グリーグ:劇音楽「ペール・ギュント」
①ノルウェーの婚礼の行列(第1幕)
②序曲、花嫁の略奪とイングリッドの嘆き(第2幕)
③山の魔王の殿堂にて(第2幕)
④オーゼの死(第3幕)
⑤序曲、朝の気分(第4幕)
⑥アラビアの踊り(第4幕)
⑦アニトラの踊り(第4幕)
⑧ソルヴェーグの歌(第4幕)
⑨序曲、ペール・ギュントの帰郷(第5幕)
⑩ソルヴェーグの子守歌(第5幕)
指揮:ヴァツラフ・ノイマン
管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
発売:1974年
LP:日本フォノグラム(フォンタナ・レコード) FG‐259
ノルウェーの作曲家グリーグは、同じくノルウェーの劇作家のイプセンから、自作の詩劇「ペール・ギュント」の付帯音楽を作曲して欲しいという申し出に応え、苦心の末、5幕38場の戯曲に23曲の付帯音楽を書いた(1874年~75年)。ノルウェーの古い伝説によったイプセンのこの劇そのものは、1876年に初演されたが、主人公のペールによって引き起こされる騒動が、ノルウェー人の弱点を見せ付けられるようだということで、観客の反感をかってしまったと言われる。しかし、グリーグが付けた音楽は非常な好評を得たため、その後、グリーグは4曲づつの組曲を2つ作曲した。これが劇音楽「ペール・ギュント第1組曲/第2組曲」として、現在でもしばしば演奏されている。今回のLPレコードでは、この2つの組曲の8曲を、劇の進行順に配列し直し、さらに2つの組曲には含まれていない「ノルウェーの婚礼の行列」と「ソルヴェーグの子守歌」を添え、新たな一つの組曲として演奏している。指揮のヴァツラフ・ノイマン(1920年―1995年)は、プラハで生まれた。1945年、ヴィオラ奏者としてチェコ・フィルハーモニー管弦楽団に加わると同時に、1943年から1947年まで、スメタナ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者としても活動した。さらに、1948年から1950年まで、チェコ・フィルの常任指揮者を務めた。1961年からは、ドレスデン国立歌劇場とライプチヒ歌劇場で定期的に指揮活動を行い、さらに1962年にはプラハ室内管弦楽団を創立。1963年には、カレル・アンチェルと共同でチェコ・フィルの常任指揮者に復帰。そして、1964年からはコンヴィチュニーの後を受けて、ライプチヒ歌劇場とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の音楽総監督という重責を担うことになる。ヴァツラフ・ノイマンは、チェコ音楽、特にヤナーチェックの歌劇を得意としていたが、グルック、ベートーヴェン、マーラーなどドイツ・オーストリア系音楽にも定評があった。このLPレコードで、ヴァツラフ・ノイマンの指揮は、北欧の郷土色をたっぷりと沁み込ませ、情緒のある表現力を存分に発揮している。単に表面的な華やかさを狙うのではなく、一つ一つの曲の持つ特徴を、心からの共感を持って演奏しているところが、他の指揮者とは一味も二味も異なるところである。(LPC)