慶次郎縁側日記の文庫版「傷」「再会」に続く第3巻である。
非常に暗くつらい始まりから、3巻になると滑稽味がでてくる。
味というかコクというか、物語に深みが出てきた。
本巻は12の短編からなっている。
それぞれの短編で、それぞれの人が主人公である。
本来この物語の主人公は元同心の森口慶次郎である。しかし、森口慶次郎が脇にまわることで、物語が広く深くなったと思う。
慶次郎に迷惑をかける人は悪人ぶっていても実は善人である。
善人なのになぜ悪いことをするのか?
それは彼らが弱いからである。
弱いというのは他の人と比べて弱いのではなく、自分自身なんかでもっとも肝心な部分そして肝心な時に弱いのである。
ここで一歩踏ん張れば何とかなるという時に、逃げる、投げやりになる、あきらめる、それが彼らを悪人にしてしまう。
しかし、この物語に登場する悪人達は最後の最後で気づく。
何が自分を弱くさせていたのか。
何がもっとも大切なのか。
だからこの物語は最後に救われるのである。
大体、一夜一話のペースで読んでいた。
疲れた時、人が嫌になった時、明日勤めになんか行かないぞ、と思っているとき、この物語を読むと「人って、社会って、それほど捨てたもんじゃないな」なんて思うのである。
まだまだこの物語は続いている。
ゆっくりと読み進めようと思っている。
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この度の連絡で不快な思いをされた方には大変申し訳ございません。お詫び申し上げます。