黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

アトピー性皮膚炎をこころで治す ー2-

2022-05-26 17:57:39 | アレルギー疾患の精神身体医学

  アトピー性皮膚炎をこころで治す  ー2-

            アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療は、

 皮膚の治療と 繰り返して起きる発疹を予防することの二つです。

〇皮膚の治療は

第一は、ステロイド外用薬で治すことです。ステロイドによる、かゆみと炎症の治療です。

 1)外用ステロイド剤の使い方

 2)ぬり薬の使い方

 3)外用薬ごとの使い方

         以下に書きましたので参照してください。

 4)アトピー性皮膚炎の子どものスキンケア

 5)アトピー性皮膚炎の診断

 6)こころで治すアトピー性皮膚炎

          これらは前回述べました。

第二は、かゆみをおさえること。かかないようにすることです。

 それには第二世代の抗ヒスタミン剤、特に世界的には、ロラタジンの有効性が認められています。安全性、非鎮静性もあります。

 その次は、フェキソフェナジン、エピナスチンです。

 7)鼻水とかゆみの治療の話 (前述参照)

 

〇かゆみの原因は、いやなことをがまんしているからです。こころの原因から、かゆくなり、かゆいから書くので湿疹がてきます。

 だからその原因、つまり嫌なことを無くしてあげることが大切です。それがストレス対策です。大人も同じですが、大人のストレスはなかなか無くすことができません。子どもはそれが比較的容易に無くすことができるので、病気を治すことができます。

 

〇次々と発疹が出てくること、つまりかゆみを予防するのが、ストレス対策です。

 乳児のストレス対策は、喘息様気管支炎と同じです。  幼児は、家庭と保育所、幼稚園

  特に3歳からの幼稚園は、すべての子どもに適応できる訳ではなく、ほぼ大部分の子どもが適応できるのは4歳からです。だから3歳からでは適応できない子が出ます。

  また、今までの経験から、

  保育園で、子どもは「這い這い」してからでないと「立って歩いては」いけないと、つかまって立とうとする子どもを押さえつけて這い這いさせられていた子、

プール:顔を水につけるのが嫌、つなみの映像を見てしまったための水の恐怖、剣道:園長が週二回剣道を教えていて、うまくできないで叱られてばかりいる子、それを見ていて可哀想で仕方ない子、どちらも病気になりました。

小学校:友だちのいじめ、教師のいじめ、家庭でのストレス

中学、高校も同じ

 

 1) 外用ステロイド剤の上手な使い方

外用ステロイド剤の副作用をおそれるあまりに、ステロイド剤を使わない傾向が出てきています。では外用ステロイド剤を使わないで治るのだろうか。治ることは治りますが、その条件は一切かかないこと、触らないことです。しかし、かゆいのをがまんできるでしょうか。大人でもがまんできず、かいてしまします。かくと折角治りかけていたのに、また元に戻ってしまいます。ステロイド剤のおかげで、かかないで済むようになると、自分の力で治っていくのでするだから、使わないと治らないことが多く、早いうちに使うと早く治ります。しかも、ステロイド剤ができたおかげで、治るようになった病気も少なくありません。

 例えば、包丁は料理に欠かせない道具ですが、人を殺したり傷をおわせたりする道具でもあります。外用ステロイド剤も同じで、大変よく効く薬だが、使い方を間違えると危険な薬でもあります。使い方を良く知っていれば、それ程恐れることはないが、安心しきってもいけません。そもそも副作用の無い薬はないし、よく効く薬ほど副作用も多い

 大切なことは、第一に、よく薬のことを知って、上手に使う使い方のコツを覚えることです。その為には、第二に、上手な医師にかかって、上手なぬり薬による治療法を教えてもらう。軟膏の使い方や、日頃のスキン・ケアの仕方を詳しく教えてくれます。私もしますが、よくならない時は、良い皮膚科医をご紹介します。少し遠くても、一度かかって見て下さい。違いが判るはずです。

 第三に、皮膚に今できている湿疹や皮膚炎などの症状を治すのは、ぬり薬ではありますが、基本的には自分の力で治っているのです。しかし、根本的に病気を治すことはぬり薬ではできないです。それは、ぬり薬では、次々と湿疹が新しく出来てくるのを止めることはできません。アトピー性皮膚炎に限らず、慢性的に繰り返し起きてくる病気は、ストレスが原因であることが多いと言うのが、私の病原環境論(適応説)という仮説です。ストレス対策は、別に教えます。劇的に効くことがあります。

1.外用ステロイド剤とは、

 副腎皮質ホルモンの外用薬で、その内、皮膚に使うものは、軟膏、クリーム、ローションなどがあります。効き目の強さ(抗炎症作用)に応じて、「最強」、「より強い」、「強」、「中」、「弱」の5段階あります。それぞれ、体の部位で吸収率が異なるし、病気の種類や症状の強さによって、使い分ける。それが上手なのが腕の良い皮膚科医です。医者の誰もが、それができる訳ではないが、しゼの治癒力があるので、治ることが多い。同じ薬でも、使い方で変わることがあることを知っておいて下さい。何にでも効くというものは、むしろ特定のものには効かないようです。

2.外用ステロイド剤の副作用

副腎皮質ホルモンは、外用の方が内服薬に比べたら副作用としてはずっと少ないが、長期間(2週間以上)にわたって、全く同じ場所にぬり続けると、皮膚局所の副作用が出てくる。

☆局所の副作用

多毛と皮膚の委縮(皮膚がうすくなってしまう)――これが第一段階。

ステロイド潮紅(皮膚がうすく、血管がすけてみえる為、皮膚が赤みを帯びる)

毛細血管拡張(血管がういて見える)

ステロイドにきび(顔)

毛のう炎・せつ(皮膚の細菌感染)、皮膚真菌症(かびの感染)

酒さ様皮膚炎(酒を飲んだように赤くなる、にきび様皮疹、潮紅、毛細血管拡張が混在するため。数カ月連用した時に起きてくる。)

3.どう使うか。

1)急性の病気、一時的な病気――かぶれ、ただれ、接触性皮膚炎、軽い湿疹、虫刺されなど。ただし、おむつのあたる部分や首のくびれている所、わきの下はぬらないこと。

 まめに1日3回以上ぬり、早く治すこと。早ければ3~4日で治るが、遅くとも7日くらいならぬっても構わないが、7日たっても治らない時は、必ず見せて下さい。よくならない時には、それ以上続けずに、薬を変えるか、ぬり方や治療方針を変えた方が良い。

 副作用が恐いからと、1日1~2回とか、ぬったりぬらなかったりしていると、なかなか治らず、かえって長期間ぬり続けることになってしまう。

2)慢性の病気、長引く病気――アトピー性皮膚炎、慢性の湿疹、痒疹(かゆい盛り上がった長引く湿疹)

 軽い場合には、急性の場合と同じように、短期間で治して、赤みが完全にとれたら(皮膚炎、湿疹がなくなったら)、保湿剤を使う。少ししかよくならないのに、よくなったと判断する方が少なくありませんので、できれば見せて下さい。(百聞は一見にしかず)

 まめに薬をぬって、早く(できれば7日くらいに)治して、休薬期間を4日以上とると、その間に皮膚が回復して、またぬることができる。

 慢性の病気は、折角ステロイド剤でよくしても、次から次へと当てらしい湿疹が出てくるので、これを止めるには、その原因であるストレスを無くすことが必要である。

 しかし、これがなかなか難しい。これができない為に、薬だけに頼るから副作用が出てくる。

3)内服療法の併用

 特に、夕方から夜にかけてが、かゆく、特に寝ている間に無意識にかいてしまうことが多い。かきむしると血が出る程かいてしまう。夜かくのが止まらない場合は、第二世代の抗ヒスタミン剤(俗に抗アレルギー剤などとも言うが)をかゆみ止めとして飲ませて、かゆみをおさえてあげるしかない。「かくな」というのは無理で、かゆみを止めることで、かかないと、どんどんよくなる。第一世代の抗ヒスタミン剤(鼻水の薬)は、副作用として神経系の抑制作用があり、眠気と集中力の減退で、30%くらいの人に見られ、世界的には、短期間ならよいが、長期には(まんぜんと)使ってはいけないという流れになっている。第二世代の抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)の中でも、一番神経系の抑制の少ない薬にする方がよいが、人によっては効きが悪いことがある。

                              

     2) ぬり薬の使い方

  1. ぬる前の注意は

   湿疹やカブレの部位をきれいにしてから、やさしくぬってください。泥や食べ物などの汚れを、よく洗い落とすか、ふき取るかしてからぬればよいのです。

  1. 一回にぬる量は

普通の湿疹やカブレには、山盛りにぬる必要はありません。指先や手のひらで、軽く数回こすって表面に残らない程度にぬって下さい。

3.一日に何回ぬればよいですか。

  症状のひどい時には、少量を回数多く(一日最低三回)ぬり、症状が良くなるに従って、ぬる回数を減らします。

 ぬり薬の種類によっては、一日一回ぬれば良い物もあります。

4.強くこすったほうが良く効きますか。

 強くこすると、刺激になりよくありません。薬は軽くぬりこむだけで、よく皮膚に吸収されますので、強くすりこむ必要はありません。

  1. ぬり薬のやめ方は

 自分勝手にやめたりしないで、必ず医師か看護師に相談してからにしてください。自分で治ったと思っても完全に治っておらず、再発することがあります。

 自己責任でやめてもよいですが、できれば他の人にも見てもらってからにして下さい。

6. 薬の置き場所は

 薬は、子どもがいる場合は、子どもの手の届かない所に置くべきです。

 また、よくテレビの上に薬を置く方がいますが、効き目が悪くなるものもありますからやめましょう。

7. お風呂に入ってもよいですか。

 お風呂に入ってもかまいません。湿疹やカブレのある所に、汚れが残っていると悪化します。いつも皮膚をきれいにしましょう。高齢の方は、週一回でもかまいません。

  1. お風呂の後も薬をぬるのですか。

 お風呂の後こそ、是非薬をぬりましょう。こういう時に薬をぬると、傷んだ皮膚の回復を助けることになり、薬の効果も、一層よくなります。

9. 薬用石けんを使ったほうがよいですか。

 湿疹やカブレなどは、バイ菌による皮膚病ではないのですから、殺菌剤の入った薬用石けんを使う必要はありません。

10. パウダーを使っても良いですか。

 パウダーを使う必要はありません。パウダーを使うと、かえって、パウダーが刺激になったり、塊になったりして症状を悪くすることさえあります。今は、パウダー類を皮膚には使わない時代です。日本では今の成育医療研究センターの前身の国立小児病院が最初にできた頃から、使わない方が良いことが判り、初代の山本一哉小児皮膚科医長が提唱しました。 

 

3) 軟 膏 の 使 い 方   ―外用薬ごとの使い方ー

 Ⅰ.ステロイド軟こう類

1.リンデロンV軟膏、フルコートも同じ。5g

 ステロイド軟膏で、5段階の真ん中の強さの軟膏である。

◇ステロイドなので、

 ①炎症(赤く腫れ痛い)をおさえ、かゆみをやわらげ、症状を治す力が強い。

 ②細菌、かび(真菌)、ウィルスなどの栄養になるので、細菌性のものやかび、ウィルスによるものには使うと悪化する。

 ③2週間以上の長期間連用すると、副作用(皮膚の萎縮、紅潮、毛深くなるなど)が出る。続けて使う場合は、まめにぬって早く治し、多少のびてもよいが、できるだけ7日以内(最大14日)におさえる。4日休薬すれば又使える。ただし、皮膚の同じ場所にぬり続けることであり、違う場所ならばよい。

◇適応:主に体や手足の湿疹、痒い湿疹、皮膚炎(かぶれ)、手の湿疹、赤くなった所や、赤い湿疹によく効く。顔には使ってはいけないが、使う場合は短期間にする。

◇使ってはいけないもの:うみをもったり、化膿した所。とびひ。イボ、水イボ。傷やけが、潰瘍、深いやけど。水虫(白癬)。鼻の穴、口や唇、目、お尻の穴など粘膜にはつけてはいけない。耳やうなじなど髪の毛のつく所も避ける。皮膚のいろいろな傷にもつけてはいけない。但し、例外があるので、医師の指示による場合を除く。

2.リンデロンVG軟膏ベトノバールG軟膏。5g

リンデロンV軟膏(ステロイド)にゲンタマイシン軟膏(抗生物質)を混ぜたもの。

◇副作用はリンデロンV軟膏と同じ。

◇特徴は、ステロイドだけだと困る化膿しやすい場所や粘膜に使えること。化膿しかかった所も、その状況によって使えること(無条件ではないので、注意が必要)。また一時的には、リンデロンV軟膏と同じに使うこともできる。

◇適応:虫刺され(但し、かきこわした傷の場所をさける)。唇、お尻の穴の周辺部、おちんちんや外陰部など粘膜の腫れ、鼻の周辺(中は一時的だけ)。

 ひっかいた小さいかき傷でも、化膿していない時や乾いている時は使える。

湿疹の中で、化膿しやすい場所にあるもの(耳の周囲、うなじ、髪の毛の中の湿疹)。日焼け。

◇使ってはいけないもの:うみをもったり、化膿した所。イボ、水イボ。傷やけが、やけど(状態により一部の治りかけのものに使うことがある)。水虫(白癬)。鼻の穴の中(例外あり)、お尻の穴(外側の皮膚は使ってよい)。

3.ロコイド軟膏、キンダベート、アルメタも同じ。5g、10g 

 リンデロンV軟膏よりも1ランク弱いステロイド軟膏で、主に顔の湿疹に使う。体の湿疹でも軽く弱いものには効くが、少し炎症が強いと効果が少ない。

 しばしば非ステロイドのコンベック軟膏などと混ぜて、さらにうすくして使う。副作用と、使ってはいけないものは、リンデロンV軟膏に同じ。

4.ネリゾナ軟膏。フルメタ、マイザー、トプシム、テクスメテンなど。

 二番目に強いステロイド軟膏。強いから、皮膚の同じ場所への塗り続けることは、2週間で止めること。よく効くからかゆみも止まるが、副作用も強いことを忘れずに使うこと。適応や使ってはいけないものは、リンデロンと同じ。

