この道は、貰った道

不思議なもので、今の道にもっと早く飛び込んでいればと毎日思う。

一日があっという間に過ぎる。学ぶ事が毎日たくさんある。
クタクタで、ヘロヘロで、もうマジで無理だと毎日思うのに
次の日もその次の日も、気が付けば働いて一日が終わる。

サラリーマン時代にはなかった。
あの頃は、ノルマや目標が与えられて
それにただ付き従わざるを得ない毎日で、
「これが俺のやりたかった事か」
「大学まで出させて貰って、これで親は安心なのか」
なんて思わなかった日がないくらいで。


だけど独立開業なんて何をどうすれば良いのかも分からず、
そして自分の適正は思案しながらも、定収入で溜飲が下がってしまい、
気が付けば「まぁ仕方ないか」の繰り返しだった。


この歳で、この道に飛び込もうと決めた。

それは、自分だけの力で、自分だけの決断力で
裸一貫、飛び込んだ訳では決してない。

石橋を叩き割って渡れなくしてしまうこんな自分を、
言葉は下手だがずっと叱咤してくれた人がいる。
この道に飛び込めと、遠回しに示唆してくれた人がいる。

僕は、変な話だけど
その人の為にも飛び込んでみようと思った。
そしてその道で未来を切り開いて、その人の期待に応えたいと思った。
その人の希望になりたいと心底思った。


ドラコンに打ち込んで
鍛えまくった挙句に身体を壊して、
そして今の道に出会ったのは事実だけど

まさか自分がその道に、当事者として飛び込むなどと
青い頃の僕は想像もしなかった。

この間、母校へ資格試験に必要な卒業証明書を貰いに行った時、
ああ僕はこの校舎に通っていた頃は、こんな未来など
カケラ程も予測しなかったに違いない、と痛切に感じた。


今、入口を超えて始まった自分の道は、大切な人に貰った道。

全てがそうではないとしても、
僕の背中をドンっと押してくれたのは
紛れも無く、その人だ。


残念ながらその人にはもう二度と会えないのだけれど
会えないからこそ、僕はこの道を完遂してみせる。