読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

継続捜査ゼミ 今野敏 講談社(キンドル本)

2019-01-27 21:20:14 | 読んだ
近頃は「kindle(キンドル)」での読書が多くなった。
持ち運びに便利だし、寝転がって読むのも楽だし。



以前はどこかへ行くときには、どの本を持っていこうかと悩み、途中で読むものがなくなることの危機感、涸渇感を予防するため2~3冊を持ち、結局は読めなかったり・・・

kindleは、その辺がいい。読みたい本はあらかじめ購入しておけばいいし、途中で読みたいものが出てきたらダウンロードという手がある。課題は、書籍にあってkindleにない本があることだが、どうしても読みたいならば書籍を購入すればよい。
兎も角、今はkindleで本を読むことにあまり違和感を感じなくなってきている。

というわけで「継続捜査ゼミ」である。
今野敏の警察小説といえば、私はなんといっても「隠蔽捜査」シリーズである。主人公:竜崎信也の変人っぷりが「正しい」ということが痛快である。変人なのに正義というか、正義を全うするには変人にならなければならない、というところがいい。
正義を貫けば事件は解決するという当たり前のことが、すごく難しいということを知っているから、読めばカタルシスを得る。

継続捜査ゼミの主人公「小早川一郎」もどこか竜崎を思い浮かばせるというような、この本の紹介文を読み、それでは読んでみようかと思ったのである。

小早川一郎は、警視庁を退職後に幼馴染の幼馴染の三宿女子大:原田郁子家政学教授の紹介で三宿女子大の人間社会学部准教授となり、その年教授となった。専門は「刑事政策概論」である。
教授となったその年、3年生を対象に刑事政策演習ゼミ(継続捜査ゼミ)を開設する。
この設定が、ありそうでなさそうで「んな、アホな!」という突っ込みを入れたくなるところだが、探偵小説の設定はそんなものではなかろうか?

ゼミ生は5名。当たり前のことだが全て女子である。

小早川教授はゼミの演習として、未解決事件を取り上げる。つまり「継続捜査」をゼミで行うのである。
いい設定ですよ、是非テレビドラマとしてやってほしい。
5名のゼミ生の、身体的特徴、得意技(?)まで設定しているので、いいかもしれない。

そして、このゼミにはオブザーバーとして警視庁からも現職刑事、警察官が最終的には4名が参加する。
そりゃ、女子大生と一緒に事件を考えるのだから、誘わなくてもやってきますよ。
それに正規のゼミの後には、飲み会があるのですからね。

取り上げた事件は15年前に発生した「強盗殺人事件」
この事件を5名のゼミ生は少しづつ解いていきます。
その間に、このゼミでは実際に学内で起きている事件をも解決していきます。

女子大生たちの得意技をうまく発揮させ、小早川の経験と合わせて事件を追っていくのは面白いです。
何しろ、現場検証やら証人たちへの聞き込みまでするのですから・・・

というわけで、このシリーズ注目です。(継続捜査2も既刊です)

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トラぺジウム 高山一実 KADOKAWA

2019-01-25 10:48:56 | 読んだ
私が、乃木坂46のファンであることを知っている人は少ないが確実に存在する。
しかし、『推しメン』が<かずみん>こと高山一実であることを知っている人はまずいない。
なぜなら、乃木坂46でそこまで突っ込んで話をする人がいないからである。

そもそも、私は中学時代から「アイドル好き」で、いろいろ注目をしてきている。
近年はAKB48にもはまっていたのであるが、何しろあそこは系列を含めるとメンバーが多すぎる。
目移りする、というよりは、誰が誰だかわからなくなってしまった。
そこに登場したのが乃木坂46であって・・・・

まあ、私の場合はテレビとかユーチューブとか雑誌とかでみるだけであって、そんなにコアなファンではないのであるが・・・

アイドルの話は、とてもとても長くなるので、また後日することとして、

今回は推しメン高山一実の小説「トラぺジウム」である。



表紙の帯には
『現役トップアイドルが描く』
『アイドルを目指す女の子の10年間」
とあり、小説家中村文則の「これは一つの青春の終わりから、次の青春へ向かう物語」というメッセージ。



帯の裏側には、小説家羽田圭介の「時折あらわれる、鋭い“いじわる”表現が良い」というメッセージがある。

ちなみにこの本はアマゾンで予約して購入しました。

12月24日に届いて、まあ2~3日で読み終わるだろうと思っていたのだが、なんと半月ほどかかってしまった。

その原因は「読みづらさ」にあるんだと思う。
近頃の若い子が書いている文章なので、なんとなく違和感がある。

それはまさに「ジェネレーションギャップ」であった。そして「アメイジング!」

サンドウィッチマンの「ちょっと何言っているかわからない」状態で、ページが進まなかった。

『まるで純金インゴットのような光を放つ彼女』『5畳に凝縮された部屋』『母親の買ってきた服をそのまま着ているようなコーディネートは好印象である』『角膜レベルでの変態』

なんだ?何故だ?
ということで、なかなか前に進まなかった。

私はディテールや比喩などにはあまり反応しないタイプなのであるが、今回はそれに引っかかってしまった。

でも、中1日とか2日とかで読んでみて(ときどき前に遡って)、徐々に、そのペースというか形態というかやり方に慣れ始めてきた。

もしかしたらジェネレーションギャップを埋めることができるのか?
ポジピース!

『理想は一人で描くもので、期待は他者に向けてするものだ。もう期待することはやめよう。』
『見上げると空が青黒い。コケの生えた青いプールサイドと茶色い水は今の自分にふさわしい。』

主人公「東ゆう」(あずまゆう)にそう言われると応援したくなるではないか。

さて、この物語は、主人公「東ゆう」がアイドルをめざして、自分で計画を立て実行していく物語である。

自分を含めて4人のユニットを結成するところから始まり、そのユニットをどのようにしてアイドル化していくかがつづられている。

その間には、いつもの挫折があり、いつもの成功があり、いつもの失敗がある。
「いくつも」ではなく「いつもの」という、ごくごくあるだろうというレベルである。
つまり、ストーリー的には『まあ、なんというか』のレベルなのであるが、主人公の気持ちを語るところが通常の成功、失敗、挫折と違う。

もしかしらもう古くなっているのかもしれないが、私から見れば、今の考え方、今の言葉、今の行動力で主人公は進んでいく。

私はいつも若い人に対して「その自信はどこから来るのか」「自分がよければ他人もいいのか」なんで考えていたのだが、この小説を読むと、根っこの部分では以前と変わらないということがわかる。

いつの世のことでもあるが、やっぱり「生きづらい世の中」というのは普遍的なのであり、何が生きづらいのかということも普遍なのである。

それにしても、読み終わったときに感じた「ああ、おわり?」という気持ちは、物語の中から解き放たれた安堵だったのか、もうちょっと居てもいいかなという心のころりだったのか、自分でもよくわからない気持ちだった。



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