不機嫌な太陽
ー気候変動のもう一つのシナリオ― No.9
§10.炭酸ガスによる地球温暖化説は、確かに温暖化を早めてはいるが、その効果は小さい。
コロナが明らかにした、世界の現実。
しかし、消費社会は止めなくてはならないし、先進国だけが文化を享受し、発展途上国を取り残してはいけない。私(黒部)は、炭酸ガス地球温暖化説は、電気自動車をはじめとして、新たな投資先を作り出す資本家たちの画策ではないかと考える。さらにクリーンな電力として原発を推進する魂胆もあると思う。コロナウイルスの騒ぎは、一つは資本家たちがその流行の土壌を作り出した結果である。世界のすべてに高額所得者と貧困層の格差社会が生じており、福祉社会は切り崩されていたのである。その典型がイタリアとイギリスであった。 日本も、伝染病棟を無くして、一般病院の病床稼働率を上げさせていたために、対応ができなかった。伝染病(流行する感染症)は都道府県の仕事であり、一般病院はその責を問われないはずなのに、行き詰って厚労省官僚は病院のせいにしている。これは、自民党一党支配のためであり、官僚の安倍派への忖度もあるだろう。政権が変わらないので、官僚は内閣の顔色を伺うからである。それを安倍元首相は作ったのである。
9章 2008年における追記
―炭酸ガスの温室効果は微弱である
宇宙線の詰まった空間領域に太陽系が入ったことが、我々の先祖の運命を決めてしまったのだろうか。ガンマ線は天の川銀河内で爆発性の星の多い渦状腕を浮かび上がらせる。太陽が昔から継続して果たしている気候変動への役割を否定しようとする試みは、失敗に帰した。今では、炭酸ガスの気候への影響は明らかに小さいことが分かっている。地球が寒冷化すれば、この論争に勝つことになるが、それは最悪の事態である。
1節 新しい実験と局所泡への取り組み
スベンスマルクの実験
自然に到来する宇宙線が、厚さ1kmの岩の層により断ち切られた場合には、化学反応が起こらないことを確認するために、SKY反応箱を英国のボウルビーの鉱山の中に作った。またドイツのカールスルーエ研究センターで、コペンハーゲンの10倍も大きい反応室での実験を計画した。
275万年前の寒冷化を起こした原因
地球の気候と生物の歴史が、星の爆発から響く太鼓の音と、祖先のDNAに魔法をかける宇宙線からの呼びかけと、いかに一緒に歩調を合わせて進行したかを、宇宙のシナリオは教えてくれた。 アフリカの森の喪失と、道具を作り肉を食べる二足歩行動物の出現とを引き起こした275万年前の寒冷化を宇宙線で説明できたことは、「輝かしい業績」であろう。 しかし、これはニューヨーク市にあるNASA気候モデル作成集団によって嘲笑された。その後2つの進展があったので、それは時代遅れとなった。
第1に、太平洋の海底から得た物質中に、近くの超新星の痕跡が存在することを発見したミュンヘン工科大学のコルシネックのチームは、2004年に我々を支援するように、その出来事に対して約280万年前という、彼らの最初の年代に再び戻したのである。コルシネックのチームは、この年代から閃めいて、宇宙線、気候の寒冷化、および人間の進化、という3者につながっている可能性があると、提案したのである。(その時に本書は出ていなかった)
第2に、個々の出来事の年代は、当時の一般的な気候とのつながりを追跡するためには、予想に反して、それ程重要でないことが分かったのである。2007年に、グールドベルトに属する爆発性の星の間を太陽系が現在通過中なので、強い宇宙線にさらされているのである。
星の爆発は、熱くて希薄なガスを局所泡に吹き込んでいる。局所泡の殻は、衝撃波と強力な磁場を含んでおり、太陽自身を保護する、いわば太陽圏の境界の殻を巨大化したものに似ている。この局所泡の殻は、宇宙線を跳ね返す傾向にある。また逆にこの泡は、局所泡内に起こった超新星の発する宇宙線を外側に逃げられないようにしている。この泡は、宇宙線の詰まった「瓶」のようなものであり、それゆえ、個々の星の爆発した年代と場所には関係なく、そこは寒い場所なのである。
局所泡による過去500万年の気候変動の説明
100万年ごとに約6つの巨星が爆発して死に至るとすると、局所泡内の宇宙線の強度は、泡の外側の周辺より、20%は高いだろうと推定した。地球の気候にとって、この局所泡の出現と成長の時刻表、そして太陽と地球がそれに遭遇したのはいつかといった経緯が重要である。これらのことを単純に推定すると、過去500万年の間に地球が宇宙空間で遭遇した出来事の歴史が、気候の記録に驚くほど一致していた。
450~400万年前までの温暖期は、太陽と地球がこの局所泡の殻を通過している時であった。殻の部分は宇宙線は少なかったのだろう。殻の内部へ入ると宇宙線は強力になり、寒冷化が起こった。それが275万年前の寒冷化で、氷が北大西洋で広がり、アフリカが乾燥化し始めた。コルシネックの見つけた超新星は280万年前なので、この寒冷化を強めた。 それからの寒冷化は遅くなる。地球は局所泡の中に閉じ込められ、気候は宇宙線の放射と平衡状態に入ったのである。地球は現在、この状況にあり、長期間の氷室条件が続き、これ以上悪化することはないようである。この局所泡は、熱いガスを銀河のハロー(銀河の外側を包む星間物質の領域)中へ放出する煙突の役割を果たすので、将来は宇宙線は減少し、氷室気候は少し和らぐであろう。