☆ステロイド外用剤の経皮浸透、経皮吸収率

 前腕内側を1.0として、

 頬 13.0、 前頸部6.0、腋窩(脇の下)3.6、陰部(特に陰嚢)42.0

 頭皮 4、 背中 2~3、前腕外側 1.5、  

 手掌 0.83、足首0.42 足底0.14

 だから、顔や首、脇の下、外陰部には弱いロコイド軟膏などのステロイドを使う。

☆皮膚病変の種類や、頭髪部などの場所にはローションを使うなど、軟膏、クリーム、ゲル、ローションを使い分ける必要がある。

 軟膏はすべての皮膚症状に適応します。それで私は軟膏を使います。

☆ステロイド軟膏の強さ

1 弱い    プレドニゾロン、テラ・コートリル、オイラックスH、強力レスタミンコーチゾン、クロマイP、

2 中等度   ロコイド、キンダベート、アルメタ、リドメックス、レダコート、デカドロン、

3 強力    リンデロンV、フルコート、ベトネベート、メサデルム、デルモゾール

4 かなり強力(次強) トプシム、リンデロンDP、アンテベート、ネリゾナ、マイザー、フルメタ、テクスメテン、バンデル、

5 最強   デルモベート、ダイアコート、ジフラール、

☆ぬり薬の使い方-2

1) 軟膏、クリーム、ローション、ゲルなどの使い分け方

○軟膏はどの状態の皮膚にも使えます。のばしやすいことと、少量で使いやすいこともあり、私は好んで軟膏を使っています。

○クリーム、ゲル、ローションなどは使用する皮膚の患部の状態により、使い分ける必要があります。皮膚科専門医は知っていると思いますが、内科医、内科・小児科医などは知らない医師の方が多いです。

2) 混ぜた混合軟膏を使うか、単独の軟膏を重ねてぬるか。

○混合軟膏は、残った時に他の用途に使えないこともあり、私は使いません。

混合したら、ステロイドの強さが落ちるからという医師もいますが、変わりがないという医師もいます。いらない場合にも使ってしまうので、単独の軟膏の方が使いやすいです。

○私は重ね塗りを勧めます。ステロイドを先にぬり、他の薬をその上から重ねて塗ることが多いですが、違う場合もあります。

○皮膚科専門医では、単独で重ね塗りする医師と、混合してしまう医師とに分かれています。混合軟膏に関しては使用する場所や用途に注意して下さい。限られますから。

                          

 Ⅱ 他の軟膏の使い方         

5.抗生物質軟膏

 いくつかありますが、私は副作用、皮膚の細菌への効果などを考えて、ゲンタマイシン軟膏を好んで使っています。皮膚の細菌にはこれで十分です。それ以上は小児皮膚科専門医に任せます。

ゲンタマイシン軟膏10g、ゲンタシン軟膏など

 抗生物質の軟膏。特に皮膚につく細菌によく効く抗生物質である。それで化膿している場所や、化膿しやすい場所に使う。特に、他の抗生物質に比べて、傷の肉芽のあがりがよい。最近は傷の湿潤療法と言って、消毒はせず、水でよく洗い、キズパワーパッドを貼る方法もある。この場合には、ぬってはいけない。

それで膿が出るようなら受診する。

◇適応:すべての傷、けが、やけど。潰瘍、うみや浸出液のでている場所、にきび(もっとよい別の抗生物質軟膏がある)。口唇、口の角、鼻の穴の中、お尻の穴、おちんちんの先(亀頭)、女の子の陰部(膣の入り口)にもぬれる。

 水痘の、かきこわして傷があるものや粘膜にできたもの、周りが赤く化膿した所にも使う。

 帯状疱疹(ヘルペス)に化膿止めとして使う時は、うすくぬり、べたべたぬらない。ひび、あかぎれ、手の湿疹などのひび割れ、

◇使っていけないもの:特にないが、適応以外のものには効かない。

◇傷には、きれいによく水で洗ってから、つける。消毒するよりきれいに洗うことが大切。菌を殺すより洗い流す方がよい。傷の専門は、形成外科、皮膚科。

☆ほかの抗生剤含有軟膏など

 感染が疑われる皮膚の状態に使います。子どもと高齢者では、皮膚の細菌の種類が年齢や環境によって変化しますから、違います。子どもには、ゲンタマイシン軟膏を薦めます。

 △エリスロマイシン軟膏   △アクロマイシン軟膏    テラマイシン軟膏    △フラジオマイシン軟膏     △クロロマイセチン軟膏

☆ニューキノロン系軟膏   アクアチム軟膏 10g

☆スルファジアジン銀を含む軟膏      ゲーベンクリーム 50g、100g、

6.アズノール軟膏20g

 乾燥し、かさかさした所に使う。唇がかさかさした時に使うとつるつるしてくる。皮膚に使ってもつるつるしてくる。湿疹にぬってもよいが、効果は少ない。

 湿潤した褥瘡や擦過傷にも使う。覆い隠す効果があり、膿をすいこんでくれる。

 褥瘡によく使われています。

7.亜鉛華単軟膏(チンク軟膏)、サトウザルベ軟膏

 主におむつかぶれに使う。赤ちゃんの首のくびれや脇の下などのじくじくし易い所にも使う。ぬらした布でふいてから、ぬる。少し厚くてもよい。おむつを取り替えるたびにぬる。股などの擦れる所にも使うとよい。

 副作用は少なく、ぬり続けてもよい。重ねてぬることもある。また、ステロイド軟こうをぬった上に重ねてぬり、ステロイドを保護することもある。

8.マイコスポールクリーム 10g、ラミシールクリーム10g、

真菌(カビ)用のクリーム。強いので、使用は1日1回うすくぬる。おむつかぶれのひどい時に起きるカンジダ症や、足や体の水虫(白癬)に使う。おむつかぶれの場合も一日一回ぬり、その上から亜鉛華軟膏をうわぬりする。ぬった時以外は、おむつを替えるたびにぬらしたガーゼかタオルでふいてから、亜鉛華軟膏をつける。

9.ケナログ口腔用軟膏 3g、5g

 ステロイド軟膏なので、できている場所だけに、飲食前にぬると、口内炎の場所をおおって痛みがやわらぐ。長期には使わない。

口内炎は自然に7日くらいで治りますが、痛くて食べられない時に、おおってしみないように、食べる直前にぬる。できるだけ使わない方がよいが、その時だけ使うようにすると副作用が少ない。たまに使うと悪化することがある。それは、ステロイドだから、細菌やかびの栄養になり、繁殖することがあるから。                         

10.レスタミンコーワクリーム

 ジフェンヒドラミンという抗ヒスタミン剤の軟膏で、1日数回、毎日連用してもよいです。かゆみを抑えることが主な働きですが、ステロイドには及びません。副作用としては、まれにかぶれることがあります。顔にもぬることができます。

◇かゆい所ならどこへでも使えます。ステロイド程の効果はありませんが、かゆみ止めであり、副作用も少ない。

  じんましん、手足口病、リンゴ病などのかゆみや、赤くないがかゆい所に使います。

11.尿素軟膏

  ウレパールクリーム20g、50g、ローション、ケラチナミンコーワ軟膏25g、50g、パスタロンソフト軟膏、同クリーム、ローション、

 角質化治療剤。尿素は天然の保湿因子です。角質化した(硬くなった)皮膚を柔らかくしてくれる角層柔軟化作用と水分保持作用があります。保湿剤で、水分を保ち柔らかさを保つ。角質融解剤でもあり、保湿剤でもあります。傷やひび割れにつけるとしみて痛い。湿疹には効かない。バリア機能はありません。

◇適応:乾燥してガサガサした所や、硬くなった所。角化症。毎日つけていると、つるつるしてくる。膝頭、肘の外側、かかとなどにぬるとツルツルしてきます。

12.ヘパリン類似物質含有 25g

   ヒルドイドソフト軟膏、クリーム、ローション

水分と結合して保湿効果を発揮します。水分保持作用が主です。バリア機能や角層柔軟化作用はあまりない。保湿作用と軽い湿疹や乾燥してかゆい所に効果があります。赤くなった所やかゆみ止めの効果はうすいです。ステロイドではありません。続けてぬることができます。普通は一日1~2回うすく伸ばすようにぬり、すりこまないこと。ヘパリン類似物質が入っていますが、その効能は定かではありません。

一時女性たちに人気があった薬で、顔にも使えます。手足は軟膏かクリームがよく、冬の乾燥が強い時には、ローションではすぐ乾いてしまいますから、軟膏がお薦めです。

13.ユベラ軟膏

 ビタミンEとAの入った軟膏。ビタミンの効果は疑わしいが、基剤の軟膏がよいので、保湿剤として使う。水分保持作用がある。湿疹やかゆみには効かない。あくまで乾燥を防ぎ、乾燥のためにかゆくなることを予防する薬。顔にも使えるし、ハンドクリームとしても使える。バリア機能、角質柔軟化作用は少ない。

 うすくのばして使う。ぬった後、表面に白さが残らない程度にうすく軽くのばす。

 副作用は、まれに、ぬると赤くなる(ビタミンAの副作用)人があり、なったら止める。他にはなく、何年ぬり続けてもよい。

 ビタミンEが入っているので、ひび、あかぎれ(進行性指掌角皮症)やしもやけ(凍瘡)に使う薬です。この場合は、少しこすってすりこみます。

14.ワセリン

   プロペト (白色ワセリン)、サンホワイトなど

油性の保湿剤。皮膚の表面に油膜を作ることにより、水分の蒸発を防ぐ効果があります。できるだけうすく、スクリーンをはるようにうすくのばして塗ります。べとべとしやすいから。ぬった後、皮膚の表面が少し光る程度(車のワックスがけの要領)がよい。

 副作用はほとんどないが、衣服につくとごわごわしてくる。何年ぬり続けてもよい。一日一回お風呂あがりがよい。湿っている皮膚をうすくおおうようにスクリーン状に塗る。乾燥を防ぐための薬。角質柔軟化作用が主で、バリア機能や水分保持作用はそこそこ。

15.アンダーム軟膏コンべック軟膏、10g

 非ステロイド消炎外用剤です。

 消炎鎮痛剤の軟膏で、ステロイドでないので1日数回、1か月以上連用できます。副作用はまれに、かぶれることがありますから、赤くなったり、悪化したらやめて下さい。顔にもつけることができます。軽い湿疹に使いますが、ステロイド軟膏とまぜて薄める為に使うこともあります。最近は見かけません。

16.痛み止めぬり薬

〇ゲル、軟膏、クリーム類

  ボルタレンゲル25g、50g。インドメタシンゲル、クリーム25g、50g。 インテバン軟膏10g、25g。フェルビナク軟膏25g、50g

〇スティック型   スミルスチック、セルタッチ

◇使い方

 痛み止めのぬり薬。ゲルと言ってクリーム状の薬で、1日2~3回ぬると痛みがやわらぐ。欧米では、貼り薬(湿布)より、ぬり薬が使われている。うすく伸ばして使います。すりこまないこと。べたべたつけないこと。

入浴前に使ってはいけません。しみて痛みますから。入浴後や入浴に関係ない時に使います。

◇副作用はかぶれ。また血液疾患やアスピリン喘息のある人は使用禁止。

          

                    


アトピー性皮膚炎をこころで治す

2022-05-26 10:27:17 | アレルギー疾患の精神身体医学

     アトピー性皮膚炎をこころで治す

私は長年アレルギーの原因はストレスを始めとするこころにあると考えて治療し、特にアトピー性皮膚炎は、原因を除くとステロイドを使いますが、副作用の出る限界の2週間から、原因にもよりますが、2か月以内には治せています。もちろん2週間たったら4日間くらいの休薬期間をおきます。ステロイドの使い方については、後述します。

 それで「月刊保団連」雑誌1996年7月号に取り上げて頂き、それを見た記者により「朝日新聞」1996年8月4日の「こらむ」欄に取り上げていただきました。それで長年アトピー性皮膚炎で悩んでいた子どもたちが数人来られ、いずれも2週間で治りました。その子たちはうまく原因が無くせるか、中学生の場合には私の教えた通りに心の持ち方を変えることができたのです。その男子中学生は、初診の2週間後に「自分で治した」と言って診察室に入ってきました。その通りです。自分でこころの持ち方を変えることができたのです。それで皮膚症状はすっかり治っていました。でもそれができないと良くなったり悪くなったりします。乳幼児や学童前半では、姉や兄とか、祖母や叔母さんたちが原因だとなかなか説得できず、治りません。成長して思春期になり、自分で自分のこころを変えることができるようになると、克服できるようになり、治ります。

 その後、日本消費者連盟の「消費者リポート」1997年2月7日号にも「アトピー性皮膚炎をこころで治す」という記事を書かせて頂きました。しかし、子どもが親の言うことを聞かなくなるとの投書があり、記事の継続はできませんでした。

 確かに、私の子育て法は病気にならないのですが、子どもが自立して飛んで行ってしまいます。欧米では、子どもを自立するように育てます。例えばフランスでは3歳になると、一部屋与えるように政府が政策を取っています。子どもには自分のお城が必要なのです。でも日本は違います。親の言うことを聞かせようとします。日本と韓国に発達障害(自閉症スペクトラム障害)の子どもが世界で最も多いことも、それと関係があると考えています。

   ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 を こ こ ろ で 治 す

◇アトピー性皮膚炎とはなにか アトピー性皮膚炎は花粉症と共に文明病などと言われ、近年非常に増えていますが、それと共に、乳幼児の湿疹を見るとすぐにアトピー性皮膚炎と診断する医師も少なくありません。アトピー性皮膚炎に使う軟膏や飲み薬や検査が、保険点数が高いからです。96年4月より導入された3歳未満の乳幼児の保険点数の定額制だとかえって損ですが、従来通りの出来高払い制をとると利益が多くなります。 そこで、まず診断が正しいか、日本皮膚科学会の定義・診断基準(1994)を見てみましょう。

 (私が治すというのは、早いと2週間遅くても2か月です。ただし、原因が無くならないと長引きます。それに加えて、アトピービジネスが蔓延しています。漢方でも食事療法でも短期間で治ればよいです。1年かかるのはとんでもないです。放っておけば、子どもは成長と共に環境が変わりますから、それで治ることもあります。大人は難しいです。私の方法でも、自分の気持ちの持ち方を変えられない人は難しく、その為に催眠療法を使うこともあります。)

 

◇アトピー性皮膚炎の定義は、「アトピー性皮膚炎は、憎悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」 アトピー素因とは①気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴または既往歴があるか、または②IgE抗体を産生しやすい素因があること。

 

◇アトピー性皮膚炎の診断基準、

1.瘙痒、

2.特徴的皮疹と分布、

①皮疹は湿疹病変 ◆急性病変は紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮。◆慢性病変は湿潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮。

②分布 ◆左右対側性で好発部位は前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹。◆参考となる年齢による特徴は1)乳児期:頭、顔に始まり、しばしば体幹、四肢に下降。2)幼小児期:頸部、四肢屈曲部。3)思春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向。

3.慢性・反復性の経過(しばしば新旧の皮疹が混在する): 乳児では2か月以上、その他では6か月以上を慢性とする。

 

◇上記1、2、3の項目を満たすものを、アトピー性皮膚炎と診断する。そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、経過を参考にして診断する。以下略。

 これで、簡単に言えるものではないことが判るでしょう。

 

なぜアトピー性皮膚炎になるの?

