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私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号

2023-09-16 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」
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 さて今回は、本と書店の世界といいますか、業界について、
 「元本屋の兄ちゃん」として、本好き・読書好きの人間として、
 私なりに考えていることを書いてみようと思います。

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 - 消えゆく書店と紙の本 -

  ~ 紙の本と書店の減少にショック! ~

   それでも本屋さんは生き残る?
 
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 ●朝日新聞の記事「本屋ない市町村、全国で26%~」

朝日新聞の記事によりますと、
出版文化産業振興財団(JPIC)による調査では、
書店のない市町村が全国で26%にも上るそうです。

*参照:朝日新聞デジタル記事
本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も
宮田裕介2023年3月31日 19時00分
https://www.asahi.com/articles/ASR3056M2R30ULEI004.html


(画像:朝日新聞デジタル記事より「書店ゼロ」の自治体の数と割合)

 《調査によると、書店がないのは全国1741市区町村のうち456市町村。
  都道府県別で書店がない市区町村の割合は、
  沖縄が56・1%と最も高く、長野の51・9%、奈良の51・3%と続いた。
  4割を超えたのは、福島(47・5%)、熊本(44・4%)、
  高知(44・1%)、北海道(42・5%)。
  一方、広島、香川の両県は全市町村に書店があった。》

調査対象は《大手取次会社を経由して販売契約している新刊書店の数》。

 《「独立系書店」などと呼ばれる大手取次を利用していない書店、
  ブックカフェ、ネット書店、古書店などは数に含まれていない》。

調査方法が違うという、取次・トーハンの2017年の調査では、22・2%。

 《市区町村別ごとでみると、
  書店がない市は792市のうち17(2%)だったのに対し、
  町は743町のうち277(37%)、村は183村のうち162(89%)だった。
  東京23区は全てにあった。
  書店がない市町村がどこかは明らかにしていない。》

書店経営が厳しい背景の要因として、
(1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
(2)ネット書店で本を買う人の増加
など様々な要因がある、といいます。

 《日本書店商業組合連合会の加盟店などの書店業界は、
  自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」
  に支援を要望。
  今春までに提言書をとりまとめ、具体的な支援の検討を始める。》

具体策は、(A)アマゾンなどのネット書店との競争環境の整備

 《本は、定価販売の根拠となる「再販制度」があるが、
  ネット書店では、送料無料やポイント還元で
  「実質的に値引きが行われている」とし、
  一定の制限やルールを設けることを検討する、とした》

ほかに検討材料としては、

(B)公立図書館で同じ本をたくさん仕入れないようルールを定める
(C)出版物への軽減税率の適用
(D)読書推進を目的としたクーポン券の配布

ネット書店や図書館への規制は、

 《読者の利益を損なうことにつながりかねず、批判も多い。
  また、特定の政党の議連に要望していることについて、
  政治との距離の取り方への疑問の声もある。》

といいます。

私には、自民党の議員連盟に要望している点を問題視しているのは、
いかにも朝日新聞的な感じがします。


 ●再販制度――定価販売による価格保証

以前から私が主張していることは、本の流通において、
取次経由の在り方を再考するということ。
卸業そのものは、他の業界にもあり、それ自体は問題ではありません。

問題は、再販制度です。
私の主張は、再販制度を廃止して、書店の自由仕入れ・自由販売にする、
というのが一つ。


再販制度のよいところの一つは、
素人でも資金力があれば開業できること。

地方の資金力のない小さな店でも、販売価格を保証されているので、
ある程度売れれば(!)経営的には一定の利潤を上げられる。
(実際には非常に苦しいのですが、パパママストア的な、配達中心に、
 学生や子供さん高齢者向けに、地元密着でやれば、できなくはない?)

一人の人間の得意ジャンルなどしれたものです。
書店というのは、非常に広いジャンルの商品を扱います。
大規模な書店ならある程度人を集めて、
それぞれの得意ジャンルを担当させればいいのですが、
個人レベルのお店ではそれはできません。
勉強にも限界があります。
ある程度取次に頼るのもありでしょう。

他の商品でもそうですからね。
生鮮食品でも、卸の専門家に仕入れを任せている、
という料理店もあるでしょう。
同じことです。
ある程度の目利きができる必要はあるでしょうが。

話がずれました。
再販制度です。

やはり店側が責任をもって発注して販売する必要があります。
今は返品可能で、山かけで発注して、
大量に売れ残っても返品すればいいや、で済ますこともあるのです。
返品もお金がかかりますけれど、買取よりずっといいですから。

