学生の頃は、よく夜の海を見にバイクを走らせた
久しぶりに、自分がやりたいことを思い浮かべたら
夜の海に、あの頃のように訪れていた。
日中、焼けるように蒸されるように暑いけど
夜は嘘みたいにヒンヤリしていて、
今が夏だという事を、忘れさせはしないけれど少し遠ざけてくれる。
ジットリとはしているが海風が心地いい。
全身から強張りが抜けていく。
肩にも背中にも、アチコチにこんなに力が入っていた事を知る。
このまま自分という存在が消えてしまえば楽だろうな、
などと少し危うい考えが頭をよぎる。
死だの何だのと物騒な話じゃなくて、
こうして力が抜けていく感覚を、しばらく手放したくないと思った。
夜の海は何にも見えない。
別に面白くも何ともない。
ただ昔から、この少し湿気を帯びた、やや涼し気な海風が
自分の心とやらを癒やしてくれる事を知っている。
きっと前世はタコかイカだったのだろう。