読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

<私家版>椿説弓張月 平岩弓枝 小説新潮連載2012.12~2014.04

2015-01-18 18:02:58 | 読んだ
例によって、本を整理中に「あっ!これ読んでいない」と思ったものである。

「連載」というのは、前回までのことをよく覚えていないことが多くなったこの頃は『苦手』な分野である。で、できるだけ完結してから一気に読もうという姿勢でいるのだが、完結するのがいつなのかわからないところが、この方法の『弱点』である。
できるなら、「××話くらいで完結」みたいなものを表示してくれるといいのだけれど・・・

というわけで、この物語は15ケ月にわたって連載され(途中1回休載)たもので、なんとか読むことができたものである。(というわけで本の整理は進んでいない)

前置きが長くなってしまった。

「椿説弓張月」は滝沢馬琴の作で、それを今回平岩弓枝が「私家版」としてよみがえらせたものである。

『よみがえらせた』というのは、昔はこの題名を聞いただけでこれは「鎮西八郎為朝」の物語だな、とわかる人が大勢いたように思えるし、そもそも「鎮西八郎為朝」というのも有名だったような気がするが、現代では、多くの人が知らないことになっているのだと思う。

私は小さい時にこの物語を読んでいて(もちろん少年少女向きになっているもの)、八郎為朝が多くの困難と仲間たちを次々と失う中で、前に進んでいく姿に感動し、血わき肉おどる物語にワクワクしたものであった。

今回、その当時を思い出しながら読んだのであった。

さて、この物語の主人公の源八郎為朝は、八幡太郎義家の孫の為義の八男である。(ちなみに、為義の嫡男が義朝で、義朝の子供が頼朝、義経)

為朝は13歳の時に父から勘当される。この勘当は藤原信西入道から嫌われたことが原因である。(と物語ではなっている)
ちなみにこの時代は、天皇と上皇(院)が並立し、それぞれに摂関家や武士がついていて、陰謀渦巻く京の都だった。

八郎は、九州の豪族を頼って落ちのびていく。
そして最後には肥後の平家の婿になり(この時の妻が『白縫』)九州を平定することとなる。

その後、保元の乱で父・為義とともに崇徳上皇方について戦うが敗れ、伊豆大島に流される。伊豆においては伊豆七島を平定する。
で、歴史では、この平定が叛乱とされ殺されてしまったことになる。

しかし、物語では生き延びていて、ついには琉球にわたり琉球を平定し、子の舜天丸(すてまる)が琉球王朝の王となる。

という物語で、勧善懲悪であるから、必ず為朝が勝つこになっている。
しかもその勝ち方といえば、神や霊の力も借りてなので、後編はファンタジー的な要素もある。

この物語は、滝沢馬琴が中国の水滸伝も下敷きにしたというものであり、八犬伝の前に書かれたものであるから、非常に面白いものになっている。
単行本も出ているようであるから、興味のある人にはぜひ読んでいただきたい。

礫(つべて)の紀平治や、山尾・野風のオオカミなど、登場人物たちについて語り合える人が欲しいと思うのである。

さて、この椿説弓張月の題名であるが、椿説は珍説でありすなわち「異聞」とか「小説」という意味を持つと同時に、椿説はちんぜいとも読めることから、主人公の鎮西八郎為朝にもかかっているとのこと。
昔の人はよくよく考えていますねえ。

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