 「人はなぜ病気になるのか」というと、人間が環境に適応できない時に、遺伝的にもって生まれた身体の弱点(遺伝的素因)に病気が出てきます。だから、アトピー素因をもち、かつ皮膚に弱点のある人が、環境に適応できない時に、アトピー性皮膚炎になります。環境には、自然環境も人工的な環境も、社会環境もあります。ダニも食事も環境の1つですが、社会環境に適応できない時は、俗にいうストレス状態になった時です。これらの複数の原因が競合して病気が成立するのです。これを病原環境説といいますが、基礎医学者や精神科医に支持者が多いが臨床医にはまれです。

 分かりやすく人を川に例えて説明すれば、川の流れの両側に堤防があり、堤防に何か所かの弱点があっても、水量が少なければ水はあふれません。所が台風がきたり、大雨が続いた時に水量が増えて堤防の限界を超えると、堤防の弱い所から水があふれます。人間では水があふれた時が病気で、あふれない時が健康なのです。堤防の弱点が、人間では遺伝的素因であり(アトピー性皮膚炎では、アトピー素因と皮膚)、また人が環境に適応できない時に水が増えると考えます。

私の治療法

◇以上述べた様に、病気はいくつかの要因が競合して起きるから、その1つを無くせば病気は治っていくし、予防できます。 現代医学は身体的症状や遺伝的素因に固執していますが、私はこころの要因に着目して、そこを治すことによって、つまり川の水を減らすことによって、アトピー性皮膚炎を治すことに成功しました。つまりストレス対策によって、次から次へと出て来る皮疹の発生を抑えることができました。もちろん、難治性の子どももいます。その原因としては、子どものもって生まれた気質と、生後培われた性格と、家庭環境や社会環境によって決まってきます。基本は、いやなことはしないし、させないことと、どうしても仕方のないことは「まあいいや」とくよくよしないようにさせることです。

◇現在できているアトピー性皮膚炎の皮膚症状の治療の基本は軟膏療法で、中でもステロイド軟膏は最も有用で重要な薬です。 これを上手に使うことを患者や家族に覚えてもらい、患者の生活環境を改善し、上手なスキンケアをし、痒みを抑えることが大切です。軟膏療法だけで痒みがおさまらない時は、抗ヒスタミン剤などの飲み薬を寝る前に併用すると効果があることも多く、問題はいかに痒みをコントロールできるかにかかっています。

 ステロイド軟膏恐怖症の人も少なくないが、今できている皮膚症状を治すには、ステロイド軟膏は有力な味方です。ステロイド軟膏は、例えて言えば包丁の様なもので、包丁はお料理に欠かせない道具ですが、日本では殺人ための有力な道具でもあります。ステロイド軟膏が問題なのではなく、その使い方が問題なのです。副作用を知り、上手な使い方を心得ることで副作用を減らしていくことがポイントです。

 

どうすればいいの

 

環境の改善

 食事制限で治るのは2~3%と見られ、基本的には食事制限は不要です。乳児の場合は、アトピー性皮膚炎があれば、1歳迄卵は与えず、1歳過ぎたら卵黄だけ硬ゆでで与えることと、牛乳は沸騰させてから飲ませるように勧めています。

 衣服は、冬は乾燥を防ぐために、長袖長ズボン着用を薦めます。住宅環境は、清潔にするのはよいが、神経質にならず、夏の高温多湿や汗を防ぐクーラーの使用や、冬の乾燥と強すぎる暖房をさけるように薦めます。 入浴時の石鹸による脱脂や垢すりは避け、特にナイロンタオルやボディブラシはいけません。

 

ストレス対策

a乳児-いい気持ちに

 赤ちゃんをいつも「いい気持ち」にしてあげると母親の愛情を感じるし、病気をしません。 赤ちゃんに「気持ちがよくない」状態があることが原因ですから、その原因を見つけてなくすと病気は治ります。赤ちゃんが何かをいやがっているが、泣くほどいやではないことがあるのです。

 その原因の第一は、周囲の人が抱いたり触ったりしていることが一番多い。間違ったスキンシップ論が横行しているために、赤ちゃんを触ると良いと思っている母親が多い。しかし人は、のべつ触られるのは嫌なものです。男が女性を触るのと一緒だよ、と説明すると母親は判かってくれます。生後2~3か月の赤ちゃんは、それだけで治ることも多い。

でも、二世代以上の大家族や、第2子以後の子どもの場合には、祖父母に赤ちゃんに触るなと言っても聞き入れてくれないし、上の子に言っても聞き入れてくれないから難しくなります。第2子以後の場合は、上の子が赤ちゃんを生きているおもちゃにしてしまい、退屈すると赤ちゃんの所へ行って、可愛がってあげると称して、頭や手やからだを触るのです。赤ちゃんは泣くほど嫌ではないから泣かないが、目をへの字にして「いやだな」という顔をしています。これをやめさせるのが、なかなか難しい。上の子を叱ると赤ちゃんに仕返しをするから、叱ってはいけません。叱らずに、上の子が興味をもちそうな他のことをやらせて、赤ちゃんから離すのです。赤ちゃんから離れたら、それとなくほめておく。それができなければおんぶしたり、高いベビーベッドに入れたりして、手が届かなくします。

 予防の方がやさしく、子どもに赤ちゃんを1度でも触らせないことです。そのために女の子にはベビー人形を与え、その子の赤ちゃんを作ってあげます。 男の子は、とにかく赤ちゃんに触ってはいけないと教え、家族もできるだけ触らないようにするしかありません。

 

b幼児-イヤを言わせる

 保育所や幼稚園に行く様になると、さらに大変です。保母さんや友達との関係が入って来るからです。保育所や幼稚園で何か嫌なことがあった時に、がまんをさせてはいけません。いやなことは「いや」と言わせ、どうしても言えない時は、「しょうがないや。まあいいか。」と思うようにさせることです。

 お昼寝がいやな子、給食が食べられない子、プールが嫌いな子、どろんこ遊びが嫌な子、楽器が嫌いな子といろいろです。

 

c小・中学生-イジメに注意

 第一にいじめを見逃してはいけません。次に勉強嫌いや、塾、ピアノなどの習いごと、スイミングやサッカーなどのスポーツがあります。やりたいと言って始めたから最後までやりなさいと言う親が多いが、嫌になったら何時でもやめましょう。家庭での不和が原因の子もありました。いずれにせよ、体質的な要素プラス環境(多くはストレス)で起き、環境(ストレス)を変えることで治ることを判って頂ければ幸いです。  黒部信一

 

 

 これは日本消費者連盟発行の「消費者リポート」1997年5月17日号に載せていただいたものです。

 そうしたらある薬剤師から反論がありました。「心で治すなら、ステロイド剤を使わずに治してほしいです。私はステロイド剤を使わずに食事療法で治しています」と。

 ステロイド剤を上手に使って、短期間に治すことが良いと思います。最短で2週間で治してきました。それはこころの効果です。赤ちゃんは周りの大人を説得することです。ある中学生は、私の話を聞いて2週間後に「自分で治した」とやってきました。すっかり治っていて、私の話した通りに自分の気持ちの持ち方を変えたのです。それでステロイドも不要になったのです。食事療法とか漢方とかで治すと言いますが、半年や一年が普通ですが、私の方法だと、早ければ2週間、少し遅いと1か月ないし2か月で治ります。

 また食事が原因なのは2~3%というのは、皮膚科医も小児科学会でも言われていることです。

   ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 に つ い て 

  • 1.アトピーとは何か

 アトピーとは、アレルギ-性の病気の中で、家族的に多い時にいう。

 アトピー的背景のあるものは--気管支喘息、アレルギ-性鼻炎(花粉症)、アレルギ-性結膜炎(眼瞼炎)、アトピ-性皮膚炎、じんましん。

 アトピー性皮膚炎を起こすのは、遺伝子プラス環境要因で、私は病原環境論または適応説。誤解を招くが判りやすく言えばストレス説。だから、先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国も社会経済が発展すると増えていく。(別稿の「アトピー性皮膚炎をなおすこころ」、「人はなぜ病気になるのか」もお読み下さい。)

  • 2.アトピ-性皮膚炎の治療

 1)合併症の予防

 合併症--かきこわして化膿したり、幼児ではとびひになったりする(ブドウ球菌、β溶連菌、単純ヘルペス)、まぶたが黒ずむ(色素沈着)、円錐角膜、白内障(成人)

 2)治療のこつは、かゆみをおさえてやること

 かゆい--ひっかく--かくから悪くなる--悪くなるから尚更かゆい-の悪循環をとめること

 特に風呂あがりや、寝て暖まるとかゆくなる。寝ている間に無意識のうち にかいている。その為には

 1.かゆみやひっかく引き金になる物をさける(食餌、接触する物や環境要因)爪を切る。お風呂に入った時、暖まらない様にする(熱い風呂を避ける)。

 2.食事

 かゆみを悪くするものは避ける-余り制限しすぎると栄養不良になる。皮膚のかゆみを誘いやすい食べ物は--山いも、くわい、たけのこ、さといも、まつたけ、なす、さんま、たら、塩さけ、かれい、そば、ほうれん草。 鮮度が落ちるとイカ、タコ、エビ、カニ、アサリ、ハマグリ、スズキ

 3.環境のコントロ-ル(室内)--

 部屋が高温、高湿にならないようにする-除湿器、エアコン、暖房-

 温暖な気候と適当な湿度が最も良い--

 日光と海水は大半の患児に良い効果がある。汗はかゆみを誘い悪化するのですぐに濡れたタオルで拭くか、シャワー

  をあびる

 4.接触する物で皮膚を刺激するものを避ける

 犬や猫、小鳥、ペット類の毛(飼わない方がよい-特に家の中で)敷物、毛布(カバーをする)、寝具(枕、掛け布など)ぬいぐるみの人形、クッション、じゅうたんなどを除去。乳児は毛の敷物の上をはってはいけない。

 5.乾燥を防ぐように着衣する。上着は羊毛を避け、木綿が良い。毛や合成繊維や金属製品(ネックレスなど)が肌に触るとかゆくなる。

 

 3)薬物療法--ひっかくことを制御できなければ病気を克服できない

 1.ユベラ軟膏、ウレパール軟膏、白色ワセリン--保湿剤

  皮膚につけるオイルやクリ-ムの目的は、皮膚の中に水分を封じ込めることで皮膚のかゆみを防ぐ--かゆくなる前につけるのがコツ

 2.ステロイド軟膏---副作用--多毛になる、皮膚萎縮

  皮膚のかゆみをおさえ炎症を治す。1日3回つける(朝、夕方、風呂上がりまたは寝る時)。それ以外でもかゆくなったらすぐつける。つけて30分がまんすれば(冷たいタオルか氷をビニールにいれて冷やす)かゆみがおさまる。

  副作用を防ぐにはこまめにつけて早く治して(2週間以内)、4日以上休薬期間をつくること。ステロイド軟こうの使い方の詳細は、別紙をご覧下さい。

 3.かゆみをぬり薬だけでコントロールするのは難しい時は、飲み薬を併用するとうまくいく。1日1回(寝る時)または2回(朝も)飲む。抗ヒスタミン剤(第一世代と第二世代)と鎮静剤の内服(特にレスタミン、アタラックス、ピレチアが効果が大)。抗ヒスタミン剤による眠気は続けていると減少するが、ひどければ量を減らす(半分にする)か、第二世代の薬で眠気の少ないものに替える。かゆくてがまんできないときは、氷で冷やすこと。

 最近は、多くの皮膚科や小児科で抗アレルギー剤(実は第二世代の抗ヒスタミン剤)を出すが、アレルギーを治す効果はなく、かゆみをおさえる効果がある。

 4.感染には抗生剤を飲む。

 4)予防

 気管支喘息やアトピ-性皮膚炎のある家族に生まれた乳児には、母乳をすすめ、離乳食のうち特に卵、大豆、魚などを避ける。卵は1才迄は与えないで、1才から硬ゆでで黄身だけ。白身は2才以後。牛乳については確立されていないが、効果が見られることもあるので、できるだけ開始を遅らせ、生牛乳は避け、一度ふっとうさせる。

 アトピー性皮膚炎のできている子は1~2週牛乳をやめてよくなるかを見るのも一つの方法です。

 アトピー性皮膚炎と食事の関係は、一部に認められる様ですが、卵と牛乳以外は証明されていないし、大多数は関係がないです。よくならないのに2週間以上食事制限を続けてはいけません。そのために栄養バランスがくずれる子どもが増えています。

 

  • かゆいのを我慢しろというのは無理。かゆみを抑えるこつを心得ること

 

    アトピー性皮膚炎の子どものスキンケア

 

◇1.入浴は毎日させていますか。

 子どもは大人と違って、夏はもとより冬であろうと、皮膚が汗や、汚れにまみれていますから、それをそのままにしておくことが、皮膚の病気すべてにとって悪いので、毎日お風呂に入るか、シャワーをあびるようにする方が子どもの皮膚には良いのです。

 

◇2.入浴の時に石鹸を使っていますか。

 石鹸は何を使っていますか。こする道具は何を使っていますか。

 効率よく汚れを洗い流すためには石鹸を使うのが一般的でしょう。最近の皮膚科の学会の報告では、アトピー性皮膚炎の子どもに石鹸を使用しても悪化させることはないと言います。石鹸はできれば低刺激性石鹸が良いのですが、高価なので、普通の石鹸でも、使って見て悪くならなければ差し支えないようです。

 石鹸の問題は、むしろ、石鹸を使って洗う道具と、入浴後のスキンケアにあるといいます。合成繊維の洗い布や、垢こすり、たわしなどでこするのは、子どもにはよくないし、大人でも湿疹や皮膚炎などができている場合は、かえって悪化させるのです。やわらかいタオルかガーゼに石鹸をつけて、軽く汚れを洗い流すのが良いのです。最近は、手でこするのが一番です。物でこすると、目に見えない傷がつく可能性があります。傷がつくと、外部からの侵入に負けてしまいます。

 

◇3.入浴後のスキンケア

 第一は、お風呂から出たらすぐすることは、外用剤(ぬり薬)を十分に正しくつけることです。

 第二は、お風呂から出たらほてりをさますことです。むしろ余り熱いお湯には入れない方がよく、ほてっていなければすぐパジャマを着ても汗をかかずにすみます。少しぬるめがよく、入った時に子どもが、熱くではなく、気持ちよく感じる温度がよい。

 「湯冷めをしてはいけない」という、こどもにとっては悪い『常識』を、小児科医すら平気で口にするのには困ってしまいます。その為、入浴後早く寝かせる傾向が広く行われています。身体が暖まった状態でふとんの中に入ると、痒みがひどくなることと汗をかくことで、いずれもアトピー性皮膚炎を悪化させる原因になります。また汗が冷えると寒くなり、鼻水が出たりしてこれもよくありません。