2節 天の川銀河における宇宙線分布図の作成
天の川銀河の構造
宇宙気候学は、シャバイブが地球の歴史における氷期への突入と、天の川銀河の渦状腕への地球の侵入との間の結びつきを見出して大きな一歩を踏み出した。 宇宙線が地球大気に衝突した時に生成される放射性原子は、その寿命の長さ上、天の川銀河内で起こった出来事に結び付けることにより、過去に遡れる年代が100倍も拡大された。
銀河内にある宇宙線の強い発生源
シャバイブは自分の推論を裏付けを、宇宙線にさらされた古代鉄隕石中に見つけた。しかし、宇宙線はその発生源を教えてくれなかった。だが宇宙線は、はるか彼方で星間ガスと相互作用した時に発せられる高エネルギーのガンマ線である。光と同類のガンマ線は、極めて長い距離を一直線に進める。 1991年に打ち上げられた、NASAのコンプトンガンマ線観測衛星は、搭載した高性能のガンマ線望遠鏡で、近くの月から遠くの爆発している銀河の星まで、多くの発生源を見つけ、宇宙線により作られたガンマ線からなる背景放射の強い領域の方向分布を明らかにし、それが天の川銀河の至る所に存在することを明らかにした。 高エネルギーの領域は、いずれかの渦状腕の方向とよく一致した。その中で最もエネルギーレベルの高いものは、オリオン腕からのガンマ線であった。
注目すべき2つの最新情報
2007年の天文学上の2つの報告に引き付けられた。 1つは、地球の全球凍結と関係するスターバーストのこと。もう1つは、天の川銀河における星の生成率の変動性に関するものであった。大小のマゼラン星雲が近くに到来するかも知れないということであった。 24~20億年前の天の川銀河の星のベビーブームと小マゼラン星雲の接近は、同時発生かも知れないのである。この天の川銀河は、他の大半の渦巻状銀河に比べて、星の生成が異常に少なく平穏すぎる歴史であるというものであった。以下略。
3節 “以前とは全く異なる手合わせをしている”
気候科学者による予言
本書が提案したことは、化石燃料の消費により悲惨な気候災害が怒る、という予言に対して疑問符を投げかけることであった。本書の出版されたのと同じ月に、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の作業部会Ⅰは、2007年版の「気候変動の政策立案者用最新概要」を発行した。それは21世紀中に気温が数℃上昇するというもので、太陽の効果は、炭酸ガスの効果の約7%でしかないとされた。
ロックウッドらの論文
ロックウッドはスベンスマルクへの支持をやめて、スイスのダボスの世界放射線センターのフレーリッヒの方へ行った。それは、太陽は現在の気候変動に関与していないことを確証したものであった。「太陽の気候に対する強制効果と地球全体の平均表面気温の変動に見られる最近の逆向き傾向」という表題で、ロックウッドとフレーリッヒは、数千年にわたる気候変動には、多くの場合太陽が関係しているという。また20世紀の間における気候温暖化に、太陽がある程度関係しているともいう。それに続く1985年頃に太陽活動の活発化は終了したという。その後太陽活動は低下しているので、現在の地球全体の平均気温の上昇は、太陽活動では説明できないと主張した。 二人が間違ったのは、ここである。 なぜなら、地球温暖化は、太陽の”機嫌 (mood)”の変化に対応して、既に止まっており、温室効果による予想に逆らっている。
ロックウッドらが間違った認識をした理由
スベンスマルクは、クリステンセンと共に文書で反論した。第1に、ロックウッドらが表面気温のデータを用いていることに疑問を表明した。なぜなら、「表面気温が太陽の周期に対応していない」というが、上空の温度と海洋の水面下の温度は、双方とも、太陽周期に対応して明白に上昇し、下降していた。重要なのは、ロックウッドたちは9~13年という長期間の平均を用いたので、21世紀の初頭においても、まだ急激に上昇しているという幻想を生み出した。その一つは、1998年から2002年までの間に0.1℃上昇したという。 実際にはその時には気温は横ばいで、気球で測定された上層の気温は、はっきり、より長い期間地球温暖化が休止していたのである。 スベンスマルクらは、「過去10~15年間に二酸化炭素の濃度は、急激な上昇を続けているが、温度を上げることができずに平坦化している。これは、太陽の時期活動が高いレベルに落ち着いており、それ以上、上昇せずにいるからである」という。これは、宇宙線を太陽圏から追い出す役割を太陽が怠り始めたためであった。
記録映画「雲の不思議」
