の牧草が多いです。複数の原因が、あることもあります。
☆アレルギー性鼻炎のうち、季節的な物を花粉症と言い、一年中続くものを通年性アレルギー性鼻炎と言いますが、本質的には同じで、しばしば複数の原因をもつことがあります。通年性のものには、室内吸入抗原が多く、ハウスダスト、ヒョウヒダニ、コナダニ、ペットのふけ、かび、化学製品、植物製品などがあります。原因がはっきりしないことも少なくありません。
・血管運動性鼻炎
 アレルギー性鼻炎のある人が、季節を問わず、温度、湿度の変化、ほこり、煙草の煙などの刺激物を吸入すると一時的になるもので、一時間位でおさまります。

☆症状は、
くしゃみ(ひんぱんに、発作的に)、鼻水(水様、多量に)、鼻づまり。鼻、のど、耳および目のかゆみ、目の発赤および涙。口呼吸。通常30歳代にあらわれ、中年を過ぎると、年齢と共に軽くなっていきます。

☆治療の第一は、スギ花粉を避けること。
窓をあけず、室内は空気清浄機を使う。外出時にはフィルター付きのマスクをするのがよいです。洗濯物はマスクをして、花粉をはたいてから取り込むか、室内で干すことです。外出から帰った時は、上着などをはたいてから家に入りましょう。シーズン中はできるだけ外出をさけること。防御が第一です。

☆ 薬物療法の基本は、
第一は、抗ヒスタミン剤の飲み薬(かぜの時の鼻水の薬)で、なった時に飲みます。
ねむけ(神経抑制)の少ない第二世代の抗ヒスタミン剤(下記)を勧めます。
第二は、予防の薬で、インタール系(インタール、ミタヤク)の吸入薬(点鼻薬)、と目薬で、毎日2~3回し、早くて3日くらいから効果が出始めますが、普通は1~2週間続けていないと明らかな効果が出ないし、効果が出てもシーズン中続けていないと効果が続きません。しかし、75%の人に効果があります。効果が出れば症状は出ないし、副作用も少ないし、でも毎日続けることが必要で、大変ですがお勧めです。
第三は、ステロイドの鼻へのスプレー(結核の人はだめ)。
眼のかゆみには、最近は、一部の第二世代の抗ヒスタミン剤(特にザジテン、スプデルなど)の点眼液は効果があると言います。即効性があるのは、ステロイドの目薬(コンタクトレンズの人と緑内障の人はだめ)で、かゆくなった時に使い、おさまったらやめます。また、ひどい人は、他の薬と一時的に併用します。長期に連用することは、勧めません。軽い人には、使いやすいです。
◎抗アレルギー剤と言われるのは、基本的には、第二世代の抗ヒスタミン剤で、俗にアレルギーをおさえるとか、体質改善の薬と言いますが、体質は変わりません。他では、花粉症が始まる前から飲むように言われたり、毎日飲むことを薦められたりしますが、欧米では、ひどければ毎日飲んでいてよいし、かぜ薬のように、症状が出た時に飲んで、よくなったらやめてという飲み方をしてもよいと言う使われ方をしています。

☆自分にあった薬を探すこと。病気とつきあって、シーズンを乗り切ること。

☆ はな水をかまないこと。かまない方が止まります。ティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻水をかんだりすすったりしないようにします。そうすると、泉の水がかれる様にしだいに出なくなります。一度でもかんだり、すすったりすると、それまで出たのと同じだけ鼻水が出続けます。

☆病気になる最大の原因は、ストレスで、いやなことをがまんすることです。いやなことは避け、どうしても仕方がないことは、「しょうがないな」とか、「まあいいか」と、くよくよ考えないようにすること。仕事上のことは、生活のためだから仕方がないと考え、楽しい事を考えて、のびのびと暮らすこと。楽しいことがあると、アレルギーは軽くなるし、去っていくこともあります。

