南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

高次脳機能障害審査会(高次脳機能障害専門部会)

2007年05月07日 | 高次脳機能障害
 交通事故の被害者に高次脳機能障害があるときに、自賠責保険の被害者請求被害者請求の認定票には、
「この認定は高次脳機能障害専門部会によるものです」
というようなことが書いてあるのですが、この「高次脳機能障害専門部会」とはなにものか調べてみました。

 被害者請求を自賠責保険にしましても、自賠責保険では等級を審査する体制が整えられていないので、自賠責保険会社とは別組織の
 自賠責損害調査事務所
が実際には審査を行っています。

 後遺障害の中でも、高次脳機能障害は認定の難しいものの一つですので、高次脳機能障害にあたる可能性のあるものについては、後遺障害の専門部会の一つとして設立された専門医等を構成員とする「高次脳機能障害専門部会」で審議を行うこととしているのです。

 つまり、高次脳機能障害は認定することが難しいので、専門の医者などが入っているこの部会で取り扱うことにしましょうということのようです。
 実際にどのような方がこの専門部会に入っていて、どのような審査がなされているかについては、私が調べた範囲ではよくわかりませんでした。
 
 高次脳機能障害専門部会については、損害保険料率算出機構のホームページに出ているのですが(→こちら)、そこでは「専門部」会の内容は明らかにされておりません。

 また、ネットで検索をかけても、部会の内情についてはヒットしませんでしたので、その実態はよくわかりませんでした(ご存じの方いたら教えてください)

 実際にどのような専門医がかかわっているのかということは等級認定をうける側からすれば大変重要なことです。
 特に、画像所見については専門医しかわからないわけですが、高次脳機能障害の画像所見というのは大変難しいもののようでして、それをきちんと見分けてくれませんと高次脳機能障害と認定されないことになってしまいます。

 従来の記事にも書きましたが(→こちら)、高次脳機能障害で認定を受けている件数は年間3000件程度ですから、この審査にあたる方はきわめて重要な鍵を握っていることになります。

その他の参考記事
 私のホームページ中の「高次脳機能傷害の自賠責認定基準」
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「脳障害を生きる人びと」

2007年05月04日 | 高次脳機能障害
「脳障害を生きる人びと」という本が出版されています。
初版は2006年11月、草思社という出版社からで、著者は中村尚樹さんというりーのジャーナリストさんです。

 閉じこめ症候群、遷延性意識障害、高次脳機能傷害について書かれていますが、私が注目したのは遷延性意識障害についての、療護センターの現状や入院の困難さです。

 療護センターというのは、自賠責の運用益で運用されている施設で、自動車事故対策機構というところが運営を行っています。
 重度後遺障害者(遷延性意識障害者)専門のセンターで、国内4か所にしかありません。
 
 ホームページがありますので(→こちら)、詳細はそちらをご参照ください。

 もっとも、ここでわかるのは療護センターの公式的な情報であって、療護センターに入る前の被害者、療護センターを退院した後の被害者にどのような問題点があるのかについては、このホームページを見てもわかりません。

 「脳障害を生きる人びと」ではそのような問題を扱っています。

 
 
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”被害者が軽傷である”は正しいか

2007年05月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回、業務上過失傷害事件について、被害者が軽傷の場合は検察官は不起訴処分(起訴猶予)にすることが多いということを書きましたが、今回はその問題点です。

 最も問題であると私が感じているのは、
”被害者が軽傷である”
ことが正しいのか否かです。

 警察や検察という捜査機関が軽傷であるかどうかは医師の診断書をもとにしています。
 しかし、医師の診断書をとり続けるわけではありません。
 事故の被害にあった方は、医師の診断書を警察に提出するように言われたことがあると思いますが、この事故が起こった後すぐの診断書で判断されてしまうのがほとんどだといってよいでしょう。

 事故にあって、まず病院に行き、そこで診断書が「全治2週間」となっていれば、警察は軽傷の事案と判断しますし、検察官だって同じです。
 ところが、この「全治2週間」はあくまで最初に行った病院の最初の診断であり、その後、怪我の治療が長引くこともありますし、後遺障害が残る場合もあります。最初の時は気がつかなかった傷害が後でわかる場合もあります。

 私の担当したケースでも、当初「全治2週間」と診断されながら、自賠責の等級で2級の後遺障害が残ったという方がおりますので、最初の診断書だけだと適切な判断をされない可能性があるという意識が強くありますが、多くの警察・検察はその後の被害者の怪我の状態を確かめないことが多く、最初の診断書1枚でその後の手続きが進められてしまいます。

 このような状態を防ぐには、被害者が加害者の刑事事件の状況がどうなっているか、自分の怪我が長引いているのであれば、その診断書をとって検察官に提出するするということで対応するしかありません。
 検察官によっては、被害者の状況を確認していく方もおりますが、膨大な数を処理している検察官にすべてを期待しない方が賢明です。
 
 日本人は、警察・検察というと正義の実現者のように考えておられる方が多いのですが、残念ながら、警察・検察といえども所詮は我々と同じ人間が動いており、また、あくまで彼らは公務員であって、役所の中で生きている人たちですから、それぞれの限界というものがあるということは、念頭に置かれておいた方がよいかと思います。

コメント (2)
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