価格も含めて、責任を持ってその商品を売ることが大事です。
自由販売だから売れ残ったら、値引きすればいいや、でもないのです。
そんなことをすれば、儲けが減ってしまいますから、ね。


 ●書店経営が厳しい背景の要因―雑誌の売り上げの急減

話を朝日新聞の記事に戻します。

書店経営が厳しい背景の要因として、
 (1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
 (2)ネット書店で本を買う人の増加
を挙げていました。

(1)の「人口減少」は、これはどの業界も直面している問題です。
これに対する絶対的な答えはありません。

市場を海外に求める、というわけにもいきません。
客を地元だけでなく、ネットを使って広く世界に求める、
というやり方は可能ではありますけれど。


「雑誌の売り上げの急減」には、二つの要因があります。

雑誌そのものに魅力がなくなった、というわけではないと思います。

一つは、コンビニに客を取られている。
もう一つは、雑誌そのものが紙から電子版に切り替えられている。

コンビニの問題は、
私が本屋さんで働いていた30数年前に始まったものです。


雑誌の売り上げは、書店売り上げの半分程度といわれていました。
私のいた店は40%程度でこれを上げなければ売上は上がらない、
といわれていたものでした。

私が働いていたころに取った対策は、雑誌の完売賞を狙うというもの。

入荷数と返品数をしっかり把握して、適切配本になるように調整して、
出版社が完売賞を出している時には、きっちりとこれを獲得する。
もらえる賞品といえば、雑誌のロゴ入りのちょっとした物でしたが、
それよりも、
次回から入荷数を増やしてもらえるようになる利点がありました。

結果として取次からの適切な配本を確保でき、
売り損じや返品過多などの不利益を減らすことができました。


 ●ネット書店で本を買う人の増加

これは確かに大きな要因でしょう。
ただ、ネット書店といっても、二つの面があります。
紙の本の場合と電子版の場合と、です。


紙の本の場合は、
Amazonのように送料無料とかポイントがもらえるとかのサービスは、
一般書店にとっては、ちょっと公平な競争という点では問題ありか、
と思われます。

書店でも無料の配達をやってはいますが、ポイント制は一種の割引で、
定価販売の書店とは違って、一種違反ともいえそうです。


電子版の場合は、
特に雑誌は、若い人の間で非常に進んでいるように思います。

スマホでその場で見られる、という便利さがあります。

一般書籍の場合は、逆に高齢者で愛好者が見受けられます。

文字の大きさを端末で変えられるので老眼でも好都合だ、
という考えの人が多いようです。

また、物が増えない、という収蔵場所の問題もクリアできるので。


紙の本の場合、本屋の消滅がネットへの購買の移行に拍車をかけ、
リアル書店の減少が先かネット書店での購入増加が先か、
というレベルになってきているようです。

ネット書店とリアル書店の違いは、品揃えの差ということになりますか。

ネット書店の場合は、店舗がいらないので、
その分倉庫に割り当てできます。
単なる倉庫なので、単位面積当たりの収容力に差が出ますし、
そもそも立地条件が異なりますので、経費が違ってきます。

そういう意味では
ロングテールといわれる商品を確実に利益にできるという面があります。

リアル書店では、どうしてもそういう面では、
置くべき本を恣意的に選択するしかないので、
売り方との兼ね合いで勝負するしかないのです。

店員さんが何を推すかで決まるというように。

買う人の立場でいえば、「特定の本を買う」という場合には、
圧倒的にネット書店が有利でしょう。
選んでポチ! ですみますから。


 ●リアル書店での「偶然の出会い」

それに対して、リアル書店が優るのは、未知への誘いとでもいいますか、
お客様の漠とした欲求に対して、実際の「もの」でアピールする、
という力があります。

「思いがけない出会い」とかいわれるものですね。

こんな本があったのか、という意外性といいますか。
今まで存在は知ってはいたけれど、
手にすることはなかったといった本に、偶然出会ってしまう瞬間、
というものがあります。

これはやはりネットよりもリアルが勝っているように思います。


ネットでも過去の履歴に基づいた紹介がありますが、
過去の履歴は所詮は過去の履歴で、
現在の興味を反映するものとは限りません。

また、新刊のチェックまでは進んでいません。
目新しい出会い、というのは、なかなかむずかしいように思います。


 ●リアル書店の生き残りについて――「コンビニ+本屋」

朝日新聞の関連記事では、Amazonを不便にすればとか、
「コンビニ+本屋」の例とかが出ています。

「コンビニ+本屋」の例を考えてみましょう。

昔私の通勤途上にそういう例がありました。
私自身何度か本を買いました。
当時は仕事が忙しく、
休みの日でもわざわざ本屋さんに出かける余裕がありませんでした。
そん名と気は非常に便利に思いました。