いずれにせよ暖かいと、かゆくなり、その為に寝てからかいていることが多いです。

 

◇4.海水浴はアトピー性皮膚炎によい。

 海水浴をわざわざすることもありません。楽しければ、して下さい。でも、日焼け防止をして下さい。

 海水浴はアトピー性皮膚炎によいということは、大分知られてきましたが、最近白人では10才以下では紫外線を浴びる量を減らす方向にあるようですので、色の白い方は余り紫外線を浴び過ぎない方が安全です。40年余り前に、東北大の皮膚科教授が、

日本でも子どもに紫外線対策を教えなければいけない時代になったということで、私も「紫外線の話」を書きました。紫外線に対する強さは皮膚の色により、黒色、褐色、黄色、白色、白色(ケルト系)の順に弱くなっていきます。日焼けしてしみやそばかす、

しわのできる家系は、できるだけ日焼けしないようにしてください。

 日焼けは、しみ、そばかすを作るだけでなく、発癌を促進し、皮膚の老化を早めますから、早くしわがふえます。

 

◇5.毎日洗髪してよいですか。

 毎日シャンプーを使って洗髪をしていて、悪くなることはないようです。むしろ頭に湿疹がはなはだしい人は頭を洗う回数が少なく、洗う時に何も使わないことが多いと云われています。

 頭を清潔にしたら、薬も落ちている訳ですから、洗髪後に頭髪をタオルで水分をふいてから、ドライアーを使わずに乾かして、外用剤(ぬり薬)をつけておくのが良いのです。

 

◇6.石鹸で顔を洗っていますか。

 自分で顔が洗える年齢では、どのように洗っているか、その回数はどうか確認して下さい。水をちょっとつけるだけですませるこどもが多いのです。少なくとも、入浴時には、石鹸を使って十分に洗顔させて下さい。

 乳児では、生後2ヵ月位までは皮脂腺機能が亢進しているので特に念入りに洗顔して下さい。目は涙の流れに沿って、目の外側から内側に向ってふきとるようにする。

 口の周りは食物などにより汚れるので、毎食直後に、水かぬるま湯でしぼった軟らかいガーゼかタオルでふきとり、直後に薬をぬって下さい。

 

◇7.耳切れがあるか。

 耳切れはアトピー性皮膚炎のこどもに多いですが、これがあったからといってアトピー性皮膚炎とは言えません。むしろ手入れをしていない為に切れてくるので、スキンケアをしていない症状の一つと言えます。

 毎日、朝と夜の顔を洗う時に、一緒にふいて下さい。

 首の後(項部)と前頚部のしわの部分の手入れをしていますか。

 前頚部のしわの部分は深くくびれている為に、赤くなったり、ただれていたりしていることが多いものです。

 頭髪がただれや化膿の原因になっていることも多く、耳に髪の毛がかからないようにするのが良いです。髪の毛は、汚れやすく、そこから化膿する原因になりかねません。

 

◇8.身体や脇の下をかゆがりますか。

 1才過ぎる頃から肌が乾燥し、乾燥する冬や、汗をかいて高温多湿になると痒くなり、かきむしり悪化します。特に肩、脇の下、側胸部、ひじの内側、膝の裏側が著しい傾向があります。入浴後に保湿剤をぬるだけでも効果があることが多く、湿疹ができていれば、かゆみを取るために外用剤が必要です。肌着はランニング型よりTシャツ型の方が痒い場所を覆っているのでよい。

 

◇9.水泳はしてよいか。

 水泳はして構いませんが、水泳後必ずすぐスキンケアをして薬をぬっていればよいです。ぬらなくて、はだが乾いて、痒くなってかくと悪くなります。水泳後は必ず薬をつけるようにしましょう。これがなかなか難しいです。

 水泳をすると良いと言うのはうそで、わざわざさせることはありません。

 

◇10. おねしょをしますか。もししているのなら、朝どうしていますか。

 おねしょをしているのに、乾いているからとぬらしたタオルでふかないでそのまま下着を着せてしまうと悪化します。必ずきれいにぬらしたタオルでふいて下さい。

 男の子は、おしっこをする時におちんちんをふって尿を切るようにすることが必要で、していないと陰嚢に湿疹ができやすいです。

 またお風呂に入った時には包皮(おちんちんの皮)をむいて洗うようにして下さい。

もちろん、女の子もおしっこが出る部分や膣の入り口周辺をお風呂に入ったら洗いましょう。昔、処女膜などと言ったのは、汚れたままでいて、炎症を起こし、それが治る過程でくっついてしまったからではないでしょうか。

 

◇11. 肘や手首は薬を何回つけていますか。

 手の湿疹が治り難いのがこの病気の特徴です。お子さんが毎日の生活の中で手をどのように使っているか、そして手をぬらしたり、汚れたりした時に、どうしているかによって大きく左右されます。

幼児が土いじりや砂遊びをするのは当たり前で、これを禁止しない方がよい。むしろ、湿疹が悪化しなければ、手入れがうまくいっていると考えた方が良い。その為には、土いじりをする前に、保湿剤や軟膏などをぬって、皮膚を保護し、汚れたら落とし、幼稚園や保育園から帰ってきた時に、しっかり汚れを落として、やはり保湿剤などをぬっておきましょう。

 手のスキンケアの基本は、汚れたら洗い、指の間まできれいにふき、その都度必要なぬり薬をつけることにあります。手を洗っても、ぬらしたままにしておかないことが、ポイントです。こどもの手が汚れたら洗い、よくふいて、薬をつけることを、まめにできるかどうかが鍵です。そこで保育園や幼稚園にいる時や祖母に預けている時にそれができるかどうかも大切ですが、他人に頼むことだから余り無理せず、悪くならなければ良い位を目標にしておくと、達成しやすい。

 爪はまめに切り、汚れていたり、土が入っていないようにしておくことも忘れずにして下さい。

 

◇12. 足の湿疹は、どのように手入れをしていますか。

 そけい部(ふともものつけ根)、膝のうら、足首などがひどくなりやすい場所です。また足背や足のうら、足の指(特にうら側)にも、手と同じような湿疹ができますが、しばしば見逃されています。足の指の間に砂がついている幼児も少なくなく、足のうらが土で真黒な子もよくいますが、足もズック靴も汚れたら洗っておかないと、なかなかよくなりません。

 

◇13. アトピー性皮膚炎は治るか

 アトピー性皮膚炎は、もともと乾性の皮膚の人がなりやすく、肌を上手になだめすかして、思春期になるのを待つのです。思春期には皮脂が多くなり、皮膚がちょうどよく湿潤してくるので、治ることが多いようです。だからにきびは少ない様です。

 

◇14.アトピー性皮膚炎の人や、その傾向をもった人は、40歳代半ばを過ぎると肌が冬乾燥しすくなり、保湿剤を使って乾燥を防ぐことが必要になります。更に、高齢になると、皮膚を保護する皮脂が出なくなり、老人性掻痒症とか、乾皮症、皮脂欠乏症などと言われ、木枯らしが吹く頃から、春一番が吹くころまで、保湿剤が必要になります。しかし、これは親の守備範囲ではありません。

 

       ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 の 話  補遺

1.アトピー性皮膚炎が「治る」とは、皮膚の湿疹が全くなくなるか、あってもほとんど気にならない程度にわずかになり、保湿剤だけでおさまることである。乳児では早ければ1週間以内に治る。ところがすぐ再発して、2~3か月前後から、治らずに1年以上かかる場合もある。

 現在できている皮膚の湿疹などの症状は、ステロイド剤を中心とした軟膏療法で治る。普通は3~7日くらいで治る。所が、次から次へと新しい湿疹ができてくるので、治らない。次々とできるのを食い止める方法が、「こころで治す」すなわちストレス対策である。 乳児のアトピー性皮膚炎の場合、一番うまくいくのは第1子の場合で、早ければ1週間、遅くとも4週間くらいで皮膚の湿疹がなくなり、きれいになる。ところが、祖父母に原因がある場合や、第2子以下の場合が難しく、時間がかかる。

 嫌なことは「いやだ」と言わせるようにし、どうしても言えないことや止められない子とは、「まあいいや。しょうがないね。」とか「いいじゃないか」とくよくよしないように誘導する。子どもが「いやだな。いやだな。」と思い続けていると、うまくいかない。

2.私も食事制限は、卵と牛乳だけしています。

 食事アレルギーで一番多いのは卵(特に卵白)、二番目が牛乳、次が大豆である。乳児の卵アレルギーは約5%あり、成長と共に減少し、成人では1%以下である。それで、すべての乳児に生後6か月までは卵を与えず、6か月過ぎたら硬ゆでで黄身だけ与え、卵の白身は1歳過ぎてから与える。

 アトピー素因のある乳児は、1歳までは卵を与えず、1歳過ぎてから硬ゆでで黄身だけ与え、卵の白身は3歳頃まで与えない。その間、卵が沢山含まれている食品はさけたほうがよいが、少量ならかまわない。しかし生の卵が含まれているものは必ずさける。

 牛乳アレルギーは1%以下なので、アレルギーがあれば牛乳をさける。一般には、牛乳は生後6か月過ぎてから、わかして(沸騰させて)さまして与える。

 納豆や刺身などの生の蛋白質は、1歳まではさける。

3.食事アレルギーは、食べると症状が出て、食べなければ症状が出ない。早いと2時間以内に出るが、遅いと8時間くらいしてから出る。ごくまれに24時間以上してから出ることもある。だから、原因と疑われる食品を2週間完全に止めていて,症状がなくならなければ原因とは言い難い。卵アレルギーも牛乳アレルギーも、止めれば3日くらいできれいになるのが普通である。

 アトピー性皮膚炎のアレルゲン(アレルギーの原因)を調べた報告では、食物が陽性に出る率が近年増えていて、最近の数字では6%から20%まであった。報告者で異なり、皮膚科医の方が低く、小児科医の方が高い。しかし、食事療法で治るかどうかとは別のようである。それで私は、前述の卵と牛乳の制限を除けば、2週間以上の食事制限(明らかに疑われる場合で、まれ)はしていない。皮膚科医の多くも、食事制限は不必要だという。

4.地球環境の汚染との関係

 「地球環境の汚染によって、いろいろな病気が増えた。その1つがアトピー性皮膚炎である。」という意見も一考に値するが、そのまま肯定もできない。それは、環境汚染による健康被害は、染色体や遺伝子への傷害(発がん性、催奇形性)、神経毒性、肝障害、腎障害、代謝障害、消化管の出血・潰瘍、肺障害など全身におよび、人間の各臓器が侵されるが、抗生物質のアレルギーと衣類の有害物質による接触性皮膚炎は判っているが、アトピー性皮膚炎を起こしているという証拠はまだない。 人間は、地球環境と相互に影響を及ぼしあってきているので、人間が地球を変えると、それによって人間も変化していく。環境が変わると、人間はそれに適応しようとして変化し、それで遺伝子も変化していく。(ノーベル賞の利根川進博士が証明した。) 適応できない人が病気になる。地球環境の汚染は、病気の1つの要因であり、次々と人間が作り出しているものである。

5.こころで治す。

 アトピー性皮膚炎のアレルギーの原因がダニや食物であっても、社会環境の対策によって、つまりこころの対策によって、競合する原因の1つをなくして、病気を治そうとするものである。アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因としては、①アトピー素因がある、②皮膚に弱点がある、の2つが考えられる。

 環境としては、①自然環境--広くは、地球環境の汚染(土壌、水、大気、海、食品)特に、住宅環境、衣服、食物など  ②社会環境--家庭、保育所、幼稚園、学校、職場、地域など。   

 人のこころを変えることは難しく、環境を変える方が早い。子どもは、こころの持ち方を変えやすい。子どもの環境は、大人に比べたら変えやすい。

6.私が書いた文を読んで「母親が悪い」とか「女性に責任を押しつける」と感じた人かいたようだが、母親も実は被害者なのである。私は、開業して内科も診るようになったら、病気の子どもは、母親も病んでいた。だから、現代社会のゆがみやストレスが、母親を通じて子どもに及ぶと考えている。現代日本人の悪い習慣や風習、間違った考えが病気を生んでいる。一人一人の母親に責任があるのではない。女性や社会的弱者に優しい北欧諸国は、アレルギー性疾患が少ない。アメリカの内科医は、人種の違いと言うが、私は社会の仕組みの違いだと言う。現代日本の社会と文化を変えることが病気を治し、予防する早道であるが、それが難しく、待っていられないから、一人ずつ治そうとすると、母親が責められている気持ちになるのである。父親も子育てに参加すると楽しいが、社会的援護がないと難しい。それよりも、現代医療が間違っていることに最大の原因と責任がある。

 

 

 


気管支喘息の精神神経免疫学

2022-05-13 10:57:09 | アレルギー疾患の精神身体医学

      子どもの気管支喘息

    子どもの気管支喘息 

 

           子どもの気管支喘息           

私の方法で、気管支喘息の発作が出ないようにすることができます。治るとは言えませんが、それは気管支喘息の遺伝子を持っている人が、何らかのストレスによって発作が出るので、ストレスを無くせば、発作を起こさなくできます。

私は、日本の専門医とは違い、世界の流れに従っています。小児喘息という病名は、一部の人が使いますが、大人と同じ気管支喘息です。特別な病気がある訳ではありません。

  • 1.気管支喘息とは-

喘息(ぜんそく)と言えば気管支喘息を云います。アレルギー性疾患に関して、日本の小児科医の間に意見の違いがあり統一されていず、いろいろな意見があります。「小児喘息」という病名は思い違いです。大人の気管支喘息の多くは子ども時代の発病ですから、みな「気管支喘息」です。その医師が知らないだけです。

関西は鍛練療法で、関東は体質改善療法ですが、体質は変わりません。いずれも世界の流れを無視しています。私は世界の流れにプラスして、病気の原因は環境にあるという環境病因論で、今までこの方法でうまく治して来ました。一度試して見てください。

環境を変えれば発作を起こさなくなります。昔から空気に良い所へ行くと良いと言われましたが、それよりも家庭内や幼稚園、学校を変えることや、育て方を変えることで変わります。土地を変えると親の対応も変わるのではないでしょうか。大切なのは、子どもをのびのび育てることです。ドイツのシュタイナーやフランスのモンテッソーリ、さらにお釈迦様の孫悟空への態度も同じです。叱らないことです。その方法は、いろいろあります。

