漸く動き出した僕の人生の腕時計は、余りにも多くの時間を怠ってしまった。
でもそれとは裏腹に、夢は動き出した。
時計の動きは、正確に言うなら止まってはいなかった。
僕が、腕に付けるのを忘れていただけだ。
嫁さんに、言う。
漸く夢に拍車を掛ける事が出来るよ、と。
嫁さんは言った。
私は先に、アンタのご両親に恩返しをしたいと。
夢にムチを打つのは、それからにしようと。
恥ずかしかった。
僕は夢に盲目になりかけていた。
僕を支えてくれたのは、嫁さんもそうだけど
最も心を砕いてくれていた両親だ。
何たる無様。何たる不遜、何たる不孝。
血の繋がりのない嫁に、血の尊さを教えられた。
或いは彼女は、血の繋がる者から迫害を受け続けたが故に、
そう思ったのかも知れない。いずれにしても、だ。
夢は追う。
勿論追う。
でも、大切な人たちを等閑にして追う夢には価値はない。
普段はあまり気の利いた事を言わないけど、
大事な局面で稀に「ハッ」とする事を言ってくれます。
これも「人間」ならではのやり取りなんでしょうね。