☆一病息災で、一つの病気になっていると、がんや心臓病や脳梗塞などの他の病気になる確率が低くなるといいます。花粉症で死ぬことはありませんから、うっとうしいがラッキーです。もっともストレスの多い人は、いくつも病気をかかえますから、その場合は仕方がありません。病気は自分のからだの変調(ピアノの調律がはずれている状態)ですから、嫌わずうまく付き合うのが一番いいのです。

★飲み薬
抗ヒスタミン剤―第一世代―ぺリアクチン、フルミノール、キタゼミン、ポララミン、レスタミンなど。世界的には、最近は、小さい子には、神経抑制作用(鎮静作用)があるからと制限する傾向にあります。ですから子どもには、少なめにして、短期間に留めます。
薬を飲まなくても、かんでいればよいのですが、飲んでいないと、鼻をかむのが間にあいません。この薬は、子どもも大人でも眠気が出やすいのです。
 第二世代の抗ヒスタミン剤―ねむけ(鎮静作用)を減らすために開発されました。ザジテン(まだ鎮静作用が残る)、リザベン、セルテクト、アゼプチン、アレギサール、ジルテック、アレロック、アレグラ(眠気が少ない)、アレジオン(1日1回夜飲む。眠気が少ない)など多数あります。俗に抗アレルギー剤というのがこれです。
 鼻のかゆみ、くしゃみ、鼻水によく効き、鼻づまりは少しよくなります。副作用は眠気で、できるだけ眠気が出にくい薬を選びます。続けて飲んでいると症状が出ないことが多いですが、かぜ薬のように、出た時に飲んで、おさまったら止めてもよいです。
効かなければ他の薬に変えると、効くことがあります。自分に合った薬を探し、メモしておくことです。
*ロイコトリエン拮抗剤(特にオノン、キプレスなど)という薬を、抗アレルギー剤として飲むことがありますが、アレルギー性鼻炎には効きません。気管支喘息にはキプレス、シングレアが有効ですが、オノンは気管支喘息、アレルギー性鼻炎のいずれにも、海外では評価されていません。

★外用薬
鼻のスプレー
第一は、インタール系の吸入スプレー(インタールのほか、ジェネリックあり)を毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。75%の人に効果があると言います。これは、予防薬で、使いだして3~7日かかって効果がでます。
第二は、第二世代の抗ヒスタミン剤の吸入スプレー(ザジテン、スプデルなど)で、これも毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。

◎どうしても、以上の薬でも、鼻水がひどくて止まらない時には、ステロイドのスプレー(フルチカゾンなど)を併用します。
 これを単独で使用する時は、初期には各鼻孔に1回ずつのスプレー噴霧を1日2回し、3~4日後に症状が改善したら減量して、1日1回の維持療法とします。
副作用は、結核菌をもっている(ツベルクリン反応強陽性)人の結核の発病と、1日中頻繁に使うと、副腎抑制を起こします。
鼻づまり対策の点鼻薬
 鼻づまりは悩みの種です。特効薬はありませんが、血管収縮剤(トーク、プリビナなど)を、単独または抗ヒスタミン剤の飲み薬と併用すると少しは楽になります。しかし、この薬は、長期間続けると鼻の粘膜が委縮して、慢性萎縮性鼻炎になるので、毎日使うなら5日で中休みを二日とりまた使うようにします。時々使っているなら、問題はありません。
点眼薬(目のかゆみに)
〇予防の目薬
第一は、インタール系の点眼薬(インタールのほか、ジェネリックあり)を毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。
第二は、第二世代の抗ヒスタミン剤の点眼薬(ザジテン、スプデルなど)で、これも毎日1日2~4回、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。これは、予防の効果と、治療の効果があります。
〇目のかゆみには、―ステロイドの点眼薬(フルメトロン0.02%、0.1%)を使います。即効性がありますが、副作用は緑内障を悪化させることと、コンタクトレンズのかびをふやすことで、使えません。一時的に使うには、問題ありません。長期に使うには、予防の目薬を勧めます。
〇薬がない時は、水で目を洗うことです。冷たくしてもかゆみが楽になります。

