ダブルパンチ

謎の変調を来した腹具合、治まる気配も見せぬまま1週間が経った今日は、歯医者へ定期健診へ。

ただでさえ歯医者は苦手なのに、1時間に1回襲ってくる腹痛との戦いも強いられた。

前門の虎、コウモンの狼という訳だが、上手いこと言えても嬉しくもない。

頑張れ、ビオフェルミン。　お前の力を信じている。

強力わかもとよ、40年来の付き合いのお前さんの力を、今こそ見せてくれ。

俺の腹は痛くない。そもそも俺は歯医者に来ているのではない。

ここは無の空間、そう、出そうと思えばいつでも出せる、自由極まりないプライベート空間。

緊張よ、去れ。　俺は自由なのだから。

そんなバカな事を脳内で繰り返している40歳児。

歯医者のキュイーン音と、神経にダイレクトに、そして無遠慮に襲い掛かるあの痛みが、今日はありがたい。

気を紛らわせてくれる。自分にとっては腹痛こそが最大の難敵。

それは今も昔も変わらないのだから。


歯科衛生士のお姉さんの言葉も上の空、虎視眈々とエクスプロージョンの機会を窺ってくる腹具合。

流れ落ちる脂汗。まるでカメレオンが如きあやふやな焦点。錯綜する理性と本能。

人生とは、戸惑いの連続だと誰かが言った。

ならば嗚呼とも、俺は生きている。それを無駄に実感した。


地獄の1時間と相成った。

虫歯治療のために次回の予約を、と促されたもののそれどころじゃない。

日を改めて連絡すると告げて、一目散に帰宅。戦略的撤退。勇気ある撤退であったと自負する。


流石は厄年、アナどりがたし。

上手いこと言えても嬉しくもない。