こどもを医者に任せずに、病気をよく知ることが大切です。

喘息の死亡率は、1年に2万人に1人以下。死亡の原因は医師又は両親の「重症度の判定」の失敗によると言いますが、心療内科医は発作がひどくなった為に、患者が「呼吸が止まっちゃう」、「死んでしまう」と不安からパニックになって、自分で「死ぬ」と暗示をかけて自分から死んでいくと言います。だから吸入で少し楽にして、親が「ほら吸入したから大丈夫だよ」と言い、子どもを安心させるとパニックになりません。その為乳児を除き、年齢が低い程死亡率が低く、年齢が高くなるに従って突然死が増えてきます。大人になると、医師でないと「大丈夫」という暗示効果が効かないようです。

  • 2.症状

ヒュ-ヒュ-ゼ-ゼ-いう「喘鳴(ぜいめい)」と咳をし、息が苦しいと肩呼吸をし、ひどいと発作性の呼吸困難を起こすのが特徴です。すっと楽に吸えて、息をはく時に

ヒュヒュして苦しいのです。診断基準はなく、私は臨床的に診断します。

 喘息は気道(気管支の粘膜)の慢性の炎症が起き、二次的に種々の刺激に気管支が過敏に反応して気道が狭くなり、そこへ粘稠な痰がからむ病気です。  

アレルギーは二次的なので、炎症をおさえるステロイド(特に吸入)を使うことが多くなっています。

かぜ、タバコの煙、過労、ストレスなどが、誘発したり悪化させたりします。

最近「咳喘息」という診断が増えてきましたが、この診断基準はなく、言わば診断のごみ箱、つまり診断のつかない長く続く咳をそう診断しているのです。喘息であれば、ヒューヒューする喘鳴や呼気性呼吸困難(息を吐く時に苦しい)があり、気管支拡張剤の吸入によっておさまることが多いものです。でも必ずしもそうではありません。

私は、心因性の咳を疑っていますが、それを証明するのが大変なので、対症療法をしています。数人は明らかに心因性の咳でした。原因を無くしたら止まったからです。

これに対しては喘息のような薬による発作予防が効きません。

 ◎特徴①症状が周期的に出現すること。特徴②夜間の発作

 発作は午前2時から4時頃の、深夜、夜明け前がひどく、日の出と共におさまっていきます。日中おさまってもまた夜中に起きます。1日の中で良くなったり、悪くなったりするので、夜ひどいが昼間良くなったと見てはいけません。夜なら一昨日の夜と昨日の夜、昼なら昨日の昼と今日の昼と、同じ時間帯で比較して判断して下さい。

 軽い時は、起床直後に咳や発作が始まることがあるし、寝ている時や起床直後だけ出る咳とか、朝や日中に子どもは「苦しい」とか、「ゼーゼーする」とは言わず、「(胸が)気持が悪い」と云うことが多いです。その時子どもの背中に耳をあてて、ヒュヒュしているか音を聞いて見て下さい。この時に携帯用吸入器を使います。

 ひどいと苦しくなり、鼻をピクピクさせたり、肩で呼吸をしたり、のどの下の陥没が目立ち、横になって寝ているより身体をおこしていた方が楽(起座呼吸)になります。

ひどくなると息を長く止めていられなくなるために、食事が食べられなくなり、口もきかなくなり、水も飲めなくなります。

更にひどくなると、顔色が蒼白になり、口唇が紫色(チアノ-ゼ)になります。携帯用の吸入器で苦しさが止まらなければ、突然死もあるから、すぐ小児科医のいる病院へ行って下さい。親が不安にならなければ、そうなりません。あわてたり騒がないこと。

〇発作が起きた時に、何か嫌なことを我慢してはいないか、ストレスになっているものを探して、それをなくすことが発作をおさめ、続く発作の予防になります。

◎特徴③季節的変動

 発作や咳は、春秋の季節の変り目や梅雨時、台風の季節に多いです。気候の変化に弱いです。だから気象予報特に台風の予報ができます。

☆こどもでは3歳前後に発病することが多い。こどもでは男:女=2:1。

 主に乳児期にアトピー性皮膚炎になった子が多く、次に喘息様気管支炎の子がなることが多いですが、突然なる子もいます。

 気管支喘息の過半数は10歳以前に発病し、残りは40歳までに発病しますが、まれに50歳を過ぎてからも発病します。30歳以後は、男女比は1:1。

きっかけの精神的要因として、こどもでは親子関係(特に母親)と兄弟関係が多く、母親の関心の強い子に出やすいと言われてきました。しかし、最近はむしろ保育者(祖父母に預ける、託児所、保育所、幼稚園)や学校の先生や友達関係によることが多い。発作が多い時は、いじめに注意。本人は言いません。友達の母親から聞くなどするしかありません。

 

☆こどもの気管支喘息は治るか?

 年齢と共に(特に思春期になると)精神的にも成長して自立し、それまでのストレスが、ストレスでなくなると、喘息から抜けられますが(その代わりに親の言うことをきかなくなる)、大人になってまた別のストレスがあると、喘息が出ることがあります。

  • 3.気管支喘息の治療方針

目標は (1)日常生活は普通。家庭で、学校で、地域社会で、スポーツやレクリエーションに参加できる。 (2) サルタノール吸入の必要性がなく、週1回以下の使用で済む。 (3)気道過敏性が改善(運動や冷気の吸入による症状の誘発がない)。(4)1年以上発作がない。

気管支喘息の治療

☆喘息のコントロールは段階的にしていきます。まずは発作の予防です。それには・・

 私は病気の原因を、遺伝子プラス環境要因と考えます。同じ遺伝子を持っていても喘息を起こすとは限りません。しかし、遺伝子は親から受け継いだので逃れられません。

 両親、祖父母、兄弟など身内に、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー性疾患のある子に起きます。

 アレルギーの検査はそれを調べるだけです。しかし、何も出ないこともありますし、検査して陽性でも、発病していないこともあります。つまり、遺伝子を受け継いでも病気は受け継がないので、環境を変えれば発病しません。それで発病しないことはまれではありません。

 それで第一は、その環境対策特にストレス対策です。

☆予防の第一はストレス対策

 これで発作を起こすのを止めます。

 喘息の子どもに共通する性格傾向は、普段は元気がよく、悪く言えば少しわがままなところがあり、他人をかきわけて前へ出ようとするタイプが多いが、こころやさしくて、「いやだ」と言っているように見えるが、いやなのにいやだと言えずに、がまんしてしまい、その時ゼーゼー始まる。中には、相手のこころを読んで、自分からがまんしていることもあります。

 乳幼児期の発病は、母親や兄弟などの家庭内に原因があることが多いですが、幼稚園や保育所に原因があることも最近は増えています。

一人っ子や第1子では、母親または他の家族による干渉で、赤ちゃんが要求しないのに、抱いたり触ったり、ほっぺをつついたり、キスしたり、中にはなめたりしています。

赤ちゃんを、親や上の子、祖母のおもちゃにしないで下さい。

第2子以下では、上の子による干渉によることが多いようです。本人はイヤとは云わず、気付きにくいです。がまんするとヒューヒューしてきます。上の子は、可愛がると言って、触ったりします。触られる方は嫌なのですが、嫌とは言いません。「いやだな」という目つきをしますが、泣きません。それで気がつかないのです。

上の子にいびられたりかまわれたりした時に、少し大きくなると上の子に向っていきますが、結局は負けたり我慢したりします。そうすると夜寝てから夢に見てくやしがり、夜中に発作が起きたりします。

大切なことは、どんなことでも、「イヤだな」と思って我慢しないで、はっきり「イヤダ」と言うか、又は、「仕方ない。まあいいや。そういうものだ。しょうがないね。」とくよくよしない。「がまんしなさい」とか「あきらめなさい」と言ってはいけません。「しょうがないよね」が一番です。

今まで私が見てきた原因は、

 保育所でのハイハイの強制。保育所や幼稚園での給食の強制、剣道、プール、水に顔をつける、器楽、どろんこ遊びなどがあります。すべての子が、いやがる訳ではなく、喜ぶ子もいますから気がつきにくいです。中には、幼稚園児で園長先生の剣道の時間に自分はよいが、できなくていつも怒られている子がいて、それを見ていると可哀想で発作が起きる子がいました。その日を休むと発作は起きません。

小学生では、塾や公文、習い事、ピアノ、バレエ、バイオリン、習字、そろばん、野球やサッカー、柔道、空手などがいやなこともあります。「自分でやりたいと言って始めたことだから、最後までやりなさい」と言うのは、やめましょう。嫌になったらいつでもやめることです。そうしたらまたやりたくなることもありますが、無理にやらせると、一生しなくなります。

また、いじめが原因なのに1年以上気が付かなかった例もあります。いじめ対策をしたら起きなくなりました。この子が一番長引いた例です。嫌なことをやめれば、喘息も良くなります。

ストレス対策で発作や咳が出なくなれば、他の対策の必要はありません。それだけで治った子もいます。とにかく、子どもだって一人の人間(ただし発達途上の)だから、のびのびと育てることが一番です。悪いことをしない限り、好きにさせるとよい。そうすれば自然に喘息は治ります。

 

  • 4.薬物療法①-発作時の治療-

気管支喘息に関する国際会議が指針とする治療法。日本の主流派と異なります。

世界的には吸入優先。なぜなら、直接気管支に作用するので、副作用が少ないから。

しかし、大量に吸入すると全身にも作用します。飲み薬は一旦血液中に吸収されて全身に回り、気管支に届きます。

  1. サルタノール・インヘラー( 気管支神経刺激剤サルブタモールで携帯用定量吸入器)

の吸入 。発作時のべネトリンのネブライザー吸入と同じ気管支拡張薬。発作時に一時的に使用します。同じ系統の薬では一番心臓への作用の少ない薬。メプチンエアーも同系だが少し強いです。(これは発作時の薬)

 軽いうちに吸入します。少しヒューヒューしたり、胸が気持ち悪くなったり、咳こみが始まった時に、すぐ吸入します。これでおさまったら、おしまいです。1回に1吸入。効かない時は、30分たったらもう1回してもよいです。1日に2回まで。おさまらない時は、薬を飲みます。

4歳以上ならできる子もいますが、小学生にならないと難しい子もいます。使いすぎると副作用が出るので、おさまらない時は病院へ行き、ネブライザーの吸入をしてもらってください。

 なお、サルタノール吸入が出来ない場合は、2週間を限度としてネブライザー吸入器の携帯用を、今後(今はまだありません)貸し出す予定です。それ以上続く時は購入して頂きます。これで夜の救急受診が減ります

サルタノール吸入だけでコントロールできていれば、他の薬の必要はないのです。

気管支神経(β)刺激剤の吸入液

第一選択薬はサルブタモール(ベネトリン、サルノール)

第二選択は プロカテロール(メプチンエアー10μg、キッズエアー5μg)

理由: β作動薬の心臓毒性は(サルブタモールを1として)

テルブタリン(ブリカニール)    0.5   

サルブタモール(サルタノールベネトリン)1    吸入器あり、妊娠中可

ツロブテロール(ホクナリン、ベラチン)3.3

プロカテロール(メプチン)      83   吸入器あり、使うならここ迄。

ここからは使わないほうが良いもの(心臓への毒性が強いもの)

クレンブテロール(スピロペント)   500

サルメテロール(セレベント、配合はアドエア)300~600  吸入器あり

ビランテロール(配合はレルベア)       200~3000  吸入器あり

ホルモテロール(アトック、配合はシムビコート) 1400   吸入器あり

フェノテロール(ベロテック)        2000  エロゾルあり

 イソプレナリン(プロタノールL、アスプール液、配合はストメリンD)9000超 エアロゾルあり、これはイソブレテレノールです。

  1. 追加してインタール吸入を毎日吸入します(予防の薬)。妊娠中可。

サルタノール吸入を毎週4回以上使用する場合は、発作予防の吸入をします。発作には効かないので、サルタノールと併用です。

 インタール(クロモグリク酸)吸入は1日2~4回、最初回数多く、効果(発作が出ない)が出て来たら減らしていきます。通常2~4週続けないと効果が出て来ません。75%に有効で、6週間使って効果がなければ中止し、次の吸入薬を使います。

 

  1. 吸入ステロイド剤

インタール吸入で効果不十分ならば、吸入ステロイド剤を使います。→予防の薬で毎日使います。吸入後うがいをして口の中の薬を洗い流します。通常1回1吸入で、1日に朝晩2回吸入します。

副作用はカンジダ症、発声障害で、必ずうがいすること。

第一選択は、キュバール(ベクロメタゾン)エアゾール50、100、

第二選択は、プデソニド(パルミコート)ドライパウダー、妊娠中可、

できれば使いたくないのは、フルタイドエアゾール、フルタイドロタディスクです。半減期が長いので、頻回の使用で血中濃度が高くなると、ステロイドの副作用が出ます。

〇吸入ステロイド

ステロイドの力価、           血中濃度の半減期、作用時間、

ベクロメタゾン(キュバール)        2.8    中

プデソニド  (パルミコート)       2      短

フルチカゾンP(フルタイド、アドエア)  14.4    超長

フルチカゾンF(レルベア)        24~33   超超長

 

〇β2気管支刺激剤+ステロイド剤を合わせた吸入剤は、アドエア、レルベア、シムビコートです。子どもには不要です。

  1. 以上で効果不十分の場合→→以下の5.6.のいずれか、または併用します。
  2. β2 気管支神経刺激剤(気管支拡張剤)、内服薬

〇短時間作用型=ブリカニール、ベネトリン。

1日3回飲む。飲み薬は効果が出るまでに30分程度かかります。

〇長時間作用型=ツロブテロール(ホクナリン、べラチン)、メプチンなど。

1日2回内服。気管支を拡げて、痰を出やすくします。

 いずれも、副作用として、手のふるえや心臓がドキドキすることがある。

→なったら止めること。副作用が出た時に、薬が早く切れるので短時間作用型を勧めます。ツロブテロール(ホクナリン)テープは1日1回夜胸にはります。入浴後がよい。入浴時まで1日はります。効果が出るまでに2~3時間かかるので、即効する吸入を勧めます。

 

  1. ロイコトリエン受容体拮抗剤―モンテルカスト(キプレス、シングレア)は有効(オノンは欧米では評価されていません)。 これを持続内服します。肝障害、血管浮腫などの副作用が大きいので、最後の選択肢です。催奇形性があり妊娠中は不可。
  2. 上記のいずれでも効果不十分の場合

 経口ステロイド剤(プレドニゾロン、プレドニン)の追加使用、ステロイド剤の注射などですが、重症化したら入院してすることが安全です。

 

8.テオフィリン除放剤内服。(テオドール、テオスロー)長時間作用型気管支拡張剤。日本では使われていますが、世界的には原則として使いません。入院して血中濃度を

測定して使う薬です。多すぎると中毒を起こし、少ないと効果が無いからです。使わな

いで下さい。副作用は頭痛や吐き気、重症化するとけいれんや不整脈が出ます。

 

