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ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

ミュージカル「プロデューサーズ」

2008-02-17 | 観たものレビュー
トニー賞12部門受賞

ブロードウェイで6年に渡ってロング・ラン公演されたメル・ブルックスの傑作ミュージカル「プロデューサーズ」。

その日本版の初演は2005年。
当時も気になるミュージカルの一つとして気に留めてはいたのだけれど、主演がV6のイノッチと長野君ということで、バリバリジャニーズファンの私といえども、正直なところ、正統派ブロードウェイミュージカルの主演を彼らが演じるということに、なんというか、居心地の悪さを感じたというか、ハッキリ言って無謀なキャスティングのように思えてならなかった。
それは二人の歌唱力に不安があったというわけではなく、独特なブロードウェイミュージカルの雰囲気に彼ら二人が合っているのか?というイメージ面での不安だ。

ということで結局、ミュージカルそのものに興味はありながら初演を見ることはなかった。
失敗作だったいう噂を聞くこともなく、どうやらかなり好評のうちに終わったような話をどこかで聞いた。

そして2008年。
「プロデューサーズ」の再演を私は思いきって見ることにした。
再演されるということは、また観たいという声が多かったからだろうし、初演を越えるショーを披露できるという自信が主催者側にあったからだろう。
それにやっぱり、ミュージカル「プロデューサーズ」そのものを観てみたいという私の気持ちが強かった。あとは・・・毎日読んでいるイノッチの日記「イノナキ」にも後押しされたかもしれない。イノッチの「本当に観てほしい!」という強い気持ちが、イノナキからあふれ出ていたから。(笑)

1幕目の幕が降りたとき、ああ、やっぱりこのミュージカルを観てよかった!と私は思った。
こんなにブロードウェイの香り漂うミュージカルを観たのは久しぶりだった。
しかも、これは来日ツアー公演などではなく、日本人が演じる日本版「プロデューサーズ」だというのに。
イノッチが・・・もとい、井ノ原快彦が演じるマックス・ビアリストックの、百戦錬磨のベテランプロデューサーならではの狡猾さ、いやらしさ、豪快さ。
本場のネイサン・レインとは実年齢も違えば、体型も真逆だというのに、ゾクゾクするほど魅力的で、老獪なくせにとても愛嬌がある。
あんな目の細いアメリカ人がいるわけないのに(笑)、それが芝居のネタとして出てくるまで、気づかなかったほど、まったく違和感がない。

そして、もう一人の主演、長野博演じる会計士レオ・ブルーム。
テンションの高低が激しいこの役を、長野君は絶妙ともいえる緩急のリズムで演じていて、小道具の「安心毛布」の切れ端の使い方もとても上手い。
畳み掛けるような強烈さで迫るマックスとそれを柳のようにヘナヘナと受け流すレオの、二人のスピード感あふれる掛け合いを楽しんでいるうちに、ストーリーにぐいぐいと引き込まれていく。
二人の「We Can Do It」から、レオのソロナンバー「I wanna be A Producer」へ、そして再び「We Can Do It」へとつながる流れがワクワク楽しくてたまらない。

それから、二人に絡む脇役たちも個性豊か。
桑野信義さん演じるナチスかぶれの脚本家、藤木孝さん演じるゲイの演出家とその“恋人”(?)を演じる岡幸二郎さん、マリリン・モンローを彷彿とさせるお色気たっぷりの北欧美女ウーラを演じる彩輝なおさん、そして、マックスの金づる“ホールドミー・タッチミー”おばあちゃんを演じる松金よね子さん。松金さんは、随所にいろんな顔で登場してくるので面白い。
そして、藤木さん、岡さんたちとの「KEEP IT GAY」の華やかで陽気なこと!
1幕目は、マックスと出資者のおばあちゃんたち(笑)とのコミカルなダンスナンバー「Along came Bialy」で終わる。
体を張って(笑)軍資金200万ドルを得たマックスの笑みに、2幕目への期待がフツフツと沸き起こってくる。

2幕目は、1幕目終わりのナンバーとの対照とも言える、レオとウーラの恋のナンバー「That Face!」から。長野君と彩輝さんがフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースみたいにロマンチックなダンスを見せてくれる。華やかな群舞も好きだけど、こういうダンスナンバーも大好き!

オーディションのシーンで、なんと客席からケータイの着信音が聞こえてくるという、噴飯ものの出来事もあったけれど、まあ、鳴らしてしまった人の方が気まずいんだよね、ああいう時は。
お客様、1幕目と2幕目の休憩時間でケータイの電源を入れたときは、メールチェックが終わったら忘れずにすぐ電源を消しましょう。

2幕目の見所は、最低最悪のミュージカル「春の日のヒットラー Springtime For Hitler」の劇中劇のシーンかと思っていたら、最大の見所は後半にあった。
二重帳簿がばれて、警察に捕まってしまったマックスが留置場で歌う「裏切られて」。
これはすごい。井ノ原君が本当にすごかった。
彼の歌唱力は、たしかにV6の中でも上手い方だと思っていたけれど、まだこんな力を秘めていたなんて。歌の内容に笑いながらも感動してしまった。
そして本場でも笑いどころの「インターミッション」も、若い井ノ原君ならではのコミカルな演出を見せてくれる。本当に素晴らしい。このナンバーを聞くためだけに、お金を払ってもいいと思えるくらい。(って、これは褒めすぎかな?)

裁判で有罪となったマックスは、リオからウーラと一緒に戻ってきたレオとともに、刑務所に入れられてしまうのだけど、底抜けに明るいブロードウェイ・ミュージカル「プロデューサーズ」は、もちろんハッピーエンドで終わる。
マックスが本当に改心したかどうかは分からないが(笑)、でも、ブロードウェイに意気揚々と戻ってきた二人が肩を組んでいる姿には、きっとこの二人ならブロードウェイで次々とヒット作を飛ばしていくだろうという明るい希望が見えるのだ。

こんなにも熱く語ってしまうほど、日本版「プロデューサーズ」は本当に素晴らしかった。
役者陣の素晴らしさは言うまでもなく、パンフレットにも書いてあったが、日本版が成功した要因の一つは、舞台装置を本場で使っていたものをそのまま持ってきたこともあるのだろう。
まがいものではないブロードウェイ。その完璧な舞台装置があってこそ、演じる役者もブロードウェイの人間になれるのだろうと思う。
そして、井ノ原君も長野君も最初これに驚いたという、細かく計算された演出。
台詞や歌の前に、まずは計算された動きがある。だが、その計算ゆえに、観客として舞台を観た場合、どの位置から見てもパーフェクトな芝居となっているのだろう。

東京公演は今日で終わりだが、ぜひ大阪公演を観に行けるようであれば、ミュージカル好きな人ならぜひ足を運んでほしいと思う。
間違いなく、思い描いていたイメージを覆されるはずだから。
もちろん覆されるのは、良い方に、ですけどね。