私は現代西洋医学、とりわけ日本の医療を批判し、それを乗り越えて新しいというか、世界にあるいろいろな分野の医学医療を取り込んで、今までとは少しずれた医療を目指してきました。私の医療に対する考えは、なにもオリジナルではなく、多くの先人の考えを私なりにまとめたものです。いろいろな分野の医学医療そして医学医療の歴史を見ると、それぞれが専門分化して、しかも基礎医学の知見を臨床医学者が、受け入れないのです。ヒポクラテスというとほとんどの医師が知ってはいますが、その「誓い」は知っていても、それが一旦途切れ、一つはイスラム医学を経て、もう一つはイタリアで書物が発掘されて、西洋医学の中に取り込まれてきたのですが、その精神は忘れ去られています。私は、ヒポクラテスの復興を提唱したルネ・デュボスの考えを支持し、病原環境論または適応説と唱えてきました。ヒポクラテスはその考えの引き金を作った人で、近代医学にかなりの支持し発展させた医師を排出しましたが、西洋医学の細分化と共に消えかけています。私は、その考えを後世に残すべく努力していく所存です。
例えば、インフルエンザに関してでは、微生物学のインフルエンザウイルス研究者、遺伝子ゲノムの研究者、免疫学者、精神医学者、心療内科学者、疫学者、公衆衛生学者、医学史学者たちの意見は取り上げられず、専ら臨床医学者、特に内科、小児科の医学者だけが、厚労省の感染症対策に関わり、その政策を作っています。これは世界的規模でも同じです。その中で産学官の癒着と利益誘導が行われています。そのため、真実が見失われ、間違った情報がマスコミを通して流され、昨年の新型(今は従来型の変種と直された)インフルエンザ騒ぎは、WHOの幹部まで汚染され、パンデミックレベルが二段階も格上げされて騒がれたのです。
それぞれの分野の専門家たちは、すべて自分の知る領域だけで発言し、しかも有力な、厚労省に力のある学者だけの、狭い見解が流されているのです。弱小学会の意見などは無視されています。それが現代の日本の医療なのです。もちろん、それに反旗を翻している少数の医師たちもいますが、いつまでも少数派の医師ということになります。
それだけでなく、日本の医療は偏っています。一つは利益優先の医療、標準化が世界のレベルから遅れ、専門医もあてにならず、最先端医療は世界的に通用しても、一般的な医療は個々の医師の力量に任され、当たり外れのある医療となっています。何でもそうですが、知っているかいないかが分かれ目です。知っていれば100%、知らなければ0%の世界です。そんな当たり外れのある、医師の裁量権などというまやかしの権力を持っていて、医師の決定を覆すのは非常に難しいのです。
でも人間には、自然治癒力があるので、間違った医療を受けても、大部分の病気は治るのです。しかし、治らずにいる人も多く、医療費の増大を招き、特定健診をして減らそうという早期発見、早期治療をしています。しかし、それより環境を変えることによる予防に全く到らないのです。