9.抗アレルギー剤

 ザジテン(ケトチフェン)、アゼプチン、セルテクト、アレジオンなど。

保険では気管支喘息に適応となっていますが、有効性の証明はありません。世界的には

使われていません。

特徴④咳や発作がおさまらなければ、治療の薬や方法を変える。「効かないからもう一回吸入するとか、もう一回薬を飲む」ことはしないこと。効かない時は治療方法を変えないと良くなりません。

 軽い時は水を飲む。深呼吸をする。おさまらない時はサルタノール吸入をします。次に咳止め薬、気管支拡張剤。ボスミン皮下注射。ステロイド内服と注射。等々と効かなければ治療法を変えていく。ネオフィリン注はやめましょう。

副作用:効く薬には副作用がある。薬の量は、年齢、体重、重症度、時間などで量を決定します。自分で調節して、失敗すると、心不全から死に到ることがありますから、自己調節してはいけません。

  • 5.発病の予防

 アレルギー性疾患のある家系では、母乳をすすめます。でも、母乳が出なくても心配ありません。ミルクで充分です。アメリカ小児科学会では、母親の食事を制限しても意味がないと言います。それは母乳に出るのは、食べた物の10万分の1以下ですから。

子どもの食事制限は意味があります。卵は1歳まで与えないこと。牛乳(ミルク)アレルギーの場合は、豆乳にします。離乳食を遅らせても効果はありません。

それ以外は、食事にこだわらないこと。ただし、生のたんぱく質を1歳まではさけましょう。(喘息に関係ありませんが、蜂蜜も1歳までは与えてはいけません)

 牛乳は6ヶ月過ぎたら(ミルクアレルギーのない場合)わかして(沸騰させて)さまして与えます。乳幼児では生の牛乳は避けて下さい。アレルギーの問題と、加熱処理されていない牛乳は腸で出血するので、大量に飲むと貧血になります。学童や大人も出血しますが、肉などを食べていれば問題ないと言います。実際に大腸がん検診ではしばしば牛乳を飲んでいる人が便潜血陽性になります。

 ゲノムの研究で判ったことは、ほとんどの哺乳類は幼児期になると母乳を分解する乳糖分解酵素を産生する遺伝子の働きが止まって、母乳を消化吸収できなくなり、飲めなくなり、離乳するのです。

しかし、人間と犬や猫では、母乳や牛乳を飲める人が多いです。それは山羊や牛を飼っていて、適応したと考えられています。でも農耕民族を中心に牛乳を飲むと下痢する人が多いのです。牛乳は飲まなくてもよいのです。

☆運動は喘息によいか?

鍛錬療法―身体を鍛えることでこころを鍛えると言います。

 運動、スポーツは何をしてもよいが、水泳以外は運動誘発性喘息があります。でも運動をしなくても治ります。

運動誘発喘息の起きる仕組みは不明ですが、多分に精神的なものと考えます。なれると減ってきます。運動して息が切れるのを、発作と錯覚するのではないでしょうか。

喘息の時に、運動を制限することはなく、子どもの意志に任せればよい。

 特に、発作が起きた時に、親があわてず騒がず、不安にならず、病気に負けてしまわずに、「喘息なんて飛んでいけ」とがんばるこころを育てることが大切。どんなことでも嫌がるのを無理にしいてはだめ。いかにその気にさせるかが大切。

 

  • 6.アレルゲン(アレルギーの原因、抗原)は調べた方がよいか?

 アレルギーの病気は検査で判るものでは無く、症状で診断します。他の医師はすぐ検査をしましょうと言いますが、検査では診断できず、確かめるものに過ぎません。

 〇気管支喘息の場合、三大アレルゲンは、

ハウスダスト(主に粉ダニ、ヒョウヒダニ)(70%)、真菌(かび)(10%)、花粉(10%)で90%を占める。次はペット。

☆吸入性―ハウスダスト、ホルムアルデヒド、窒素酸化物、浮遊粒子状物質。

花粉―2~4月―杉、4~5月―ひのき、松類(黒松、赤松)、5~8月―いね、カモガヤなどイネ科植物、5~6月―小麦、8~10月―ブタクサ、

真菌(かび)―アルテルナリア、アスペルギルス、ぺニシリウム、カンジダなど。

その他―動物の毛や皮屑(犬、猫、小鳥、うさぎ、ハムスターなど)、昆虫。

☆食餌性―そばが有名。

☆薬品類―特にアスピリンや解熱鎮痛剤、サルファ剤。

☆検査で出ないこともあるし、検査で出ても発作を起こすとは限らない。

 

  • 7.環境整備は、

 ストレス対策で治らない時にすることです。それをした結果、思わないことがストレスになっていたこともあります。

 家庭環境のコントロ-ル―エアコン使用、ほこりやケバがたたないようにする。毛布はカバーをする。ペットは飼わない-犬、猫、鳥、ハムスター等。-ペットの皮屑が誘発します。空気清浄機もある程度は有効です。

 一般的な刺激物を避ける--タバコや花火、蚊取り線香の煙、強い臭い(ペンキ、消毒剤、家具)、冷たい飲み物や吸込む空気の急激な温度、湿度の変化を避けるなど。

 特に、タバコを吸う父親が多かった時代は、正月に発作を起こす子が多かったでした。

 今は、実家に帰ると発作を起こす子が増えていませんか。たばこか祖父母たちの過度の可愛がりです。

 

〇メディカル・トリビューン2006年8月31日号より

「家族生活のストレスが小児喘息の憎悪因子に」

・険悪な家族関係や不安定な家庭環境が悪影響を及ぼす。

・乳児期の喘鳴と親がストレスを経験した時期との関連を実証した研究がある。

・小児期の喘息が育児の困難な家庭で好発することを実証した研究もいくつかある。

・親や保護者が高レベルのストレスを経験し、育児が困難である家庭では、小児が喘息を発症するリスクが最も高いことも実証した研究もある。

・喘息児が地域社会で暴力に遭遇すると症状の憎悪が引き起こされることを明かにした研究もある。

・小児ではストレスが喘息の憎悪を引き起こすことを実証した研究7件もある。

 例えば、喘息児ではストレスの多い出来事を経験すると、発作リスクがほぼ倍増することを明かにした研究。小児では急性および慢性のストレス増大が、その後の2週間の喘息発作リスクを3倍に増大させることを実証した研究など。

〇思春期の若者たちには、

  1. 発作の原因や誘因に気づかさせることが第一である。
  2. それに対しての気持ちの持ち方を変えさせる。決して「いやだな」とか「発作が起きるのが恐い」と思わせずに、「起きても大丈夫」と思うようにさせる。
  3. その為にも治療法をよく説明し、理解させるる
  4. また、補発作の原因や誘因となる生活スタイルを変えるようにさせる。
  5. そして最後に、心理的要因が取れない場合には、説得療法と共に、他者催眠法から、自己暗示法へ導き、自分で自己暗示をかけて発作が起きないようにする。

 25歳までは、自分の気持ちの持ち方を変えることができるから、効果的である。

〇喘息の話

日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えている。

 喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では8%以上。スカンジナヴィア地方では特に低い、イヌイットや黒人、アメリカ先住民(居留地)に少ない。

 例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるという。所が居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。

例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちだったが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったという。これを横浜喘息と呼んだ。

例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、喘息はだめで徴兵されませんでした。

例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。

 現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因ではないでしょうか。

  • 5.アレルゲン(抗原)・・・過敏になる原因

 三大アレルゲンはハウスダスト(室内塵)、真菌(カビ)、花粉で計90%。

吸入性―室内塵(ハウスダスト)で、コナダニ、ヒョウヒダニなどを含む。

 花粉―スギ、ひのき、ブタクサ、イネ科植物、松類、白樺など。

 真菌(かび)― アルテルナリア、アスペルギルス、ペニシリウム、カンジダ。

 その他―動物の毛や皮屑(ふけ類)(犬、猫、鶏、小鳥、うさぎなど)、昆虫、木材の木粉(杉、ラワン、松、輸入材など)、薬品類、細菌類、絹、真綿、ソバ、ソバガラ、除虫菊、

食餌性――食餌アレルギー、蕁麻疹、(こどもだけは喘息もあります)

 動物性―鶏卵の卵白とその加工品(乳児の5%にある)、牛乳と乳製品、青身魚類(サバ、カツオ、サケ、アジ、マグロ、)甲殻類(カニ、エビ、)イクラ、イカ、タコ、肉類(牛、豚、鶏)

 植物性-豆類(大豆、ピ-ナッツ)、木の実類(クルミ)、小麦そば、果実類(キウイ、マンゴ)米、チョコレ-ト、里いも、じゃがいも、さつまいも、ごぼう、いちご、オ-トミ-ル、

 薬品類(内服)――サルファ剤、解熱鎮痛剤(アスピリンなど)、抗生物質(ペニシリンほか)、かぜ薬(総合感冒薬)には解熱鎮痛剤が入っています。

 職業性――カキ、ホヤ、木材粉、羊毛、羽毛、茶の花粉、パン粉、薬品散剤。

 感染性――細菌、ウィルスなど

 仮性アレルゲン(誘発因子をもつもの)――ナス、ホウレン草。タケノコ、マツタケ、きのこ類、長いも、山芋、サンマ、カレイ、タラ。鮮度が落ちたスズキ、アサリ、ハマグリ。

▽花粉の季節

 2~4月スギ 4~5月-ひのき、松類 5~8月-イネ、カモガヤ、ハルガヤなどの稲科植物 5~6月-コムギ 8~11月-ブタクサ 9~10月-よもぎ、アキノキリンソウ。

  • 6.気管支喘息や花粉症を誘発したり、悪くする要因

 ①呼吸器系感染(かぜ、気管支炎)--細菌、ウィルス

 ②自律神経系の乱れ--迷走神経反射――ストレスから来る

 ③ホルモン系の影響(特に女性の月経前後)

 ④運動誘発性喘息(水泳だけは無い)、なぜ発病するのか判っていません。

 ⑤環境誘発因子――煙(煙草、花火、蚊取線香)。光化学スモッグ、排気ガス。ク-ラ-の風。雨、台風。カビ、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛やふけ、花粉。

  • 7.アレルギーは変化します

 アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。

 例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。

 例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。

 例3;国立病院時代にも、前の診療所でも、ある抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。

 例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生のうるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かった。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。

 例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。

  • 8.アレルギーはコントロールできる。

 嫌なことは、「いや」と言い、嫌なのにどうしてもしなくてはならない時は、「生活のため」と考えて、「仕方が無い」、「そんなものだ」、「まあいいか」と思うようにしよう。くよくよせずに、楽しいことを考えて、仕事や生活をしていると、アレルギー性の病気から逃れるか、かかっても軽く済むことが多い。ストレス対策が、アレルギーを軽減します。

  • 9.現代は、アレルギーの遺伝子にスイッチを入れる環境にあふれています。

 だから、アレルギーの人が増えているのです。しかも、何も考えないで、赤ちゃんや子どもに、勝手に大人の食べ物を食べさせてしまい、アレルギーを起こして慌てている親が少なくありません。赤ちゃんや乳幼児のストレスも考えましょう。赤ちゃんを自分のものと考えず、社会の子どもと考えて、のびのびさせよう。


アレルギー疾患の説明療法-1

2022-05-06 17:56:59 | アレルギー疾患の精神身体医学

                花粉症の説明療法

  人はなぜ病気になるか

 

1.人は環境に適応できない時に病気になる

◇病気になるのは、人が生活する環境に適応できない時に病気になるのです(病原環境論または適応説)。環境には、自然環境(細菌やウィルス、寄生虫や動植物、花粉などを含む)、社会環境(家族から地球規模までの人間社会)、心理または情緒的環境(社会がもたらすストレス)があります。特に現代では、社会的環境が大きく、家庭、親族、保育所、幼稚園、学校、職場、地域、クラブなどの人をとりまく環境が、心理・情緒的ストレスを産み、それによって抵抗力(免疫)が低下し病気になるのです。

◇判りやすく説明するために、人間を川に例えます。川にはそれぞれ堤や堤防があり、川の水が少なく静かに流れている時は、水はあふれません。この状態が、人間では健康なのです。所が大雨や台風で、川の水が増えてその堤防の弱い所を越えて氾濫し、水があふれ出ます。人間では、水があふれた時に病気になるのです。その堤防の弱点は、その時々によって異なります。その人の弱点は親から受け継いだ遺伝と生まれ育った環境や今までにかかった病気、現在の生活習慣やおかれた生活環境(自然や社会的)によっても作られます。その人の持つ弱点は年齢、性別、性格、考え方によっても異なるので、かかる病気が異なるのです。

◇ヒトゲノム計画により、人の遺伝子がほとんど解明されました。しかし、そこで判ったことは、同じ遺伝子を持っていても、同じ病気になるとは限らないのです。多くの遺伝子は、遺伝子のスイッチが入ると働き出し、スイッチが切れるとその働きを止めるのです。スイッチを入れるのが環境因子であることも判ってきました。遺伝子と環境の相互作用。

 例えば、哺乳類のほとんどは、乳児期には母乳が飲めるが、幼児期になると飲めなくなるのです。それは、幼児期になると母乳を分解する酵素を作り出す遺伝子のスイッチが切れてしまい、母乳が飲めなくなるのです。しかし、人間はなぜ大人になっても牛乳が飲めるのかが謎です。でもすべての人がそうではなく、牛乳が飲めない人がいて、その率は農耕民族に高く、牧畜民族に低いのです。環境に適応して遺伝子が変化してきたと考えられています。牛乳嫌いや牛乳を飲むと下痢をするのは別に特別ではないのです。

例えば、遺伝的に同じはずの一卵性双胎児の一人が喘息になり、もう一人が喘息になる確率は16~25%であり、他のアレルギー疾患では同じと見られていますが、統合失調症はもっとずっと低いのです。アメリカの調査で、アイルランド出身の双子の、一人はアイルランドに残り農業を継ぎ、もう一人はアメリカへ渡って都市労働者になった1000組を比較したら、摂取カロリーはそれ程違わないが、成人病になる確率はアメリカに渡った方が圧倒的に高かったのです。

 遺伝子にスイッチを入れる環境は、自然環境と社会環境です。社会環境の中に、社会によってもたらされる精神心理的、情緒的環境も含まれます。社会は最低3人から構成されますから、家庭も社会的環境です。だから家庭環境によっても変るし、食生活によっても変わります。また、環境によっても遺伝子は変化します。遺伝子と環境とは相互に影響しあって、発現したり、しなかったりし、その結果病気になったり、ならなかったりするのです。遺伝子は1世代で100の変化を蓄積すると言います。遺伝子は環境条件に左右され、ある種の環境でなら、ある形で発現するのです。遺伝子は、環境や発達に左右されない特定性と、環境の変化に適切に対応する能力(可塑性)を持ちます。

