読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

巨額暗黒資金-影の権力者の昭和史3巻- 本所次郎 だいわ文庫

2007-10-12 21:10:51 | 読んだ
だいわ文庫というのは初めてである。

この巨額暗黒資金は、影の権力者の昭和史の第3巻であり、第1巻「高級官僚」、第2巻「天下り支配」とある。
どうせなら第1巻から読みたかったのだが、この本を見つけた本屋にはこの3巻しかなかったので『まあいいかっ!』と買ってきたのである。

もともとは「麒麟おおとりと遊ぶ」という上下巻のものだったのを、改題し加筆修正をしたものだという。

筆者の本所次郎は経済記者から執筆活動に入ったとのこと。1937年生まれだから70歳である。

さて、この巨額暗黒資金は、全日空を舞台にしたM資金とその後のロッキード事件について書いてある。

テンポの速い進行と、実名で登場する人物たち。
見てきたかのようなセリフと場面描写。

帯には『政財界の権力者と闇社会、謎のM資金が踊る!!』とあり、表紙、題名と併せて、なんだか妖しい感じがするが、実際の内容はおどろおどろしいものではないし、思わせぶりな表現もなく、どちらかといえば新聞を読んでいるような漢字である。

それだけに、客観的な描写が「ホント」らしく、思えるのである。

個々に登場するのはほとんど男たちであり、その男たちのドラマといえる。
男たちのドラマといっても、さわやかなものではなく、ドロドロした権力争いである。

男たちの欲のほとんどは「権力」「金」と「女」である。
昔の男たちはこのような『欲』を隠すことなく、どちらかといえばむき出しにして争ってきた。
その争い方は正々堂々というのもあったがどちらかといえば「陰湿」なものである。

だから、この本を読んでいると「ヤクザもの」を読んでいるような気分になってくる。

今はこのような単純な構図にはならず、なおかつ、キレイな人でなければ権力を得ることが出来ないので、「小さくなった」といわれてもかわいそうな気がする。
ちょっと前の出来事なのだけれど、男が欲をむき出しに権力争いをしていた時代は、それはそれでよかったのかなあ、という思いもあるのである。

世の中が複雑になりキレイで裏のない人でなければならない時代は、かえってその裏の顔が陰湿・隠微になり、それを上手に隠すので、発覚したときには暗澹とした気持ちにさせるのではないかと思うのである。

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