★してはいけないもの
 ステロイドの注射(筋肉注射)、ステロイドの飲み薬(代表的なものはセレスタミン)の長期使用と子どもへの使用。子どもの成長を抑制するし、感染を起こしやすいです。
 ステロイドは外用で使うのが安全で副作用が少ないので、お勧めします。
 鼻の粘膜を焼くことは、長期にわたっての副作用や安全性が確立されていません。

☆その他
減感作療法は、ブタクサや草花では部分的には改善しますが、スギでは確認されていません。

〇花粉のシーズン(代表的なもの)
2~4月(ゴールデンウィーク前までに終わります)はスギ、4~5月は、ひのき、松類、5~7月はイネ科植物、カモガヤ、ハルガヤ、小麦、8~11月は、ブタクサなど。

アレルギーとは何か

2015-03-03 11:38:11 | 健康・病気
アレルギーとは何か―アレルギーの話―

              アレルギーの話 Ⅰ       
はじめに
 人間は、昔よりは、より多くのことを知っていますが、まだ僅かなことしか知っていません。知らないことの方が多いのです。今後もっと多くのことが判って来るでしょう。また、それ故にいろいろな意見があります。私の意見は、私が医学、科学の歴史から学び、現代医学とつき合わせて考えたことであり、今後書き直されることになるでしょうが、今、私が考える最善のものです。残念ながら、この考え方は、現代医学では、特に日本では少数派であり、賛同する医師は余りいませんが、私の考えを評価するのはあなたです。試みにして見て、うまくいくなら取り入れて下さい。でも、それには社会という障壁があり、それを乗り越えなければ、うまく行かないし、自分のこころを変えないとうまくいかないでしょう。それが難しいのです。そこから先は、心療内科(こころから来る身体の病気を、こころを変えることで治す科で、精神科ではないのですがよく混同されるし、実際に心療内科を標榜している医師は精神科医が多いので、体の病気を治してくれません。)になります。
(ここからは、わかる所だけ読んで、わからない所はとばして読んで下さい。医師が読んでもよいように書いてありますから。)

§1.アレルギーの話
◎現在は、アレルギーとは「本来なら無害のはずの抗原に対する免疫応答によって起こる疾患」と定義されています。自分の身体の組織傷害を起こし、重篤な疾患にいたる可能性のある有害な免疫応答の一つが過敏反応です。その一つがアレルギーです。
 過敏反応は四つに分類されます。
Ⅰ型、  IgEを介した過敏反応、通常のアレルギー。アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレギー性結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、全身性アナフィラキシーなど。
Ⅱ型、  IgGを介したもので、細胞表面や間質の抗原に直接反応することで組織傷害が起きる。薬物アレルギー(ペニシリンなど)。
Ⅲ型、  IgGを介したもので、可溶性の抗原に反応して免疫複合体が形成され、これが引き金となった反応により組織傷害が起きる。血清病、アルツス反応など。
Ⅳ型、  T細胞を介した反応で、三つのタイプがあります。
  一、Th1細胞によるマクロファージの活性化で起こる組織傷害で、その結果として炎症反応が起こる。接触性皮膚炎、ツベルクリン反応
  二、好酸球優位の炎症反応と関連するTh2細胞活性化による組織傷害。慢性気管支喘息、慢性アレルギー性鼻炎
  三、細胞傷害性T細胞による直接の組織傷害です。接触性皮膚炎(うるしなどのかぶれ)など。
 アトピーとは、普通の環境に存在する多種の抗原に対してIgEが応答する傾向を言います。先進国に多く、発展途上国に少ないのです。

◎アレルゲン(アレルギーを起こす原因)の特徴
IgEの産生をうながすのは
1)蛋白だけ。それがT細胞の反応を誘導する。もし蛋白質でなければ、中に入っている微量の蛋白か、ストレスによるものか、精神心理的なものか。
2)比較的小分子で粒子として粘膜に拡散する。小分子量です。
3)可溶性で花粉やダニの糞のような乾燥粒子によって運ばれ溶出します。
4)典型的にはきわめて少量が免疫系に提示されます。それによってT細胞が活性化します。IL-4産生CD4。普通、年間1μgを超えません。きわめて少量で起きるのです。
5)安定性。乾燥した粒子の中でも活性があります。
6)酵素としての機能をもつ。しばしばプロテアーゼといわれます。
7)すべての人が同じ反応をするのではない。その人のT細胞応答を必要とします。