 

2.病気と戦う仕組み

◇人には病気にならないようにする防御システムが様々に働いています。

①外から人の身体に入ってくる場所すべてに細菌やウイルスなどの微生物が住み込み人と共棲していて、外来の微生物と戦ってくれます。例えば大人の皮膚1平方cmに10万の微生物が住んでいます。だから大人は「とびひ」にならないのです。目、鼻、口、のど、耳、陰部、腸などすべての外界と接する部分には微生物が住んでいます。それが病気にならない理由の一つです。胃には強い酸性の胃液があり、多くの細菌はそこを突破できません。突破しても小腸には1gの腸内容物に三千億から五千億の細菌や微生物が住んでいて外来の微生物を排除してくれます。皮膚や腸に住んでいる種類は家族ごとに微妙に異なりますし、老化によっても変わります。

②体内にはまずリンパ球をはじめ、リンパ組織(扁桃やリンパ節や虫垂)が働いて防御線を張っています。外来の異物を見つけ、戦うのも、抗体を作るのもリンパ球です。インターフェロンやサイトカインというものを作るのもリンパ球です。リンパ球はいろいろな働きをして微生物や異物、がん細胞などと戦ってくれます。その他に多くの身体の働きで、自分の病気を治す力(自然治癒力)があります。がんになっても、少なくとも3万人に一人は自然治癒します。世界でその人たちの3500人の報告も出ています。

 

3.ストレスと病気

◇環境にうまく適応できない時に、防御システムの働きが低下します。だからストレスがあると免疫の働きが低下し、病気になり易くなります。その時に細菌やウイルスが入ってくると病気になるのです。過労も心労もストレス状態の一つです。

 ストレスを起こすのがストレッサーと言い、それによって引き起こされる状態をストレスと言い、ストレスになると身体の色々な働きが乱れて病気になるのです。ストレスはたまるものではなく、状態です。なったらすぐ身体は反応しています。その時病気になるかならないかは、その時の、その人の状態や環境によります。

◇ストレスがあると、身体が反応します。ストレスはたまるものではありません。一度でもストレスです。ストレス対策は、気持ちの持ち方を変えることです。

 嫌なことは「嫌だ」と言いましょう。でもどうしてもそれができない時は、「仕方がない、そういうものだ」とか「まあいいか、しょうがないや」と、いつまでも「いやだ」をひきづらないことです。でも、いじめ、セクハラ、嫌がらせなどは、そうしてはいけません。

◇子どものストレスは、第一に「いやなこと」を我慢することです。だから神経質な子は病気をしやすく、くよくよしない子は病気をしません。自己主張の強い子は病気が少なく、心やさしい子やいやなことを我慢する子が病気をしやすいのです。大人も同じですが。

 子どもは、赤ちゃん時代は親が防御して下さい。赤ちゃんが「いい気持ち」にならないことがストレッサーです。いつもいい気持ちにしてあげて下さい。お腹いっぱいにすること、早めの離乳食、オムツをとりかえること、赤ちゃんが要求しないのに抱いたり触ったりしないこと。赤ちゃんをお人形さんにしないで下さい。おもちゃではありません。

 叱らないで、他のことに関心をそらして、いけないことを止めさせましょう。関心を他のことにすり替えることで、叱らずにすみます。そしてすぐ「いい子ね」とほめましょう。

いつもいい子にしてあげて下さい。親のして欲しい事をしてくれたら、すぐほめましょう。

 人見知りは自我の芽生えで、自我ができるのは3歳ごろ。この頃になると自己主張が強い子は病気が少なくなります。そして小学校入学から思春期まで、病気が少ない時期です。でもおとなしい子、こころが優しい子、いやだと言えない子は病気になります。

 

◇食事を強制したり、制限したりせず、少なくとも3歳までは欲しい時に欲しいだけ食べさせて下さい。少食、偏食は食事の強制から生じますし、甘いもの好きは甘いものを制限することから始まります。子どもに与えたくないものは、一度も与えてはいけません。「少しならいいだろう」は間違いです。もっと欲しくなるものです。嗜好飲料、スポーツ飲料は子どもの飲み物ではありません。また甘い食品、糖分(グリコーゲン)は大脳の発達に必要ですから、子どもの食事の必需品です。子どもは、食事もストレッサーになることがあります。嫌いなものを強制しないで下さい。また牛乳は、前述のように、飲めない子がいますから強制しないで下さい。また牛乳の飲みすぎもいけません。

 

4.病気は身体の変調、不調

◇病気は、外から入り込んだものではなく、自分自身の身体の変調です。変調というのはピアノやギターの調律がはずれた状態で、同じピアノでも良い音が出ない状態です。良い音が出ている時が健康なのです。

 例えば、かぜでも、外から入ってきたウイルスや細菌と戦って、身体の変調を起こして熱が出たり、咳やのどや身体の痛みやのどが腫れたりしているのです。だから、治ると自然に熱が下がったり、咳や痛みや腫れがとれていくのです。

◇だから病気は、自分自身がなっている変調した「状態」なのです。病気を嫌わないで下さい。病気を嫌うことは、自分の心が、自分自身の病気になっている身体の状態、つまり自分の身体を嫌うことになり、心の奥底(潜在意識の中)で、抗争(葛藤)を起こして、病気が良くなりません。病気を認めて、病気と上手に付き合って下さい。良くなるように自分の身体をなだめて、「良くなる、良くなる、だんだん良くなる」と自己暗示をかけて下さい。きっとあなたの身体の病気はよくなっていくでしょう。子どもは親が暗示をかけて下さい。よく病院に来ると、子どもが元気になるのは、ここに来ると良くなるとの暗示効果です。

 

5.不安は病気のもと

◇また不安になると、病気になったり、病気が悪くなったりします。不安になると「もっと悪くなるのではないか」とか「もっと苦しくなるのではないか」と思ってしまいます。それが自己暗示になって、あなたの身体はだんだん悪くなります。不安だと良くならないのですから、不安を打ち消しましょう。その為に、薬を飲んだり、医師にかかったりするのです。子どもは、お薬を飲ませて、「さあこれで良くなるよ」と言って下さい。それでよくなるのです。薬の効果と暗示の相乗効果です。それで良くならない場合は、それが効かない何かストレスになっていることが、子どもにあるのです。それを探して、なくすようにしましょう。

◇病気に神経質な人ほど、病気になりやすいのです。日本人は昔から病気に神経質です。挨拶の言葉には病気に関連する言葉が多いです。最近のゲノムの研究では、日本人の98%、白人の67%が神経質になる遺伝子配列を持っていると言います。しかし、それが発現されるのは環境によります。だから、くよくよしない人が長生きするのです。長寿の人に「その秘訣は何ですか」と聞くと、大抵「くよくよしないことです」と言います。

不安をかかえてはいけないから、不安なら医者にかかり、不安をなくしましょう。良い医師は、安心をさせてくれます。医者は安心を売る職業ですから、不安を増やすような医師は避けましょう。また、親は子どもを不安にさせるような言葉を話さないようにしましょう。「かぜをひくから」、「注射をされるよ」、「病気が悪くなるよ」などなど。

 子どもを脅かして、言うことをきかせようとしてはいけません。ほめて言うことをきかせましょう。子どもはほめられたいから、親の言うことをきくようになります。大人も同じです。大人同士でも、感謝の気持ちを表す「ありがとう」を言い合いましょう。

 

6.病気と上手に付き合いましょう

◇一病息災になりましょう。

先の川の話に戻って、堤防の一ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると、他の場所から水があふれません。それと同様に、一つの病気を持っていることによって、他の病気になる可能性が減ります。これを一病息災と言います。病気とうまく付き合い、なだめすかして、病気と仲良くして下さい。何とかして病気を治すと、また別の病気になる事がありますから。これは慢性の病気の話で、急性の病気は別です。

◇人生を楽しみましょう。たった一度の人生ですから、楽しくなくてはつまりません。楽しい人生を送ることによって、病気は逃げていきます。楽しい事を考え、思い描き、いつも、どこでも、楽しいことを考えながら、勉強したり、仕事をしたりしましょう。楽しくしていれば、病気は良くなります。

 

7.病原環境論

◇病原環境説は、ヒポクラテスに始まると言われています。ヒポクラテスは、病気をその「人」の状態として捉え、病気の原因を、気候の変化と不適正な食事、その他外界の激変にあるとしました。その後、ドイツの病理学者、衛生学者で政治家(進歩党)のウィルヒョウによって再興され、さらにロックフェラー大学環境医学教授デュボスによってヒポクラテスの復権が提唱されました。1970年代の国連環境委員会のアドバイザー委員長をしたデュボスでも、この説を臨床医のあいだに広められなかったのです。パブロフの条件反射を進めて、人はどんな環境に置かれたらどう反応するかの研究に進むべきだったのですが、神経経路の研究へと進み、体の細分化へ研究が進んでしまったのです。デュボスの説を支持しているのは、基礎医学者と精神科医に多いのです。アメリカの精神科医を中心に、精神神経免疫学や、さらに精神神経免疫内分泌学なども提唱され、動物実験もされ実証されていますが、これらはすべて病原環境説に含まれます。 

 

 

 

    花 粉 症(鼻アレルギー)にはこう対処しよう。

☆花粉症をよく知ることです。

 花粉症がどんな病気か知って、上手に対処しましょう。大げさに騒がれていますが、そんなに騒ぐものではありません。世間や、大学教授や専門医と称する医師たちの思い違いがあります。総理大臣の言葉を鵜呑みにしないのと一緒で、自称専門医という医師の言葉を鵜呑みしないことです。病原環境論はこう考えて対処します。

 

☆こころと身体は、表裏一体、メタルのうら表です。一つに連動しています。こころが落ち込むと身体つまり病気も悪くなります。

 病気は自分のからだの変調(バイオリンの調律がはずれている状態)ですから、病気を嫌わずうまく付き合いましょう。

 病気になっているのはあなたの体です。病気を嫌うことは自分が自分の体を嫌うことになりますから、嫌わず「早くよくなって」となだめて過ごして下さい。そしてなぜなるか、どうしたら上手に病気とつきあってこのシーズンを過ごすかの術を覚えて下さい。病原環境論は、上手な対処法を教えます。それで今までよりずっと楽に過ごせます。

完全に治すには、今の生活、家族関係、職場の人間関係などの、あなたの生き方を変えるしかありません。私は、高校時代から通年性のアレルギー性鼻炎でしたが、開業医になってからは、年一、二回なるだけです。当時からストレスで起きていることを実感していました。こころにダメージを受けるとなるのです。

 

これからは花粉症に負けずに生きていきましょう。

☆花粉症は

花粉症は鼻のアレルギーの病気で、こどもでは10%、大人は30%位の人がなります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)、アトピー性皮膚炎、じんましんにかかったことがあるか、家族にいる人がなりやすいのです。(遺伝的要因ないしは遺伝子をもつ)あなたの家族にいると思います。

 

なぜなるのか、

遺伝的素質(遺伝子)プラス環境因子(自然環境=花粉、社会環境=家庭、社会などの心理的、精神的、感情的ストレス)によって発病します。

遺伝的に同じはずの一卵性の双子の研究で、1人が喘息になった時にもう1人が喘息になる確率は25%(最近は70%もあるという)くらいで、花粉症も同じと考えられています。遺伝子ゲノムの研究では、同じ遺伝子を持っていてもその遺伝子を働かせるのは遺伝子にスイッチを入れることが必要で、スイッチを入れるのが環境要因(多くはストレス)ということが判っています。ある時スイッチが入って発病します。

これは病原環境論を裏付けるものです。遺伝子は、環境によっても変化します。だから日本ではスギ花粉症で、他の国では別の花粉症です。遺伝子が変化することを証明したのがノーベル賞学者利根川進名誉教授です。また人間には一億もの抗体を作る能力があることも証明しました。

 

花粉症

日本では、スギの花粉が風により広い地域に散らばり、交配するのに十分な程の、わずかな量で引き起こされます。今、中年世代を中心に全世代に増えています。

杉のない北海道は白樺です。アメリカでは若者のブタクサ、ヨーロッパでは若者の稲科の牧草が多いです。複数の原因であることもあります。欧米で若者に多いのは、若者の失業率が高いからと考えます。

スギ花粉症は、スギの多い地域より、都市部に圧倒的に多いです。関東では、杉並木で有名な日光市も古河電工の衰退(足尾銅山の閉山)と共に次第に増えていきました。そこから都市部までの間の土地には余り増えていません。

 

アレルギー性鼻炎のうち、

季節的なものを花粉症と言います。スギが主でイネ科や、ブタクサがあります。

花粉のシーズン(代表的なもの)

2~4月はスギ(ゴールデンウィーク前に終わります)、4~5月はひのき、松類、5~7月はイネ科植物、カモガヤ、ハルガヤ、小麦、8~11月は、ブタクサなど。

一年中続くものを通年性アレルギー性鼻炎と言い、本質的には同じで、しばしば複数の原因をもつことがあります。通年性のものには、室内吸入抗原が多く、ハウスダスト、ヒョウヒダニ、コナダニ、ペットのふけ、かび、化学製品、植物製品などがあります。原因がはっきりしないことも少なくありません。

○よくあること:血管運動性鼻炎

 アレルギー性鼻炎のある人が、季節を問わず、温度、湿度の変化、ほこり、煙草の煙などの刺激物を吸入すると一時的になるもので、一時間位でおさまります。

 

症状は、

くしゃみ(ひんぱんに、発作的に出る)、鼻水(水様、多量に、とめどなく出てかむのが間に合わない)、鼻づまり鼻のかゆみ目のかゆみ発赤およびのどの痒み耳のかゆみ口呼吸。通常30歳代にあらわれ、中年を過ぎると、年齢と共に軽くなっていきます。最近は小学生にもでるようになりました。

特徴はかゆみで、かゆみを伴うとアレルギー性鼻炎や花粉症と言います。

 

☆対策として、スギ花粉を避けることと言われて来ましたが。

マスク、眼鏡・ゴーグルが勧められますが、アンケート調査では、「あまり改善が見られず」との結果で、期待する程の効果は得られていません。窓をあけず、空気清浄機を使うと大分違うと言います。ひどい症状の人には多少とも軽減効果があるようです。

洗濯物はマスクをして干し、マスクをして花粉をはたいてから取り込むか、室内で干すこと。外出から帰った時には、上着などをはたいてから家に入りましょう。シーズン中はできるだけ外出を避けること。防御が第一です。

次には、鼻水をかまないこと。じっとがまんしていると自然に止まります。しかし、一度でも鼻をすすったり、鼻をかんだりすると、それまでと同じくらい鼻水が出続けます。それにはティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻の入り口にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻をかんだりすすったりしないようにします。そうすると泉の水が枯れるように鼻水が出なくなります。

