「 わたしの舌がまだひと言も語らぬさきに/主よ、あなたはすべてを知っておられる。」
詩編 139編 4節
この詩編の言葉は、紀元前九百年ごろの信仰者の叫びです。人がどこへ逃れようとしても、
神からは逃げられないことが書かれています。
人は孤独であり、また社会的なものと言われています。家族、友達、仲間と共に生きていく中で、
自分の失敗、あるいは全くの誤解で回りの人々から排斥され、孤独になってしまう場合があります。
そんなときに一番の助け手となり、ゆっくりと悩みを聞いてくれるのは、忍耐と愛に満ちた親、
兄弟、夫婦、仲間や友人でしょう。しかしその交わりにおいても、孤独のどん底で悩む者にとっては、
本当の意味での支え手とはなり切れないのかもしれません。
しかし、神が共に居てくださる以上に心強いことはないでしょう。
口から言葉が出る前に私の考えを神は知っておられるのです。この世に生まれる前から、
神はこの私一人を見守ってくださるのです。
人の生涯に起る様々な出来事、それらは、なぜそうなったのか、そうなるのか、人の知性や理性だけでは解き明かせません。
合理的な解釈も難しく、さらに人智を越えることもしばしばです。それらを自覚すればするほど、
詩人は神の臨在を感じ、敬虔になるのです。また、私たちが、何か言葉を口に出す時に、
その前に思いが先行しています。その思いがどのように自分の中で形成されているのか、
その過程は不思議なものです。これまで無かった思考がある時に与えられ、それを言葉として言い表すまで、
その不思議な成り立ちを主は、ことごとく既に知っておられるのです。この神の委ねていく者の幸せよ。