通勤の帰りにのぞくことが多かったのですが、
時に出勤時に週刊誌などを買うこともありました。

本好きの私には、ふつうのコンビニでは満足できなかったので、
それはそれでよかったのですが、
しかし、本屋の仕事というのは、コンビニの延長ではなく、
やはり別物の仕事でしょう。
きちんとした品揃えをしようとしますと、専任の店員が必要です。

やはり商品の選定というのは、目利きがいないとむずかしいものです。
店の持つ販売力をしっかり把握して、
どういう商品をどの程度、といった発注の問題ですね。

それと現状では取次からの送品にたいしてどう対処するか、
という問題もあります。

正直、店に合わない商品でも大量に送ってくる場合があります。
その返品なども大切な作業です。


 ●ベストセラーではなく、ロングセラーを!

従来は、売れ筋と呼ばれる商品をいかに確保するか、
が一つのポイントでした。

しかし、地方の小さな書店に本がまわってくるころには、
売れていた本もそれほどではなくなっています。

結局大切なのは、お店のお客様に合った商品をどの程度確保できるか、
ということになります。

それと、こういう商品を売りたいという店員側の思い、これも大事です。

公刊されているような本には、それなりの魅力があるものです。
その点をきっちりアピールできれば、当然売れるはずです。

一般商店でも同じですが、売上の落ちてきた店がよくやる失敗に、
店に置く商品を売れる商品のみに絞る、という方法があります。

一見筋が通っているようですが、これがたいてい失敗します。
なぜか、というと、
売れる商品というのは、基本どこの店でも売れている商品です。

どこでも買える商品と言い換えてもいいかもしれません。

それだけに限ってしまうと、店としての魅力が半減してしまいます。

多くのお客様は、この店でこれを、あの店であれを、
と基本的な商品に関しては、買う店を決めているものです。

たまにしか売れない商品が実はあなたのお店の魅力の一つになっている、
というケースが結構あるものです。

一見ムダに見える商品を置くことで、
お客様に選択肢を与えることができます。

そういうお客様の傾向をきっちり抑えて、品揃えをする必要があります。


そして、今○○が流行っていると、
一時的なベストセラーを追いかけるのではなく、
継続的に売れる、ロングセラー、定番商品をしっかり確保する、
これが一番大事で、それがお店の販売の基礎となるものです。


 ●本屋はそのまちの文化のバロメーター

一番大事なことは、本屋さんというのは、
その町の文化を代表する存在の一つだ、ということです。

もちろん文化施設としては、
公立や私立の図書館とか美術館とか博物館などもあります。
あるいは学校――小・中・高校、大学、専門学校などの教育施設などが
あります。

しかし、最も身近な文化施設として、私が思うところは、
やはり町の本屋さんなのです。
これは私の経験からの意見です。

本屋さんに出入りするようになり、私の世界が広がったのです。
今の私につながるような変化を生みました。

それが文化というものでしょう。

本の世界には、文字通り世界のすべてが包含されています。
未知なる世界への入口になるのです。

日常的な生活だけでは、絶対ふれ得ないような世界の広さです。

それが本屋さんというものだと私は思っています。

もちろん、昔でいえば映画やラジオやテレビもそういうものでした。
しかし、それらは自分の手元に置いておくことができにくいものでした。

紙の本なら、それが可能でした。

広い世界へつながる入口――それが本屋さんであり、
文化へ続く道だったのです。


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本誌では、「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回は、「元本屋の兄ちゃん」としては、いいテーマを見つけたというところなのですが、しっかり考える時間がなく、中途半端な結果になりました。

また、次の機会に考え直して書いて見ようかと思います。

一言、私の従来からの意見と書いておきますと――
(1)再版制度をやめ、書店の自由販売にする
(2)本の価格を引き上げ、その分を書店や著者、出版社、取次などに配分する
これで、紙の本を残せるか、地方の町の書店が生き延びられるか、は不明です。
それでも、いくつかの可能性は残されているのではないか、と考えています。

結局、書店というものはだれでも経営できる業種ではなく、専門家の手による専門店だという気がします。

都市部の大型店が家賃が払えず退店するとかいう話も聞いています。
書店自身がもうオワコンなのかもしれません。

それでも私はまだまだ、と信じたいのですけれど……。

 ・・・

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号
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