☆最大の防御法は、ストレスをなくすことです。でもこれが難しいのです。

 

薬物療法の基本、上手に病気と付き合う方法の一つです。

第一は、抗ヒスタミン剤の飲み薬(かぜの時の鼻水の薬)で、なった時に飲みます。

ねむけ(神経抑制)の少ない「第二世代の抗ヒスタミン剤」(下記)を勧めます。

 俗に「抗アレルギー剤」と言って毎日飲み続けることを勧める医師や薬剤師がいますが、世界的には「なった時に飲み、よくなればやめる」のが普通です。アレルギーが治ることはありませんし体質も変わりません。予防薬ではありません。

 第二世代の抗ヒスタミン剤は、ねむけ(神経抑制)と鎮静作用を減らすために開発されました。まだ鎮静作用が残るのは、ザジテン、リザベン、セルテクト、アゼプチン、アレギサール、ジルテック、アレロック、など。

眠気が少ないのは、アレグラ、アレジオン、クラリチン、タリオン、エバステル、ピラノア、デザレックスなどがあります。世界的にはクラリチンの評価が高いです。

 鼻のかゆみくしゃみ鼻水に効き、鼻づまりは少しよくなるくらいです。目や耳、皮膚のかゆみにも効きます。

副作用は眠気と神経抑制で、できるだけ眠気が出にくい薬を選びます。効かなければ他の薬に変えると、効くことがあります。自分に合った薬を探しておくことです。

*ロイコトリエン拮抗剤(シングレア、キプレス、オノン)を、抗アレルギー剤として処方する医師もいますが、アレルギー性鼻炎には効きません。耳鼻科医の半数は処方しません。気管支喘息にはキプレス、シングレアが有効で、オノンは海外では評価されていません。

 

第二は、予防の薬です。外用薬(点鼻液、点眼液)だけです。

インタール系(インタール、ミタヤクなど)の吸入薬と点眼薬があります。毎日2~4回して、早くて3日くらいから効果が出始めますが、2週間くらい続けていないと効果が出ないこともあります。だから2週間続けて効果判定します。

しかし、75%の人に効果があると言います。効果があれば症状は出ないし、副作用も少ないので良いのですが、毎日続けていないと効果も続きません。大変ですがお勧めです。

第三は、治療薬ですが、医者によっては予防の薬だと言っています。飲み薬と同じ第二世代の抗ヒスタミン剤の点鼻薬と点眼薬(ザジテン、スプデル、リボスチン、アレギサールなど)で、毎日1日2~4回点鼻または点眼し、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。これも続けていないと効果が続きません。

 

第四は、即効性の一時期な改善薬(ステロイド薬

ステロイドの鼻へのスプレー(点鼻液)と点眼液。

1)どうしても以上の薬で、鼻水がひどく止まらない時に、ステロイドの点鼻液(フルチカゾン、アルデシン、リノコート[ベクロメタゾン]、ナゾネックス)を併用します。点鼻液は、かえって刺激になり、くしゃみが出て使えないこともあります。

 これを単独で使用する時は、初期には各鼻孔に1回ずつのスプレー噴霧を1日2回し、3~4日後に症状が改善したら減量して、1日1回の維持療法とします。

副作用は、結核菌をもっている人(昔結核をやった人やツベルクリン反応強陽性の人)の結核の発病と、1日中頻繁に使うと血液中に吸収され、長く使っていると副腎抑制を起こします。

2)眼のかゆみには、ステロイドの目薬(フルオロメトロン)で、かゆくなった時に使い、おさまったらやめます。うすい0.02%と濃い0.1%があります。また、ひどい人は、他の薬と一時的に併用します。長期に連用することは、勧めません。軽い人には、使いやすいです。即効性がありますが、副作用は緑内障を悪化させることと、コンタクトレンズのかびをふやすので、使えません。一時的に使うには、問題ありません。

〇薬がない時は、水で目を洗うことです。冷たくしてもかゆみが楽になります。

 

☆自分にあった薬を探すこと。上手に病気とつきあって、シーズンを乗り切ること。

☆ はな水をかまないこと。かまない方が止まります。ティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻水をかんだりすすったりしないようにします。そうすると、泉の水がかれる様にしだいに出なくなります。でも、一度でもかんだり、すすったりすると、それまで出たのと同じだけ鼻水が出続けます。

 

最大の原因は、ストレスで、いやなことをがまんすることです。いやなことは避け、どうしても仕方がないことは、「しょうがないな」とか、「まあいいか」と、くよくよ考えないようにすること。仕事上のことは、生活のためだから仕方がないと考え、楽しい事を考えて、のびのびと暮らすこと。楽しいことがあると、アレルギーは軽くなるし、去っていくこともあります。高齢者が軽くなるのは、定年退職することや、子どもたちが独立してストレスが少なくなるからです。かし、別のストレスが出てきて、別の病気になることがあります。

 

☆一病息災で、一つの病気になっていると、がんや心臓病や脳梗塞などの他の病気になる確率が低くなります。花粉症で死ぬことはありませんから、うっとうしいがラッキーです。もっともストレスの多い人は、いくつも病気をかかえますから、その場合は仕方がありません。

  • してはいけないもの

 ステロイドの注射(筋肉注射)、ステロイドの飲み薬(代表的なものはセレスタミン)の長期使用(成人で14日までは可)と子どもへの使用。子どもの成長を抑制し、感染を起こしやすいです。

 ステロイドは外用で使うのが安全で副作用が少ないので、お勧めします。

 鼻の粘膜を焼くことは、長期にわたっての副作用や安全性が確立されていません。

☆その他

免疫療法

舌下免疫療法は、通院治療期間が長く、効果発現までの期間が不明であり、有効性の判定に差があります。また、ごくまれに致死的な副作用もあります。

同様の喘息への減感作療法は、ブタクサや草花では部分的には改善しますが、スギでは確認されていません。昔喘息の患者さんに行なっていましたが、長い期間かけて感受性をやわらげても、喘息そのものは治らず、検査したら別の原因が陽性になりました。

結局労多くして功少なしでした。それで私はやめました。 

 

          鼻水とかゆみの薬の話

 

抗ヒスタミン薬の話

抗ヒスタミン薬は、かぜ薬の中に含まれる鼻水の薬として広く使われています。また、アレルギー性鼻炎の時の鼻水を止める薬として、またじんましんやアトピー性皮膚炎のかゆみを止める薬としても使われています。

その薬が、今世界で問題になっています。日本でも2007年頃から学会では取り上げられていますが、まだ一般には知られていません。

 抗ヒスタミン薬の用途

 鼻炎(かぜやアレルギー性の)の時の鼻水(水様性のもの)を止める。

 皮膚のかゆみを止める。じんましん、アトピー性皮膚炎、皮膚の湿疹やかゆみ、鼻や耳やのどのかゆみなど。

 間違って使われている場合として、第二世代の抗ヒスタミン薬が俗に抗アレルギー薬と称されていた時期があったため、すべてのアレルギーに効くかのように思われて、医師が気管支喘息や食物アレルギー(かゆみのない場合)に使うことがありますが効果はありません。

 薬の有効性や安全性に関する正しい知識が医師の間に浸透していないので、しばしば不適切な使用により本来得られるべき利益を患者が得られていないばかりか、副作用の不利益を受けている可能性が高いとアレルギーの専門医は言っています。

代表的な副作用は「眠気」ですが、「眠気が強いほど効果が強い」とか、「眠くなるのは効いている証拠」というのが誤った認識をしている医師の代表的な説明であり、そう認識している人も少なくないのです。

 最強の眠気の強い薬(ピレチア)は、睡眠導入剤や麻酔時の前投薬として使われているくらいです。しかし、この使い方はアレルギー専門医に言わせると、睡眠構築への影響や翌日に中枢抑制作用が残ることなどを考えると適切な使い方ではないと言います。

 ここでは、体内でのヒスタミンがアレルギー物質に対して反応して働いているのですが、それは省略します。しかし、決して無駄な働きではなく、体が異物に対する対応の反応の一つなのですが、体に症状を生じて労働生産性や勉学能率などの行為(パフォーマンス)や、日常の生活を維持しにくくなります。

 それで、適切な抗ヒスタミン薬の使用により、それを改善しようとするものです。上手な薬の選択と使用法により、症状を改善し、中枢神経系の働きを障害しないことが望ましいのです。

ヒスタミンの働きと抗ヒスタミン薬の作用は

・全身の粘膜下組織や上皮にいるマスト細胞(異物や病原体に反応する大型の白血球の仲間のような細胞)がヒスタミンを放出します。ヒスタミンが鼻水を出したり、アレルギー症状を起こします。

・アレルギー症状の出ている場所では、ヒスタミンは症状を起こす原因です。それでそのヒスタミンの作用を止める必要があります。

・脳内にあるヒスタミンは、パーフォーマンスの維持の中心的な働きをするために、これを抑えてはいけません。

・だから、治療する時は、脳内でのヒスタミンの働きを維持しながら、症状を抑えることが必要です。

 

抗ヒスタミン薬は、開発の時期と、開発の目的(昔はヒスタミンの脳内での働きが判っていなかった)によって、第一世代と第二世代があります。第二世代の方が中枢神経系への移行が少ないことと、局所でのヒスタミンへの作用がより効果があることが優位と言えます。

 

治療としては、

・症状改善効果

・中枢神経系の抑制作用

・治療が長期にわたる場合には、労働生産性や勉学の能率などのパーフォーマンスへの影響を考慮する必要があります。

1.症状改善効果、つまり局所におけるヒスタミンの抑制の効果

 第二世代の方が、科学的根拠があります。

 症状つまり鼻水、くしゃみ、鼻づまり、かゆみなどは、薬剤間に臨床的な症状改善効果に差があることの科学的根拠はないという研究があり、効果が得られない場合には、薬の変更ではなく、薬の増量を検討すべきであるとしています。

2.中枢神経系の抑制作用、つまり脳内におけるヒスタミンの抑制作用

 中枢神経の抑制作用は、眠気とインペアード・パーフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)の二つです。眠気は自覚できるのですが、インペアード・パーフォーマンスは自覚症状がないことが特徴です。しかも、眠気とインペアード・パーフォーマンスが必ずしも相関せず、眠気がなくてもインペアード・パーフォーマンスが発現されている場合があります。

 脳内のヒスタミンの抑制作用は、 第一世代では50~90%であり、第二世代では0~30%です。だから特に必要性がない場合には、第二世代の使用が勧められています。

 しかも、第二世代の薬の中でも鎮静作用やインペアード・パーフォーマンスの差があります。用量をふやすとインペアード・パーフォーマンスが増すものと増さないものがありますから、その確認をしておくことも必要です。ただし、普通のかぜの時には保険適用がないため、アレルギー性鼻炎の病名をつけます。

 ・脳の働きを活性化しているヒスタミン刺激を抗ヒスタミン薬で抑えることが、中枢神経の抑制作用を起こします。

 ・中枢神経の抑制作用は、眠気を起こすこととパーフォーマンスの障害(集中力、判断力、作業能率の低下)を生じます。

 ・インペアード・パーフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)は、気が付かないうちに患者の日常生活の質や、パーフォーマンスに大きな影響を及ぼすので、注意が必要です。

 これは、訳しにくいため、薬剤師や医師へのアンケートでこの訳に決まりました。

 ・中枢神経の抑制作用の程度は抗ヒスタミン薬によって違いがあるために、前記の障害を起こしにくい薬を選択すべきです。

3.治療効果をパーフォーマンスで評価することの重要性

 薬の有効性や安全性だけでなく、長期に使用される薬は、社会的、経済的な影響を考えなければなりません。ですから、脳の働きを正常に維持しつつ、症状を改善することが求められています。添付文書に自動車運転の注意書きが「有り」と「無し」では、「無し」の方が明らかにパーフォーマンスの改善が示されたと言います。

○ 特に小児に関しては、

脳内ヒスタミン神経系における機能は、

・覚醒の増加と徐波睡眠の減少  ・けいれんの抑制    ・学習と記憶の増強

・自発運動の増加        ・摂食行動の抑制    ・痛みの受容の増強

・ストレスによる過興奮の抑制   などがあります。

ですから、脳内ヒスタミン神経系の抑制があると、眠くなり、食欲も増え、けいれんを誘発する可能性もあります。小児の作業記憶が急速に発達する10歳頃までの時期に、脳内ヒスタミン神経系の抑制作用の強い薬を長期間飲ませると脳の発達に悪影響を及ぼすと可能性があると言います。

 それでアメリカのFDA(食品薬品管理局)は2008年の勧告で、6歳以下の年少児への抗ヒスタミン薬を含んだ市販のかぜ薬の使用を控えるようになり、自主回収されるようになったと言います。イギリスでも6歳未満の使用をしないように勧告されています。

 私も数年前に検討し、小児への投与として、ペリアクチンの4~5日以内の短期間であれば、鼻水のひどい時に使用することは差支えないと結論しました。でも、できるだけ、第二世代の抗ヒスタミン薬特にフェキソフェナジン(アレグラ)かエピナスチン(アレジオン)の使用が望ましいようです。

 

注意すべきこと

成人に対してよくかぜ薬として処方される薬について、(小児にもよく使われています)

・PL顆粒1g(1回分)には、眠気と中枢神経の抑制作用が強い抗ヒスタミン剤のプロメタジン10mg相当が入っていて、ピレチア5mg(抗ヒスタミン薬)の2錠分で、麻酔前投薬や睡眠剤として使われている薬です。絶対に飲まないで下さい。でも、かぜ薬として常用されています。

・ボララミン(クロルフェニラミン)は2mg一錠で、ウイスキー90mL(シングル3杯)を飲んだ時と同じインペアード・パーフォーマンスを起こすと言います。

 レスタミン(ジフェンヒドラミン)30mgでも、それに近い作用があります。

これらの薬は、多くの医師がそのことを知らずに処方しています。知らないから処方するので、多分知ったら処方しなくなると思います。インターネットで「PL顆粒」と検索して下さい。そのことが書かれています。

・第二世代の抗ヒスタミン薬でも、ザジテン、セルテクトが鎮静作用つまり眠気と中枢神経の抑制作用が強いと言います。

 新薬についてのデータは入手していませんので省略します。  

下記の表以外の薬については、調査中ですが以下があります。

鎮静性   ペリアクチン、クレマスチン(フルミノール)、アタラックス、タベジール、

軽度鎮静性 エメダスチン(ダレン、レミカット)、レボセチリジン(ザイザル)、

非鎮静性  ロラタジン10mg(クラリチン)、べポタスチン(タリオン)、デザレックス5mg(デスロラタジン)、ビラノア20mg(ビラスチン)、ルパタジンフマル酸10mg(ルパフィン)