南斗屋のブログ

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遷延性意識障害の平均余命の問題

2008年07月02日 | 遷延性意識障害
 介護が必要な重度の後遺障害を負った場合、介護料を請求できます。
 症状固定後の介護料は、症状固定したときからの平均余命をもとにして算定されます。

 「平均余命」というのは、あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、厚生労働省が毎年発表している統計があり、それによって平均余命を決めます。
 例えば、26歳の女性の平均余命は、60.11年とされています(平成16年の統計=簡易生命表による)。
 つまり、26歳の女性はあと60.11年生きる可能性が大(もちろん統計上ですが)ということになります。

 ところで、遷延性意識障害の場合、加害者側から「厚生労働省の発表する平均余命を適用するのは不当だ」という主張が出る場合があります。

 遷延性意識障害の場合は、長く生きられないのではないかというのがその理由で、保険会社サイドの医師から「被害者の平均余命は10年程度と推測される」というような意見書が証拠として提出されるようです。

 このような主張に対して、最近の裁判例は遷延性意識障害も一般人と同じ平均余命を認める傾向にあります。
(この点は、過去記事でも書きましたので、ご興味のある方はこちらへ)

 医師の意見書を厳しく否定した裁判例として
 仙台地裁平成19年6月8日判決(自保ジャーナル1737号)があります。
 判決の一部を抜粋しておきます。

 「被告は、E医師の意見書を前提として原告の余命をせいぜい10年程度であると主張しているが、E医師の意見書記載の報告例についてはその報告例の対象がどのような基準から選択されたものか不明瞭である等その内容の正確性に疑義があるし、対象年度とされる1994年から現在に至る間の医療水準の向上が反映されているとも解されない。
 そもそもE医師が原告を診察したことはないということを抜きにしても、同医師の意見の前提をなす報告例の正確性や妥当性には疑義を呈さざるを得ず、E医師の意見に依拠することはできない。」


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