デンマークの映画製作者のモーテンセンは、1990年代末以来、スベンスマルクに寄り添って、「雲の不思議」という記録映画を2008年に完成させた。この出演者の中に、ヴァイツァーやシャバイブが入っていた。最後に、批判家からの忠告を扱いたいと言い出した。そこで、海洋の水深50mにおける水の温度を示したグラフを用いることにした。それは宇宙線が少ない時には上昇し、多い時には下降していいた。1990年以降、このデータは全般的に寒冷化傾向を示していた。地球の温暖化は休止しただけではなく、逆の寒冷化に入った可能性があると述べた。
4節 破綻した炭酸ガス原因説
CO2説に対するスベンスマルクの考え
二人の著者は、できるだけ地球温暖化という政治問題を避けてきた。人々が燃料消費で生じた炭酸ガスは、現在の気候変動を引き起こしていると信じて、石油、石炭、天然ガスの消費を節約しているなら、それは間違った考えに基づく害のない結果である。 スベンスマルクは、南極大陸だけが逆の気候変動をすることを説明できた時が、気候変動の新しい地域地理学が始まったと考えている。この気候変動の地域地理学では、雲と温室効果ガスが、地域ごとにそれぞれ独特の役割を果たすのである。 各種の温室ガスの温暖化効果は、炭酸ガスよりも水蒸気の方を重視すべきであると考えた。
炭酸ガスと気温との関係
- 過去5億年の間には、気候と炭酸ガス濃度との間に相関関係は存在しない。
- 過去100万年の間には、炭酸ガスと温度とのつながりがあった。しかし、そのつながりは主客転倒であった。なぜなら、炭酸ガスの変化が、温度変化より先行するのではなく、温度変化の後を追っているからである。
- 過去1万年の間には、炭酸ガスと温度との間に相関関係は存在しない。
- 過去100年の間には、炭酸ガスの増加と温度の上昇との間に、全般的に見れば大まかなつながりがあった。
しかし、この100年間のデータを検討すると、
- 20世紀の温暖化の半分は、1905~1940年の間に起こった。この間の炭酸ガスの濃度は、まだ低いものであった。
- しばしの地球寒冷化が、1950年代と1960年代に起こった。この間の炭酸ガス濃度は、上昇中であった。
- 21世紀初頭には、炭酸ガス濃度が急激な上昇を続けているにもかかわらず、地球温暖化は、再び中断した。
- もしも、炭酸ガスによる温室作用が、温暖化を起こすなら、上空の空気は表面の空気よりも速く温まらなければならない。しかし、観測結果は、その反対であることを示している。
宇宙線と気温との関係
- 過去5億年の間の温度変化には、4つの絶頂期と4つの谷底期が存在するが、それらは、鉄隕石中に観察された宇宙線の変動に一致するし、また、太陽系が銀河内を周回中に4本の腕と遭遇したことに一致したのである。
- 数千年の間のリズミカルな気候変動は、宇宙線により放射性炭素や他の放射性核種が生成される量の変動と一致している。
- 過去100年間の温暖化率の変化も、宇宙線強度の変動と一致している。
- 宇宙線が気候に影響を及ぼす作用機構の検証は、低い雲が宇宙線の変動に合わせて変動することを観測することによってなされたし、また、宇宙線が雲の凝集核の形成を加速する微細な物理機構が存在することを実験で証明することによってなされた。
5節 小氷期の再来は御免だ
小氷期再来の可能性
地球は再び小氷期に向かっているのであろうか。 20世紀の後半における太陽の活動は、非常に活発だったので、1990年以降は、上昇に転じるよりも、下降を続ける可能性が大きいからである。 太陽と炭酸ガスとのどちらが、地球の気候温暖化を取り仕切っているかという問題は、自然の寒冷化ということで解答が与えられるであろう。
本書の読者の質問
スベンスマルクは、読者へこう語った。
できれば政治のことは忘れて下さい。その代わり、次のことは忘れないで頂きたい。発見が行なわれるような最先端の領域では、そこで実際に起こっていることについては、科学者でも、一般の人々と同じように、正確には判らないということです。 ですから、しばしばこの新しい発見者は、学術上の手続きを省略して、その発見を一般社会にできるだけ迅速に、しかもできるだけ直接的に、知らせるのです。ガリレオ、ダーウィン、アインシュタインは、すべてそうしたのです。読者が科学者であろうとなかろうと、この議論を検討して、自分自身の意見を持ってもらえれば、それで充分満足なのです。
(私の医学医療の理論-ネオヒポクラテス学派∔精神神経免疫学-も同じで、つまり世界の少数派であり、医学界からは認められていないが、実践的には有効であり、医学で因果関係不明とか、原因不明とか、特発性と言われるものをすべて説明できるのです。同じ立場なのでよく分ります。 2013年12月に位置天文学用の宇宙望遠鏡ガイアは、ソユーズロケットで打ち上げられた。2016年から2年ごとに送られてくるデータが公開され、2022年6月にも公開されているが、まだ帰還していないし、データの持つ意味は解析されていない。帰還して、すべてのデータが公開され、それをどう解析するかが期待される。黒部信一)
局所泡の図
地球温暖化は、停止したのだろうか。
上図は、地表気温
中図は、高度1500mの気温
下図は、海面下52.5mの海水温