乳幼児を病気にしないために
1. 普通の人は誰でも、自然免疫の仕組みをもっています。俗に自然治癒力と言いますが、まず第一に、外界に接触する場所に、細菌やウイルスや多くの微生物が棲みついていて、人と共棲関係にあり、それが外来の微生物たちを追い払ってくれています。垢が出るのは、侵入してきた微生物を皮膚の角質層で食い止めて、自然に脱落させ、皮膚からの侵入を防ぐシステムの一部なのです。[ところが体調が悪いと、そこに水虫(白癬菌)が棲みついたりしますが。] 外界と接触する場所は、皮膚、目、耳、鼻、口とのど、乳首、外陰部(肛門、泌尿器、性器)など人体のすべてです。細かく言えば、唇、毛と毛孔も含まれます。
第二に、その防御システムを突破されて入った時に、そこの場所で外来の微生物と闘います。それが、免疫学的な「自然免疫」です。毎日、鏡でのどを見てご覧なさい。赤い時も、赤くなく健康なピンク色の時もあります。舌を見てもいろいろです。でも、そこで侵入してきた外来の侵入者を撃退すれば、病気になりません。口の中などは、よく歯でかんだり、楊枝や歯ブラシなどで傷がついても、健康な時はすぐ治ってしまい、体調の悪い時に口内炎になるのです。その仕組みが、体全体に働いていて、健康でいられるのです。
だからいつも体の働きを活性化し、病気にならないようにすればよいのです。
第三が、獲得免疫と言われるもので、病気にかかったり、予防接種を受けた時にできるもので、病気にかかれば、強くなるというのは、少し違うようです。第三の防御システムだからです。ワクチンを受けたから安心というのも、いささか疑問です。もしかして、ワクチンを受けても、健康なために第二のシステムで排除してしまえば、ワクチンは、つきません。それで、ある時体調が低下し、抵抗力が落ちた時にかかったりします。ワクチンでも、生ワクチンは生きた菌やウイルスで免疫がつきやすいですが、不活化ワクチンは死んだかどうか判らないが活動性を失ったワクチンなのでそう呼ばれますが、つきが悪いのです。不活化ワクチンの代表は、インフルエンザと日本脳炎です。生(生きている)ワクチンでもつかないのは、本当に健康な人は、免疫の仕組みで排除してしまうからです。しかし、誰でも現代社会に生きている限り、免疫力をいつも高くしていることは難しく、落ちた時に入ってくるとかかるのです。
2. 子どもの感染性の病気の原因が、免疫が落ちた時に、外界から入ってくるとかかるのは防げません。そこで、一部は獲得免疫(自然感染かワクチン)に頼るのですが、それなりに合併症があり、100% 安全ではありません。危険を伴うことがあります。また、体内に潜んでいたウイルスや細菌が、抵抗力が落ちた時に動き出すのです。その原因は、多くはまわりの環境、特にストレスにあります。インフルエンザb型菌(ヒブ)も、肺炎球菌も、溶連菌も、一部の子が常時持っている菌の一種です。免疫が低下した時に病気になります。
3. 子どもの免疫のシステムは、6カ月で8割、3歳で9割、5~6歳でほぼできあがります。とびひ(伝染性膿痂疹)にかからなくなるのは、小学校半ばの学年ですから、その頃にはほぼ大人と同等の免疫のシステムが出来上がっていると思います。またそれにも個人差があります。だから、乳幼児期に病気が多く、小学校に入る頃には、余り病気をしなくなります。
4. アレルギーも免疫システムの一部の障害から生じるものです。うまく環境に適応できない時に生じるのです。乳児期にアトピー性皮膚炎や喘息様気管支炎になり、3歳前後でうまく離脱できることもあれば、気管支喘息に移行してしまうこともあります。それに免疫のシステムが関与しているのです。免疫を活性化するには、いつも楽しく、のびのび生きて行くことです。ストレスは免疫を低下させます。過保護も過干渉も病気にかかりやすくします。
5. その為には、どうすれば良いでしょうか。
子どもをのびのび、孫悟空のように自由に育てることです。その為には、
3歳前までの乳幼児は、叱っても、叱られた内容を覚えていませんから、叱っても意味がありません。そこで、いけないこと、悪いことをした時(しようとした時も)に、叱らずすぐにほかのこと(おもちゃやテレビなど)に、関心をすり替えて下さい。子どもは、興味があれば、すぐ関心を向けて、前のことを忘れてくれます。そしてすぐ、ほめてあげます。
子どもはそれを繰り返すと、ほめられたいから、親の言うことを聞いてくれます。
3歳すぎたら、それがうまく行かなくなります。そしたら、なぜいけないのか、なぜ危ないのか、子どもに判るように説明します。そして、言うことを聞いてくれたら、すぐほめます。しかし、男の子や元気な女の子の中には、言うことをきかない子がいます。なぜいけないか説明してもきかない時は、怒ってもよいです。しかし、体罰はいけません。言葉で怒りましょう。女の子で小学校に入る頃には、説明すれば大体の子は言うことをきいてくれますが、男の子の中には、2~3年生にならないときかない子もいます。始終叱っていると、慣れてしまい効果がなくなります。母親が言ってもきかなかったら(これは鉄砲)、父親にどかんと(大砲のように)叱ってもらいます。大抵、それでおさまります。それでもダメな子はなかなか難しいです。叱ることが有効なのは、滅多に叱らないことで、いつも大目に見て、余程のことでない限り、叱らないでいると、叱ることに効果があります。
6.小学校に入る頃には、子どもは病気をしなくなります。一生の内で一番病気が少ないのは、小中学生です。そしてかかるのは、多くは、アレルギー性の病気や喘息で、こころの影響がでてきます。5歳すぎたら、ヒブ(インフルエンザb型菌)、や肺炎球菌の重症タイプにはめったにかかりません。それまで、上手に育てましょう。お釈迦様のように、孫悟空を自由に動き廻らせながら、手の中に閉じこめておくこつをつかんで下さい。北風と太陽が旅人のマントを脱がせる競争をした時のように、暖かく子どもを包みこんで、マントを脱がせましょう。
子どもにうそをついてはいけません。本当ではなくても、うそにはならないように言いましょう。注射が怖くて病院へ行かない子には、「注射しない?」と聞いたら、「先生にきいてみましょう」とか、「今日は病気だから、お薬だけかもしれないよ」とか言います。決して「注射しない」とは言ってはいけません。一度うそをつくと、二度と信用してくれません。親がうそをつかなければ、子どももうそをつきません。もし、うそだと判っても、信じているふりをして下さい。そんなに長くうそをつき続けませんから。子どもの言うことは必ず、信用して、疑ってはいけません。もしうそなら、何か訳があるはずです。それを探ることです。「うそつき」はうそをついて良いのです。「良い子」はうそをつけないのです。良い子にして下さい。