◎アレルギーは遺伝的要因プラス環境因子で生じる。
 遺伝子は、第11番染色体と、第5番染色体にある可能性が高いのです。
 
◇アレルギーは体質ではありません。体質とは何か。現代では、医学的には使われなくなった用語ですが、社会的には氾濫しています。体質の定義ができていません。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましんは、関連のある病気で家族内発生率は高いのですが、遺伝や体質は証明されていません。身内に一人もいなくても出ることがあるし、親が喘息でもこどもが喘息にならないこともあります。なぜでしょうか。
◇遺伝的に同じであるはずの、一卵性双胎の一人が喘息で、残りの一人が喘息である確率が、25%といいます。これについては、8から80%といろいろなデータもあり、意見が分かれています。
 最近の遺伝子と免疫の研究では、遺伝子と、それにスイッチを入れて遺伝子を働かせるものがあり、それが環境因子(狭義の意味では、自然環境だけであるが、広義の意味では、社会環境、そこから来る情緒的環境、精神的、心理的環境を含み、俗にいうストレスが含まれます)です。つまり遺伝子と環境の相互作用であるというのが、今の遺伝子学や免疫学の考え方です。
 遺伝子学からいうと、遺伝子を持っていても、その遺伝子の働きが発現されなければ、病気になりません。遺伝子のスイッチをオンにするのが環境因子です。だから環境が変れば、病気も変ります。
◇アレルギーマーチという小児科医が多いですが、私は、それは、子どもは成長するに従って、精神的にも肉体的にも成長し、また、環境も小、中、高、大学と進学しても変るし、親の転勤によっても変り、それによって、なる病気も変っていくと考えます。
 何もアレルギーは、必然ではありません。うまく抜け出せればよいのです。でも、それが、現代の日本社会では難しいのです。一方的な考えの法律や、抜け道だらけの法律や、憲法違反の法律や、それに乗じたいろいろな医師、製薬会社があり、その反動で根拠のない漢方、民間療法、代替医療がはびこっています。代替医療の研究では、すべて有効とは考えられず、一部は有効ですが、無効のことも多いことも事実です。
 世界には、多くの異なった医療があります。現代の西洋医学、それに影響を及ぼしたイスラム医学(ヒポクラテス医学はイスラムを通して西洋医学に取り入れられました)、各地の伝統医学(中国医学、漢方医学、チベット医学((チベット仏教の密教))各地の先住民族医学)、ホメオパシー、カイロプラクティス、宗教医学など。
 しかし、どの医学でも、100%効果があるものはありません。効果がある場合も、ない場合もあります。なぜでしょうか。それはまだ、すべての病気の治療をできる医学がないということでもあります。

 私は、先に述べた、遺伝子と環境の相互作用で病気が起きると考え、その要因の一つをなくせば、病気は治ると考えます。もちろん、環境因子には、細菌、ウイルスその他の微生物、寄生虫、動植物、食物などもあります。それに加えて、社会環境、特に戦争、それに抑圧された社会(保育所、幼稚園、学校、職場)、家庭、地域などが含まれます。
 母原病という医師もいますが、それは一部しか見ていない医師の考えと思います。母親も、自分の親や生まれ育った環境によって変り、しかも現在の置かれている環境(特に家庭内)によっても左右されているからです。自分の育った環境がよくなかったから、そういう思いを子どもにさせたくないと思うこころが、子どもを変えてしまいます。自分と同じにしたかったら、同じ環境にして育てることです。少しでも違ったら、子どもは違う道を歩んでしまいます。
 自分が子ども時代にいやだったことを、子どもにさせないと自分と違ってしまいます。

