福島第一原発事故での健康被害は、急性被害レベルを100~250ミリシーベルトに上げたが、現実には250ミリシーベルトで起こってしまった。長靴をはいていなかった為にもっと高濃度の放射能汚染にあったかも知れないが、放射線による熱傷であった。これは急性傷害である。
ただちに健康被害が出ないと言うが、低線量被曝の問題は、前にも述べたように、精神神経、免疫、ホルモン系などにも障害が起きており、それがすぐに顕在化しないだけである為に、発がん性で代表される。免疫の低下は測定しにくいが、がんが発症することは、明確にとらえられる。
それで問題になるのは、短期間に発病するのは、胎児、乳児であり、特に急速に成長するために、甲状腺ホルモンを必要とし、それで放射性ヨードが問題になる。幼児期以上は問題にならない。それで、ヨードの必要量の高い胎児、乳児と妊婦、授乳婦のヨードが不足していると、放射性ヨードを甲状腺に取り込んでしまう。それで、水道水が汚染しているとなって、水の買占めが行われたが、幼児や子ども、大人では問題にならない。日本人は、世界で有数のヨード摂取量が多い国であり、甲状腺の病気を疑った時に、微量の放射性ヨードを使うが、その時にヨード制限食にするくらい、充分ヨードを体内に持っている。だから、乳児のいる家庭と妊婦さんが問題になるだけである。他の人は、水を買い占めないで欲しい。海に囲まれ、海産物を多食している日本人は、心配する程ではない。
ベラルーシやウクライナ、ロシア、それに特にドイツは、海産物を食べる習慣が少ない。その為にヨード不足が10%前後の人にいると言われ、多量の放射性ヨードを吸い込んだり、のんだり、食べたりすると、それが甲状腺にたまり、発がん性をもつ。チェルノブイリの経験では、初期の健康被害は、高濃度汚染を除けば、まず子どもの白血病と甲状腺がんである。大体4歳以下に集中して、事故後4~5年が問題で、その後もだらだらと続いた。それから大人のがんであるが、これは10年後から増え始めた。その問題は、国土が広く、交通手段がなく、病院へ行くのに、本数の少ないバスしかなく、自動車を持っている人はまれで、農村の病院には、患者送迎用の救急車が沢山あり、それも使用頻度が多いために、毎年更新する必要がある程で、健診に病院へ行くことが大変で、発見の遅れも多い。
日本とは、全く事情が異なる。少し頭をぶつけただけで、CTを取ってしまい、世界一医療被曝が多く、世界平均の4倍で、日本のがんの一部はCTによるものであるとの論文が、海外から出される程である。微量の放射線被ばくの問題は、あくまで発がん性で代表される全身の僅かな障害である。しかし、それ程問題にはならないが、19歳以下の若い人や子どもと妊婦や今後妊娠をすることのある女性は、避難して放射線を浴びない方がベターである。
前回にも触れたように、放射線を微量浴びても、体の自然に持っている治癒能力が働けば、健康被害も回避できる。それでできる人とできない人がいる為に、確率的影響と表現される。その確率が、放射線被曝量に相関する。だから、健康に、人生を楽しく生きることが大切である。
もう一度、ヨードの問題に戻ると、日本人はむしろヨードの取り過ぎの傾向があると、甲状腺疾患専門病院の伊藤病院では言っているが、食品で取り過ぎても甲状腺には問題の怒らない仕組みがあり、気に掛ける必要はありません。だから、ヨード剤を飲むことはありません。