◇アレルギーにはいろいろ種類があります。(前にも書きましたが)
  Ⅰ型 アレルギー性(IgE仲介性)-即時型アレルギー-アトピー、アナフィラキシー
  Ⅱ型 抗体による細胞毒性反応-(IgMまたはIgG仲介性)-輸血反応(溶血)
  Ⅲ型 免疫複合物の形成-(IgG、IgM、IgA)-血清病
  Ⅳ型 古典的遅延型アレルギー反応-ツベルクリン反応、過敏性肺臓炎、ベリリウム中毒
◇食事アレルギーとじんましんは別の病気です。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、じんましんは関連のある病気であすが、薬物アレルギーとは別の病気です。

§2.人はなぜ病気になるのか(別項―人はなぜ病気になるのか―参照)
◇人は環境に適応できない時に、病気になるのです。
現代では、社会環境に適応できない時、すなわちストレスがあると病気になるのです。
 最大の原因はストレス。ストレスから病気になるのです。その時、その人の弱点に病気が出てくるのです。
◇アレルギーは親からもらった身体の弱点。弱点つまり遺伝的素因(遺伝子はまだ確定していない)は受け継ぐが、病気は受け継がないのです。弱点を受け継ぎ、それが環境によって、発病したのです。

§3.病気とは
 病気は身体やこころの変調です。こころと体は、メタルのうらおもてですから、連動しています。こころが変化すると、体も変化します。逆もあります。
病気を嫌わないで、受け入れて、なぜなら病気はあなた自身ですから。自分で自分の病気になっている身体やこころをなだめてください。不安になると病気は悪くなります。

§4.一病息災
 1ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると他からあふれないように、1つの病気にかかると他の病気にかかる率が低くなります。水痘にかかっている間は、喘息の発作は起きません。
 1つの病気を、手術や薬で治してしまうと、ストレスがなくならなければ、また別の病気にかかってしまいます。また、同時にいくつもの病気にかかってしまう人もいます。100歳で自立している人は、ほとんど病気をしないで長生きしているのです。アレルギー性の病気にかかると、他の病気にかかる率は低くなるのですが、ストレスが多ければ、他の病気にもなります。

§5.なぜアレルギーが増えたのか。
 最大の原因は、環境の悪化です。戦後日本の経済は大きく発展しました。特に高度経済成長時代と云われる昭和30年代後半から昭和40年代に、産業公害が大きく広がり、人間の住みにくい環境になっていきました。それは自然環境と社会環境の両面があります。
 喘息は、高度経済成長時代に増加し、その後1980年代に成人のスギ花粉症とこどものアトピー性皮膚炎が増加していきました。
 自然環境が悪化すると共に、人がのびのびと生きていけなくなった社会環境になりました。
 保育所、幼稚園、学校、職場、住んでいる地域と、どこでも管理が進み、個人の自由が無くなってきています。いつも他人の顔色を気にして生きている暮らしにくい社会になってきました。

§6.アレルギー性の病気の起きやすい自然環境
 工場の煙、自動車の排気ガス、光化学スモッグ、杉花粉、 気温や湿度の変化、天候の変化、梅雨、台風、春風(大陸からの) 住環境の悪化、過密住宅、サッシによる家の気密化。畳からじゅうたんへ。木造からコンクリートへ。 食品添加物や、黄砂PM2.5なども。
 
§7.アレルギー性の病気の起きやすい社会環境
 先進国に多く、発展途上国に少ないです。しかし途上国でもどんどん増えています。
 ところが先進国の中では、スカンジナビア諸国が少ないのです。これは人間が暮らしやすい社会だからではないでしょうか。
 都市に多く、農村部に少ない。
社会的要因は、個人では解決できないです。--現代人病、文明病。
日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えています。
 喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では一時8%以上でしたが、今は工場が減り、減少しています。
 スカンジナヴィア地方では特に低いことも特徴的です。人にやさしい社会だからでしょうか。

 例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民(インディアン)は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるといいます。ところが居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。
 またアラスカのイヌイットも、昔は、喘息はほとんどなかったのに、次第に増えています。

例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちでしたが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったといいます。これを横浜喘息と呼んだそうです。

例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、結核では免除されず、喘息はだめで徴兵されませんでした。

例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。
 現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。若い人の労働条件が悪く、正規雇用も減り、欧米化しているためではないでしょうか。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因と考えられています。

§8.ストレスの話
 ストレスになるものは、環境です。
 ストレスを回避するにはどうするか。
 いやなことはしない。いやだなと思って我慢せず、仕方ないさ、まあいいや、そういうものだと思う。子どものストレスは、大人次第と、環境が、神学や就職、結婚などで変化していきますから、解決できることが多いですが、大人のストレスは、なかなか環境を変えられず、解決が難しいです。他の人(相手)を変えたければ、自分が変わることですが、それが難しいし、相手を変えることがそもそも難しい場合もあります。
 日本の社会を、北欧なみの、人にやさしい社会に替えない限り、難しいです。必ず、選挙権を行使し、あきらめず、少しでもましな社会を作ってくれそうで、選挙に勝ちそうな候補者に投票しましょう。選挙に勝たなければ、何も実現しません。あなたが立候補してもいいのです。政治を変えるには、政治家になるか、政治家を動かすしかないのです。
 国政は難しいなら、市区町村レベルで、動かしましょう。小異を捨てて、大同につきましょう。よりましな、しかも勝つ可能性のある候補者に投票しましょう。自分の支持する政治家を動かしましょう。現代社会は、政治に左右されています。政治を動かさない限り、今の現状は変わりません。現状を変えるには、政治を変えるしかありません。病気を治すには、政治を変えることです。アレルギー性の病気の少ない、北欧社会を目指しましょう。
 
§9.こどものストレス
 まわりの人との人間関係からくることが多いようです。
 赤ちゃんは、まず母親、兄や姉、祖父母、父親など。そして保育所。
  赤ちゃんのストレスは、別のプリント参照してください。赤ちゃんを可愛がり過ぎないでください。さわったり、だいたり、赤ちゃんが要求していない時は、しないでください。
 幼児では、それに幼稚園。そこでの鼓笛隊、剣道、はだし、裸、プール。
 学童では、学校、先生、同級生、いやがらせ、いじめ、塾、習いごと。公文式、そろばん、習字、ピアノ、スイミング、剣道、サッカー、野球。頑張らせることと、強制することがよくありません。最近わかったことは、スポーツを明治時代に日本語に翻訳する時に、遊戯という言葉も使われたそうです。つまり、楽しむもので、体を鍛えるものではないのです。しかし、中学、高校の部活や大学の運動部に問題があります。それで、それがいやで、大学の山岳部などは、なくなってきているようですし、相撲は中卒で相撲部屋に入門するより、高校や大学の相撲部の方が、練習が厳しく、それで大学出で関取になる人が増えているのです。
 今の部活には問題が多いのです。それで、サッカーのJリーグのように、若手世代を下部組織で育てるシステムのほうがよいのです。若い時に、無理をさせず、トップチームに入ってから、活躍するようにしどうすることが大切だと思います。
 いやなことをやらせないこと、やりたがったことでも、いやになったら、やめさせましょう。
 子どもにやらせたかったら、3~4歳ころから、いやがらないように、やらせることです。そして、いやな思いをさせないで、続けさせることです。続けることに、希望を持たせることです。

§10.ストレスに強くするには
 叱らずに、ほめて育てること。ほめてこどもを操縦すること。
 自己主張を強くするように育てる。
 母親の言いなりになる子は、病気になりやすい。
 喘息になる子は、普段は自己主張が強く、人をかきわけても前へ行こうとするのに、強く云われると言い返せずに黙ってしまい、いやだなと思いながら我慢するタイプが多いようです。

§11.アレルギーは変化します
 アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。
 例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。

 例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。

 例3;国立病院時代でも、前の診療所でも、特定の抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。薬のアレルギーも治ることがあるのです。

 例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生の、うるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かったのです。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。

 例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。
 この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。